●契約書は賃借人に有利なことは書いていない
民法上では、契約は賃貸人と賃借人の合意で成立することになっています。従って、賃貸借契約は賃借人が賃貸人に家賃を支払えば契約が成立し、定期借家契約以外は契約書面の作成は契約の成立要件ではないことになっています。契約書の作成は、どちらかといえば賃貸人が、賃借人の行為を規制したりチェックしたりするために定めるもので、ほとんど賃借人に有利なことは書いていません。最近の不動産管理会社が作成する契約書は条文も多く、細かい文字で裏表びっしりと書いてあるため、契約する際には十分に読むことが困難です。
しかし、契約書に署名・捺印すると、消費者契約法や借地借家法の強行規定に反していない限り、原則有効です。消費者契約法はほとんどが強行規定ですので、法に反する契約は無効になりますが、民法や借地借家法の強行規定に当たらない条文は契約書が優先されます。賃貸借契約書は、国土交通省の作成した「賃貸住宅標準契約書」のモデル契約書はありますが、この契約書を使うことは家主や不動産業者の義務にはなっていないので、家主や不動産業者はできるだけ賃貸人に有利な契約書を作成しているのが実情です。
●契約書の疑問な条文は質問し、作成する前に訂正させよう
契約書は読みにくいもんですが、読んでおかないと契約後に苦労しますのでよく読んで、わからない所や疑問な所は不動産業者(宅建主任者)にどんどん質問しましょう。場合によっては、一旦預かって、帰ってから質問条項を作っておくとよいかもしれません。ちゃんと質問に答えなかったり、はぐらかそうとする不動産業者は要注意です。あきらかに不当な条文は訂正や削除を求めましょう。契約書は「ペット不可」だったが、不動産業者に口頭だけで「ペット可」といわれて、後で家主からペットは不可と言われ、トラブルになる事例がよくあります。口頭による許可は、「言った言わない」ということになり、必ず書面で確認しておくことが大事です。また、原状回復の問題では「汚損・破損が自然損耗に当たる場合でも、賃借人が費用を全額負担するものとします」などの不当な特約を書いている業者が依然としております。できれば、東京都の賃貸トラブル防止ガイドラインの冊子を持って業者の説明を聞くとよいかもしれません。
●おかしな契約書を結んだら直ちに相談しよう
契約書はほとんどが借主に不利な条項が多いのですが、全て直せといっても、借りるときは賃貸人の立場が有利ですから、今度は物件を借りられなくなってしまいます。契約書が全て優先されるわけではなく、消費者の利益を一方的に害する契約は後で消費者契約法第10条に基づき無効とすることも主張できます。また、事実と異なることを言われて契約したり、無理やり脅かされて契約をしてしまった場合には、同法4条で契約そのものを取り消すことができますので、相談できる機関に早めに相談するとよいでしょう。
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