東京多摩借地借家人組合

アパート・賃貸マンション、店舗、事務所等の賃貸のトラブルのご相談を受付けます。

総務省が2023年の住宅・土地統計調査確定値を発表

2024年10月03日 | 法律知識
 総務省は2023年住宅・土地統計調査を実施し、今年の9月25日に「住宅及び世帯に関する基本集計結果」を発表しました。
 4月の速報値では、住宅の総数や空き家数が公表され、今回は総住宅数と総世帯数、空き家、住宅の建て方、住宅の構造、住宅の所有の関係、住宅の規模、借家の家賃、高齢者のいる世帯の状況、現住居以外の所有状況が発表されました。
◎総住宅数と世帯数 総住宅数は6504万7千戸、2018年の前回調査より4・2%増加し、過去最多となりました。
◎空き家 空き家数は900万2千戸と過去最多で、空家率も13・8%と過去最多です。空き家の内、1戸建てが352万3千戸(39・1%)、共同住宅が502万9千戸(55・9%)。共同住宅の空家は賃貸用の空家が最も多く394万7千戸で、78・5%を占めています。
◎住宅の建て方 住宅の建て方別では、1戸建が2931万9千戸(52・7%)、共同住宅が2496万8千戸(44・9%)と共同住宅が増えています。
◎住宅の所有の関係(図3)
 住宅の所有の関係別にみると、持ち家が3387万6千戸(全体の60・9%)占めています。2018年と比べ0・3ポイントの低下となっています。借家は1946万2千戸で、住宅全体の35・0%。借家の内訳では、「民営借家」が1568万4千戸(28・2%)と最も多く、次いで公営の借家176万戸(3・2%)、給与住宅が130万2千戸(2・3%)、都市再生機構UR・公社の借家71万6千戸(1・3%)です。
◎借家の家賃(図4) 借家の1カ月当たりの家賃は59,656円で5年前より7・1%上がっています。民営借家(木造)が54.409円(4・5%増)、民営借家(非木造)が68,548円(7・0%増)と非木造の家賃の上がり方が激しいです。借家の種類別の1畳当たり家賃を見ると民営借家は公営借家の2・3倍~3・3倍と家賃が高くなっています。
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借地借家問題市民セミナーIN武蔵野

2024年10月02日 | 法律知識
借地借家人のためのやさしい法律の学習会と相談会 相談しておけばよかった!………というケースが必ずあります。

こんな問題で悩んでいませんか?
◎賃貸借契約の更新、更新料の請求
◎大地主の死亡や地主の相続で発生する問題
◎地代・家賃の増額請求の対応
◎賃貸住宅の老朽化・耐震不足を理由とする明渡し
◎ブラック地主問題(借地の底地の不動産業者への売却)
◎賃貸住宅の原状回復、敷金の返還
◎大規模災害が起きた場合の借地権・借家権


日時 10月12日(土)午後1時30分から

会場 武蔵野公会堂第5会議室(JR吉祥寺駅南口徒歩2分 参加無料)

※組合役員が親切に相談にのります。 借地借家人の権利は借地借家法・消費者契約法などで守られています。


東京多摩借地借家人組合

電話 042(526)1094

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借地権活用セミナー開催 

2024年09月27日 | 法律知識
 東京多摩借組は、最近借地人の高齢化に伴って、借地上の建物が空き家になることの心配の相談が組合に寄せられいていることをから、「借地権活用セミナーを9月14日立川市女性総合センターで組合員11名が参加して開催しました。講師は、生活協同組合・消費者住宅センターの大関副理事長が担当し、ケースタディとして①地主が借地権を買い取った事例、②借地権譲渡を断念した事例、③地主が優先的買受権を行使した事例について、具体的に説明を行いました。
 地主が借地権を買い取った事例の共通点として、借地人と地主と比較的に良好な関係にある。地主が土地活用を生業としている。土地の形状がほぼ成形である。用途地域は近隣商業地域で土地活用が容易である等があることが説明されました。
 借地権譲渡を断念した事例では、借地が公道に未接道であり、建物の管理が悪く老朽化している。買受人が見つかったが、地主に払う譲渡承諾料、増改築の承諾料等多額の費用が発生し、譲渡を断念。借地人は借地権売却を諦め、地主が建物の解体費用を負担することで借地明渡しに合意しています。
 地主が優先的行使した事例では借地権譲渡の借地非訟手続きを行い、地主が土地明渡しの訴訟を起こしたが敗訴し、地主は借地の買受優先権を行使し、借地権の譲渡ではなく地主が借地権を買い取ることで和解が成立しました。
 事例報告後、活発な質疑応答が行われ、借地権の相続人は被相続人から生前に借地の経過や地主とのやり取りなど把握しておくことなどが重要であると講師からアドバイスがありました。

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高齢女性の貧困と労働テーマに女性労働セミナー開催 女性の貧困問題が深刻 早急な対策が必要

2024年09月26日 | 法律知識
 女性労働問題研究会主催による第39回女性労働セミナー「高齢女性の貧困と労働」が9月16日午後1時から全労連会館ホールで開催されました。
 第1部は東京都立大学教授の阿部彩氏より「データーで読み解く高齢女性の貧困」と題して、調査資料に基づいて貧困の実態について報告しました。
 これまでに貧困対策は、母子世帯→ホームレス(2002年~)→勤労世代の男性(2008~9年の派遣村)→若いシングル女性(2012年)→子ども(2013年~)と、「女性の貧困」ではなく、「貧困女子」がターゲットにされています。1985年と2021年を比較すると、女性の貧困率は高齢期になるほど高くなる傾向があり、2021年では70歳以上から貧困率が急上昇しています。
 貧困率の男女比較(図Ⅰ)では、現役世代(20歳~64歳)では夫婦のみ世帯と夫婦と未婚の子のみ世帯では貧困率が低く、高齢者(65歳以上)の単身世帯では男性30・3%に対し女性44・1%際立って女性の貧困率が高くなっています。配偶者状況別(未婚)貧困率(図2)では、未婚の65歳以上の男性・女性とも貧困率は高く、現役世代(20歳~64歳)では、男女の貧困率の格差はほとんどなく、両者とも2018年から2021年にかけて上昇傾向にあります。女性の貧困問題は「若い女性の問題」ととらえられ、女性の支援策は、仕事と育児両立支援策に集中し、「女性の貧困対策」の視点が欠けていると指摘しました。阿倍教授は、最後に貧困率を下げる対策として、家賃補助など住まいに対する支援が必要であると強調しました。
 第2部では、特別報告「高齢女性の貧困~年金裁判のたたかいから」について、年金引下げ違憲訴訟東京弁護団の今野久子弁護士が報告しました。続いて、パネリストとして①年金生活者「175人の声から」中川滋子さん(全日本年金者組合女性部長)、②「
高齢者の住宅問題」全借連細谷紫朗事務局長、③「高年シングル実態調査から」大矢さよ子さん(わくわくシニアシングルズ代表)より当事者の発言と報告が行われました。
 全借連の細谷事務局長は、民間賃貸住宅の実態に
ついて、高齢者が立退きを請求されても転居先が見つからない。高齢賃借人の残置物の処理や賃借権相続問題が入居拒否の原因となっている。高齢者等が円滑に入居きる対策として住宅セーフティネット法が改正されたが、あまりにも民間まかせの法律で、高齢者の住宅問題解決には様々な課題と問題点があり、家賃補助等政府の支援策の抜本的拡充が必要である等報告しました。
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隣の家の火災の延焼で借地上の建物が全焼 地主は土地明渡しを請求

2024年09月24日 | 法律知識
 北区内に土地約23坪を賃借している猫田さん(仮名)は今年の1月に隣の家の火災が延焼し建物が全焼してしまった。
隣の家も同じ地主の借地で建物の取り壊し代金を地主が持つ条件で明渡しに応じたという。猫田さんは隣の借地人とは火災後の補償について何も話し合っていない。
地主からはもう建物は再築できないのでお見舞金を支払うから明渡してほしいと口頭で言われた。金額は借地権価格とされる金額よりも半値以下だった。
猫田さんは再築して住み続けたいと思っているので合意はしていない。
困り果てて池袋西武百貨店本店の借地借家相談会に来た。
詳しく話を聞くと、地主代理人として司法書士が電話で事務所まで来るよう恫喝するという。組合のアドバイスは、隣家の火災が延焼して全焼したならば借地人の責任ではないので立て看板にここにどのような家があった。何年何月何日隣家の火災の延焼で滅失した。再築の意思がある、の3か条を書いて提示し2年以内に再築すれば借地権は存続すると説明。
猫田さんは自分では難しそうなので詳しい弁護士に相談したいとのことで東借連常任弁護団弁護士を紹介した。猫田さんはもう借地権の存続は無理かと思っていた、希望が見えてきたと少し安堵していた。(東京借地借家人新聞9月号)
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「助けてと言ったのに・・・」 生活保護でいま何が?

2024年09月24日 | 法律知識

「申請は国民の権利」とされる生活保護。物価高騰などを背景に申請数は4年連続増加、受給世帯は165万を超えました。一方、制度を
運用する自治体では不適切な対応が相次いでいます。現場でいま何が起きているのか?保護費未払いや支給決定の遅延などが発覚した
群馬県桐生市。幹部が語ったその理由とは。さらに、他の自治体からは運用の難しさを訴える声も。最後の“セーフティーネット”は
機能しているのか、全国自治体への徹底取材で迫りました。

出演者
桜井 啓太さん (立命館大学 准教授)
桑子 真帆 (キャスター)

生活保護でいま何が?

桑子 真帆キャスター:
生活保護の運用を巡っては、これまで、たびたび不祥事が起きています。近年では、神奈川県小田原市で市の職員が「HOGO NAMENNA」
と書かれたジャンパーを着て業務に当たっていたことが発覚し、大きな問題になりました。
2023年3月以降、運用が不適切だとして、第三者委員会が設置された自治体は少なくとも5つに上ります。世間から厳しい批判を浴びる
たびに再発防止が図られてきたはずなのに、なぜ。今、まさに検証が続く現場を取材しました。

相次ぐ “不適切対応”

群馬県桐生市。
2023年11月、生活保護費の未払いが発覚しました。
「(薬を)毎日打たないと、血糖値が上がりっぱなしになっちゃう」
2023年7月、生活保護を申請し、受給することになった60代の男性です。
建設関係の仕事をしてきましたが、持病の糖尿病が悪化し、合併症を発症。仕事が続けられなくなったことが申請の理由でした。
男性
「そこらじゅうガタガタだった、体が。しばらくの間だけ生活保護を受けて、仕事を探すかなと思った」
生活費として男性に支給されるはずの金額は、月、およそ7万円。
しかし…。
男性
「『ハローワークへ毎日行って、確認のはんこを見せてもらえたら1,000円渡しますよ』って。『行けないときはどうなるんだ?』っ
て言ったら、『もらえないですよ』と(市の職員に)言われた。市役所の人は、『1日1,000円でお金をためた人もいますから』と言う
ので」
役所のケースワーカーから、職探しのために、毎日、ハローワークに通うよう指導を受けた男性。
市は、支給の条件だったとはしていないものの、男性が受け取ったお金は月3万円あまり(本来の支給額の半額程度)。この状態が2か
月続きました。
男性
「食べ物なんて半額になったものばかり。薬(市販薬)だって買えなかったよ。苦しいなんてもんじゃない。でも、意地でも生きな
きゃならないから。下手に逆らって、お金がもらえないと生活できないから我慢してた」
生活に行き詰まった男性は、地元の司法書士に相談。長年、支援活動を続ける仲道宗弘さんが実態を調査し、告発したのです。
長年 支援活動を行う司法書士 仲道宗弘さん
「最低限の生活を国が決めて、桐生市では、生活扶助費7万1,000いくらって決めているのに全額渡さない。これだけでも違法」
仲道さんたちの訴えをきっかけに、みずから調査を行った桐生市。少なくとも、11世帯に対し、同様の未払い(2018年以降)を認め、
謝罪しました。
なぜ、市は行き過ぎた対応を行ったのか。
生活保護行政を担う市の幹部が、先週、初めて単独の取材に応じました。
桐生市 保健福祉部 宮地敏郎部長
「組織としての取り組み方に大きな問題があったと思っている。『自立支援を頑張らなきゃいけない』というところに重きを置きすぎ
た」
市が重きを置いたという自立支援。
その背景にあるのは、2013年に国が自治体に出した通知です。働くことが可能な受給者に対して「集中的な就労支援」を行い、生活保
護の「早期脱却」を目指すと記されています。
宮地敏郎部長
「『この人は働ける人だよね』という判断。『頑張ってやろうよ』という、やりとりが恐らくあるんだと思う。ちょっとアグレッシブ
に指導したところはあったのかと思う」
桐生市では、他にも不適切対応の疑いがあったことが明らかになっています。
群馬県が行った特別監査で指摘されたのは、申請する権利の侵害です。
通常、自治体の窓口で行われる生活保護の申請。それを受けて審査をするのが行政の役割ですが、桐生市では、そもそも、その申請す
らさせないケースが複数、確認されたのです。
9年前、市に父親の生活保護の申請を拒否されたという女性です。
父親の申請を拒否されたという女性
「父が最後に暮らしていた場所」
心臓病を患い、職を失った父親。家賃滞納で住む家をなくし、廃屋になっていた、かつての実家で暮らすようになっていました。
女性
「びっくりしました。電気も通ってなかった。お風呂も水道もガスもなかった」
毎週、食料を届けるなど、貯金をとり崩しながら父親を支援したという女性。しかし、出産直後で家計は厳しく、支えきれなくなりま
した。
そこで、福祉課に繰り返し相談しましたが…。
女性
「いくら説明しても認めてくれない。申請書はかたくなにくれなかった。『家族でとにかく支え合え』と、ずっと言われ続けました。
どうしても私も悔しいし、悲しいし、涙が出てきちゃう。そうすると、『泣いたからって生活保護が通ると思わないで』と、毎回そう
でした」
桐生市の人口に対する生活保護受給者の割合です。国や県が横ばいの中、桐生市は、年々、減少。受給世帯は、過去10年で半減してい
ます。
申請拒否を指摘されていることを、市はどう認識しているのか。
桐生市 保健福祉部 宮地敏郎部長
「きちんとした記録もない段階で、あったとも言えない状況。もし、そう相手にとられるような対応があったとすれば、改善していき
たい」

未払い 背景に何が…

<スタジオトーク>

桑子 真帆キャスター:
1日1,000円しか支払われず、桐生市が保護費の未払いを認めたというお話がありましたけれども、受給者の男性がハローワークに、毎
日、行くことが保護費支給の条件だったかどうかは、市と男性の間で言い分が分かれ、現在、裁判で争っています。
ここからは、元ケースワーカーで生活保護制度に詳しい桜井啓太さん。そして、社会部、後藤記者とお伝えしていきます。よろしくお
願いします。
桜井さんにお伺いしますけれども、最後のセーフティーネットと呼ばれる生活保護を巡って、桐生市のようなことが起きた。このこと
は、どういうふうにご覧になっていますか。

スタジオゲスト
桜井 啓太さん(立命館大学 准教授)
元ケースワーカー・生活保護制度に詳しい

桜井さん:
これまで、必要とする人からの申請を受け付けない、「水際作戦」と呼ばれる不適切な対応については、よく言われてきたところなん
ですけれども、「自立支援」の名のもとに受給者の方を追い詰めるような対応が出てきたという意味では、ステージが変わったなとい
うような印象を受けます。ただ、桐生市の職員の方も話していたように、桐生市が組織的に生活保護の抑制に走った背景の1つに、国
が2013年から、就労自立支援や不正受給対策の強化といった、かなり強い方針転換を行ったという経緯があります。国は、桐生市の例
は通知の曲解だと言いますけれども、確かにその側面はありますが、曲解というよりは、そういった方針転換の延長線上にあるという
ふうに理解したほうがいいかなと思います。

桑子:
なぜ、桐生市は行き過ぎた対応を行ってしまったのか。実は、自治体というのは、生活保護の運用にあたって、自立支援も含めて、国
からさまざまなことを求められているんです。
まず、一丁目一番地として求められているのが、「漏れなく救う」ということです。生活に困るすべての人の申請を受け付けて、最低
限度の生活を保障するということです。同時に求められているのが、「不正受給を防ぐ」ということ。さらに、国によって強化されて
いるのが、VTRでもあった、「自立支援」です。働くことができる人は、早期の脱却を目指そうというものです。
これらのすべてをかなえようとすると、例えば、漏れなく救おうとして、本来は必要でない人にも支給されてしまうという不正受給が
生じてしまったり。逆に、不正受給を防ごうとすると、本当に必要な人が漏れてしまったり。さらには、自立支援が行き過ぎると、桐
生市のように受給者を苦しめる可能性があるということ。
桜井さん、すべて最低限度の生活を保障しようというものですけれども、実際の対応を見ると、相反するようなことをしているように
も見えるんですが、これはどう考えたらいいんでしょうか。

桜井さん:
一つ一つの理念や取り組みというのは、もちろん一理あるのですが、不正受給の対策や自立支援みたいなものに傾倒してしまうと、結
果的に困っている人を制度から遠ざけてしまう側面があります。
生活保護
不正受給 0.3%(2022年度 金額ベース)
捕捉率 20%~30%
高齢者世帯 55%
そもそも生活保護の不正受給というのは、金額ベースで全体の0.3%というふうに言われていて、他の制度と比べても、決して多くない
んですね。一方で、本来、必要な人が生活保護をどれぐらい利用できているか、制度の捕捉率というんですけれども、大体、20から
30%程度と言われていて、必要な人の2割から3割ぐらいしか、実は利用できていない。今の生活保護制度は、実は高齢者の方が過半数
を占めていて、若い人たちが非常に使いづらい制度になっている。そのため、就労支援など、自立支援の効果が非常に薄いんですね。
そういった中で、不正受給の対策や自立支援の強化に重点を置くような国の方向性というのは、どれぐらい実質的な効果があるのか
と。結果的に、福祉事務所の現場を疲弊させて、この制度のいちばんの目的である「最低限度の生活保障」というところがおろそかに
なっているのではないかと思います。

桑子:
後藤さんは、桐生市を含めて、全国の自治体を取材したということですが、どんな課題を感じましたか。

後藤 駿介記者(社会部):
私たちの取材に、桐生市の幹部は、背景には“現場の繁忙感”もあったというふうに証言しました。番組では、全国の自治体の監査の
ために、自治体側が国に提出した過去5年分の報告書を開示請求しました。
その結果、繁忙感を理由に、調査に時間がかかって、生活保護の決定が遅れたという事例も多くありました。また、全国のケースワー
カーに話を聞くと、国から求められる理念のバランスを取るのが難しいという声も多く聞かれました。例えば、10年程前には、芸能人
の親族の生活保護受給が明らかになると、「生活保護はずるい」という空気が社会で生まれ、その後、現場には、不正受給を防ぐ対策
の強化が求められました。一方で、リーマンショックなどで、多くの現役世代が生活保護に頼らざるを得なくなるような状況が生まれ
ると、今度は国が自立支援の強化を打ち出し、現場はその対応に追われます。

桑子:
では、実際に自治体の対応はどうなっているのか。
中には、もう運用が成り立たなくなるという声も聞こえてきています。

迫る “運用の限界”

およそ、2万世帯が生活保護を受給している、大阪・堺市。
コロナ対策として、国が家庭に出していた貸付金が終了して以降、申請件数は増加し続けています。
「生活保護のご相談ということでよろしいですか」
対応にあたるケースワーカーの1人、10年目の西智弘さんです。
担当するのは、115世帯。国が定める基準の80世帯を大きく超えています。西さんが特に難しさを感じるというのが、国が重要視する
「自立支援」です。
4月から生活保護を受けている40代の男性です。
就労支援につなげたいと考えていますが、持病の肝硬変の治療が思うように進んでいません。
堺市 ケースワーカー 西智弘さん
「6日も13日も病院、行っていない?」
40代男性
「行ってないですね。基礎体力が異常に落ちとるんで」
西智弘さん
「きっちり通院して、体調戻して、また仕事するならしてほしいから。そこはほんまに、そういう思いを何回もお伝えしに来さしても
らってる」
すぐに働くことはできないと判断。今後、繰り返し家を訪ね、治療を促すことになりました。
この日、行われていたのは就労支援の面談。
コロナ禍で、長年勤めた会社を解雇されたという40代の男性が訪れていました。
就労支援のスタッフ
「魚をさばく仕事なので、鮮魚の調理経験があるとのことで」
面談を行うのは、委託先の民間会社です。
国は、ケースワーカーの負担を減らすため、業務の外部委託化を可能に。堺市でも、面接練習など、一部を委託してきました。
それでも、西さんは、できるだけ面談に立ち会うようにしています。ケースワーカーは受給者の状況を把握することが求められている
からです。
西智弘さん
「工場より、こっちの方が気になるんですね?」
就労支援に来た男性
「魚のほうが楽しいから、自分的には」
西智弘さん
「そうですか」
就労支援に来た男性
「相談できる相手はほとんどいない。西さんが一番対応がいい」
およそ、1か月後。
就労支援のスタッフ
「面接、どうでした?」
男性
「いけそうな感じはあったから」
就労支援のスタッフ
「いけそうな感じ」
男性
「あったんですけどね」
就労支援のスタッフ
「うーん」
結果は不採用。堺市で就労支援を受ける受給者の半数以上が40代から50代。仕事が決まるまでに数年かかる人もいるといいます。
男性
「西さんにちょっと話がある」
外部委託を進めても、受給者が頼るのは、西さんたちケースワーカー。時間をかけて伴走せざるを得ない現実があります。
西智弘さん
「お尻たたいて、就労指導というやり方もあって、ただ、それで本人が望まない仕事とか、やっぱり続かなかった、また保護になりま
すとなったら、結局、本当の意味での自立支援にならないのかな」
ケースワーカーには、就労支援のほかにもさまざまな業務が求められます。
例えば、保護費の算定。月によって各世帯への支給額は変わるため、毎月、1円単位で割り出さなければなりません。
西智弘さん
「9月で金額を変えておかなきゃいけない(世帯)がいて。4円だけやけど」
「4円?」
受給者が最低限の生活を送れているか、状況を適切に把握し、支援するのも重要な仕事です。
60代と30代の親子です。
西智弘さん
「お金、いま、どのくらい残ってます?」
年金と生活保護で暮らしていますが、息子に軽度の知的障害があり、お金の管理がうまくできないといいます。
西智弘さん
「また、お金が無くならへんように、ちょっとだけ、お金、封筒に分けるのはどうです?」
「できます」
西智弘さん
「できる?いまやる?ちょっとずつ、お金の管理を自分でできるように頑張っていきましょう」
国の基準では、こうした世帯への訪問は3~4か月おきとされていますが、西さんは、命に関わるおそれがあると、毎月、通い続けてい
ます。
西智弘さん
「(仕事の)線引きがないというか、どこまでっていうところは、やっぱり難しい、悩ましい」
この日、市では、国に運用実態を報告するための内部監査が行われていました。
幹部同士で交わされたのは、「優先順位をつけなければ業務が回らないおそれがある」という議論でした。
監査側 課長
「ほんまは全部大事だけれど、いまは、ここをせなあかん、絞らなあかんということでしょ」
生活援護課 課長
「分かってます。分かりますけれど、何かが期限内にできないとか、支給しないといけないものができないとか、そんなことを起こさ
ないように薄氷を踏む思いで仕事をしている」
堺市では、この5年間でケースワーカーを40人あまり増員。それでも、申請者が増加するなか、対応が追いつかなくなることを危惧し
ています。
堺市 生活援護管理課 鷲見佳宏主幹
「毎年、いろんな国からの通知を受けて、少しずつ業務がどんどん積み重なっている。生活保護制度に求められてきた理念と現実が、
いま、すでに、かい離してしまっている」

最後のセーフティーネット 守るために

<スタジオトーク>

桑子 真帆キャスター:
こうした声も上がる中で、生活保護制度を取りまとめる厚生労働省に、どう捉えるか聞きました。
すると、「ケースワーカーの人員体制の確保・負担軽減を図ることは重要」だとした上で、「ケースワーカーが単独で対応方針を検討
するのが困難なケースも多数存在することをふまえ、関係機関との支援の調整や 情報共有を行うための会議体の設置規定を新たに設
けている」という回答でした。これ、どういうふうに評価されますか。

桜井さん:
理念としては分かるんですけれども、現場のひっ迫や広がる貧困の実態について、どれだけ真摯に考えているのかなという印象は受け
ます。新しい会議体もそうですが、いろんな取り組みを増やした結果、現場が疲弊しているというところもありますので、そういった
ところも考えていただきたいなと思います。

桑子:
この現場の負担を軽減するために、今、何ができるのか。9月から桜井さんたちが始めた取り組みが、こちらです。
各自治体の生活保護受給者の割合が10年間でどれくらい変化したかというもので、緑は割合が増えている自治体、赤は割合が減ってい
る自治体。これ、どういうふうに使っていきますか。

桜井さん:
まず、緑色のところなんですけれども、生活保護率が上がっているところで、ある意味、自治体の負担が増えているということですの
で、ケースワーカーの配置など見直しが必要なところが見られると思います。反対に赤色のところ、保護率の減少というのは、人口の
動態であったりとか、景気変動の影響がありますので、一概に悪いというわけではないんですけれども、近隣地域に比べて急減してい
るという場合は、不適切な運用が疑われるということで注意が必要。そういった、1つのバロメーターになればいいかなと思います。

桑子:
その上で、生活保護の運用は、長期的にどういうふうにしていけばいいとお考えですか。

桜井さん:
生活保護というのは、生活保護制度だけで考えていてはだめで、いろんな社会保障制度全体であったりとか、私たちの社会の価値観全
体を考えていく中で、制度運用というのを考えていく必要があるかなと思います。

桑子:
私たち一人一人の意識も、やはり関わってくるということですか。

桜井さん:
そうですね。貧困というのを、どういうふうに考えるかというところですけれども、「貧困者」「生活保護受給者」と戦うのではな
く、「貧困」とどう戦っていくのか。そのために、われわれが何を、どういった価値観を持つのか、と考える必要があるのかなと思い
ます。

桑子:
ありがとうございます。桜井啓太さんにお話を伺いました。
生活保護制度を、どう作っていくか。私たちの価値観も大きく関わっているというお話がありましたけれども、“すべての人が最低限
度の生活を送る”、この憲法で認められた権利を、どのように守る制度を作っていくのか。どう血の通った制度にしていくのか。私た
ちは見続けていかないといけないと感じます。

“いまが変わるチャンス” 支援続けた司法書士の思い

「ここが、ふだん仲道さんが使っていた席。半分以上、ここで寝てたかな」
桐生市で起きた生活保護費の未払い問題を告発した、司法書士の仲道宗弘さん。2024年3月、くも膜下出血で帰らぬ人となりました。
妻 仲道さゆりさん
「彼は決まって、『国家資格を持つ者は国民のために働くんだ』」
亡くなる1週間前、仲道さんはインターネット配信の番組で、こう語っていました。
司法書士 仲道宗弘さん
「違法な対応は、なぜ起きたのか。しっかりと認識、把握した上で、常にチェックする必要がある。いま生まれ変わって、本当に制度
を改革するきっかけになるかもしれない。チャンスかもしれない」
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おひとりさま高齢者の保証人から死後の事務まで…「家族の代役務める」“終身サポート”の実態

2024年09月24日 | 法律知識

 「転居したいのですが、保証人がいなくて困っている」という相談が年配の男性から本紙に寄せられた。1人暮らしの高齢者が直面
する多様な悩みに対応する終身サポート事業者が増えているが、契約やサービスを巡るトラブルも発生している。政府は初の事業者向
けガイドラインを公表した。終身サポートとはどんなサービスなのか。実態と問題点を取材した。
 (特別編集委員・岩田直仁)

 福岡市内の男性(68)は長年住んでいる賃貸マンションの賃料が値上げされるのを機に転居を決めたが、保証人の不在が問題になっ
た。「独身で家族はいない。親類とも疎遠で頼る人がいない」。記者が「解決策を調べてみます」と伝えると困った顔が少し緩んだ。
 訪ねたのは非営利型の一般社団法人「えにしの会」の福岡事業所(福岡市中央区平和3丁目)。同会は全国に19の事業所を展開す
る、終身サポート事業の先駆け的存在だ。
 「身元保証はもちろん行っています」と語る笠井久仁彦所長は「多様なサポートのいわば入り口となる支援です」と説明を始めた。
 頼れる人がいない高齢の1人暮らしが必要とするサポートは、ライフステージによって変わってくる。
 自立状態でよく直面するのは、賃貸住宅入居時や入院・手術などの際に保証人がいないことだろう。緊急の連絡先が見当たらず、入
院時の着替え準備なども1人暮らしだと難しい。対応するのが「身元保証」と呼ばれるサービスだ。
 体の不調や要支援、要介護になると、通院の付き添い、介護保険の手続き支援、買い物、定期的な安否確認、緊急時の駆けつけと
いった「日常生活支援」のニーズが高まる。認知症などが進めば、金銭・財産管理や成年後見人制度の活用も検討課題となる。「えに
しの会」では弁護士などが支援に関わることもある。
 病気や事故で死亡した後のことも気にかかる。死亡診断書の取得、関係者への連絡、葬儀、納骨、遺品整理…。自立状態から死後の
事務まで独り暮らしの悩みの種は尽きない。笠井所長は「いわば頼れる家族の代役を務めるのが私たちの役割です」と語る。

   ◆    ◆

 高齢化の進展に伴い、頼れる親族がいない高齢者を対象とする終身サポート業者も増加が見込まれる。
 総務省は昨年、初めて事業者の実態調査を公表した。契約内容の重要事項説明書を作成している業者が少数で、契約書に解約条項が
ない、遺言書の内容が本人の意思と異なるといった問題が明らかになった。
 こうした現状に対し、笠井所長は「終身サポートはビジネスではなく、身寄りがないなどの事情で困っている人を支えるインフラの
一つ」と強調する。
 えにしの会では多様なサポートを一括契約するのではなく、状況に応じて選ぶ方式を採用している。支援相談員の黒木健次さんは
「会員の方とじっくりと向き合い、一緒に必要なサポートを検討していく」と語る。その際、最も大切になるのは地域包括センターや
医療、介護職などとの緊密な連携という。
 「高齢者を支えるネットワークに私たちも加わり、切れ目のない支援を実現していくことが大事。検討の結果として、私たちのサ
ポートより、介護保険サービスを使った方がよいこともある。当事者中心なので、それでいいのです」と笠井所長は断言する。

政府が利用者保護へガイドラインを公表 将来は認定制度も検討

 終身サポート事業については、規制する法律や監督官庁がなく、トラブル回避の仕組みもまだ十分に整備されていない。このため、
政府は利用者保護の観点から、今年6月に「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」を公表した。
 事業者に契約書や重要事項説明書の交付を求めるとともに、高齢者からの預託金は運営資金と別に管理することや、契約解除の手順
の告知を努力義務とすることを盛り込んだ。将来的には、指針を守る事業者に対する認定制度の創設も検討されるという。
 消費者庁の該当ホームページ(QRコードから)では、事業者向けのガイドラインと、それに基づく利用者向けのチェックリストが公
開されている。
 笠井所長は「サービスの内容と費用、解除方法、契約変更、返金などが重要事項説明が書面でしっかり説明されていること、預託金
の管理方法が明らかにされていることなど、業者を選ぶ際の参考になる」と話している。
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賃貸住宅の相談Q&A

2024年09月20日 | 法律知識
Q 賃貸借契約締結に当たって、家賃の支払い方法を指定されました。従う義務はありますか。
A 賃貸借契約はあくまでも貸主と借主の合意が原則となります。当該物件の賃貸借契約を締結するためには、その家賃の支払い方法には従わなくてはならないと考えられます。
解説 家賃の支払い方法は、賃貸借契約の履行方法についての当事者の合意となり、契約自由の原則によって、債務の履行方法に関する合意も有効であると考えられます。従って、現金持参、口座振込みといった家賃の支払い方法に関して合意している場合は、当該方法に拘束されます。
 入居する際に、クレジットカード払いでしか家賃の支払いを受け付けられないと言われた場合には、納得がいかなくてもクレジットカードに申込み、手数料も借主が負担することになります。(賃貸借トラブルに係る相談対応研究会『民間賃貸住宅に関する相談対応事例集』)

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最後のとりでの生活保護 未払いのウラに何が?

2024年09月20日 | 法律知識

いま、生活保護の申請数が増加しています。去年は全国で25万件を超え、この10年で最多となりました。そして、受給する世帯数は現
在、約165万世帯に上っています。最後のセーフティーネットと言われる生活保護ですが、群馬県桐生市では、保護費の未払いなど不
適切な対応が発覚しました。取材を進めると、生活保護からの自立に向けた行政側の対応に、課題が見えてきました。
(クローズアップ現代 取材班)

生活保護費が未払い 男性の訴え

「生活にあてる保護費は1日1000円の支給で、未払いの月もありました」
こう話すのは桐生市の60代の男性です。
建設関係の仕事をしていましたが、持病の糖尿病が悪化して合併症を発症。いまもインシュリンの注射が欠かせません。仕事を続けら
れなくなり、去年7月、市に生活保護を申請しました。
生活保護は認められて、男性は日常生活に必要な費用「生活扶助費」として月7万円余りを受け取ることになりました。しかし市の担
当者に思いもよらないことを告げられたといいます。
男性
「ハローワークへ毎日行って確認のハンコを見せてもらえたら1000円渡しますよと言われました。『行けないときはどうなるのです
か』と尋ねると『1000円はもらえませんよ』と言われ、受け入れるしかありませんでした」
男性は、毎日、地元のハローワークに通い続け、そこでもらったハンコを市役所で見せて1000円を受け取る生活が約2か月続いたとい
います。月に換算すると3万円あまりにしかなりませんでした。本来の金額のおよそ半分でした。
男性
「物価も上がっているなか、1日1000円では野菜は買えず、スーパーで半額になった揚げ物やカップラーメンを買って食べていまし
た。また、害虫を駆除するための殺虫剤も買えませんでした。生活は苦しいなんてものではありませんでした。でも、市に逆らってお
金がもらえなくなると、生活ができないので我慢していました」
男性が頼ったのは、生活に困窮する人の支援活動を長年続けてきた地元の司法書士・仲道宗弘さんです。男性は仲道さんと一緒に市と
交渉し、ようやく未払い分を受け取れました。
「桐生市の生活保護行政がおかしい」と訴え続けた仲道さん。去年11月に会見を開き、実態を告発しました。仲道さんに頼った男性も
「仲道さんがいなかったらいまだに1000円で生活していたと思います」と話していました。

市は自立支援を重視するあまり…

仲道さんらの指摘などを受けて、去年12月になって、桐生市は複数の不適切な対応があったことを公表して、謝罪しました。
市によりますと、2018年以降、市内で生活保護を受給する11世帯に対して保護費を分割で支給した上で全額を支払っていなかったとい
うことです。
なぜ市はこのような対応をとったのでしょうか。
市は去年12月の市議会で、「国が出した通知にのっとった」と回答しています。
その通知には、「就労可能な受給者に対しては集中的な自立支援を行い、生活保護の脱却を目指す」方針が示されていました。市はこ
の通知をもとに、働くことができると判断した人は、男性のようにハローワークに通ってもらうなど、自立支援を行ったと説明してい
ます。そして、ことし9月、NHKの取材に対して、この通知の受け止め方に課題があったと答えました。
桐生市保健福祉部 宮地敏郎 部長
「国の方針の受け止め方という部分では、自立支援を頑張らないといけないというところに重きを置きすぎたことが、結果的に受給者
の意に反した対応になったと思っている。面談で働けると判断された人は、『頑張ってやろう』というやりとりがあったときに、アグ
レッシブに指導したというようなところはあったのかと思う」
この不適切な対応をめぐっては裁判になっています。
桐生市側は、男性に対して保護費を全額支給していなかったことの違法性は認めているものの、保護費の分割支給については男性との
間で合意があり、ハローワークでの求職活動を支給の条件にはしていなかったと主張しています。
一方、男性側は、1日1000円の支給も求職活動が条件だったなどと主張しています。

支援団体に相次ぐ情報提供

桐生市の実態を告発した仲道さんはことし3月、くも膜下出血のために亡くなりました。その仲道さんの思いを受け継ぎ、生活困窮者
を支援する団体が調査に乗り出しています。
団体は情報提供を呼びかけるチラシを作り、市内で4000枚以上配ると、ことし8月までに50件以上の声が寄せられました。
保護費の未払いのほか、生活保護の申請を拒否された、受給後に辞退を迫られたという訴えもありました。なかには「ほかの自治体の
介護施設に入り、そこで生活保護の申請を」と告げられたという声や、「家計簿をつけるように言われ、『レシートがないぞ』『何に
使った』と執ように責められた」という訴えもありました。
「反貧困ネットワークぐんま」町田茂さん
「桐生市では、生活保護を申請させないように力を入れていた疑いや、生活保護の受給ができた人も、そのあと辞退や廃止に追い込む
ような働きかけが行われていた疑いがある。いまわかっていることは、まだまだ氷山の一角ではないかと思う」
このように支援団体が主張する背景にあるのが、桐生市の人口に占める受給者の割合を示す保護率です。国や県の傾向とは異なり、桐
生市では年々減少。世帯数も過去およそ10年で最も多かった902世帯から、490世帯に半減しているのです。

“申請を拒否された”という訴え

群馬県がことし6月に公表した、桐生市に対しての特別監査の結果でも、窓口を訪れた市民が生活保護を申請しようとしても受け付け
なかった「申請権の侵害」が疑われる対応が複数あったと指摘されました。また、今後の生活の見通しについて確認ができないまま、
廃止としたケースも複数あったとしています。
実際、生活保護を申請しようとして市に拒否されたと支援団体に訴える別の男性が取材に応じてくれました。男性は、5年前に難病を
発症し、当時働いていた会社を退職せざるを得なくなりました。生活に困窮したため、3年前から繰り返し、市の窓口に行きました
が、生活保護の申請書をもらえなかったといいます。
男性
「障害年金はもらっているのですが、どうしてもそれだけではきついということで申請に行きました。しかし、全然申請書も出しても
らえず、こちらが意見を言おうとすると『何を言っているんだ』という高圧的な態度を取られて心が折れました。最後のとりでだと
思って、こっちは頼っていたわけなのですが…」
こうした訴えについて、桐生市の担当者は取材に対して次のように述べました。
桐生市保健福祉部 宮地敏郎 部長
「申請の拒否については、県の特別監査の指摘でも疑われている部分ではある。そのため、私たちの方から『無かった』とも申し上げ
られない。また、生活保護の辞退の強要はしていなかったと考えていて、本人の意思で辞退されたと受け止めている。ただ、もしその
ように相手に取られるような対応があったとすれば、改善していきたい」
そして、公務員としての規範意識を低下させるような組織体制や職場風土があったことなどが、不適切対応をした一因であったことも
否定できないと説明しました。
今月、桐生市は再発防止に向けた対応策を発表しました。
生活保護費は全額支給を基本とし、分割で支給する場合は受給者の生活を最優先に考え回数を最小限にとどめ、月内に全額を渡すこと
を徹底するとしています。また、職員向けのマニュアルや事務処理の手引きを作成し、生活保護の申請の際に説明にばらつきがでない
よう取り組むことにしています。

取材を終えて

司法書士 仲道宗弘さん
今回、私たちが取材する中で一番印象に残ったのは、桐生市で起きた生活保護費の未払い問題を告発した、司法書士の仲道宗弘さんの
姿勢です。
桐生市の実態を告発したあと亡くなった仲道さん。
家族によりますと、仲道さんは「国家資格を持つ者は国民のために働くんだ」と、たびたび口にし、生活に困窮した人たちに最後まで
向き合い続けたといいます。家に帰って寝られる日は少なく、週の半分ほど職場の机の前で寝ていたといいます。
病気や障害などで生活が苦くなった人たちにどのように向き合っていくべきか。
仲道さんの姿勢に大きなヒントがあるように感じました。
桐生市の第三者委員会の検証は続いています。
再発防止に向けて、その結果にも注目したいと思います。
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借地借家問題市民セミナー  10月12日 武蔵野公会堂で開催

2024年09月19日 | 法律知識
借地借家人のためのやさしい法律の学習会と相談会 相談しておけばよかった!………というケースが必ずあります。

こんな問題で悩んでいませんか?
◎賃貸借契約の更新、更新料の請求
◎大地主の死亡や地主の相続で発生する問題
◎地代・家賃の増額請求の対応
◎賃貸住宅の老朽化・耐震不足を理由とする明渡し
◎ブラック地主問題(借地の底地の不動産業者への売却)
◎賃貸住宅の原状回復、敷金の返還
◎大規模災害が起きた場合の借地権・借家権

日時 10月12日(土)午後1時30分開会

会場 武蔵野公会堂・第5会議室(JR吉祥寺駅南口徒歩2分)

※組合役員が親切に相談にのります。 借地借家人の権利は借地借家法・消費者契約法などで守られています。

東京多摩借地借家人組合

電話 042(526)1094


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住宅セーフティネット法の改正で高齢者の居住の安定は大丈夫か

2024年09月19日 | 法律知識
 住宅セーフティネット法の一部改正法と生活困窮者自立支援法の一部改正案が先の通常国会で可決成立しました。
 法改正の背景としては、単身高齢者の増加や保証人が立てられない、高齢者・障害者・低額所得者に対する賃貸人の入居拒否感が強く、賃貸住宅が借りられない。自治体の自立支援相談機関にアパートが借りられない。住まいはネットカフェなど不安定である。家賃が高く生活が困窮している等の住宅に関する切実な相談が増えていることがあるようです。
 とくに、高齢者の場合は、賃借人が亡くなった後の賃借権の相続問題、残置物処分などが障害となっています。昔は賃借人の相続人や親せき等がこうした問題に対応できましたが、現在は身寄りもなく、親戚があっても頼れなくなっています。
 病気で入院する場合にも保証人がいないと、病院から入院を拒否されることがあるようです。住まいも同様で、今後60歳以上の単身者が賃貸住宅に入居に当たって、入居者死亡時の契約の解除や残置物の処分について居住支援法人等に委任契約が必要となります。
 法案では、家賃債務保証業者の認知制度を創設し、高齢者や低額所得者など要配慮者の保証を拒否しない。また、居住サポート住宅認定制度を創設し、居住支援法人が要配慮者のニーズに応じて、安否確認・見守り、病気になった場合に適切な福祉サービスへのつなぎを行う住宅を積極的に供給する制度となっています。住まいに関する相談窓口から入居前、入居中、退去時の支援まで。住宅と福祉が連携した地域における総合的・包括的な居住新体制を整備するとしています。法律は来年秋から施行することですが、本当に実効性のある内容になるかどうか今後とも検証が必要です。


































































































































































 









ます。昔は賃借人の相続人や親せき等がこうした問題に対応できましたが、現在は身寄りもなく、親戚があっても頼れなくなっています。
 病気で入院する場合にも保証人がいないと、病院から入院を拒否されることがあるようです。住まいも同様で、今後60歳以上の単身者が賃貸住宅に入居に当たって、入居者死亡時の契約の解除や残置物の処分について居住支援法人等に委任契約が必要となります。
 法案では、家賃債務保証業者の認知制度を創設し、高齢者や低額所得者など要配慮者の保証を拒否しない。また、居住サポート住宅認定制度を創設し、居住支援法人が要配慮者のニーズに応じて、安否確認・見守り、病気になった場合に適切な福祉サービスへのつなぎを行う住宅を積極的に供給する制度となっています。住まいに関する相談窓口から入居前、入居中、退去時の支援まで。住宅と福祉が連携した地域における総合的・包括的な居住新体制を整備するとしています。法律は来年秋から施行することですが、本当に実効性のある内容になるかどうか今後とも検証が必要です。
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「部屋が借りられない」1人暮らしの高齢者 苦しい賃貸事情 100歳時代の生き方

2024年09月06日 | 法律知識

1人暮らしの高齢者が賃貸住宅への入居を断られるケースが後を絶たない。国土交通省の調査によると、大家の約7割が高齢者に住宅を
貸すことに拒否感があるという。孤独死などのリスクへの懸念があるとみられる。1人暮らしの高齢者は増加の一途で、対策は急務
だ。
東京都内の分譲マンションに賃貸で住んでいた自営業の74歳の男性は昨年6月に妻に先立たれ、1人で暮らしていた。今年4月、部屋の
所有者から「売却する」と立ち退きを求められた。男性は不動産会社で部屋を探したが、希望した3つの物件はいずれも断られた。
「都営住宅も条件に合う物件は空きがないようで、もうだめだと思った」
男性は役所に紹介された居住支援法人「高齢者住まい相談室こたつ」(東京都立川市)に駆け込んだ。
居住支援法人は都道府県から指定を受け、住まいの確保が困難な高齢者などの入居を支援する。高齢者住まい相談室こたつは、デイ
サービスなどを運営する「こたつ生活介護」が平成29年に開設。松田朗室長は「身寄りのない1人暮らしの高齢者の住居探しはハード
ルが高い」と話す。
1人暮らしの高齢者は令和2年時点で738万人。22年までには1千万人を超えるとの推計もある。国交省の調査によると、高齢者に対して
拒否感がある大家は66%。高齢者の入居を制限する理由は「居室内での死亡事故などに対する不安」が約9割と圧倒的に多かった。孤
独死のほか、残された物の処理などの懸念もあるとみられる。日本少額短期保険協会の調査では、孤独死で残された物の処理に平均23
万7218円、原状回復に平均39万7158円かかるという。
高齢者ならではのハードルもある。高齢者などの住宅探しを支援する、東京都台東区の「家や不動産」の會田雄一代表取締役による
と、年金暮らしや歩行困難のため「家賃5万円以内」「1階またはエレベーター付き」など、条件が厳しくなりがちだという。會田さん
は「大家さんや管理会社も生活がかかっている。誰が悪いわけではない。高齢者の住まい探しには公的な支援も必要だ」と話す。
冒頭の男性は介護保険制度を利用しておらず、親族もいないため、まず民間の身元保証サービスを利用。見守りサービスがついた家賃
債務保証も契約し、部屋を借りることができた。
松田室長は「1人暮らしでもデイサービスやホームヘルパーなど、福祉と緊密につながりを持つことが大切だ。しっかりした見守り体
制があれば、大家さんの理解を得られることもある」と話す。
東京都内で賃貸業を営む水澤健一さんは、1人暮らしの90代男性に部屋を貸した経験を持つ。「緊急連絡先が家族で、ヘルパーが毎日
訪問するため不安はなかった。今後も見守りサービスなどを活用することで、1人暮らしの高齢者を受け入れていきたい」と話す。
水澤さんは大家仲間と勉強会を開いている。空き部屋の増加が深刻で、高齢者に貸すことに抵抗がない大家も多いそうだ。「身元保証
や見守りのサービス、家賃債務保証などの情報を大家と管理会社で共有すれば、高齢者入居への理解も進むだろう」と指摘する。

国は「居住サポート住宅」を新設

高齢者や障害者など要配慮者の住まいの確保を進めるため、国は「住宅セーフティネット法」を改正、来年秋ごろの施行を目指す。
法改正で新設されるのが「居住サポート住宅」だ。居住支援法人がニーズに応じて安否確認や見守り、福祉サービスにつなぐ住宅で、
市区町村などが認定する。大家の不安低減などを目的にしている。また、入居者の委託に基づき、居住支援法人が残された物の処理を
行うことを推進する。
もともと法では「要配慮者の入居を拒まない住宅(セーフティネット登録住宅)」を設定。大家など賃貸人は国や地方公共団体などに
よる改修費の補助や融資、家賃を抑えるための補助などが受けられ、入居者は居住支援法人などから入居に関わるサポートを受けられ
る。しかし補助制度がある自治体はまだ少ない。
高齢者の部屋探しを支援する「R65」(東京都港区)の山本遼代表取締役は「居住支援法人への支援が十分でない。法改正で、高齢者
のニーズに合った住宅を確保できるかどうか、注視していきたい」と話している。(本江希望)

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地主の一方的不利な契約の締結と更新料の請求をきっぱりと拒否する

2024年09月04日 | 法律知識
 調布市入間町で約27坪を借地している加藤さん(仮名)は、今年の7月1日に契約の更新を迎え、地主から依頼された不動産会社が更新に関する書類を持ってきた。更新契約書には、賃料現在月額2万8938円を月額3万240円に改定した上に、2年毎に2%加算し、別表で20年後まで2%加算した地代額が書かれていた。さらに、更新料については「本契約を更新するときは、乙は甲に対して更新料を支払わなければならない。その金額は、その時点での路線価で算定した更地価格の4%とする」と明確な算式がある。
加藤さんは、昭和59年の契約書には「賃料の改定は、2年ごとにその時点の賃料に10%加算し新賃料とする」と不当な契約を結ばされた。このままでは地代を支払えなくなると思い、組合に相談し、平成14年7月分から値上げを拒否し、地主は裁判に訴えてきた。加藤さんは組合の顧問弁護士を代理人に立て、地裁・高裁と争い、地代が借地借家法11条の趣旨に照らし、不相当になった時は地代自動改定特約の効力が否定されるとの判決が出て全面勝訴した。今回はきっぱりと契約書の作成を拒否。すると今度は地主の代理人弁護士から更新料を支払うよう請求。代理人は更新料を払わないと契約解除の理由になると脅かしてきたが、前契約書には明確な更新料特約はなく、更新料について協議には応じないときっぱりと拒否した。(東京借地借家人新聞より)

ご相談は東京多摩借地借家人組合まで

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日本住宅会議2024サマーセミナー開催 急性期を脱していない能登地域

2024年09月03日 | 法律知識
 日本住宅会議2024年サマーセミナー「多発する大災害を教訓とした被災者の住まい・生活再建」が9月1日午後1時半から開催された。台風の影響で会場開催を見合わせ、オンラインで開催した。29年前の阪神淡路大震災以降、我が国は多くの災害が発生し、被災者支援等多くの課題と問題点が十分に生かされていない点などが明らかにされた。
 サマーセミナーは児玉善郎・日本住宅会議常任理事の司会で開会され、5人の学者・研究者から報告がされた。
 第1は「住宅復興の教訓~東日本大震災の復興検証」と題して、みやぎ震災復興研究センター事務局長の遠州尋美氏が講演。東日本大震災では人より安全なまちの再建が優先され、仮設住宅の解消に最大10年もかかり、住まいの再建の遅れと被災者離散を招いた。また、半壊や一部損壊は支援が不十分で、修理もできず損壊住宅に住み続ける被災者が発生している。また、災害公営住宅入居しても3年後に入居収入基準(公営住宅の基準)を超えていると割り増し家賃を徴収される。岩手県では入居収入基準を25万9千円に引上げ、東松島市では家賃を一律3割引き下げたところもある。能登半島地震からの復興に向けて、発生時の住宅損傷で罹災判定ではなく、命・人権を守ることを目的に住まい確保支援を行うべきであると強調した。
 第2は「復興過程における被災者の社会的孤立・孤独死を防ぐ居住政策の課題」について、追手門学院大学教授の田中正人氏が講演した。孤独死問題は高齢化・単身化の下で増加し、介護・貧困・社会的排除など様々な社会課題の結末と被災地における被災者の社会的孤立問題の帰結として孤独死問題が起きていると報告した。
 第3は「高齢化が進む大規模災害被災地における被災者の住まい・生活再建の課題と横浜の地域事前復興の取組み」について横浜市立大学准教授の石川永子氏が講演。能登半島地震で珠洲市の住民座談会に参加した経験を報告した。また、令和元年に発生した都市化型水害の住宅再建について川崎市で起きた河川の氾濫により浸水被害について被災エリアの462世帯を調査した結果を報告した。川崎市は、床下浸水叉は床上浸水の被害を受けた住宅・住居で半壊・一部損壊の状態が罹災証明で確認できる場合には一律30万円を支給した。借家世帯では、制度を知らないためか受給率が低かった。水害保険の未加入者などへの被災者への経済的な支援が必要であると指摘した。
 第4は「過疎・人口減少が進む大規模災害被災地自治体における住まい・生活復興対策の課題」について北陸学院大学教授の田中純一氏が講演した。能登半島で8月27日現在、断水1054戸(珠洲市742戸、輪島市312戸)、避難者数775人(1次437人、1・5次17人、2次避難所321人)、35都道府県公営住宅入居者555人、県内外福祉施設入所者約1400人という状況で、いまだ「急性期」を脱していないと能登地域の現状を報告した。
 第5は「原発災害からの復興~被災者・被災地が向き合える復興過程のあり方」について福島大学名誉教授の鈴木浩氏が講演した。原発災害からの復興について被災者や被災自治体などが共有できる「復興の姿」が見えない。原発事故の終息や廃炉の道筋が見えない中で、廃炉までの長期間に地震津波等どう対応するのか等指摘した。


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路線価格3年連続上昇 地価の高騰で賃料増額問題、地上げ問題が発生か

2024年09月02日 | 法律知識
 国税庁は7月1日に、今年1月1日時点の路線価を公表しました。全国平均は前年比の2・3%増で、3年連続上昇した。外国人客の回復や各地で行われる再開発、住宅需要の高まりが地価を押し上げていると言われる。
 税務署ごとの最高路線価の上昇率1位が長野県白馬村(32・1%増)、2位が熊本県菊陽町(24%増)で、半導体メーカー「台湾積体電路製造(TSMC)」の進出が要因。3位が大坂西区(19・3%増)
で、隣接する同市福島区に建設中のタワーマンション(46階建て)は平均販売価格が1億円を超え、JR大阪駅北側で大規模開発が進みマンションやホテルの需要が増えているとのこと。
 地価の高騰は、マンションや建売住宅の高騰、賃貸マンションの家賃の上昇、地代の値上げにもつながり、借地借家人にも影響を与えます。地価の上昇で儲けているのは一部の不動産資本や外国人投資家です。路線価の上昇で借地人の住む土地を地上げ屋に売却する動きもさらに強まることが予想されます。
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