『ビジョンクエストとは、ひとりで山の山頂や奥深い原生林に向かい、3畳ほどのスペースを作って結界を張り、その中で眠らず、断食をしながら4日間過ごします。たったひとり、飲まず食わずの極限状態で自然に打ち込むことで、精霊からのメッセージを感じることができ、それは、人生の目的や部族内での自分の役割などの、現世の自分の使命を見つけることに役立つとされています。』
ネイティブアメリカンの成人式より引用
今回は24時間の特別ショートバージョン。
他の参加者の位置を確認して、向かったのは先祖から引き継いだ未開の山の北側エリア。
棘のある木が群生する場所を何となく決めて、生えている木を柱にして麻紐で四角になるように囲むとちょうどぴったりになりました。
マットを敷いて座ると「ブーンッブーンッ」と大きなスズメバチがやってきました。ちょっと怖いなと思いましたが、結界の周りを飛ぶだけで決して中には入ってきませんでした。
マットに横たわり葉っぱを見ていると「ブンブンブン」とハエたちがやってきました。ちょっと静かにしてくれよと思いましたが、まとまりついて寝させてくれませんでした。
うつらうつらしていると、「パキッパキッ」と何者かが木の枝を踏みながらやってきました。北側にある谷を恐る恐る見ると、大きなイノシシが歩いていて、私の存在を確認すると、踵を返して深い山の中へ戻っていきました。
現代社会の俗にまみれた"私"は、まだこの自然の中では溶け込んでおらず、気配を感じた山の番人たちが偵察にきたようでした。
「こんな状態では"ビジョン"はやってこないな。」と早々に今日は諦めて座っていると、
「自分と向き合う時には、"問い"が大切なんだ!!」
一緒に参加した10年来の友人である草刈さんが道中の車内で言っていたのを思い出しました。
彼はコーチやカウンセラーをサポートする先生になっています。
10年以上前から知っていますが、紆余曲折を経て、今の仕事に辿り着いた草刈さんの言葉には重みと深みがありました。
車を運転してくれたのは、昨年末から私のイベントを手伝ってくれている20代の青年、小出さん。
ビジョンクエスト前日に小出さんへ「私以外にもう1人草刈さんという方も乗せてもらっていいかな?」とHPと共に伝えると、
「えっ、草刈さん知ってます!!自分が7年前、日本を旅した時に京都のうどん屋で隣で一緒に食べてた方です!!」
人生の分岐点になったという旅で出会った方と、何かの縁で再会するという偶然という必然。
空白の時間が埋まり、うどん屋さんの続きが始まりました。道中の車内は草刈さんが小出さんに様々な話しをして、これは有料のコーチングセミナーだなと私は頷きながら話をメモしていました。
様々なイベント関連の仕事をしていると、面白いことに毎回1人くらいは何か劇的に変化したり、覚醒したりする人がいます。
今回それに選ばれたのは小出さんだなと思いました。
たった1人でも、その人にとってかけがえのない時間になるならば、私には精霊やビジョンは仮にやってこなくてもいいかな、誰にでも精霊がやってきていたら、きっと精霊さんも疲れちゃうだろうから、そんな心持ちでいると、いつの間にあたりは一つずつ一つずつ明るさが萎んでいくように暗くなっていきました。
暗闇の時間の始まりです。
つづく