「あほリズム」
(716)
ドストエフスキーは戦争についてこんな風に言ってます、
「戦争というものは、最少の流血と、苦痛と、損害とを以って国民
間の平和を獲得し、幾分でも国民間の健全な関係を定める行動であ
ることを信じ給え。勿論これは悲しいことだ。が、そうだからと言
って、ではどうしたらいいのか。無期限に苦しむより、いっそ剣を
抜いて了った方がいいのである。文明国民間の現代の平和が戦争よ
り何処がいいと言うのか。それ許りではない。人間を獣にし残酷に
するのは、戦争ではなく寧ろ平和、長い平和だ。長い平和は常に残
酷と卑怯、飽くことを知らぬ利己主義を生む。就中、知識の停滞を
齎す事甚だしい。長い平和が肥やすものは投機師だけである。」
(「作家の日記」一八七七年、四月)
こんな風に言いながら、自身は「賭博にのめり込んでは借金を作り、
兄や知り合いに無心する手紙を多数残している。」(『小林秀雄「ド
いかないが、かといってまったく否定することにも躊躇いがある。
もしかして、日本がこれまでで一番希望に輝いていたのは戦後すぐ
の時代だったのかもしれない。何故ならもう戦争で死ぬことはない
のだから。