今日は、昨年見た芝居の回顧をしようと思います。
2024年に見た芝居は40コ。いつになく多いようですが、連作の「デカローグ」10篇を10コと数えてですので。
それにしても収穫の多い年でした。
その中から特に印象深かったものを10点、例年通り、見た順に挙げていきます。
カッコ内は、特に光っていた役者さんです。
兵卒タナカ 作:ゲオルク・カイザー 演出:五戸真理枝 吉祥寺シアター (土屋佑壱、平埜生成)
*ドイツ人作家が日本を舞台にこんな戯曲を書いていたことに驚いた。戯曲としてもよくできているし、役者もみな滑舌よく、好演。
夜は昼の母 作:ラーシュ・ノレーン 演出:上村聡史 風姿花伝 (岡本健一、山崎一)
*4人の役者の火花散る演技がすごい。特に山崎一の声の微妙なニュアンスの変化!
アンドーラ 作:マックス・フリッシュ 演出:西本由香 文学座公演 文学座アトリエ (小石川桃子、渡邊真砂珠)
*主演の二人がとにかく素晴らしい。ところで先日調べたら、アンドラ公国という小さな国が実在するとわかった。
この戯曲は寓意劇として欧州各国の教科書に載っているらしいが、作者は意図的にこの名前をつけたのだろうか?
デカローグA~E(10篇) 作:キェシロフスキ 上演台本:須貝英 演出:小川絵梨子・上村聡史 新国立劇場
*ポーランドの映画監督キェシロフスキの代表作を完全舞台化。旧約聖書の十戒(ポーランド語でデカローグ)をモチーフに、
人間の脆さと普遍的な愛を描く。胸締めつけられる話が多いが、ユーモラスな場面もあり、異国の風習も興味深い。
4月から6月まで3か月かけて10篇見終え、全貌が見えてきた。人間に向ける作者の眼差しが温かい。この年の特筆すべきイベントとなった。
阿部海太郎の音楽も、その場面場面に見事にぴったりで素晴らしい。
母 作:フロリアン・ゼレール 演出:ラディスラス・ショラー 東京芸術劇場シアターイースト (若村麻由美)
*同じ作者の「父」と同様、一つの場面が少しずつ変えて演じられるので慣れるまでは面食らう。どれが現実でどれが主人公の妄想なのか、観客は翻弄される。
主役の若村麻由美の演技がすごい。その狂気のさまは他の人には真似できまい。他の3人も好演。
帰れない男 作:倉持裕 演出:倉持裕 本多劇場 (山崎一)
*内田百閒の作品から着想を得たというが、実に独創的で面白い。作者についてはまったく知らなかったが、どんな人なのだろう。
山崎一が、こんな役にぴったり。他の役者陣もみなうまくて芝居を見る喜びを堪能した。
ハムレット Q 1 作:シェイクスピア 演出:森新太郎 (吉田羊、飯豊まりえ)
*吉田羊がハムレットをやる!当然満席。この年のメインイベントかも。彼女の王子は期待通り素晴らしかった。ただ他のキャスティングに難あり。
よく知られた版と違う箇所が多い。例えば、王クローディアスが祈りの中で「不義密通」と口にしたり、王妃ガートルードがホレイショーに頼まれて
復讐の仲間に加わったり!Q1を初めて見て、大いに参考になった。
オーランド 作:ヴァージニア・ウルフ、翻案:岩切正一郎 演出:栗山民也 パルコ劇場(宮沢りえ)
*原作を読んでなかったのが悔やまれる。宮沢りえが圧巻。その美貌と美声にうっとり。山崎一などキャスティングもよかった。
セチュアンの善人 作:ブレヒト 脚色・上演台本・演出:田中壮太郎 俳優座劇場 (森山智寛、渡邊咲和)
*同じ作品を1ヶ月後に別の演出でも見たが、上演台本が違うので、印象がかなり違う。田中壮太郎の演出は、胸に迫って来るものがあった。
音楽もよかったし、役者陣も好演。 もう一度見たい。
ドクターズジレンマ 作:バーナード・ショー 演出:小笠原響 調布市せんがわ劇場 (石川湖太朗)
*作者の「隠れた名作」という演出家の言葉通り、素晴らしい戯曲。キャスティングも最高。実に楽しいひと時だった。
最優秀女優賞・・・吉田羊(「ハムレットQ1」での題名役)、宮沢りえ(「オーランド」での題名役)
最優秀男優賞・・・山崎一(「夜は昼の母」での父親役、「帰れない男」での夫役、「オーランド」での詩人役他)
この他、印象的だった役者さんたちは次の通りです。
玉置玲央・・・3月に東京芸術劇場で「リア王」のエドマンド役
高橋ひろし・・・7月に紀伊國屋サザンシアターで「オセロー」のブラバンショー役
増岡裕子・・・同上の「オセロー」でエミリア役
やれやれ、やっと昨年のまとめが終わりました。
いつも拙文を読んでくださる皆様、本当にありがとうございます。
今後ともよろしくお付き合いくださいませ。
2024年に見た芝居は40コ。いつになく多いようですが、連作の「デカローグ」10篇を10コと数えてですので。
それにしても収穫の多い年でした。
その中から特に印象深かったものを10点、例年通り、見た順に挙げていきます。
カッコ内は、特に光っていた役者さんです。
兵卒タナカ 作:ゲオルク・カイザー 演出:五戸真理枝 吉祥寺シアター (土屋佑壱、平埜生成)
*ドイツ人作家が日本を舞台にこんな戯曲を書いていたことに驚いた。戯曲としてもよくできているし、役者もみな滑舌よく、好演。
夜は昼の母 作:ラーシュ・ノレーン 演出:上村聡史 風姿花伝 (岡本健一、山崎一)
*4人の役者の火花散る演技がすごい。特に山崎一の声の微妙なニュアンスの変化!
アンドーラ 作:マックス・フリッシュ 演出:西本由香 文学座公演 文学座アトリエ (小石川桃子、渡邊真砂珠)
*主演の二人がとにかく素晴らしい。ところで先日調べたら、アンドラ公国という小さな国が実在するとわかった。
この戯曲は寓意劇として欧州各国の教科書に載っているらしいが、作者は意図的にこの名前をつけたのだろうか?
デカローグA~E(10篇) 作:キェシロフスキ 上演台本:須貝英 演出:小川絵梨子・上村聡史 新国立劇場
*ポーランドの映画監督キェシロフスキの代表作を完全舞台化。旧約聖書の十戒(ポーランド語でデカローグ)をモチーフに、
人間の脆さと普遍的な愛を描く。胸締めつけられる話が多いが、ユーモラスな場面もあり、異国の風習も興味深い。
4月から6月まで3か月かけて10篇見終え、全貌が見えてきた。人間に向ける作者の眼差しが温かい。この年の特筆すべきイベントとなった。
阿部海太郎の音楽も、その場面場面に見事にぴったりで素晴らしい。
母 作:フロリアン・ゼレール 演出:ラディスラス・ショラー 東京芸術劇場シアターイースト (若村麻由美)
*同じ作者の「父」と同様、一つの場面が少しずつ変えて演じられるので慣れるまでは面食らう。どれが現実でどれが主人公の妄想なのか、観客は翻弄される。
主役の若村麻由美の演技がすごい。その狂気のさまは他の人には真似できまい。他の3人も好演。
帰れない男 作:倉持裕 演出:倉持裕 本多劇場 (山崎一)
*内田百閒の作品から着想を得たというが、実に独創的で面白い。作者についてはまったく知らなかったが、どんな人なのだろう。
山崎一が、こんな役にぴったり。他の役者陣もみなうまくて芝居を見る喜びを堪能した。
ハムレット Q 1 作:シェイクスピア 演出:森新太郎 (吉田羊、飯豊まりえ)
*吉田羊がハムレットをやる!当然満席。この年のメインイベントかも。彼女の王子は期待通り素晴らしかった。ただ他のキャスティングに難あり。
よく知られた版と違う箇所が多い。例えば、王クローディアスが祈りの中で「不義密通」と口にしたり、王妃ガートルードがホレイショーに頼まれて
復讐の仲間に加わったり!Q1を初めて見て、大いに参考になった。
オーランド 作:ヴァージニア・ウルフ、翻案:岩切正一郎 演出:栗山民也 パルコ劇場(宮沢りえ)
*原作を読んでなかったのが悔やまれる。宮沢りえが圧巻。その美貌と美声にうっとり。山崎一などキャスティングもよかった。
セチュアンの善人 作:ブレヒト 脚色・上演台本・演出:田中壮太郎 俳優座劇場 (森山智寛、渡邊咲和)
*同じ作品を1ヶ月後に別の演出でも見たが、上演台本が違うので、印象がかなり違う。田中壮太郎の演出は、胸に迫って来るものがあった。
音楽もよかったし、役者陣も好演。 もう一度見たい。
ドクターズジレンマ 作:バーナード・ショー 演出:小笠原響 調布市せんがわ劇場 (石川湖太朗)
*作者の「隠れた名作」という演出家の言葉通り、素晴らしい戯曲。キャスティングも最高。実に楽しいひと時だった。
最優秀女優賞・・・吉田羊(「ハムレットQ1」での題名役)、宮沢りえ(「オーランド」での題名役)
最優秀男優賞・・・山崎一(「夜は昼の母」での父親役、「帰れない男」での夫役、「オーランド」での詩人役他)
この他、印象的だった役者さんたちは次の通りです。
玉置玲央・・・3月に東京芸術劇場で「リア王」のエドマンド役
高橋ひろし・・・7月に紀伊國屋サザンシアターで「オセロー」のブラバンショー役
増岡裕子・・・同上の「オセロー」でエミリア役
やれやれ、やっと昨年のまとめが終わりました。
いつも拙文を読んでくださる皆様、本当にありがとうございます。
今後ともよろしくお付き合いくださいませ。