4月25日紀伊國屋サザンシアターで、井上ひさし作「夢の泪」を見た(演出:栗山民也)。
東京裁判3部作の夢シリーズ第二弾。
昭和21年、新橋駅近く。
弁護士・伊藤菊治は、継父を慕う秋子の娘・永子、事務所に住み込みで働く田中正と
暮らしている。
亡父の残した法律事務所で働く菊治のもとへは、永子の幼なじみ・片岡健やクラブ
歌手のナンシー岡本とチェリー富士山から数々の騒動が持ち込まれる。
そんな折、妻・秋子が東京裁判においてA級戦犯・松岡洋右の補佐弁護人になるよう依頼される。
事務所の宣伝のため、とりわけ秋子との関係修復のため、菊治も勇んで松岡の補佐弁護人になるが、難問が山積み。
ついにはGHQ の米陸軍法務大尉で日系二世のビル小笠原から呼び出しが菊治にかかる・・・(チラシより)。
芝居の内容に入る前に、まずこの文章にいちゃもんをつけたいとおもいます。
みなさん、これを読んですんなり理解できましたか?
まず、いきなり「継父」が出てくる。これって誰?
次に、やはり唐突に「秋子」という人が出てくる。
これも誰のことなのかさっぱりわからない。
何度も読んで、やっとわかったのは、菊治の妻の名前が秋子で、彼女の「連れ子」が永子、だから、継父というのは永子から見た菊治のことだった。
ではどうしてそういう風に書いてくれないのか。
まったく責任者出てこい!って話です。
菊治(ラサール石井)と秋子(秋山菜津子)は共に弁護士で、いわゆるおしどり夫婦だが、現在離婚の危機にある。
それは菊治の「浮気病」が原因。
秋子の連れ子・永子(瀬戸さおり)、復員兵で住み込みの事務員となった田中正(粕谷吉洋)、
クラブ歌手のナンシーとチェリーなどが入り乱れて賑やかに話が進む。
例によって、冒頭からつまらない唄や合唱を聴かされるがじっと我慢。
たまに面白いセリフがある。
例えば菊治の言う「弁護士依頼人正比例の法則」。
弁護士は依頼人の地位が高ければ高いほど弁護料も高くなる、というだけのことだが(笑)。
ナンシーとチェリーは同じクラブで歌っている。
そこは米軍に接収された帝国ホテルの一室。
二人が「持ち歌」にしている曲がなぜか同じ曲で、しかも二人とも自分の夫が作詞作曲した曲だと主張するため争いが止まない。
二人は菊治の事務所にやって来て、何とかこの問題を解決して欲しい、と手付金代わりに「本物の」洋酒2本を提供し、菊治と共に飲んで陽気に歌う。
永子は8歳の時、母・秋子と菊治が結婚したのでここに来た。
永子の幼なじみ・片岡健(前田旺志郎)は片岡組の組長の息子。
この組は朝鮮人たちの組で、対立する尾崎組が健の父を襲って傷を負わせた。
だが警察に訴えても何もしてくれないので、健は菊治の事務所に助けを求める。
<休憩>
田中正は持ち歌の出所を調べるため、ナンシーとチェリーの夫たちの入院先へ行く。
夫たちは原爆投下翌日の広島に入り、入市被爆していた。
彼らに話を聴くと、軍隊の同じ隊にいた男から、その曲を聞いたという。
彼らはその男の名前をメモしてくれた。
これで歌の本当の作詞作曲者がわかり、二人の歌手の一件は解決。
その後、作曲者は亡くなり、彼の未亡人に会いに行くと、夫の歌を、これからもぜひ歌ってほしい、と言われる。
その後、松岡洋右外相の病状が悪化し、主任弁護人一人を残して補佐弁護人たちは不要とされる。
がっくりくる夫婦。
組員らを束ねることになった片岡健が事務所に来て、日本社会への疑問を口にする。
秋子の恩師(久保酎吉)が、彼と、その場にいた人々に日韓の歴史を教える。
終戦後、日本にいた朝鮮人たちは「捨てられたってこと」。
去年の8月14日までは帝国臣民とされていたが、それは名ばかりだった。
そして翌日から日本人にさせられた。
だがそれは「昇格」ではなかった。
外国人のままだと保護せねばならないから日本人にしたに過ぎなかった。
その間のことを調べようと秋子が役所に行くと、重要書類は終戦直後、焼却されていた。
「証拠隠滅」。
勝った方が負けた方を裁くってどうなの?
永子は言う、「私たちが裁くのよ」。
GHQ の米陸軍法務大尉で日系二世のビル小笠原(土屋佑壱)が述懐する。
米国に住んでいた私たち家族は、戦争が始まると差別され、収容所に入れられた。
父は財産をすべて没収された・・・朝鮮人と同じだ。
「見捨てられた」
このような話が続く。
例によって大衆を啓蒙してやろうという作者の意図が感じられる。
だが考えてみれば不思議だ。
この人の芝居は大人気で、いつも満席状態なのに、なぜこの国の右傾化は止められないのだろう・・。
在日の人々への差別もなかなかなくならないし。
秋山菜津子とラサール石井という異色の顔合わせが面白かった。
それと、土屋佑壱が、最近こういう役にすっかり馴染んでいておかしい。
がっしりした体格と、滑舌のいい話し方と良い声の持ち主なので、似合っている。
東京裁判3部作の夢シリーズ第二弾。
昭和21年、新橋駅近く。
弁護士・伊藤菊治は、継父を慕う秋子の娘・永子、事務所に住み込みで働く田中正と
暮らしている。
亡父の残した法律事務所で働く菊治のもとへは、永子の幼なじみ・片岡健やクラブ
歌手のナンシー岡本とチェリー富士山から数々の騒動が持ち込まれる。
そんな折、妻・秋子が東京裁判においてA級戦犯・松岡洋右の補佐弁護人になるよう依頼される。
事務所の宣伝のため、とりわけ秋子との関係修復のため、菊治も勇んで松岡の補佐弁護人になるが、難問が山積み。
ついにはGHQ の米陸軍法務大尉で日系二世のビル小笠原から呼び出しが菊治にかかる・・・(チラシより)。
芝居の内容に入る前に、まずこの文章にいちゃもんをつけたいとおもいます。
みなさん、これを読んですんなり理解できましたか?
まず、いきなり「継父」が出てくる。これって誰?
次に、やはり唐突に「秋子」という人が出てくる。
これも誰のことなのかさっぱりわからない。
何度も読んで、やっとわかったのは、菊治の妻の名前が秋子で、彼女の「連れ子」が永子、だから、継父というのは永子から見た菊治のことだった。
ではどうしてそういう風に書いてくれないのか。
まったく責任者出てこい!って話です。
菊治(ラサール石井)と秋子(秋山菜津子)は共に弁護士で、いわゆるおしどり夫婦だが、現在離婚の危機にある。
それは菊治の「浮気病」が原因。
秋子の連れ子・永子(瀬戸さおり)、復員兵で住み込みの事務員となった田中正(粕谷吉洋)、
クラブ歌手のナンシーとチェリーなどが入り乱れて賑やかに話が進む。
例によって、冒頭からつまらない唄や合唱を聴かされるがじっと我慢。
たまに面白いセリフがある。
例えば菊治の言う「弁護士依頼人正比例の法則」。
弁護士は依頼人の地位が高ければ高いほど弁護料も高くなる、というだけのことだが(笑)。
ナンシーとチェリーは同じクラブで歌っている。
そこは米軍に接収された帝国ホテルの一室。
二人が「持ち歌」にしている曲がなぜか同じ曲で、しかも二人とも自分の夫が作詞作曲した曲だと主張するため争いが止まない。
二人は菊治の事務所にやって来て、何とかこの問題を解決して欲しい、と手付金代わりに「本物の」洋酒2本を提供し、菊治と共に飲んで陽気に歌う。
永子は8歳の時、母・秋子と菊治が結婚したのでここに来た。
永子の幼なじみ・片岡健(前田旺志郎)は片岡組の組長の息子。
この組は朝鮮人たちの組で、対立する尾崎組が健の父を襲って傷を負わせた。
だが警察に訴えても何もしてくれないので、健は菊治の事務所に助けを求める。
<休憩>
田中正は持ち歌の出所を調べるため、ナンシーとチェリーの夫たちの入院先へ行く。
夫たちは原爆投下翌日の広島に入り、入市被爆していた。
彼らに話を聴くと、軍隊の同じ隊にいた男から、その曲を聞いたという。
彼らはその男の名前をメモしてくれた。
これで歌の本当の作詞作曲者がわかり、二人の歌手の一件は解決。
その後、作曲者は亡くなり、彼の未亡人に会いに行くと、夫の歌を、これからもぜひ歌ってほしい、と言われる。
その後、松岡洋右外相の病状が悪化し、主任弁護人一人を残して補佐弁護人たちは不要とされる。
がっくりくる夫婦。
組員らを束ねることになった片岡健が事務所に来て、日本社会への疑問を口にする。
秋子の恩師(久保酎吉)が、彼と、その場にいた人々に日韓の歴史を教える。
終戦後、日本にいた朝鮮人たちは「捨てられたってこと」。
去年の8月14日までは帝国臣民とされていたが、それは名ばかりだった。
そして翌日から日本人にさせられた。
だがそれは「昇格」ではなかった。
外国人のままだと保護せねばならないから日本人にしたに過ぎなかった。
その間のことを調べようと秋子が役所に行くと、重要書類は終戦直後、焼却されていた。
「証拠隠滅」。
勝った方が負けた方を裁くってどうなの?
永子は言う、「私たちが裁くのよ」。
GHQ の米陸軍法務大尉で日系二世のビル小笠原(土屋佑壱)が述懐する。
米国に住んでいた私たち家族は、戦争が始まると差別され、収容所に入れられた。
父は財産をすべて没収された・・・朝鮮人と同じだ。
「見捨てられた」
このような話が続く。
例によって大衆を啓蒙してやろうという作者の意図が感じられる。
だが考えてみれば不思議だ。
この人の芝居は大人気で、いつも満席状態なのに、なぜこの国の右傾化は止められないのだろう・・。
在日の人々への差別もなかなかなくならないし。
秋山菜津子とラサール石井という異色の顔合わせが面白かった。
それと、土屋佑壱が、最近こういう役にすっかり馴染んでいておかしい。
がっしりした体格と、滑舌のいい話し方と良い声の持ち主なので、似合っている。