3月30日彩の国さいたま芸術劇場で、蜷川幸雄演出「ヘンリー六世」を観た。
舞台のあちこちに血溜まり。それを拭き掃除する掃除婦たち。ヘリの音。機関銃の音。しまいに頭上から肉片(のつもりの、でかいハンバーグの種みたいなの)がボトッボトッと落ちてくる。これも掃除婦たちが片付ける。それから赤バラ、白バラの花びらもどんどん落下。
やがて静かな音楽。壁に教会のステンドグラスの影が映し出される。
亡きヘンリー五世の棺を囲む諸卿たちは、ものすごいスピードでまくし立てるのでセリフが聞き取り辛い。怒鳴り合いのセリフは特に聞こえない。いつも言うことだが、誰かに客席に座ってもらって台本を渡し、聞こえないセリフに赤線でも引いてもらえばいい。それを参考にして、ちゃんと客席に聞こえるよう練習してほしい。芝居、特にシェイクスピアの芝居はセリフが命なのだから。
ヘンリー六世は何と子役!
グロスター公爵の家来たちが青い服、ウィンチェスター司教の家来衆がその青に合う茶色い服なので、双方の小競り合いは色彩的に実に美しい(衣裳:小峰リリー)。
ジャンヌ・ダルク役の大竹しのぶ登場・・・やはり10代の娘は少し難しいか。下品な声丸出しだが、乙女ジャンヌは田舎娘だし、後半マーガレット姫に変身しないといけないのだから当然の戦略だろう。
舞台後方にも客席を設け、その上方に階段と細長い空間を作ってうまく使っている。
ジャンヌ処刑の時の衣裳の青い色が実に美しい。絵画によくある色だ。
処刑台の上にわらのようなものが積まれ、本物の火のついたたいまつを掲げた兵士が2人出てきてびっくり。ちょ、ちょっと待って、そんなもの、危ないでしょ、とうろたえたが、うまくできていて、点火後しばらくすると煙がどんどん出てジャンヌの姿を隠す。
戦闘シーンのたびに肉片落下・・・演出の蜷川さんは観客の想像力を信じていないのだろう。そんなことする必要ないのに。
成人したヘンリー六世(上川隆也)はフランスからマーガレット(大竹しのぶ)を王妃として迎えるが、この結婚に反対する貴族たちの気持ちをまるで分かっていない KY ぶり(演出はそこをうまく強調する)で客席の失笑を買う。
グロスター公爵の恋女房エリナー役の立石涼子は声がよく、安定した演技。しかしエリナーにはもう少し背丈がほしい。その点ちょっと惜しい。それと、非常に家柄のいい(王の血を引く!)女なのだから、どんな時も上品さを失ってはいけない。
エリナーと巫女たちの場・・・3人の頬かむりした女たちが丸くなって懐から何と大きなぬらぬらした(ような)魚を取り出して呪文を唱える。
マーガレットは舞台の端にいるエリナーに向かって「そこの女、扇を取って」と命じる。これは不自然。なぜもっと近くに立たせておかないのか。
薔薇戦争を引き起こした白薔薇側のヨーク公の主張する王位継承権は、日本的に言うと「女系」なのだが、日本と違ってイングランドではそのことは全く問題にならない。何せ現代に至るまで女王を何人も輩出してきた国だから。
音楽はパイプオルガンやヴァイオリンソロの曲など。
ヘンリー六世役の上川隆也は初めて観たが、昨秋同じ役を演じた浦井健治より遥かにうまい。こちらは根っからの俳優なのだから当然か。
まだまだ続くが、あとは次回ということで。乞うご期待!
舞台のあちこちに血溜まり。それを拭き掃除する掃除婦たち。ヘリの音。機関銃の音。しまいに頭上から肉片(のつもりの、でかいハンバーグの種みたいなの)がボトッボトッと落ちてくる。これも掃除婦たちが片付ける。それから赤バラ、白バラの花びらもどんどん落下。
やがて静かな音楽。壁に教会のステンドグラスの影が映し出される。
亡きヘンリー五世の棺を囲む諸卿たちは、ものすごいスピードでまくし立てるのでセリフが聞き取り辛い。怒鳴り合いのセリフは特に聞こえない。いつも言うことだが、誰かに客席に座ってもらって台本を渡し、聞こえないセリフに赤線でも引いてもらえばいい。それを参考にして、ちゃんと客席に聞こえるよう練習してほしい。芝居、特にシェイクスピアの芝居はセリフが命なのだから。
ヘンリー六世は何と子役!
グロスター公爵の家来たちが青い服、ウィンチェスター司教の家来衆がその青に合う茶色い服なので、双方の小競り合いは色彩的に実に美しい(衣裳:小峰リリー)。
ジャンヌ・ダルク役の大竹しのぶ登場・・・やはり10代の娘は少し難しいか。下品な声丸出しだが、乙女ジャンヌは田舎娘だし、後半マーガレット姫に変身しないといけないのだから当然の戦略だろう。
舞台後方にも客席を設け、その上方に階段と細長い空間を作ってうまく使っている。
ジャンヌ処刑の時の衣裳の青い色が実に美しい。絵画によくある色だ。
処刑台の上にわらのようなものが積まれ、本物の火のついたたいまつを掲げた兵士が2人出てきてびっくり。ちょ、ちょっと待って、そんなもの、危ないでしょ、とうろたえたが、うまくできていて、点火後しばらくすると煙がどんどん出てジャンヌの姿を隠す。
戦闘シーンのたびに肉片落下・・・演出の蜷川さんは観客の想像力を信じていないのだろう。そんなことする必要ないのに。
成人したヘンリー六世(上川隆也)はフランスからマーガレット(大竹しのぶ)を王妃として迎えるが、この結婚に反対する貴族たちの気持ちをまるで分かっていない KY ぶり(演出はそこをうまく強調する)で客席の失笑を買う。
グロスター公爵の恋女房エリナー役の立石涼子は声がよく、安定した演技。しかしエリナーにはもう少し背丈がほしい。その点ちょっと惜しい。それと、非常に家柄のいい(王の血を引く!)女なのだから、どんな時も上品さを失ってはいけない。
エリナーと巫女たちの場・・・3人の頬かむりした女たちが丸くなって懐から何と大きなぬらぬらした(ような)魚を取り出して呪文を唱える。
マーガレットは舞台の端にいるエリナーに向かって「そこの女、扇を取って」と命じる。これは不自然。なぜもっと近くに立たせておかないのか。
薔薇戦争を引き起こした白薔薇側のヨーク公の主張する王位継承権は、日本的に言うと「女系」なのだが、日本と違ってイングランドではそのことは全く問題にならない。何せ現代に至るまで女王を何人も輩出してきた国だから。
音楽はパイプオルガンやヴァイオリンソロの曲など。
ヘンリー六世役の上川隆也は初めて観たが、昨秋同じ役を演じた浦井健治より遥かにうまい。こちらは根っからの俳優なのだから当然か。
まだまだ続くが、あとは次回ということで。乞うご期待!