ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

井上ひさし作「雨」

2011-07-08 22:52:30 | 芝居
6月13日新国立劇場中劇場で、井上ひさし作「雨」をみた(演出:栗山民也)。

江戸は両国、大橋のたもと。雨宿りに入った金物拾いの徳(市川亀次郎)は新顔の浮浪者から「喜左衛門さまでは?」と声をかけられる。どうやら平畠藩の紅花問屋「紅屋」のご当主、喜左衛門と間違えているらしい。莫大な財産と平畠随一の器量よしの女房おたか(永作博美)を残して行方が分からなくなっていると聞き、本物の当主になりすまそうと江戸をあとにする徳。北へ向かうにつれ変わってゆく言葉に戸惑いながらも、喜左衛門として一世一代の大勝負を打つ日々が始まる・・。

山形への道中少しずつ言葉が変わるのに閉口する徳。このあたり、実に井上ひさしらしい。
紅屋にたどり着くと、天狗にさらわれた旦那様が帰ってきたと皆大騒ぎ。しかし顔や姿はそっくりでも何せ全くの他人。知らないことや分からないことが
いろいろ出てくるが、危なくなると何とかごまかして、徳は無事おたかの夫におさまる。見ているこちらはひやひやさせられるが、後半、女郎花虫(梅沢昌代)の
一言のセリフから謎が生まれる。その謎が、最後のシーンで雲が晴れるように一気に解き明かされる、その快感。
これまで見た井上ひさし作品の中で最高に面白い。

音楽は井上ひさしの芝居には珍しく、ストイックで全く問題なかった。鈴などを使うのみ。ただ、冒頭の歌は退屈だった。

残念ながらよく分からない点もある。喜左衛門はなぜ花虫に大事な帳面を預けたのか。徳が彼女に殺意を抱くための苦肉の策としか思えないが。
それに、行方不明の彼が見つかったという噂を彼女が耳にしていなかったということも考えにくい。
言葉(東北弁)が難しかったからよく理解できなかったのかも知れないが・・。

訳も分からず大きな陰謀に巻き込まれてしまった男の哀しさが胸に迫る。
役者はみな達者。主演の市川亀次郎も永作博美も期待通り素晴らしかった。

またしても東北弁を滝のように浴びて、しばらくは頭の中を回っていた。何と美しくて面白い言葉だろう。東北弁恐るべし。
コメント
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