ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

井上ひさし「しみじみ日本・乃木大将」

2012-09-05 14:08:53 | 芝居
7月28日彩の国さいたま大劇場で、井上ひさし作「しみじみ日本・乃木大将」をみた(演出:蜷川幸雄)。

明治天皇大葬の日の夕刻、大帝に殉死することを決意した陸軍大将乃木希典が、静子夫人と共に自邸の厩舎の前で3頭の愛馬に
最後の別れを告げている。そこへ出入りの酒屋の小僧が現われ、この家の書生となることを志願する。彼は、かつて日露戦争で
乃木の軍にいて戦死した兵士の息子だった。
一行が立ち去った後、夫妻のただならぬ様子に異変を感じた愛馬たちが、突如人間の言葉でしゃべり出す。しかもあろうことか
3頭それぞれが前足と後ろ足とに分裂し、合わせて6つの人格ならぬ馬格となって動き出した!勝手気ままに語り出す馬たちに
近所で飼われている2頭の雌馬も加わり・・・。

奇想天外とはこのこと、よくもまあこんなことを思いつくものだ。馬の前足と後ろ足にも階級差別があって、それぞれ
上品なインテリ、下品な大衆・・・と性格づけられている。

役者たちはそれぞれ将軍や将軍夫人になったり、その愛馬の足になったりと忙しい。

井上戯曲の初期傑作とのことだが、退屈でたまらないところもあった。

山県有朋(香寿たつき)と児玉源太郎(朝海ひかる)による宝塚のパロディシーンが一番面白かった。朝海ひかるは、昨年12月
にアーサー・ミラーの「みんな我が子」で初めて見たが、輝かしい美貌と生き生きした演技が魅力的だった。あの時は娘役だった
ので、実は宝塚の男役だったと知って驚いた。この作品では、原作にちゃんと「宝塚風に」と指定がある。
作者の遊び心炸裂だ。

乃木大将の妻静子(根岸季衣)は二人の息子を戦争で失い、夫も不在がちなのを嘆いて、長い一日をどうやって過ごせばいいの
でしょう、と夫に嘆くが、この人は教育を受けたことがないのだろうか。そんなことはあるまい。ならば、退屈で困るということ
にはならないと思うのだが・・。

「明治44年9月1日朝の乃木大将」兼「彼の愛馬寿号の後ろ足」役の吉田鋼太郎は声が大きく滑舌もよく、セリフが全部聞き
取れて気持ちがいい。





コメント
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