7月11日新国立劇場中劇場で、F.アルファーノ作曲のオペラ「復活」をみた(指揮:飯坂純、演出:馬場紀雄、オケ:東京オペラ・フィル)。
イタリア語上演。日本初演。
1910年頃のロシア。復活祭のために久しぶりに家に帰って来たディミトリは叔母に育てられた養女カチューシャと愛し合ってしまう。
しかし彼はすぐに戦争のため出征し、カチューシャは妊娠が発覚し家を追い出されてしまう。過酷な生活により子供を失い、娼婦に身を
落とした彼女は、事件に巻き込まれて無実の罪を着せられ、シベリア鉄道で刑務所へと送られる。
彼女の過去を知ったディミトリは罪の意識に目覚め、恩赦を求めて奔走し面会に来る。ついには彼女と共に旅して自分の人生を捧げる決意
をする。しかしカチューシャは彼を愛するがゆえに別れを告げ、別々の人生を歩むことを選ぶ。
アルファーノという人は、プッチーニの未完の大作「トゥーランドット」の補筆を行ったことで有名だが、本人自身の作品はあまり知られて
いなかった。だが最近になって「シラノ・ド・ベルジュラック」が各国で上演されるようになった由。評者も2010年12月に、この東京
オペラ・プロデュースによる日本初演を見ることができた。その時の感動は忘れがたい。
今回の作品はロシアの文豪トルストイの「復活」が原作で、アルファーノの作品中最多の上演記録が残る由。
女囚たちが聖堂に行進させられるシーンの後、誰もいなくなった監獄の部屋に音楽だけが続き、それが次第に高まってゆくと、ついに、官吏に
案内されてディミトリ(原作ではドミートリー)公爵が入って来るのだった。
演出面では、場面転換の手際がいささかよくなかった。
後半、思いがけず涙にくれてしまった。
ラストはよく分からなかった。別の男に求婚され、その男と結婚すると決心するカチューシャ。あの時代、女が一人では生きていけなかった。
だが、もうこれで本当に一生の別れという時に、彼女は今もディミトリを愛していると告白する。そして、それでもやはり別れると…。
罪の意識故に彼女に求婚し、彼女を守って残りの人生を捧げ、罪を償うことが自分の義務だと考える彼の気持ちが、彼女には重荷だったのかも
知れない。彼にもその気持ちが伝わったようだ。「僕を解放してくれたんだね」という彼。
原作を読めば彼女の心理はもっとよく理解できるらしい。評者もこの機会に遅まきながら読み始めたが、残念ながら当日までに読み終えられなかった。
昔「アンナ・カレーニナ」を途中で止めて以来、トルストイはどうも苦手だった。ロシア文学と言えばもっぱらドストエフスキーが好きで、
彼に比べればトルストイは深みが無いように思われた。だが今回「復活」を読み始めて驚いた。面白い!そして読み易い!もちろんドストエフスキー
に比べればやっぱり底が浅いようなところはあるが、それにしても彼を見直した。アルファーノと東京オペラプロデュースのお陰です。ありがとう。
イタリア語上演。日本初演。
1910年頃のロシア。復活祭のために久しぶりに家に帰って来たディミトリは叔母に育てられた養女カチューシャと愛し合ってしまう。
しかし彼はすぐに戦争のため出征し、カチューシャは妊娠が発覚し家を追い出されてしまう。過酷な生活により子供を失い、娼婦に身を
落とした彼女は、事件に巻き込まれて無実の罪を着せられ、シベリア鉄道で刑務所へと送られる。
彼女の過去を知ったディミトリは罪の意識に目覚め、恩赦を求めて奔走し面会に来る。ついには彼女と共に旅して自分の人生を捧げる決意
をする。しかしカチューシャは彼を愛するがゆえに別れを告げ、別々の人生を歩むことを選ぶ。
アルファーノという人は、プッチーニの未完の大作「トゥーランドット」の補筆を行ったことで有名だが、本人自身の作品はあまり知られて
いなかった。だが最近になって「シラノ・ド・ベルジュラック」が各国で上演されるようになった由。評者も2010年12月に、この東京
オペラ・プロデュースによる日本初演を見ることができた。その時の感動は忘れがたい。
今回の作品はロシアの文豪トルストイの「復活」が原作で、アルファーノの作品中最多の上演記録が残る由。
女囚たちが聖堂に行進させられるシーンの後、誰もいなくなった監獄の部屋に音楽だけが続き、それが次第に高まってゆくと、ついに、官吏に
案内されてディミトリ(原作ではドミートリー)公爵が入って来るのだった。
演出面では、場面転換の手際がいささかよくなかった。
後半、思いがけず涙にくれてしまった。
ラストはよく分からなかった。別の男に求婚され、その男と結婚すると決心するカチューシャ。あの時代、女が一人では生きていけなかった。
だが、もうこれで本当に一生の別れという時に、彼女は今もディミトリを愛していると告白する。そして、それでもやはり別れると…。
罪の意識故に彼女に求婚し、彼女を守って残りの人生を捧げ、罪を償うことが自分の義務だと考える彼の気持ちが、彼女には重荷だったのかも
知れない。彼にもその気持ちが伝わったようだ。「僕を解放してくれたんだね」という彼。
原作を読めば彼女の心理はもっとよく理解できるらしい。評者もこの機会に遅まきながら読み始めたが、残念ながら当日までに読み終えられなかった。
昔「アンナ・カレーニナ」を途中で止めて以来、トルストイはどうも苦手だった。ロシア文学と言えばもっぱらドストエフスキーが好きで、
彼に比べればトルストイは深みが無いように思われた。だが今回「復活」を読み始めて驚いた。面白い!そして読み易い!もちろんドストエフスキー
に比べればやっぱり底が浅いようなところはあるが、それにしても彼を見直した。アルファーノと東京オペラプロデュースのお陰です。ありがとう。