ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

チェーホフ作「桜の園」

2016-01-18 11:00:59 | 芝居
11月23日新国立劇場小劇場で、A.チェーホフ作「桜の園」をみた(演出:鵜山仁)。

帝政末期ロシア。ラネーフスカヤの領地、通称「桜の園」に、5月の或る日、ラネーフスカヤ夫人一行がパリから帰国する。家族や使用人たち、
地元の名士たちは再会を喜ぶが、彼らの胸中は穏やかではなかった。
彼女はパリでの生活に疲れ果て、破産状態にあり、先祖代々の土地・屋敷は今や競売にかけられようとしていたからだ。
それを嘆きながらも浮世離れした彼女は浪費と享楽的な生活をやめようとしない。おりしも華やかな舞踏会の最中に、「桜の園」が落札された
知らせが届く。失意のラネーフスカヤは・・・。

かつてロンドンの南にある小さな劇場に、この芝居を一人で見に行った懐かしい思い出がある。

昔のロシアにも、いわゆる「草食男子」というのがいた。そして彼のために苦しむ若い女も。
現実が見えない困ったちゃんの奥様も、つらい過去を背負っている。可愛い盛りの息子が溺死し、夫と別れ若い愛人とパリに行くが、病気に
なった彼を献身的に看病したのにその後捨てられたことが、少しずつ明らかになってくる。しかも話はまだ終わっていない。その愛人から
毎日のように手紙が来るのだ。初めは破り捨てていた彼女だが・・・。
この芝居には多くの要素があり、登場人物一人一人の背景に物語がある。それがチェーホフの魅力だ。

敢えて古い神西清訳を使ったらしいが、やはり全部使うのは無理だったようで、所々変えてある。今や完全な死語になってしまい、意味がまるで
分からない言葉もあるからだろう。だがそれなら「しわん坊」も「ケチ」とかに変えたらいいのでは?

客席中央に通路を設けてある。

ワーリャ(奥村佳恵)は黒づくめの格好で、文字通り修道院の人のよう。
変わり者のシャルロッタ(宮本裕子)は元気一杯。二度目の登場は狩猟の服装で、長い猟銃を抱えて男のよう。
彼女が連れている白い犬がよくしつけられていてすごい。
彼女の手品がすこぶる見事。
ラネーフスカヤ役の田中裕子は久しぶりに見たが、期待通りの好演。コミカルなセリフもうまく、客席を沸かせる。
ロパーヒン役の柄本佑は滑舌がよくない。しかもセリフ回しは時々早過ぎる。重要な箇所をスラスラと言ってしまっては困る。何も考えてないのか?
この役はこの芝居の要だというのに、演出家はなぜダメ出ししなかったのか。

ラスト、戯曲通り桜の木々が切り倒される音が聞こえてくるのが普通だが、今回は家の崩壊のイメージで終わる。

鵜山仁の演出でこれほど不満を感じたのは初めて。
田中裕子のラネーフスカヤを見られたのはもちろんよかったが。
コメント
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