ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

オペラ「エレクトラ」

2024-04-30 23:46:18 | オペラ
4月18日東京文化会館大ホールで、リヒャルト・シュトラウス作曲のオペラ「エレクトラ」を見た(指揮:セバスティアン・ヴァイグレ、オケ:読売日響)。
演奏会形式。字幕付き。



作家ホフマンスタールとリヒャルト・シュトラウスが初めてコンビを組んだ作品の由。
シュトラウスの申し入れにより、作家がソフォクレスの「エレクトラ」をオペラの台本に仕立てたという。

エレクトラはミケーネの王アガメムノンと妃クリテムネストラの娘だが、父アガメムノンは、クリテムネストラとその情夫エギストによって殺されてしまっている。
エレクトラは亡き父を慕い、父の復讐に執念を燃やす。
彼女には妹クリソテミスと弟オレストがいるが、オレストは外国に行っている。

序曲もなく、いきなり始まる。姉と妹の会話。
エレクトラ(エレーナ・パンクラトヴァ)「二人で父の復讐をしよう」
妹クリソテミス(アリソン・オークス)は、子供を産みたい、子供を胸に抱いて乳をやりたい、女としての人生を生きたい、と歌う。
ここは音楽も柔らかい。
エレクトラは、父の敵討ちを一緒にやってくれるなら、姉らしくして、あなたのお婿さんが来る時、
そばにいてあげる、と甘い言葉をかける。
音楽も甘い。
だがクリソテミスは、私が人を殺すの?この手で?!と両手を見つめて怯える。
彼女は憎しみに燃える姉について行けず、去る。
エレクトラは去ってゆく妹を見て「呪われるがいい」と言い放つ。
彼女は自分一人で復讐をする他ないのなら、そうしよう、と思う。

エレクトラが待っていた弟オレスト(ルネ・パーペ)がついにやって来る。
だが彼は、義父と母に復讐するため正体を隠しているので、彼女は弟だと気づかない。
弟も姉がわからない。
義父に殴られたのか、エレクトラの目には凄みがあり、頬は瘦せこけている。
彼女の異様な風貌に気づき、オレストが尋ねると、エレクトラは名を名乗る。
そしてオレストが自分の正体を明かす前に、エレクトラはようやく弟に気がつく。
音楽が早くも調子を変える。
期待に満ちた音楽。
オレストが館に入って行くと、音楽が止む。
緊張に満ちた数秒が過ぎ、奥から女の叫びが聞こえる。
エレクトラは「もう一度!」と叫ぶ。
再び叫び声が聞こえる。
義父が不在なので、オレストは、まず母を手にかけたのだ。
エレクトラは喜びを抑えることができない。
そこに義父エギスト(シュテファン・リューガマー)が帰って来る。
エレクトラは彼に話しかけるが、義父は、いつもと感じが違う、と不審がる。
彼女は、強い人に従うことにした、とうまくごまかす。
彼女はもう踊り出している。
奥に入って行くエギスト。
すぐに叫び声が聞こえる。
エレクトラは歓喜。
クリソテミスと侍女たちが出て来る。
妹は語る。
オレストが来て母と義父を殺した。
義父を憎んでいた人々が、義父の部下たちを襲い、殺している。
こうなったことを、結局、妹も喜んでいる。

ラスト、同じ音が続くが、歌はない。
舞台上の姉妹は手持ち無沙汰な感じ。
オペラ形式だったらここで何か動きがあるのかも知れない。
いつかオペラ形式で見てみたい。

あらすじを読んだだけでは、母親クリテムネストラが極悪人のように思えるが、話はそれほど単純ではない。
彼女の夫アガメムノンはトロイア遠征の際、長女イピゲネイアを戦勝のため人身御供にしたことがあり、彼女はそのことを当然ながら強く恨んでいた。
さらに夫は、トロイアの王女カッサンドラを愛し、不貞行為を働いた。そのことも彼女は知っている。
また、義父エギストはアガメムノンの従兄弟に当たるが、父親がアガメムノンの父から迫害されたことを恨み、復讐のためにアガメムノンを討ったのだった。
そもそもこのアルゴスの王家は呪われた家系で、代々血なまぐさい内争が絶えなかったという。
呪われた王家の辿る悲劇的没落の一環として起こった事件と見るのがギリシア人の伝統的な解釈だったらしい(ちくま文庫「ギリシア悲劇Ⅱ」の解説による)。

今回の歌手陣は国際色豊か。
ヒロインの題名役がロシア、その妹役が英国、その弟役と義父役がドイツ、母クリテムネストラ役が日本の藤村美穂子。
皆、素晴らしかった。
先日「トリスタンとイゾルデ」のブランゲーネ役で我々を圧倒した藤村美穂子が、この日はクリテムネストラを聴かせてくれた。
彼女がまた聴けてよかった。
コメント
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