ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

オペラ「ウイリアム・テル」

2024-12-13 00:30:11 | オペラ
11月28日新国立劇場オペラパレスで、ロッシーニ作曲のオペラ「ウィリアム・テル」を見た(演出・美術・衣裳:ヤニス・コッコス、指揮:大野和士、オケ:東フィル)。



フランス語上演、日本語及び英語字幕付き。
原語での舞台上演は本邦初の由。

オーストリア公国の圧政を嘆くスイスの山村。長老メルクタールの息子アルノルドはハプスブルク家の皇女マティルドへの恋に
悩んでいた。村一番の弓の名手ギヨーム・テル(ウィリアム・テル)はアルノルドに圧政に抵抗するよう諭す。
総督ジェスレルに反抗した村人を匿ったメルクタールは殺され、マティルドはアルノルドと永遠の別れを交わす。
自分に従おうとしないテルと息子ジェミを捕らえたジェスレルは、息子の頭に載せたりんごを射ることができれば命を助けると告げる。
テルとジェミたちの運命、そしてアルノルドとマティルドの愛の行方は(チラシより)。

序曲冒頭のチェロのソロが甘美で期待が高まる。
このオペラは序曲が長く、途中、運動会でお馴染みの、あの軽快な曲も流れて楽しい。思わず走り出したくなる(笑)
序曲が終わり、拍手とブラボーが起こると、オケの団員たちは立ち上がった。初めて見る光景。
聴きごたえのある序曲の場合、こういうことをするそうだ。

幕が上がると、舞台上空からでかい矢の形をしたものがいくつもゆっくり降りて来て、人々が逃げ惑う。圧制の象徴。
弓の競技とか、逃げて来た老羊飼いをテルが「小舟に乗せて助ける」とかのシーンは、舞台の端の方で起こるのではっきりわからない。
<休憩1>
真紅のコート姿のマティルド(オルガ・ペレチャッコ)が現れ、アルノルドを思って歌う。
これが超絶技巧で、しかもこの人がうまい。
聞き取れたフランス語:la nuit (夜)、ton pere (お前の父)
日本語字幕が間違っていた。
敵のことを呪っていて「大地が彼らの墓となるように」とすべきところを「墓を拒むように」となっていた。
<休憩2>
3幕冒頭の音楽は、明るく軽快に始まるが、すぐに重く暗い曲調に変わり、マティルドとアルノルド登場。
二人は所詮結ばれない運命なのか。
聞き取れたフランス語:l'espoir (希望)
ダンサーたちが現れ、長いダンスシーンが続くが、これが明らかに圧制者側の、スイスの村の女たちに対する凌辱を表すもので、見ていて辛かった。
男性はこういうシーンを見ても平気なのだろうか。
こんなシーンは必要かも知れないが、ほんのちょっとでいいと思う。
圧制者側の衣装はナチスを思わせる黒と赤の色。
総督ジェスレルは皇帝の権力を象徴するトロフィーに頭を下げるよう民衆に命ずるが、一人テルだけが無視する。
彼が弓の名手と知ったジェスレルは、息子の頭にりんごを載せて、それを射るよう命じる。
テルは、そんなことできるものか、と断ろうとするが、息子ジェミは父親の腕前を信じており、父を励ます。
そこでテルは神に祈り、「動いてはいけない」と歌って矢を放ち、見事りんごを射抜く。
(どうやるのかと思ったら、さすがに矢は刺さらず、りんごがうまい具合に砕け散る。)
二人は抱き合うが、テルが2本目の矢を隠し持っていたことが見つかり、二人は逮捕される。
そこにマティルドが割って入り、ジェミだけを何とか救い出す。
<暗転>
テルの妻エドヴィージュは、テルと息子ジェミが捕らえられたと聞いて嘆き悲しむ。
女たちが彼女を慰めていると、そこにマティルドがジェミを連れて来る。
母は喜びの声を上げる。
C'est lui.(あの子だわ!)
背後のスクリーンに海の波が現れ、舞台全体が海のようになる。面白い。
船で護送されてきたテルは、船が岸に近づくと岩場に飛び移る。
ジェスレルの姿が見えると、言う。
C'est lui. (あいつだ!)・・・さっきと同じ文章でも日本語にすると全然違うニュアンスが表現できる。実に面白い。
テルはジェミが手渡した弓矢を取り、ジェスレルに矢を放つ。
ジェスレルの胸に矢が刺さり、彼は地下に吞み込まれる。ドン・ジョバンニのようだ。
ラスト、敵を倒し、歓喜の歌声を高らかに響かせる人々の後方に、皇女マティルドが一人、佇み、ゆっくり歩いて行く。
この人はこの後どうなるのだろう・・。
~~~~~~~ ~~~~~~~
音楽は素敵だが長い。長過ぎる。休憩含めて5時間!だから滅多に上演されないのだろう。
繰り返しをあちこちカットしたらいいと思う。
歌手では、メルクタール役の田中大揮と、ジェミ役の安井陽子、そしてマティルド役のオルガ・ペレチャッコがいずれも素晴らしかった。
昔、初級だけ習ったフランス語を、この日ちょっぴり聞き取ることができたのも嬉しかった。


コメント
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