ある日、外食を自粛しているとはいえ、いつもながらの貧しいメニューの夕食と洗い物を済ませ、夜のリラックスタイムを迎えようとする時、
台所兼居間のどこからか、『電池切れです』とかなんとかいう声がした。
それは、今までに聞いた記憶の無い声だった。
『電池切れ』というからには電器製品が喋ったのは間違いないだろうが、ワタクシんちはそんな会話機能を持つ家電品なぞ存在しないはずだった。
その上、声は聞こえたのだが、それがどこから聞こえたのかが全く分からない。
オロオロしているうちに、もう音声を発する事は無かったが、なんらかの警告音らしき『ピッ』という短い音が聞こえた。
しばらくすると、またもや『ピッ』と鳴り出す。
およそ30秒くらいの間隔で『ピッ』と鳴るが、どこで鳴っているのかがさっぱりわからない。
すぐ近くにあるのは、固定電話のコードレス子機か炊飯器、、、、、、、、、
こいつらが喋るはずは無いのだが、もしかするとカタログに載っていない機能が目覚めたのかも知れないので、両方ともコンセントを抜いてみたが、やはり30秒くらいの間隔をおいて、『ピッ』。
子機と炊飯器を少し離れた場所に置いてみると、こいつらが鳴っているのではないのは間違いなく、確かにキッチンあたりから鳴っているが、やはりどこで鳴っているのかがさっぱりわからない。
椅子を持って来て、しばしその辺に座って、次に『ピッ』となるのを待ちつつ、
他の家電品といえば、整水器(浄水器の一種)が目に入ったので、そいつもコンセントを抜いてみたが『ピッ』は止まない。
あと、近くの家電品といえば、冷蔵庫か電子レンジかPCプリンターが2台である。
こいつらにも発声機能は無いはずだが、やはり全部電源を落とすべきかと考えつつ、これはもしかすると、
ワクワクしながらTV観戦した日本シリーズで4連敗、しかも2年連続して4連敗するという恥ずかしい呪いではないだろうか?
あるいは、
もしかすると、
いよいよ、
ワタクシの身辺にも、異次元あるいはパラレルワールドあるいは霊界からのメッセージが届くようになってしまったのだろうか?
と、思考が深刻化し出した頃、
ふと、頭の上の方から『ピッ』と鳴った。
見上げると、天井に埋め込まれた火災警報器の赤いLEDがゆっくり点滅しているのを見つけた。
確かに、さっきからこいつが喋ったり鳴ったりしているのだと確信した。
これで、ようやく、犯人は特定できた。
電器製品の取説をファイルして保存している棚で火災警報器の取説を探してみるが、見つからない。
つまり、必要な時に限って出てこないのが取説である。
ので、椅子に乗って天井に手を伸ばして、おそるおそる火災警報器の蓋らしき部品を回転させてみると取り外す事が出来た。
すると、中に電池が入っている。
電池の型番をググってみると、専用のリチウム電池らしいが、既に製造終了になっていた。
いったいどうして、ワタクシんちで使っている家電品の周辺機器は、買い替える時期が来ると製造中止になっているのだろうか?
メーカーでも欠品中で、通販ショップでも2月以降の入荷待ちとなっている。
手っ取り早く急いで対処するならば、警報器ごと買い直すしかない。
しかし、おそらくうっかりと家電販売店に相談などしようものなら、取り付け費とか工事費とか請求される可能性もある。
ネット通販で取り扱っているショップが見つかったが、果たして安心して買い物できるショップかどうかがわからない。
必要な送料とか考えると、どこで買うのがお得で信頼できるのだろうか?
と、検討している。
あらためて天井に注目してみると、火災警報器は隣の部屋のも含めて全部で3個設置されている。
3個とも同じ時期に設置したので、他の2個もそろそろ電池切れになるのは間違いない。
うっかりと、寝室のが電池切れになって夜中に『ピッ』と鳴り出すと困るので、3個とも電池を取り外しておいた。
という事は、現在、火災警報器は機能していないという事は大きな声では言えない。