昨日のブログで、「上司の頭の中」という話をしたのですが、今日は、じゃあ、上司はなにを部下にもとめるのか?という話。
それは、結局
今ダメな状況を変えるのに、
新しいことや、追加して何かをやるカイカクではなく、
今やっていることを、「自分の権限の範囲で」よりよく変えていくカイゼン
を求めているような気がします(自分が上だったとき、下のとき、両方比べて考えると)
やっぱり、今の与えられた仕事がこなせないのに、「それは、いまの体制がわるい、こうかえるべきだ」と主張しても、仕事ができないから、言っているとしか思われないと思います。こう受け取られると、いいこといっても(その意見が正しくとも)評価さがると思います(=自分のできないのを棚に上げて、言い訳してるように聞こえるから)。
今の仕事をそれなりにこなして、さらに、自分の権限の範囲で、カイゼンするほうが、自分の評価を下げる危険もすくないし、できることの自由度が広がることが多いと思います。
たとえば、プログラムのテストを行っているとします。もう、単体テストをやる時間がまったく無い状況で、もし、単体テストをやったら、納品日が確実に遅れるという状況において、会社の皆様が、「単体テストをカットして、結合からやろう」としたとします。
そのときに、「そんなことしたら、品質がわるくなります。納品日を遅らせてでも単体テストをやるべきです」と主張したとします。
このとき、受け入れられる可能性は、極端に低いと思います。
納品日を遅らせるということは、カネが入ってくる日が遅れるということです。
その結果、会社によっては、当然給料が払えなくなるし(大手の人は知らないかもしれないけど、中小零細では、納品日が遅れると社員の給料がストップされる会社は、存在する。つーか、ウィリアムのいたずらも、数ヶ月、それでお金がもらえなかったことがあるぞ。この裏技で、解雇して、失業保険で食べてもらうっていう手もある。やばいから、はっきりいえないけど、そういう会社を知らないとはいえない)、そうすると社員によっては、カード支払いが遅れたり、借金返済が遅れ。。。などと、もう、仕事どころではなくなる危険があるんです。
さらに、そこまで行かなくても、社長やお偉いさんは、親会社とか、銀行とかに、頭を下げて、カネの工面をしてもらわなきゃいけないし(ここで、サラ金に頼るようになると、利益率的に会社存続は、無理ですが)とまあ、この発言を受け入れることによる、副作用は、大きい(つーか、場合によっては、会社倒産の致命傷)わけです。
よく、「単体テストをカットするなら、その程度の意味なの?」っていわれますが、それは、まちがっても、現場で言わないほうがいいです。多分、こういうような反論を受けます。
反論例:
ところで、運転免許って大切ですか?
→普通大切ですってこたえます
なくしていいものですか?
→だめですと普通、こたえます。
今、火事だとします。運転免許がどこにあるかわからないです。逃げないと死にます。
あなたは、運転免許を探しますか?
そういうことなんですよ。今の状況は!
もう、このプロジェクト、火ふいて、火事なんです。
日程が遅れているということは。
納品日に収めなきゃ、死ぬ可能性も否定できない。
そういうときに、単体テストをやれというのは、
死んでもいいから、運転免許を探せというのとおなじですよ。
そうなんですよ、上の人も、単体を甘く見ているのでなく、納品日に間に合わせるため、単体をけずる。簡単に削っているようで、結構、やばいことは、自覚している。
でも、単体テストをけずっても、それなりのパフォーマンスを出す会社ってありますよね。
そういう会社っていうのは、どうしてるのかっていうと、単体テストを削られても、それなりにパフォーマンスがでるよう、仕様書とパターン(ないしはフレームワーク)に工夫をしていたり(具体的には、仕様書が、おきまりの処理を集めているだけにまで落とし込み、おきまりの処理は、枯れている)、流しのテストケースと、ログの入れ方で、通過と必要情報が判定でき、単体レベルのエビデンスがとれるように工夫されている。
なので、自分がパターンを作成したりレビューする立場にいる場合、こういう成果を取り入れ、「単体テストが、万一出来ない場合でも、こういうふうに仕様書やパターンを書けばいいっすよ」というのであれば、受け入れられる可能性は高いし(というか、自分が作成する立場にあるのであれば、勝手にやってもいいしね)、それで、成果が出れば、評価される可能性は高い。
中越地震のとき、長野県の田中康夫知事が、こんなふうにいってた記憶があります
「職員は、自分の職分の範囲で、やれることはたくさんあると思うので、そういうことをやってほしい」
字句は違うかもしれないけど、たしか、「自分の職分の範囲でできることと」、と範囲を限定していたのを記憶しています。
あの、自由気ままにやっているように見える田中知事ですら、職員に対し、「自分の職分の範囲で」と限定している。「非常時なんだから、職務にこだわらず、住民のために、いいと思ったことはすぐやれ」とはいっていない。
これは、上にたっているひとには分かると思います。下の人間が、よかれとおもってやったことでも、実際には、現場を混乱させる結果になることが、多数あります。
非常事態(地震でも、プロジェクトが火ふいてるときでも)において、現場が混乱することが、最大のリスクです(パニックになる危険があるから)なので、「職分の範囲」に限定しているわけです。
田中知事ですら、限定しているのですから、それ以上堅い、たいていの企業のお偉いさんに、「自分は、こうやりたい」と、職務範囲外のことを言っても、無理でしょう。
じゃあ、学会の成果とか、最新の成果とかは関係ないのか?っていうと、それは、違いますです。学会の成果や最新の情報は、上司以上に知り尽くさないといけません。
つまり、使って出来るというレベルでは、(上司はいいけど)部下は、ダメなんです。
その話は、また今度。