新聞広告で見た映画「かぞくのくに」のストリーを知ろうと、手にしたその原作本。北朝鮮との間には、その事実を認めながら未解決のまま10年目を迎える拉致問題がある。この本に描かれている帰国事業も、独善的な国家思想よって引き裂かれた家族の悲哀ということでは同じテーマだ。「地上の楽園」を信じて9万3千人余りとともに海を渡った3人の兄のその後。著者自らの体験にもとづいているだけに、本文のほとばしる叫びとともに抑えたあとがきに込められたメッセージが重たい。忘れ去られようとしているが、今ある現実に引き戻してくれた。