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さすが、読ませ、考えさせる『赤猫異聞』

2013年01月25日 | 読書

似たような話をドラマで観たような気もするので、当時は実際にあったのだろう。時は明治元年暮れ、江戸の大火事で伝馬町牢屋敷の囚人たちが一時的に解き放たれる。鎮火ののちは必ず戻れと厳命され、戻れば罪一等を減じ、戻らぬときは死罪になる。ところが裁きで死罪の男二人と島流しの女一人の3人は、別の条件が付けられる。縁もゆかりも無い三人だが一蓮托生、三人のうち一人でも戻らないときは戻った者も死罪、全員が戻れば罪一等の減ではなく無罪放免、そして三人全員が戻らないときは牢役人が腹を切ることになるという。さて、どうなるか。この三人の人物と心理描写、味のある牢役人、当時の社会状況が詳細に関係者の証言という形で綴られる。作者お得意の人情味、泣かせるところ、ハラハラの場面あり、断然面白い。が、やはり最後の<「法は民の父母なり」ならば、世が乱れて法が父母の慈愛を喪うたとき、その法にたずさわる者はみずからを法と信じて、救われざる者を救わねばなりますまい>の言葉を噛みしめたい。