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冷雨、慈雨それとも『法の雨』

2021年12月28日 | 読書

友人の医療過誤裁判を応援しているので法廷ものに関心があるが、これは刑事裁判。限りなく100%近い有罪判決が下される裁判の中で無罪判決を連発してきた元判事、その裁判官に四度目の無罪判決を受けた検事、病気退官した判事の成年後見人に選任された弁護士。それぞれ法を守り、運用する三人の正義がぶつかる。そこに織りなす認知症の深刻な現実や成年後見制度の問題点。物語は無罪判決を受けた男が殺されたことで事件の真相を追うミステリーとして展開していく。読み物としての面白さよりも勉強になったことがふたつ。ひとつは法律の厳格な適用の例として、相手を殴り殺しても<殺人罪の構成要件である“殺人の故意性”を証明できないかぎり、殺人罪では無罪にするしかない>(検察側が傷害致死罪などに訴因変更しなければ無罪)。裁判官が勝手に他の罪を適用できないということ。もうひとつは成年後見制度。この物語では、認知症になった夫名義の預金で不動産契約を断られた妻が成年後見制度を利用しようとし、弁護士が選任されたケース。結果、夫の通帳・印鑑等を弁護士に預けることになって勝手に引き出せない。10万円程度の生活費以外は認められないとも。被後見人の財産を守るための制度とは言え、生計を共にしていた家族の場合は慎重にしたほうが良い。最後、元裁判官の家族に降り続いていた雨はようやくやんで安堵した。