2度目になる無言館。ここは太平洋戦争で戦病死した画学生の遺作・遺品を収蔵した戦没画学生慰霊美術館である。夏も過ぎたのに蝉が泣いて迎える坂道をゆっくりとたどる。入口近くの「記憶のパレット」と書かれた慰霊碑、刻まれているのは志半ばで絵筆を断たれた画学生たちの名前。そして建物の中に。掲げられている絵それぞれはどのような思いで描いたのだろうか。祖母や妹・妻・恋人、故郷の山河、自画像、母の両手の彫像も。説明書きには入学して間もなくの出征や遠い戦地、沖縄などでの無念の死。「絵を描く夢を続けさせてあげたかった」と綴られている遺された家族・友人らの手記。遺品の召集令状、戦地からの手紙・葉書、そして死亡通知書が残酷だ。両耳に周囲のすすり泣きが入ってくる。立ち止まりつつ、絵の向こう側から語りかけてくるものを必死に聞こうとした。
木漏れ日の道
名残りの夏
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