商店が軒を連ねパチンコ屋も数軒、映画館もあった。
三味が響く旅館もあった・・・。唯でさえポツリ、ポツリと虫に喰われるように
穴が空いていくのに、今度の火災でポッカリと大きな穴が開いた。
往時の賑わいを知る者にとっては、自分の記憶も共に消えていくようで寂しい。
平成26年2月24日、此処は新城栄町。
組長会で区有林の境界確認。昨日、列島は北も西も大雪だったが
幸いこの辺りは雨だった。9時過ぎから、【富住】の山を一周りし、
【大荷場】まで車で移動、【大入ノ久保】に着いたのは11時頃だった。
『あれが出沢一の杉だ』
長老の指した先をみると、一際目立つ大杉が他を圧倒している。
目通り周は、二尋+1メートルで≒4.5メートル、径1.4メートル強だ。
樹齢は定かでないが、百年や二百年ではないことは確かだ。
何故この木が此処で出沢一になったのか・・・、木の努力は考えにくい、
運か、縁か。偶然か、必然か・・・。何れにしても此処に出沢一の杉として
鎮座している。あやかりたしと暫し幹に触れ気を戴く。
折しも【ソチ】でオリンピック開幕。努力だけでは取れぬメダル。
運と、縁があっての一番、〔金メダル〕なのだろう。
それにしても【大入ノ久保】は急だ。ガラ山なので一割近い勾配でも
崩れずに持っている。小雑木に掴まり、あえぎ、喘ぎ、高低差50メートル
程を登る。必死の思いで【ツルネ】まで辿り着き境を確認、小休止。
帰路、笑う膝を押えて滑り落ちながら、モーグルのコースを思い出した。
4,5日前に足場が撤去され、残材もほぼ片付いた。
当事者のとっては、これからも苦難の日々が続くのだろうが、
災害から一月余り、周りの者にとってはだんだんと思い出が薄れて、
恰も初めから何もなかったように思えてくる。人間は忘れることが
できるから生きて行けるのだ、と言えばそれまでなのだが・・。
何れにしても、焼け焦げた残骸が無くなって少し落ち着いた駅通り。