梅雨明けから盆までが笠網漁の最盛期ということになっている。盆になると「はよ」が飛び始めて、鮎の割合がだんだんと少なくなり、８月末にはほとんど「はよ」しか飛ばなくなってしまう。
明日はもう８月１日だ。このまま梅雨明けが遅れると、今年の笠網漁は終わりである。
インドでは、日照りの時、娘たちに裸で畑仕事をさせ、神様に恥ずかしい思いをさせて雨を降らせるという。
出沢も婦人部にお願いをし、同様に鮎滝で「お天気まつり」でもして、雷神様に恥ずかしい思いをさせ退散していただくか・・。
（水神様の逆鱗にふれて、大洪水の恐れがあるのでこの案はボツ。）
この辺は大したことはないと思ったが、昨夜、設楽から作手にかけてかなり降ったようだ。
もうすぐ盆月だというのに、今年は梅雨がなかなか明けない・・。
鮎滝の観音様も岩陰でジッと堪えている。この水では今日は笠網漁は無理だ。
最近カメラを向けると、すぐポーズをとってカメラ目線をする道敏君。
鮎が網に飛び込む瞬間の写真が撮りたいのに・・・。
鮎滝の主役は『鮎』なのだ！。
私などは５分も飛ばないとすぐに嫌になって網を上げてしまうのだが、飛んでも飛ばなくてもジッと待つことが出来る人が出沢には何人かいる。宮さんもその内の一人だ。今日も朝６時に滝に出かけて一日ずっと頑張っていた。特に朝７時から９時ごろまでの土砂降りの時がよく飛んだそうだ。（私も滝番だったのだが所用でその時間は滝にはいなかった）
宮さんの頑張りのお陰で全部で２００尾くらい獲ることが出来た。聞けば宮さんはフルマラソンを３回完走したことがあるそうだ。どおりで粘りも一級品だ。頼もしいメンバーである。
「朝、雨が降っていたので10時ごろ滝に来た。そこそこ飛んでいたのだが、11時頃日食で急に辺りが暗くなって、日が暮れたと勘違いしたのか鮎がパタッと飛ばなくなった。」
「その後30分ぐらい飛ばなかったが、また、少し飛び始めた。結局、1時ごろまでに100尾くらい捕った。」
－滝番：リュウ君、治一さん。－
通りすがり、出沢の入り口の又谷橋から錦砂川を覘いて見た。川底の砂の上に、上流に向かって、小さな足跡がてんてんと付いている。
《ははー、またウリが戻って来たな。》
消防詰所の横に車を止めて川を窺うと、何やらカサコソと芦を揺らしている。
《ウリだ！！。何とか捕えたいが、ミッチャはさっき会った時、今日は忙しいから何があっても動けんと言っていたな・・。だが、取りあえず連絡だけでもしてみるか。ウリが出たと言えば来るかも知れんし・・。》
電話すると二つ返事で直ぐに来るという。それではと、ミッチャが来るまで下流に逃げないように見張ることにした。
奥義「しし掴み」はこの前使ってしまったので、後一年は使えないし・・・。予て考案の「しし足封じ」を試してみるか・・。ミッチャと二人であーだこーだと言いながら、詰所の横の堰の下流に建築現場で使う落下防止用の網を仕掛けた。追いたては応援に来た博史君と一緒にミッチャがやり、私は網の所でウリが飛び出して来るのを待つことになった。
暫らく待っていると
「いったぞぉー。」
の声とともにウリが飛び出してきた。長い付き合いで、どこに出てくるか分かっているので横によけて道をあけていると、ものすごい勢いで網にとびこんだ。網に足を取られて、動きが鈍くなったところを噛まれないように首の後ろを押えた。
「また、いったぞぉー。」
もう一匹同じように捕えた。結局、ミッチャが追いたてながら捕えたのを足して全部で３匹だ。１１日に「しし掴み」で捕えたのを入れると４人兄妹だったことになる。
今回のウリは、捕えようと追いつめると向かってきた。これ以上大きくなると、もう素手では無理だ、今度はこっちが追われる側になる。
「しし足封じ」は予想以上にうまくいった。
川に網を掛けて猪と遊ぶことになるとは思いも寄らなかったが、「山くじら」といわれている猪だからこれでいいのかも・・。
笠網漁とどっちが面白いかって？。
もちろん、「しし掴み！」。
家でゴソゴソしていたら隣の宮川さんがやって来た。
「草を刈っていたら、手と背中をハチに刺された。巣を取って欲しいんだけど・・。」
行って見ると、ヤヤ！、へボの巣だ。
早速ハチ取り名人？のミッチャに連絡。相談の結果、
「取って箱に入れて飼ってもいいが、そんな庭先にあるのなら、そこでそのまま飼おう」ということになった。
ミッチャが誰かに獲られないようにと表札を作って立てた。エサは鮎滝で飛んだ【はよ】だ。
順調に育てば11月始め頃【お日待ち】をすることにしたのだが・・・。
そんな事とは露知らず、ヘボくんたちは今日も忙しそうに巣作りに励んでいる。
あつい！。暑い！。熱い！。アツーイ！。
鮎滝の岩盤がジリジリと焼けてきた。こうなると笠網漁の本格的なシーズンが到来だ。
鮎だって思わず飛びたくなるのだろう。今日も順調に飛んでいる。特に昼からはよく飛んでいる。
今日もよく飛んでいる。ここ3日ほど続けてよく飛んでいる。
「待ち構えている型が美しいから捕れるんだ」、とミッチャは言うのだが・・・、
今日は鮎がたくさん飛んでいるから捕れるんだと私は思う。
笠網道を窮める林道敏さんの滝番。
今日はよく飛んだ。久しぶりの当たり番だ。多分今年一番の飛びだろう。
全部で約７リットル、小さな鮎が多かったので、数は５００尾くらいか。
