『五時半になった、そろそろやめるか』
草刈り機のエンジンを止めて、家に向かって歩きかけたときだ。
風もないのに十メートルほど先の草が四・五本微かに揺れた。
『何かいる!』
そっと近づいて・・、確かにこの辺りのはずだが・・、と探してみても何もいない。気のせいか・・。
しばらく見ていると、ボロの中に僅かに見えていた枯れ草のかたまりが、ガサゴソと動き出した!。
『瓜だ、ウリボーだ!』
ウツでなければウリもボロの中はそんなに早くは進めない。
人が歩く速さぐらいだ。20m程で追いついて先に回りこんだら、
ウリは、草の間に頭を突っ込んで潜ったしまった。今度は潜った処を見届けているので
どこにウリがいるのか判る。だがそうでなければ、目の前の草叢にウリボーが隠れていても
動かない限り、気がつかないだろう。
噛みつかれないように、素早く両脇をつかんだ。
『ヤッタ!、瓜ボー逮捕!』
とりあえず記念写真を撮った。
捕まえたのはいいが、この後どうしよう・・。
そうだ、こういう時はミッチャだ!。ウリを連れてミッチャの家にいった。
ウリを抱いてミッチャに武勇伝を話している間に、何と、腕を枕に居眠りを始めた!。
『俺は猪年だが、お前の親じゃないぞ・・・』
・・・参ったな、これじゃあ処分できない、放してやるわけにもいかんし・・・・。
今日は滝番だが、さすがにもう魚の姿は見えない。
鮎滝もやっと静かになって、落ち着きを取り戻したようだ。
今年の笠網漁はあまり良くなかった。鮎の遡上が少なかったところに天候不順が追打ちをかけたようだ。六~七月となかなか水が減らず、天気が揃って鮎滝日和になったときはもう八月になっていた。時折網に飛び込んだ「サツキマス」に救われたが、正直なところもう少し飛んで欲しかった。
自然が相手だ、こんな年もある、また来年に期待するか・・。
《ボクも新米たべたいワン!》
全国的に今年のイネの育ち具合は、梅雨時は日照不足、8月は猛暑で、平年と比べて「やや不良」のようだが、ウシマ(関原農園)の〈ミネアサヒ〉はまずまずだ。むしろ昨年より美味しいような気がする。
「こういう年は手間のかけ方で全然違ってくる」 と美彦さん。
そう言われて見ると田んぼによってかなり差があるのが素人目にもわかる。半作の田んぼもあるという。やはり、稲は育てるもののようだ。
美味しい〈ミネアサヒ〉だが、「ナル」ちゃんには食べさすことはできない。
家内に『一日にドッグフードを50グラム、それ以外は絶対にダメ』と厳しく言われているのだ。
家内は未だに、私が晩酌のツマミを与えたせいで、前に飼っていたシーズーが
早死したと思っているのだ。だが、お陰で「ナルシス」は、1,7㎏の体重を保っている。
自分自身にも同様に厳しくできれば・・・。と思うのだがなかなか難しいようだ。
新米〈ミネアサヒ〉収穫中。
関原農園_0536-25-0643
胸に黄色い〈追い星〉が浮かび上がっている。色もだいぶ黒くなった。10㎝に満たないが立派な大人だ。
鮎は単年魚である、あと一月もすれば大きさにかかわらず産卵のために川を下る。
同じ鮎でも縄張りを持って十分なエサを喰っていればもう20㎝は優に超えている、体長で2倍、体重で10倍以上違うのだがこの差は何だろう。この鮎が他の鮎に比して努力をしなかったという訳でもないだろう、自然にそうなったのだ。或いは始めから決まっていたに違いない・・・。
自然にこうなったのか・・、最初から決まっているのか・・。
努力すれば大きくなれると信じたいが・・。
*滝番、悟朗さん・宮川さん、釣果は40匹。
ヒサエさんのダットラが止まっていたので、滝に降りていった。
『ほい、いつまでもアッついのん』
「そおだのん、だが、そのおかげで、まんだちったあ飛んどるぞん」
『9月になってから捕ったなんて、あんまり聞いたことはないのん、
温暖化の影響かのん?』
「どっちにしても、飛びゃあ捕れるで・・、この分だとまあ一回捕れるかも知れんノン」
さずがはヒサエさん、細かいことは気にしない。
しばらく世間話をしていると、滝の飛沫に浮かんだ虹の中から小さな鮎が網に飛び込んできた。
それにしても暑い。今年は気象台始まって以来110年間の最高気温だという。ということは、江戸も鎌倉も平安時代も・・・寒かったようなので、有史以前ということになり、6500万年前の白亜紀以来ということになってしまうのだが・・。