今日のことあれこれと・・・

記念日や行事・歴史・人物など気の向くままに書いているだけですので、内容についての批難、中傷だけはご容赦ください。

種痘記念日

2006-05-14 | 記念日
今日(5月14日)は、「種痘記念日」
1796(寛政7)年、イギリスの外科医エドワード・ジェンナー(Edward Jenner )が初めて種痘の接種に成功した日。
天然痘(てんねんとう)は、天然痘ウイルスを病原体とする感染症の一つ。疱瘡(ほうそう)、痘瘡(とうそう)ともいう。発症すると、高熱を発して、引き続いて、全身に化膿性の発疹ができるため、運良く治った人もあばた面になった。古くから定期的な大流行を起し、世界中で不治、悪魔の病気と恐れられてきた代表的な感染症であるが、当時、一度天然痘にかかった人は、二度とこの病気にならないことが知られていたそうだ。そして、民間療法として症状の軽い天然痘患者の膿疱(のうほう)から採取した膿汁を健康な人に接種して予防、つまり、擬似的に一度天然痘にさせてしまうといった方法もとられていたという。このやり方は、既に古代中国で行われていたもので、いつしかヨーロッパにも伝わったものだったそうだが、この療法は安全確実な予防方法ではなく、逆に天然痘に感染・発病して、死亡する人も多かったようだ。
ある時、ジェンナーは、農家の乳絞りの女性から、牛痘(つまり牛の天然痘)にかかると天然痘には罹からないという古くからの伝承を聞き研究をした。
そして、牛痘にかかった乳絞りの女性サラ・ネルムズの手の水疱からとった膿を、近所に住んでいた8歳の男児フィップスの腕に接種した。10日後に発症したが6週間後に回復した。その後、少年に天然痘を接種しても天然痘にはかからなかった。この実験は、1798(寛政9)年に学会に発表したが、当時の医学会には認められなかった。は認められなかった。
しかし、ジェンナーは貧しい人たちに無料で種痘の接種を行い、次第に認められるようになった。その後、1967年に世界保健機構(WHO)のリーダーシップのもと、天然痘根絶計画を開始、ジェンナーのワクチンは改良されて世界で使用され、天然痘による死亡者は劇的に減少し、1977(昭和52)年ソマリアにおける患者発生を最後に地球上から天然痘は消え去り、その後2年間の監視期間を経て、1980(昭和55)年5月には、世界保健機構は、天然痘の世界根絶宣言を行った。
日本への天然痘は、ヨーロッパよりもかなり早く、仏教伝来の頃には大陸から伝わり、奈良時代にはしばしば流行したようであり、史書に初めて登場するのは735(天平7)年の『続日本記』といわれている。天平年間初年には凶作のほか、地震などの天変地変が相次ぐとともに、疫病が流行したが、737(天平9)年には、諸国で痘瘡に倒れる者が多く、聖武天皇の皇后光明子の兄達である参議藤原朝臣房前(ふささき:藤原不比等次男)、参議藤原朝臣麻呂(まろ:不比等の四男)、左大臣藤原朝臣武智麻呂(たけちまろ:藤原不比等長男)、参議藤原朝臣宇合(うまかい:藤原不比等三男)の藤原四氏が次々と天然痘で亡くなっている。そして、光明皇后の勧めにより日本総国分尼寺として、法華寺が創建されたが、このお寺の正式な寺号は「法華滅罪寺」。皇太子を満一歳を前に亡くし、また天然痘で兄弟4人を次々と失った皇后の悲しみが、「滅罪寺」という名前を付けさせたのだろう。
以下参考の「お薬博物館/薬と歴史シリーズ」によると、”その後近世にいたるまで天然痘はしばしば流行を繰り返し、『日本疾病史』(富士川游)によれば天平7年(735年)から天保9年(1838年)までの1103年の間に58回もの大流行が記録されており、また和歌山県の某家に伝わる古文書によると文政11年(1828年)から明治6年(1873年)までの45年間にわたり6人もの子供たちが天然痘にかかった”とのことである。江戸時代の死亡原因の第一位は天然痘と言われ、「見目定めの病」と忌み嫌われていた。種痘は江戸後期に伝わり、明治以降は政府主導の下に実施。1946(昭和21)年には、18,000人に近い数の流行が見られたが、緊急接種などが行われて沈静化し、1956(昭和31)年以降には国内での発生は見られておらず、1976(昭和51)年以降、種痘は行われていないそうだ。 現在、天然痘ウイルスはアメリカとロシアのバイオセイフティーレベル(BSL)4の施設で厳重に保管されている。
しかし、今、テロリストたちによる生物兵器に天然痘ウイルスが使用される危険性が懸念されているという。・・・オウム事件じゃないが、もし、テロリストに都市部で天然痘ウイルスを播かれたらどうなるのだろうか?・・・・。考えただけでゾットするが、このようなことへの予防や対応措置は講じられているのだろうか・・心配である。
(画像は、「デーモンズ・アイ―冷凍庫に眠るスーパー生物兵器の恐怖」リチャード プレストン 著、真野 明裕 翻訳。)
参考:
天然痘 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A9%E7%84%B6%E7%97%98
国立感染症研究所 感染症情報センター
http://idsc.nih.go.jp/disease/smallpox/index.html
痘瘡(天然痘)について /横浜市衛生研究所感染症・疫学情報課 
http://www.city.yokohama.jp/me/kenkou/eiken/infection_inf/smallpox1.htm
おくすり博物館/薬と歴史シリーズ第三弾
http://www.tpa-kitatama.jp/museum/museum_12.html
IDWR: 感染症の話 天然痘
http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k01_g3/k01_40/k01_40.html
日本医事史抄
http://www.osaka-minami-med.or.jp/ijisi/ijishi01.html