1998(平成10)年の今日(12月2日)、ユネスコの第22回世界遺産委員会京都会議で、『古都奈良の文化財』が世界遺産リストに登録されることが決定した。奈良県内では1993(平成 5)年の『法隆寺地域の仏教建造物』についで2番目であり、 日本で9件目の世界遺産(文化遺産)として登録された。
この時の『古都奈良の文化財』として登録されたは、①東大寺(正倉院含む)、②興福寺、③春日大社、④元興寺、⑤薬師寺、⑥唐招提寺、⑦平城宮跡 、⑧春日山原始林 の8資産である。 世界遺産(文化遺産)としての価値を判断するためには6つの基準が有るが、そのうち、4つの基準に合っていたようだ(適合していた4つの基準つまり(1)、(5)以外の(2)、(3)、(4) 、(6)は、世界遺産登録基準参照)。
世界遺産に登録された中の、①~⑥には国宝建造物があり、敷地が史跡に指定されており、⑦~⑧は、特別史跡・ 特別天然記念物に指定されている。注目される点は、◎春日山原始林が、春日大社と一体となって形成される文化的景観の例として、登録されたこと。この文化的景観としての登録はわが国では初めてであること。◎平城宮跡が、わが国で初めて遺跡の分野で登録されたこと。◎正倉院正倉が国宝に指定され、東大寺の建造物群に含まれて登録されたことであり、皇室の財産が登録されたのもわが国で初めてのことである。
世界遺産とは、1972(昭和47)年のユネスコ総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(世界遺産条約)に基づいて、世界遺産リストに登録された遺跡や景観そして自然など、人類が共有すべき普遍的な価値をもつものを指す。
今回の世界遺産リストへの登録は、『古都奈良の文化財』という名称が示している通り、8遺産全体で物語っている奈良の歴史や文化の特質が評価されたもので、これら全体がひとつの文化遺産として登録されたといるのだろう。現在、日本の世界遺産に登録されているものは、文化遺産では、今年(2007年6月)に登録された『石見銀山遺跡とその文化的景観』を含め11件。自然遺産では、やはり今年 (2005年7月)登録された 知床を含め3件の計14件が登録されている。(詳細は、日本の世界遺産参照)
世界遺産の登録の意義は、世界遺産一覧表に記載されることで、日本の貴重な文化財の価値が国際的に評価されるとともに、登録を目指す過程で、地域における総合的な文化財保護の取組が格段に充実することにある。「東西文明交流に影響を与え、自然と調和した文化的景観を形作っている、世界に類を見ない鉱山である」として、「石見銀山遺跡とその文化的景観」の世界遺産登録を目指し、昨・2006(9平成18)年1月にUNESCO世界遺産委員会に推薦書を提出していたが、登録候補を審査するUNESCOの諮問機関である国際記念物遺跡会議(ICOMOS)が、遺跡の普遍的価値の証明が不十分であることを理由に「登録延期が適当」と勧告。日本政府や地元も「世界遺産への登録は極めて厳しい」と判断していたが、今年6月、その予想を覆す「逆転登録」で注目された。この世界文化遺産入りにより、国内各地では、後に続けという動きが相次いでいるが、そこには指摘されている通り、「まちおこし」や「観光」の起爆剤に、という思いも見え隠れしている。事実、世界遺産登録以降、石見銀山遺跡(島根県大田市大森)を訪れる観光客が急増している。 (以下参考に記載の石見銀山HP参照)
しかし、石見銀山遺跡や2004(平成16)年7月に登録された『紀伊山地の霊場と参詣道』(和歌山、奈良、三重)のように、欧米からの観光客・参拝者がみられるなど登録を機に知名度が高まり観光客が大きく伸びているところもあるが、古都奈良の文化財(奈良)などのように、もともと有名な観光地では登録後も観光客は伸びずに横ばいのようである。しかし、伸びているところは観光による経済効果は大きいものの、その一方で、車の渋滞や農地の耕作放棄で昔ながらの景観が失われているとの指摘もある。
日本の国際観光の現状を見ると、日本人の海外旅行者数が、1754万人(2006年)に対して、日本へ訪れる外国人旅行者数は、733万人(2006年)と、日本人海外旅行者数の42%というアンバランスな状況にあるようだ。人口減少、少子・高齢化社会を迎えた日本社会の経済活性化の切り札として、国際観光の推進が今、注目を集めている。
そこで、国土交通省が中心となって、日本に訪れる外国人旅行者を2010年までに年間1000万人にする目標に向けて「ビジット・ジャパン・キャンペーン」を展開しており、本・2007(平成19)年1月には、1963(昭和38)年に制定された観光基本法を約40年ぶりに全面改正し、「観光立国推進基本法」が施行された。これは、観光を21世紀における日本の重要な政策の柱として明確に位置付け、観光交流人口の拡大により日本の再生を目指しているものであり、観光立国の推進は、日本の歴史的、文化的価値を再認識するプロセスであるともいえる。
このような中で、世界遺産が「世界級観光地認定」のように受け止められがちなのではあるが、世界遺産条約の目的は、かけがえのない遺産の保護。調査や資金援助などの努力を求めてはいるが、観光につながる条文があるわけではない。
世界遺産登録に努力するのも大事なこっとではあるが、しかし、もっと重要なことは、何でもかでも西洋文明にばかり目を向けている今の日本人に対して、もっと、自分の国の文化の良さを気付かせる努力の方が重要ではないか。そして、世界遺産に登録されたものだけではなく、それから洩れたものであっても、そのかけがえのない遺産を守っていけるように地域住民への啓蒙と援助をしてゆくべくだろうと思う。
(画像は、東大寺大仏殿。フリー百科事典Wikipediaより)
世界遺産 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%96%E7%95%8C%E9%81%BA%E7%94%A3
社団法人日本ユネスコ協会連盟
http://www.unesco.or.jp/contents/isan/index.html
世界遺産資料館
http://homepage1.nifty.com/uraisan/
石見銀山HP
asahi.com:「逆転」石見にあやかれ 世界遺産、登録はゴール?
http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY200707030199.html
216号:国際化の潮流:奈良県観光産業の強化
http://www.clair.or.jp/j/forum/forum/chouryu/216/index.html#top
人口- Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E5%8F%A3
観光立国推進基本法 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A6%B3%E5%85%89%E7%AB%8B%E5%9B%BD%E6%8E%A8%E9%80%B2%E5%9F%BA%E6%9C%AC%E6%B3%95
ビジット・ジャパン・キャンペーン - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%83%B3
この時の『古都奈良の文化財』として登録されたは、①東大寺(正倉院含む)、②興福寺、③春日大社、④元興寺、⑤薬師寺、⑥唐招提寺、⑦平城宮跡 、⑧春日山原始林 の8資産である。 世界遺産(文化遺産)としての価値を判断するためには6つの基準が有るが、そのうち、4つの基準に合っていたようだ(適合していた4つの基準つまり(1)、(5)以外の(2)、(3)、(4) 、(6)は、世界遺産登録基準参照)。
世界遺産に登録された中の、①~⑥には国宝建造物があり、敷地が史跡に指定されており、⑦~⑧は、特別史跡・ 特別天然記念物に指定されている。注目される点は、◎春日山原始林が、春日大社と一体となって形成される文化的景観の例として、登録されたこと。この文化的景観としての登録はわが国では初めてであること。◎平城宮跡が、わが国で初めて遺跡の分野で登録されたこと。◎正倉院正倉が国宝に指定され、東大寺の建造物群に含まれて登録されたことであり、皇室の財産が登録されたのもわが国で初めてのことである。
世界遺産とは、1972(昭和47)年のユネスコ総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(世界遺産条約)に基づいて、世界遺産リストに登録された遺跡や景観そして自然など、人類が共有すべき普遍的な価値をもつものを指す。
今回の世界遺産リストへの登録は、『古都奈良の文化財』という名称が示している通り、8遺産全体で物語っている奈良の歴史や文化の特質が評価されたもので、これら全体がひとつの文化遺産として登録されたといるのだろう。現在、日本の世界遺産に登録されているものは、文化遺産では、今年(2007年6月)に登録された『石見銀山遺跡とその文化的景観』を含め11件。自然遺産では、やはり今年 (2005年7月)登録された 知床を含め3件の計14件が登録されている。(詳細は、日本の世界遺産参照)
世界遺産の登録の意義は、世界遺産一覧表に記載されることで、日本の貴重な文化財の価値が国際的に評価されるとともに、登録を目指す過程で、地域における総合的な文化財保護の取組が格段に充実することにある。「東西文明交流に影響を与え、自然と調和した文化的景観を形作っている、世界に類を見ない鉱山である」として、「石見銀山遺跡とその文化的景観」の世界遺産登録を目指し、昨・2006(9平成18)年1月にUNESCO世界遺産委員会に推薦書を提出していたが、登録候補を審査するUNESCOの諮問機関である国際記念物遺跡会議(ICOMOS)が、遺跡の普遍的価値の証明が不十分であることを理由に「登録延期が適当」と勧告。日本政府や地元も「世界遺産への登録は極めて厳しい」と判断していたが、今年6月、その予想を覆す「逆転登録」で注目された。この世界文化遺産入りにより、国内各地では、後に続けという動きが相次いでいるが、そこには指摘されている通り、「まちおこし」や「観光」の起爆剤に、という思いも見え隠れしている。事実、世界遺産登録以降、石見銀山遺跡(島根県大田市大森)を訪れる観光客が急増している。 (以下参考に記載の石見銀山HP参照)
しかし、石見銀山遺跡や2004(平成16)年7月に登録された『紀伊山地の霊場と参詣道』(和歌山、奈良、三重)のように、欧米からの観光客・参拝者がみられるなど登録を機に知名度が高まり観光客が大きく伸びているところもあるが、古都奈良の文化財(奈良)などのように、もともと有名な観光地では登録後も観光客は伸びずに横ばいのようである。しかし、伸びているところは観光による経済効果は大きいものの、その一方で、車の渋滞や農地の耕作放棄で昔ながらの景観が失われているとの指摘もある。
日本の国際観光の現状を見ると、日本人の海外旅行者数が、1754万人(2006年)に対して、日本へ訪れる外国人旅行者数は、733万人(2006年)と、日本人海外旅行者数の42%というアンバランスな状況にあるようだ。人口減少、少子・高齢化社会を迎えた日本社会の経済活性化の切り札として、国際観光の推進が今、注目を集めている。
そこで、国土交通省が中心となって、日本に訪れる外国人旅行者を2010年までに年間1000万人にする目標に向けて「ビジット・ジャパン・キャンペーン」を展開しており、本・2007(平成19)年1月には、1963(昭和38)年に制定された観光基本法を約40年ぶりに全面改正し、「観光立国推進基本法」が施行された。これは、観光を21世紀における日本の重要な政策の柱として明確に位置付け、観光交流人口の拡大により日本の再生を目指しているものであり、観光立国の推進は、日本の歴史的、文化的価値を再認識するプロセスであるともいえる。
このような中で、世界遺産が「世界級観光地認定」のように受け止められがちなのではあるが、世界遺産条約の目的は、かけがえのない遺産の保護。調査や資金援助などの努力を求めてはいるが、観光につながる条文があるわけではない。
世界遺産登録に努力するのも大事なこっとではあるが、しかし、もっと重要なことは、何でもかでも西洋文明にばかり目を向けている今の日本人に対して、もっと、自分の国の文化の良さを気付かせる努力の方が重要ではないか。そして、世界遺産に登録されたものだけではなく、それから洩れたものであっても、そのかけがえのない遺産を守っていけるように地域住民への啓蒙と援助をしてゆくべくだろうと思う。
(画像は、東大寺大仏殿。フリー百科事典Wikipediaより)
世界遺産 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%96%E7%95%8C%E9%81%BA%E7%94%A3
社団法人日本ユネスコ協会連盟
http://www.unesco.or.jp/contents/isan/index.html
世界遺産資料館
http://homepage1.nifty.com/uraisan/
石見銀山HP
asahi.com:「逆転」石見にあやかれ 世界遺産、登録はゴール?
http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY200707030199.html
216号:国際化の潮流:奈良県観光産業の強化
http://www.clair.or.jp/j/forum/forum/chouryu/216/index.html#top
人口- Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E5%8F%A3
観光立国推進基本法 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A6%B3%E5%85%89%E7%AB%8B%E5%9B%BD%E6%8E%A8%E9%80%B2%E5%9F%BA%E6%9C%AC%E6%B3%95
ビジット・ジャパン・キャンペーン - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%83%B3