今日（6月1日）は「写真の日」
社団法人日本写真家協会は1951(昭和26)年に、写真の日制定委員会（梅本貞雄ら）を開き、6月1日を「写真の日」と制定し今日に至っている。
しかし、その制定根拠とした『東京日の出新聞』1902(明治35)年4月6日から27日まで19回にわたって連載された鈴木天眼筆の「日本写真の起源」で、上野彦馬（うえのひこま1838～1904）に関する写真事暦に「1841（天保12）年にオランダ人から長崎にもたらされ、島津斉彬を写した…」および、1907（明治40）年の松木弘安筆の『寺島宗則自伝』に「1841(天保12)年上野俊之丞(上野 彦馬父)と鹿児島に同行し、6月1日に島津斉彬を撮影…」との記述を基に制定されたが、その後の調査でこれらの事柄が誤りであることが確認されている。(松木弘安については、以下参考の「松木弘安…近代化や外交に手腕」参照）
しかしながら、当協会はこの6月1日を引き続き「写真の日」として、表彰事業や「東京写真月間」などの各種の写真行事を行っている。なお、わが国に写真が渡来したのは嘉永年間とされ、最初に、ダゲレオタイプ（銀板写真）の撮影が成功したのは、1857（安政4）年9月17日に、薩摩藩士の市来四郎、宇宿彦右衛門らが藩主島津斉彬を撮影したもので、現在鹿児島の尚古集成館に保存されている(写真以下参考の「小さなミュージアム尚古集成館」で見れる）。
1999（平成11）年4月、この銀板写真が写真初の重要文化財として文化庁より指定を受けた。（社団法人 日本写真協会:6月1日「写真の日」について・・より）
まあ、日本初といわれる記念日には、結構いい加減なものもあるのではあるが、この手の記念日は、記録なども曖昧なようであり、どの日が、本当に正しいのかなどは、正直よくわからないのではないだろうか。
「写真」の原理は古くから知られ、レオナルド・ダ・ヴィンチのメモにも「カメラ・オブスクラ」として出ているという。このカメラ・オブスクラ（暗箱）の原理と感光材料を結びつけた「写真術」（photographie）の発明者は、フランスのニエプス（1765～1833）で、後に彼の研究を引き継いだダゲール（1787～1851）が、ダゲレオタイプの名で知られる銀板写真法を開発（1839）し、日本へは、それが1848(嘉永元)年に長崎出島を経て薩摩藩にもたらされたと言われている。その後、洋学のさかんな藩において、洋学者たちによって原理と技術が翻訳・研究され、また新たに考案されたガラスネガを用いる湿板写真の技術が伝わって、幕末から明治初年にかけ、またたく間に写真は日本全国に広まったという。そして、有名な坂本龍馬の肖像写真を撮影した上野彦馬が長崎に「上野撮影局」を開業、横浜にも下岡蓮杖（しもおかれんじょう1823～1914）が写真館を開業、彼等が日本最初の職業写真師といわれているがどちらが先かはよくわからない。又、幕末から明治初年にかけて、外国人も含め多くの写真師が写真館を開業したが、なかでも1866 (慶應2 )年に来日したイタリア生まれ英国籍のフェリックス・ベアトの名がよく知られており、「攘夷」の時代にもかかわらず、徳川慶喜の肖像撮影に成功した他、きわめて貴重な当時の日本各地の風景写真を残している。(以下参考に記載の「フェリックス・ベアトと写真とは 」参照)
私は、何時だったか、神戸市立博物館での「蘇る幕末展」と題した、写真展を見に行ったことがある。その時、記念に、写真集（1986年版）を買っていたので、今、それを見直してみると彼等の写真が、多数掲載されており新たな感動を受けている。
写真集にも書いてあるが、当時、来日した外国人は、日本特有の風俗や習慣に驚きの目を見張ったであろう。中でも、日本の男性のチョンマゲ姿を見て「日本の男子はみんな頭にピストルをつけているのではないか」といって驚いたというが、東洋のあちこちを見て回った外国人にとっても、その姿は異様であったのだろう。それに、日本へ来た外国人は、殆どが男性であるため、日本の女性も彼等の興味の対象であり、日本女性の黒髪や涼しい目、穏やかな態度など礼賛しているが、女性の真っ黒な「おはぐろ」や眉毛をそり落とした顔は見るに耐えなかったらしい。色々な風景や風俗の写真も撮られているが、興味があったのであろう武士や女性の写真が多い。又、開国向けに撮った写真などにはヤラセ的なものもある。
写真は、貴重な歴史の記録である。幕末期の風俗など、彼等が撮った貴重な写真で推測できる。
私は、絵葉書や古雑誌のコレクションをしているが、古本屋さんなどで、絵葉書を探している人にはいろんな風俗や建築物などの研究をしている人が多い。残念ながら、日本では、これら等の写真の記録が、過去ないがしろにされてきた。又、第二次大戦などによる消失もあるだろう。そのため、今残っている古雑誌や絵葉書などが貴重な資料ともなっている。
写真はその時代の記録である。大切にしたいと思う。
（画像は、日本の写真の開祖といわれている、上野彦馬（中央）と塾生たち。右後ろが弟の幸馬。写真集「蘇る幕末」より）
参考：
社団法人 日本写真協会:6月1日「写真の日」について
http://www.psj.or.jp/gekkan/about/gekkan2003.html
江戸・明治幻景～館蔵古写真とその周辺～ （主催 早稲田大学図書館 ）
http://www.wul.waseda.ac.jp/TENJI/exb/2003exb01.html
幕末写真館
http://www.dokidoki.ne.jp/home2/quwatoro/bakumatu.shtml
写真の歴史
http://www.geocities.jp/capa1413/photohist.html
写真 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%99%E7%9C%9F
フェリックス・ベアトと写真とは - 厚木市
http://www2.city.atsugi.kanagawa.jp/broadband/archives/felix/page_4605.html
小さなミュージアム尚古集成館
http://www.nishinippon.co.jp/media/news/0008/museum/26/26.html
松木弘安…近代化や外交に手腕（鹿児島県阿久根市）
http://kyushu.yomiuri.co.jp/magazine/katari/0701/kt_701_070106.htm
社団法人日本写真家協会は1951(昭和26)年に、写真の日制定委員会（梅本貞雄ら）を開き、6月1日を「写真の日」と制定し今日に至っている。
しかし、その制定根拠とした『東京日の出新聞』1902(明治35)年4月6日から27日まで19回にわたって連載された鈴木天眼筆の「日本写真の起源」で、上野彦馬（うえのひこま1838～1904）に関する写真事暦に「1841（天保12）年にオランダ人から長崎にもたらされ、島津斉彬を写した…」および、1907（明治40）年の松木弘安筆の『寺島宗則自伝』に「1841(天保12)年上野俊之丞(上野 彦馬父)と鹿児島に同行し、6月1日に島津斉彬を撮影…」との記述を基に制定されたが、その後の調査でこれらの事柄が誤りであることが確認されている。(松木弘安については、以下参考の「松木弘安…近代化や外交に手腕」参照）
しかしながら、当協会はこの6月1日を引き続き「写真の日」として、表彰事業や「東京写真月間」などの各種の写真行事を行っている。なお、わが国に写真が渡来したのは嘉永年間とされ、最初に、ダゲレオタイプ（銀板写真）の撮影が成功したのは、1857（安政4）年9月17日に、薩摩藩士の市来四郎、宇宿彦右衛門らが藩主島津斉彬を撮影したもので、現在鹿児島の尚古集成館に保存されている(写真以下参考の「小さなミュージアム尚古集成館」で見れる）。
1999（平成11）年4月、この銀板写真が写真初の重要文化財として文化庁より指定を受けた。（社団法人 日本写真協会:6月1日「写真の日」について・・より）
まあ、日本初といわれる記念日には、結構いい加減なものもあるのではあるが、この手の記念日は、記録なども曖昧なようであり、どの日が、本当に正しいのかなどは、正直よくわからないのではないだろうか。
「写真」の原理は古くから知られ、レオナルド・ダ・ヴィンチのメモにも「カメラ・オブスクラ」として出ているという。このカメラ・オブスクラ（暗箱）の原理と感光材料を結びつけた「写真術」（photographie）の発明者は、フランスのニエプス（1765～1833）で、後に彼の研究を引き継いだダゲール（1787～1851）が、ダゲレオタイプの名で知られる銀板写真法を開発（1839）し、日本へは、それが1848(嘉永元)年に長崎出島を経て薩摩藩にもたらされたと言われている。その後、洋学のさかんな藩において、洋学者たちによって原理と技術が翻訳・研究され、また新たに考案されたガラスネガを用いる湿板写真の技術が伝わって、幕末から明治初年にかけ、またたく間に写真は日本全国に広まったという。そして、有名な坂本龍馬の肖像写真を撮影した上野彦馬が長崎に「上野撮影局」を開業、横浜にも下岡蓮杖（しもおかれんじょう1823～1914）が写真館を開業、彼等が日本最初の職業写真師といわれているがどちらが先かはよくわからない。又、幕末から明治初年にかけて、外国人も含め多くの写真師が写真館を開業したが、なかでも1866 (慶應2 )年に来日したイタリア生まれ英国籍のフェリックス・ベアトの名がよく知られており、「攘夷」の時代にもかかわらず、徳川慶喜の肖像撮影に成功した他、きわめて貴重な当時の日本各地の風景写真を残している。(以下参考に記載の「フェリックス・ベアトと写真とは 」参照)
私は、何時だったか、神戸市立博物館での「蘇る幕末展」と題した、写真展を見に行ったことがある。その時、記念に、写真集（1986年版）を買っていたので、今、それを見直してみると彼等の写真が、多数掲載されており新たな感動を受けている。
写真集にも書いてあるが、当時、来日した外国人は、日本特有の風俗や習慣に驚きの目を見張ったであろう。中でも、日本の男性のチョンマゲ姿を見て「日本の男子はみんな頭にピストルをつけているのではないか」といって驚いたというが、東洋のあちこちを見て回った外国人にとっても、その姿は異様であったのだろう。それに、日本へ来た外国人は、殆どが男性であるため、日本の女性も彼等の興味の対象であり、日本女性の黒髪や涼しい目、穏やかな態度など礼賛しているが、女性の真っ黒な「おはぐろ」や眉毛をそり落とした顔は見るに耐えなかったらしい。色々な風景や風俗の写真も撮られているが、興味があったのであろう武士や女性の写真が多い。又、開国向けに撮った写真などにはヤラセ的なものもある。
写真は、貴重な歴史の記録である。幕末期の風俗など、彼等が撮った貴重な写真で推測できる。
私は、絵葉書や古雑誌のコレクションをしているが、古本屋さんなどで、絵葉書を探している人にはいろんな風俗や建築物などの研究をしている人が多い。残念ながら、日本では、これら等の写真の記録が、過去ないがしろにされてきた。又、第二次大戦などによる消失もあるだろう。そのため、今残っている古雑誌や絵葉書などが貴重な資料ともなっている。
写真はその時代の記録である。大切にしたいと思う。
（画像は、日本の写真の開祖といわれている、上野彦馬（中央）と塾生たち。右後ろが弟の幸馬。写真集「蘇る幕末」より）
参考：
社団法人 日本写真協会:6月1日「写真の日」について
http://www.psj.or.jp/gekkan/about/gekkan2003.html
江戸・明治幻景～館蔵古写真とその周辺～ （主催 早稲田大学図書館 ）
http://www.wul.waseda.ac.jp/TENJI/exb/2003exb01.html
幕末写真館
http://www.dokidoki.ne.jp/home2/quwatoro/bakumatu.shtml
写真の歴史
http://www.geocities.jp/capa1413/photohist.html
写真 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%99%E7%9C%9F
フェリックス・ベアトと写真とは - 厚木市
http://www2.city.atsugi.kanagawa.jp/broadband/archives/felix/page_4605.html
小さなミュージアム尚古集成館
http://www.nishinippon.co.jp/media/news/0008/museum/26/26.html
松木弘安…近代化や外交に手腕（鹿児島県阿久根市）
http://kyushu.yomiuri.co.jp/magazine/katari/0701/kt_701_070106.htm