伊東静雄「夏の終り」全文
半切三分の一
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この詩は、ぼくが高校生の頃、国語の教科書に載っていて
それ以来、伊東静雄が好きになったのでした。
ちょうど、今は、夏の終わりを感じるので、書いてみました。
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本文は以下の通りです。
夏の終り
夜来の颱風にひとりはぐれた白い雲が
気のとほくなるほど澄みに澄んだ
かぐはしい大気の空をながれてゆく
太陽の燃えかがやく野の景観に
それがおほきく落す静かな翳は
……さよなら……さやうなら……
……さよなら……さやうなら……
いちいちさう頷く眼差のやうに
一筋ひかる街道をよこぎり
ちひさく動く行人をおひ越して
しづかにしづかに村落の屋根屋根や
樹上にかげり
……さよなら……さやうなら……
……さよなら……さやうなら……
ずつとこの会釈をつづけながら
やがて優しくわが視野から遠ざかる