この著者の作品は、読み出すとはまって止まらなくなるものと、
いまいち良さが解らないものがありますが、こちらは前者でした。
「純子」と「女童」は後者でした。
本書では、雑だったり荒っぽいところがあっても基本的には善良なのにも関わらず、
今の時代では経済的な見返りをそれ程得られない魚の一本釣りの技術を持つ漁師の人たちが、
よそから来た人からより大きな仕掛けを提示され、
それによって経済的な豊かさと社会的な立場を得られそうになり、それに呑まれて
その中で利用されていくところは、「らんちう」とも通じるところがありました。
外からきて新たなことを考えて提示する人達は、外のもっと冷酷な世界でもまれてきた人なので、
漁師の人たちには想像も出来ないやり方で、自分たちの事業の駒としてどんどん呑み込んで行っていました。
日本の様々な衰退している産業では、いろいろなことが起こっていて、
それを著者は見てきているのだろうと思わせる内容でした。