本書は、ユング派臨床家ギーゲリッヒの「Leap into solid stone」に影響を受けたものと著者はしているが、
硬い石に飛び込むと、飛び込んだほうも元の形を保っていられない事から解るように、
本書の内容も、様々な先行する研究や、著者の研究を通して浮かんできた来たものにより、
著者が変容する過程で生成していったものだろう。
著者が様々な研究や臨床経験の中で浮かんできたものにより、本人もかなり影響を受けて、
もとの本人のあり方も変化して、その中で得たものが本書の成立につながったのだろう。
それについては、ユング派分析家の織田尚生氏の「変容的逆転移」を思い起こさせる。
これまでの臨床で、クライアントが抱えて処理できないものを著者が担い、
クライアントの代わりに著者が変容し、それをクライアントに返して、変容に繫がるということが
起きた過程を描いているという側面も大きいのだろう。
認知行動療法のような、治療者がクライアントに働きかけて、変容を促すというものとは、
根本的に違うことだろう。