クライアントが親から勉強することを強く求められたり、
習い事をいくつもさせられていたり、いい大学に入り社会的に上昇することを求められたり、
潔癖であることを求められたりする背景には、親が祖父母などからそのように求められたり
されていたという背景があることが多いのだろう。
祖父母の世代には、日本社会が貧しかったので、その世代では満たされなかったことを、
自分の代わりに子供には手に入れてもらおう、として子供の能力や特性を考えずに
接することが多かったのだろう。
さらに祖父母の世代は何かを学んだり得たりする機会が少なかった人が多かったが、
次の世代では様々な機会が得られる時代になったので、子供の特性を考えずに
どんどんさせていたことが多そうである。
また、祖父母の時代には体罰なども普通だったので、自分の子供にもそのように
接する人も多かったようだ。
そして当時は女性が働いて十分な賃金や立場を得られる機会が少なかったので、
嫌々夫との結婚生活を続ける人も多かったと思われる。
そのような親に育てられた人たちは、その鬱屈や屈辱感と、目的のためなら人の気持ちや権利、
特性を無視して接するという態度を自分の子供に向けて、
自分の子供の向き不向きを考えずに様々なことをやらせ、子供に大きな悪影響を与えていそうである。
そのように考えると、単にクライアントに社会的スキルが欠けているから学ばせる、
何らかの症状があるのでそれを解消しようとする、などのスタンスで治療者が関わっても、
何世代かの影響で症状や特性が出ていることを変えることは難しいだろう。
精神科医の中井久夫氏も、患者さんを診るときは三世代位前のことまで視野に入れて
接していたとの事である。
進学校では、受験での得点につながらない近現代史をあまり教えなかったりすることも、
クライアントやその家族の社会や歴史との関りや影響を見えにくくしている要因だろう。