a先生が授業中に言っていたことによると、兄の方は父親に反発して、
ドアをバンと閉めたりしていたが、それを見ていたa先生の方は、
「あんな事をしても何も変わらないのに」と思い見ていたそうだ。
酔って暴れる父親に対する怒りや反感も感じないくらい自分というものが成り立っていなかったのか、
諦めていたのかは解らないが、怒りや反感も感じなくなるほどの状態は、
反発する兄より大変だったのだろう。
とりあえず学校の勉強などをして現状をやり過ごそうという、ある種の麻痺状態だったのだろう。
そのようなあり方は親などに対して、言いなりになっている状態なのだろう。
『自閉症だった私へ』(ドナ・ウイリアムズ)の中で、ドナはアルコール依存症の男に
あちこち連れ回されていた時のことを書いていますが、身近なことへの怒りや反感を感じたり、
それを表現することに困難があると、自分の置かれた状況から抜け出しにくくなるのでしょう。
ドナの場合はソーシャルワーカーか何かの人にとりあえず脱出することを勧められ、
その男の元を去りますが、その様なアドバイスをしてくれる人がいなかったり、
出ていく先が無かったり、取り敢えず暮らすのに必要なお金がないと、その状況から抜け出せず、
更に困難なことになったのでしょう。