ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

「評決」 バリー・リード

2006-07-31 10:08:56 | 
ポール・ニューマン主演の映画のほうが有名かもしれない。でも、私は原作の小説のほうが好きです。

人間、なにがきっかけで人生が変わるか分からないものです。勝つ見込みの極めて少ない裁判。しかもアル中気味で、落ち目の弁護士が超大企業と大物弁護士を抱えた巨大な法律事務所を相手取っての戦い。重苦しい雰囲気すら漂うなかで、依頼者のため、また自身の矜持をかけて戦う、さえない中年弁護士の姿は、悲壮感すら感じざる得ない。

初めて読んだのは、かれこれ二十年以上前ですが、いまだに脳裏に深く焼きついている作品です。特に最後の場面で、意識のない恩師に声をかけ続ける主人公の姿が忘れがたい。誰よりも立ち直った自分の姿を見て欲しい相手に、届かぬ声を投げかけ続けるエンディングは、忘れがたいものがあります。

映画では、この一番好きな場面がうまく表現されていない。そこが不満です。多分、映画では裁判に勝つシーンに力点を置いたのでしょう。アメリカらしい気もしますが、でも作者の真意はエンディングこそにあったのではないか?私はそう信じています。
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「マフィアへの挑戦」 ドン・ペンドルドン

2006-07-29 16:06:01 | 
この本に出会うまで、私は普通の読書好きだったと思う。歴史小説、推理小説、SF小説、動物小説と一月に7~9冊程度読む、ちょっと素行の悪い普通の中学生だった。

偶然本屋の棚から手に取った表題の本が私を狂わせた。今まで味わったことのない熱狂。当時既に十数巻刊行されていたが、新刊が出るたびに買い求めていた。これまでは学校の図書室で借りるか、古本屋での3冊100円本しか自分では買わなかったのだが、このシリーズだけは新書で買っていた。

正直、中学生には刺激が強すぎたと思う。ベトナムから呼び戻された狙撃兵マック・ボランが、故郷に帰るとマフィアに蹂躙された家族の悲惨な姿を目にする。深く静かに燃え上がる復讐の怨念が、ワンマン・アーミーと呼ばれた男の壮絶な戦いの幕を開けさせる。激高するでもなく、狂乱に喘ぐでもなく、悲壮感を押し殺してクールに戦う姿には、男として憧れを感じざる得ませんでした。当時、私にとっては最高のヒーローでした。

以来、読書熱に火がついて、二日で最低一冊文庫本を読破する毎日が始まりました。その大半がいわゆるハードボイルド小説。ハメット、マクドナルド、大藪春彦、西村寿行、平井和正ととりつかれたが如く読みまくったものです。ほぼ一年後、庄野潤三を読み落ち着くまで、この狂乱の濫読は続いたから、今考えても驚異です。当然、勉強なんてやるわきゃない。TVを観なくなったのもこの頃からです。

正確な記録は残っていませんが、当時図書室で借りた本が、一年間で100冊を超えて、先生から表彰された記憶があります。それ以外にも読んでいたので、おそらくは年間200冊前後は読んでいたと思います。

少し偏りすぎた読書であったと思い、以後はなるべく幅広く読書の裾野を広げるよう努めています。しかし、当時あれほど熱狂できたことには、自身羨望の想いすらあるほどです。もう、あれほどまでに読書に夢中になることはありません。

なんとなく寂しい気もしますが、年齢を積み重ねることにより、読書の味わい方も深まりましたから、これはこれで善しとしましょう。
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「警官嫌い」 エド・マクベイン

2006-07-28 15:11:56 | 
初めて「お巡りさん」を意識したのは何時だろう?

普通の子供は迷子になって交番に連れて行かれた時だと思う。私もご多分に漏れず、よく迷子になった。一人で勝手にチョコマカ動き回るからだ。でも、大概はデパートや遊園地の迷子のコーナーだった気がする。交番に、迷子でお世話になった記憶はない。そう、迷子では・・・だ。

実のところ、交番やお巡りさんにはあまいいい記憶がない。大概は何か問題を起こして、交番に連れ込まれたか、警官に無理やり連れて行かれたかのとっちかだ。まあ、多くの場合問題を起こした私が悪いのだが、だからといって「お巡りさん」を好きになるはずがない。

そんなわけで、子供の頃から「お巡りさん」は苦手だった。当然、TVの警察ものすら、あまり見なかった。「7人の刑事」とか「Gメン75」とかは微かに記憶にあるが、刑事なんぞ敵だと思っていたので、見る気になれなかった。

でも、推理小説は結構好きだった。探偵ものがほとんどで、どうも警官や刑事を主人公にしているものは、無意識に避けていた気がする。むしろ探偵が警察以上の活躍をしたり、怪盗ルパンが警察を出し抜くのが楽しみだったりする。

で、表題の作品だが、本来87分署シリーズの第一作であり、当然に刑事が主役の推理小説なのだが、タイトルが「警官嫌い」とあったので、ついつい読んでしまった。何を期待していたのかは、言うに及ばずだ。しかし、私の期待とは裏腹に、これは面白かった。はまってしまった。

面白いからイイじゃないかと、自分に言い訳しながら読んでいたのが滑稽だった。でも、警察嫌いを忘れるほど夢中になって読んでいた。さすがに自分も刑事になろうとは考えなかったのが、私の依怙地なところだ。

当たり前のことだが、刑事も警官も一人一人個性のある人間であり、弱みもあれば、ドラマもある。組織に縛られ、途絶えぬ犯罪に振り回され、家庭につけを回さざる得ない苦しみもある。そんな刑事たちの人間ドラマを描いた87分署シリーズは、私の警官嫌いを幾分か癒してくれた気がします。

ちなみに私は、キャレラ刑事の全盲の奥さんのファンでした。マイヤー・マイヤーも味のあるキャラクターで忘れがたい。主役が一人でないのも、新鮮な魅力でしたね。なお、著者のエド・マクベインは昨年逝去されました。合掌。
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「しばわんこの和のこころ」 川浦良枝

2006-07-27 15:02:25 | 
え~全国500万(多分、これくらい居るはずだ!!)のしばわんこファンの皆様方、おまたせしました。知っている人は知っているが、知らない人は是非書店へ。でも、大型店舗でないと扱っていないかもしれません。

キュートなしばわんこと、お茶目なみけにゃんこが日本の伝統文化、行事などをイラスト付きで紹介しているだけ。ただ、それだけなんですが、癒されます。和みます。

外国にショートステイする友人へ送ったり、日本に留学中の知人に送ったところ、たいへん評判が良かった本でもあります。イラスト、本当に綺麗だしね。

実際問題、日本でしか暮らしたことのない私ですが、案外日本の伝統文化には暗いところが多々ある。細かいところなんぞ、完全に忘れてる、あるいは知らない。

実のところ、私は子供の頃から煎餅はあまり好まず、日本茶は飲まない。神輿を担ぐのは好きだったが、祭りの意味は興味ない。夜店の屋台は好きだが、神社の存在は眼中にない。時代劇は見ないし、歌舞伎も落語も関心がない。そんな若者でした。

ところが年を重ね、おじさんと堂々と名乗れるくらいになると、不思議なことに、和菓子と日本茶(昔はコーヒーだった)に安らぎ、味噌汁(十代の頃は大嫌いだった)も自分で作るようになる。落ち着いたのか、保守化したのか分かりませんが、これはこれで結構幸せだったりする。

自然回帰じゃないけれど、やはり日本人は日本の文化に戻るものなのだなと、妙に納得しています。
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プロ野球オールスターゲーム

2006-07-26 17:08:37 | スポーツ
土曜日のゲームが雨で順延となったおかげで、久しぶりにオールスター戦をTVで観ました。

やっぱ、野球も面白い。藤川と清原の対決なんぞ、息を潜めて見入ってしまいました。渾身の直球と豪快なスイングに痺れましたね。それにしても藤川の直球は伸びる。これほど活きのいい速球を見たのは久しぶりな気がします。西武の渡辺富の全盛時を思い出しました。

9回に出てきたクルーンの160キロも凄いけど、藤川の切れのある速球もそれに劣らぬものだと思いました。やっぱり、オールスターは小細工なしの、力と技の勝負が楽しい。試合自体はセ・リーグの2勝で終わりましたが、気が付いたらセよりパの選手のほうが名前を知っていたのに、内心驚きました。セ・リーグってこんなに地味だったっけ?

それにしても、ロッテとソフトバンクの選手に元気というか、勢いが感じられなかったのは何故?最近、あまり野球を観てないので、事情に疎くなっています。本当は球場で生で観るのが一番なのだけれど、その機会がない。西武の松坂は、来年アメリカへ行ってしまいそうなので、その前に一度観て置きたい。彼の剛速球は、球場で観るとその風を切る音と相まって迫力満点なのです。観たいなあ~。

Y君、またチケット手に入らんのかい?
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