ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

外見で判じてはいけないのかもしれないが

2014-05-30 15:13:00 | 社会・政治・一般

緊張感がないというか、締まりのない顔つきだなァ。

それが片山被告の第一印象であった。TVや新聞で散々報道されている偽装メール事件の犯人とされた片山被告が、自らの無罪と冤罪を訴えた場面をTVで観たとき、この丸顔を観て、どうしても不信感を覚えざるを得なかった。

外見だけで判断するのは軽率かもしれないが、冤罪で訴えられたのなら、もっと怒りとか不信感とかが表情に現れたほうが自然だ。しかし、この青年、むしろ世間の耳目を集めていることに興奮しているかのような不自然さが感じ取れた。なんとなく、喜んでいるようにさえ思えてしまったのだ。

それは完全に有罪だとする物証に欠けた警察も同様だったのだと思う。だからこそ、密かに片山被告を追跡して、ついにスマートフォンを河原に埋める場面を捉えたのだろう。証拠はなくても、この男は黒(有罪)だとする確信が、現場を数多く踏んだ警察官にはあったのだと想像できる。

野生で育ったライオンの顔は、逆三角形となる。しかし、動物園で生まれ育ったライオンは、代を重ねるごとに顔つきが丸くなっていく。生存競争の厳しい野生で育ったライオンには、常に緊張感があり、顔つきも締まったものとなる。

しかし、基本的に外敵(ハイエナやケープバッファロウなど)に襲われる心配がなく、また常に餌が用意される動物園で育つとアフリカ最強の肉食獣でさえ締まりのない顔つきとなる。

片山被告がいかなる半生を送ってきたのか、私はまるで知らない。知らないが、おそらく学校でも会社でも中心にいることはなく、無難で安全な片隅にいたのではないかと思う。重い責任や錯綜する人間関係の軋轢の中心にいたことはなく、厳しさや過酷さとは無縁の成長期を送ってきたのではないか。

だからこそ無実の罪で4人が警察に捕まり、それが冤罪と分かり釈放され、警察幹部が謝罪したとき、密かに喝采を叫んでいたのではないかと邪推できる。江の島での猫の首輪の映像がきっかけで、自分が捕まった時でさえ世間の関心の中心にることに、悦楽さえ感じていたのではないかと私には思えてしまう。

この人、どこか自分が不遇な人生を送ってきたとの自覚があるように思う。だから、今回の事件で世間から注目された時も、それを恥じるよりも、怒るよりも、むしろそれを嬉しくさえ思っていたのではないか。

現場で数多くの犯罪者をみてきた警察は、この片山被告の態度に違和感を持ったに違いない。だからこそ保釈後も執拗に尾行を重ねたのだろう。そして、その勘に間違いはなく、ものの見事に間抜けなメール発信をやらかして、遂には自白に至った。

自白の場面をみたわけでもないが、おそらく片山被告はあまり罪悪感は感じておらず、むしろゲームが短期間で終わったことへの残念さの方が先だったのではないか。私にはそう思えてならない。

まだ有罪と確定したわけでもないのに、ひどく誹謗するのもどうかとは思うが、それでも私は思う。これほど犯罪者としての自覚がなく、自責もない愚かな犯罪者ははじめてみた。出来るなら、最初で最後にして欲しいものだ。

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料理人が多すぎる レックス・スタウト

2014-05-29 12:52:00 | 

アメリカではホームズよりも人気があるんだぜ。

そう教えてくれたのは、サンフランシスコの大学に留学したことがあるという大学生であった。私が参加していたキリスト教の集まりに途中から参加してきた男性であり、当時流行っていたヒッピー風のスタイルが目立つ人であった。

もっとも、アメリカ帰りを頻繁に主張するので、ちょっと浮いている人でもあった。そのことは、当時中学生であった私にも感じられたが、この人のアパートには、アメリカの推理小説が沢山あって、それを目当てに私はちょくちょく遊びにいった。

私が遊びに行くと、コーラにミントの葉をわざわざ浮かべた上にシナモンを加えた、ちょっと変わった味のジュースをふるまってくれるのが難点だが、とりあえず出せれたものは文句を言わずに飲み干した。(あんまり美味しくないけどね)

そのあとで原書のペーパーバックスのコレクションを見せてもらったり、なぜか墨消しがしていないアメリカ版のプレイボーイ誌を見せてもらったりしていた。でも、私の本命は、学校の図書室にはおいていないハードボイルドの推理小説だった。

私はここでマイク・ハマーやコンチネンタル・オプ、マーロウを知ったのだが、件の青年が言うにはアメリカで一番人気は、この安楽椅子探偵のネロ・ウルフなのだ。

美食を趣味とする巨漢であり、偏屈で我儘なうえに格好よさとか行動力とは無縁だが、その知性の煌めきは本物で、卓越した推理力をもって事件を解決する名探偵なのだという。そのとき紹介され、貸してもらったのが表題の作品である。

久々に読みたくなって手に取ってみた。多分40年ぶりくらいの再読である。ちょっと驚いたのは、1930年代のアメリカを舞台にしているだけに、女性蔑視や黒人差別が当たり前のように描かれていることだ。

そのせいだろうが、シリーズものとなるほどアメリカでは人気があったネロ・ウルフ探偵は、日本ではあまり知られていないように思う。この作品は珍しく出不精のウルフがNYを出て遭遇した事件を解決するものなのだが、ミステリーとしては十分に面白い。

ただ、なにせ出版元があの早川である。絶版も多いだけでなく、このシリーズも図書館か古本屋でしか入手できない。ひどい話である、これだけ面白い作品が日の目を浴びずにいるのである。

私は断固主張したい。早川書房は倉庫に眠らせている絶版作品を電子出版でいいから再販すべきだと。もし、この作品を手にする機会がありましたら是非とも読んで欲しいです。そして、こんな名作を眠らせる早川への怒りを共有して欲しいと切に願います。

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女子サッカー、アジア杯優勝

2014-05-28 15:45:00 | スポーツ

ダイジェストでは分からないよ。

女子サッカーは、近年ワールドカップで優勝したりと目覚ましい活躍を見せている。しかし、鬼門であったのがアジア大会であった。この大会だけは優勝したことがなかった。

ほんの十年前だと、アジアの女子サッカーは、中国と北朝鮮が圧涛Iに強く、日本は常に後塵を拝していた。だが、地道な強化策が功を奏し、アジアのみならず世界にも通用する華麗なパス・サッカーを展開するチームへの変貌を遂げた。

だからこそ、女子ワールドカップで優勝することができた。それでもアジアは容易ではない。だからこそ、これまで優勝が出来なかった。それだけに今回の優勝は苦難の末の結果であり、選手、監督ともどもご苦労様といいたい。

日曜日の遅い時間に行われたオーストラリアとの決勝戦は、視聴率が20%を超えたそうだが、私としてはベストの試合は準決勝の中国戦であった。おそらくTVのスポーツニュースのなかでは澤と岩清水の得点シーンしか放送していないので、あの緊迫感は伝わっていないと思われるのが残念だ。

率直に言ってかなりの苦戦であった。体格面で勝る中国は、技術的な向上著しく、何度攻め込んでも跳ね返され、逆にその鋭い攻撃で何度となく危機に陥った。ベテランの澤のヘディングによる得点のあと、中国にPKを取られたのも、あの鋭い攻撃ゆえである。

久々に手に汗握る、緊迫感に溢れた好試合であったと思う。しかし、最後の最後、延長後半終了間際、誰もがPK戦を覚悟しだしたころ、宮間のコーナーキックを岩清水がヘディングで合わせての決勝点。見事であった。

実力伯仲の日本と中国であったが、延長後半になると中国の選手の足が止まった。幾度となく日本の攻撃を跳ね返した中国の長身で屈強なCBの選手が足を引き攣らせていた。それだけ苦しかったのであろう。

一方、日本は川澄が最後の最後までよく走り、中国陣内に攻め込み、相手選手のスタミナを奪っていった。エースの大儀見をドイツのチームに戻した若手主体のFWは、まだまだ実力不足だが、それでもよく走った。この日本の攻撃が徐々に中国選手の体力を奪い、最終的には失点につながっている。

僅差の違いではあったが、その違いこそが日本を勝たしめたと云える。この実績が自信につながり、予選で引き分けたオーストラリアを破ってのアジア杯初優勝につながったのだと思う。

だが、まだまだ油断はできないことは、試合後の澤のコメントにも表れている。男子並みに正確なミドルパスを展開できる宮間と、大柄な欧州の選手にも負けない大儀見や、攻守にわたって絶妙なポジショニングをみせる澤、そして最後まで長い距離を走ってのドリブルで攻めた川澄らのベテランあってこそのチームであることが露呈した大会でもあった。

彼女らベテランを追い越すような若手の台頭は、ついに見ることが出来なかった。その意味での不安は残る。だが、あれだけ厳しい試合を勝ち抜いた経験は、若手を確実に育てるとも期待している。

私として残念なのは、TVのスポーツ番組での報道は、どうしても得点シーンに限られがちだ。それではあの試合の緊張感は伝わらないことだ。やはり、試合はダイジェストではダメだと痛感しました。試合はちゃんと観ましょうね。


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最後に一花咲かして欲しい

2014-05-27 12:41:00 | スポーツ

条件反射で背筋が伸びるから興味深い。

今月発表されたワールドカップ・ブラジル大会の正式メンバーの一人にサプライズで選ばれたのが、フロンターレ川崎の大久保嘉人である。

高校サッカーの古豪である長崎の国見高校の出身であり、セレッソ大阪やヴィッセル神戸、マジョルカなどでプレーしたが現在は川崎で活躍している。

実のところ、悩ましい選手であった。高校時代からエースFWであり、実績ある点取り屋でもある。日本のFW選手は、確実に点を取るように指導されるせいか、ペナルティエリアの中に入ってのシュートが多い。

ところが大久保は、ペナルティエリアの外からでも積極的にシュートを打つ。私は一時期、日本で一番ミドルシュートが上手いFWだと評していた。本人にも、その自覚があったのだろう。FWの癖にあまりゴール前にはおらず、サイドに流れたり、中盤まで下がっていたりと忙しない選手でもあった。

代表デビューは、ジーコ監督の頃だが、期待されている割に実績を残せないでいた。いや、むしろ失点の起点になる始末であった。なにせ、FWで途中出場したくせに、ゴール前にはおらず、サイドでボールを持ってウロウロ。そこを相手選手にボールを奪われて、攻め込まれての失点。

当時、大久保は出るたびになにかしらボケをやっていた。才能はあるのに、それをまるで活かせない。どうも、自分がなにをしたらよいかが分かっていなかった節が見受けられる。だから代表に呼ばれなくなるのも早かった。困ったヤンチャ坊主である。

海外でも目だった実績は残せず、日本に戻ってきたが、私が驚いたのは身体能力が向上したことだった。とにかく逞しくなり、力強くなり、なかなかボールを奪われない選手に育っていた。海外での二軍暮らしにも腐らず、地道なトレーニングを続けていたのだろう。

オシムと岡田監督のもとで再び日本代表に呼び戻され、南ア大会では影のMVPといっていいほどの活躍であった。おそらく体の強さでは、本田や長友に匹敵すると思われる。

実際、日本に戻ってからは前よりも得点は増え、外国人FWに負けない実績を残している。身体の強さばかりを強調したが、実のところ一番強いのはメンタル面だと思われる。

なぜなら相当な自信家であるからだ。今だから分かるが、ジーコ・ジャパンの頃にアホなプレーをして失点していたのは、自分を先発で使わずエースFW扱いしてくれないことへの反発だったように思う。とにかくボールが欲しかったのだろう。だからゴール前に固定せずに、ボールが回ってきそうなところに駆け回っていたのだと思う。

さすがに年齢を重ね、チームに合わせてプレーするようになると、若いころにはやらなかったような守備的なプレーもするようになった。事実、南アの大会では、敵に囲まれようと大久保がしっかりとボールをキープして潰れ役を徹底してやり、チャンスを作った。

あの大会は本田がエースとして輝いていたが、大久保が潰れ役を徹したからこそ、日本は勝ち上がれたと私は評価している。

しかし、ザッケローニ・ジャパンになってからは、あまり代表に呼ばれていない。本人の怪我による影響もあったが、Jリーグで得点を重ねても呼ばれなかった。だからこそ、今回の代表入りはサプライズであった。

その大久保がTV番組に呼ばれた際、サプライズで国見高校当時の監督である小嶺氏が突如電話で番組に登場した瞬間である。それまで椅子の上でくつろいでいた大久保の背筋がピンと伸びた。

例え日本代表であろうと、自分の意に沿わぬプレーはしなかった我儘なヤンチャ坊主の大久保も、あの小嶺監督には頭が上がらないようだ。

小嶺監督といえば、強豪国見高校の名物監督であり、ここから多くの名選手が育っている。単なる鉄拳指導ではなく、礼儀作法にも厳しい一方で、選手の声にも忠実に耳を傾ける名コーチとしても名高い。

日本サッカーの強みは、高校サッカーにこそある。これは世界的にみても珍しいケースである。大概のサッカー強国は、クラブチームで選手を育てる。だが、日本では高校教育の一環としてのサッカーである。

既にサッカー選手としては一流であり、実績もある大久保はどこに出しても恥ずかしくない選手だが、恩師である小嶺監督の前では無意識に背筋を伸ばして対応する。ここにこそ、日本サッカーの目立たたぬ美点があると思います。

ところで大久保選手、果たして試合に出られるかは不明ですが、きっとベンチでも腐らずに盛り上げてくれると思います。でも最後に一花、ゴールを挙げて欲しいとも思います。

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機動警察パトレイバー ゆうきまさみ

2014-05-26 13:00:00 | 

子供の頃から巨大ロボットものは好きだった。

多分、一番古い記憶は鉄人28号のTV漫画(当時はそう呼んでいた)だったと思う。だが、一番記憶に残ったのは、マジンガーZであった。その後、雨後の竹の子のようにロボットものは、漫画、TVアニメを問わず輩出された。

武骨な鉄人28号にせよ、マジンガーZにせよ、デザイン的には稚拙さが残る。あれを実用化しようと思ったら、機械工学的に無理が多すぎる。まだ関節などの稼動部分の構造などを十分考慮しないデザインがまかり通っていた。

それでも私ら子供たちの間では大人気であった。要は格好良ければヨシである。もっとも元々怪獣好きの私は、主人公側のロボットよりも、怪物めいた敵方のロボットの方に関心が強く、落書き帳にオリジナルのロボットを描いたりするのが得意だった。

だが、年齢が上がるにつれて、単に巨大ロボットのデザインだけでは満足できず、背景や構造、物語の良しあし、登場人物たちの人間ドラマなども含めた面白さを求めるようになっていた。

ただ途中で極度のTVアニメ嫌いになってしまったので、ガンダムを始めとして多くの人気ロボットものを観ていない。もっとも漫画は読んでいたが、TVアニメと異なり、漫画雑誌の世界では巨大ロボットものはそれほど人気ではなかったように思う。

そのなかでも例外というか、変わり種が表題の作品だった。この漫画、たしかに巨大ロボットは登場するが、実は主役ではない。主役は間違いなく人間たちであり、人間ドラマこそがこの漫画の特徴であった。

実際、私はこの漫画に出てくる巨大ロボットをほとんど覚えていない。覚えているのは登場人物たちの日常生活と仕事のしがらみであったり、敵方の内海という謎の人物であったりする。この漫画からではないかな、ロボットにポイントを置かずに人気を得たロボット漫画は。

この漫画では、近未来の日本において建設重機として活躍するレイバーという巨大ロボットが犯罪に使われた場合を想定した警察組織が描かれている。パトレイバーとは、パトロール・レイバーのことのようだ。

だから、いかにもお役所の備品らしく、愛嬌もなければ先鋭的でもない道具としての巨大ロボットであり、主役とはなりえなかった。多分、主人公は野明という元気な女の子なのだろうが、私の印象に強く残るのは上司の後藤課長であり、目が笑っていない笑顔の内海だったりする。彼らの織り成す人間ドラマが面白かった。

ちなみにTVアニメ化はされたようだが、私は一切観ていない。あくまで漫画だけなのだが、異端の巨大ロボットものとしての印象は忘れがたい。未読の方がいらしたら、是非とも一度は読んでみていただきたい佳作だと思います。

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