さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

大統領選をにらんで? パッキャオ、来年1月再戦を検討

2021-08-26 12:52:46 | マニー・パッキャオ




先日、ヨルデニス・ウガスに敗れたマニー・パッキャオ、進退や大統領選挙出馬については来月にも、という話でしたが、ジ・アスレティックの記事によると、1月復帰の可能性を否定しなかった、とのことです。

こちらの記事にもあるとおり、足の不調を抱えながらも奮戦し、またそれを可能にしたトレーニングへの献身など、年齢やキャリアを考えれば、敗れてもなお偉大なり、とも言える試合ではありましたが、やはり敗戦というものは、すんなりと受け容れられるものではない、ということでしょう。
また、当初予定のエロール・スペンスとの闘いと比べ、勝ち負け以前に、試合後に「残った」ものが、パッキャオを満足、ないしは納得させるものではなかった、ということも、容易に想像が付きます。


ただ、純粋にボクシングの話だけで、是非を語られる再起かというと、どうもそうではないらしいので、色々と気にかかる部分があります。
要するに今回の試合、当初スペンスを、実際にはウガスを相手に闘い、勝ち名乗りを受けて、その熱狂を「元手」に大統領選挙になだれ込もう、としていた。
しかし敗れ、その目論見が崩れたので、来年5月の選挙までにウガスと再戦し、雪辱して...という理由で、再戦を考えているのではないか、という。


こういう、ボクシングそのものとは何の関係の無い話を持ち込んでいるのだとしたら、それだけで充分、危惧の理由です。
しかしそれに加えて、今回の敗因が、単にパッキャオの不調によるもの「だけ」なのか、というところも、重大なテーマでしょうね。
足が全然動かなかったのは確かでしょうが、言ってしまえばそれもこれも含めての「衰え」であって、以前の好調な自分なら...と思って闘った試合が、後に「余分な一試合」として語られる。
歴代の名王者たちのストーリーは、大抵が同じパターンの繰り返しだったりするのも、悲しいですが事実です。


もちろん、単に偉大なボクサー、チャンピオンというにとどまらず、フィリピンという国家にとって大を成すマニー・パッキャオの心の有り様、その決断は、凡百の身に計り知れるものではないのでしょうが。
しかし、今さら言うのも何ですが、やはり政治というものは、情け容赦なく、スポーツの世界では「王」者、と言われる存在をも呑み込み、様々に「絞り」取ってしまうものでもあります。

出来ることなら、そういう世界とは距離を取っていられたらなあ、と傍目には思えてなりません。
そうするには、マニー・パッキャオは、あまりにも巨大過ぎる「星」なのかもしれませんが。



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思った以上の「苦手科目」だった パッキャオ、代打ウガスに判定負け

2021-08-22 18:10:58 | マニー・パッキャオ




ということで生中継を見終えました。
実況解説の見解と違う判定が出る、WOWOW生中継で時々起こる現象ですが、いつもは見方の違いだから、と思うところ、今回だけはちょっと...と思ったりもしました。
まあそれはさておいて、経過と感想を。



初回、マニー・パッキャオまずまず快調。軽いコンビ、左ボディ、右フック。しかしヨルデニス・ウガス、ラウンド終盤から長い左ジャブ連発。
思いの外、さっと立て直す。大柄な身体を縮めてクラウチング気味に構えて牽制。ガードを絞って、前でパッキャオを突き放そうとする。
ポイントはパッキャオかと思ったが、これ、パッキャオの苦手な型やなあ、とも...。


2回、少し打ち合いになってもウガスのリターン、左ジャブ。右ボディも。パッキャオ、サイドに出ようとしていたが、徐々に正対しての攻防を強いられ始める。ウガス。
3回、パッキャオ、フェイント入れつつ「見」の間を増やし、リターンを当てる。逆ワンツーでロープ際へ追う場面。右フック、ボディも。パッキャオ。

4回、パッキャオ軽く探っていく感じだが、後半ウガスがジャブ、右ロングをヒット。より正確に当てている。ウガス。
5回、パッキャオの軽いコンビより、ウガスの単発パンチがより強く見える。しかし数が少ない。迷うがパッキャオ。

6回、ウガスの少ない好打、右ボディなど。パッキャオはミスが多い。左アッパーも浅い。迷うがウガス。
7回、両者リードパンチの応酬。ウガス右ボディから上に返す。ダブルジャブから右ヒット。ウガスの回。
8回、パッキャオ連打を仕掛けるが、ウガスがボディブローを返して接近を阻む。右のロングも単発でヒット。ウガス。

9回、ウガス少し疲れたか、パッキャオの軽い連打の回数が上回る。ボディもヒット。パッキャオ。
10回、ウガスは右ヒットが二度ばかり。左ジャブが減る。パッキャオ速いコンビで飛び込む。パッキャオ。

11回、パッキャオ、ダブルジャブから左ヒット。しかしウガス右フック、パッキャオ少し下がる。右ボディ、ワンツー。
攻撃の回数、ヒット、いずれもウガスが上。ウガス。
12回、ゴールが見えたウガス、断続的に手を出す。右クロス、フック、左フック。
クリーンヒットは乏しいが、パッキャオが巻き返しに出る前に止める効果は充分。ウガス。


ということで、さうぽん採点は パウパウ、パウウウ、パパウウ、7対5でウガス。
公式も7対5、8対4×2、というところでした。私の採点は、少しウガスに辛いのかもしれません。



初回見た印象、結局それが最後まで変わることなく続いて終わった、そんな試合だったように思います。
かつてパッキャオが敗れたいくつかの試合で、大柄でパンチ力のあるストレートパンチャーが、突き放す意識で来たら苦しむ、ということは実証されていて、一番わかりやすいのがエリック・モラレスとの初戦でした。
二戦目、三戦目のKO勝ちによる雪辱の印象が強烈なので、忘れられがちな試合ではあるのですが。

何しろ遠くに突き放しておければ、パッキャオの速い出入りも、サイドステップしての切り返しも、小刻みなステップインによる「走り打ち」も、基本的には防げるわけです。もちろん、全部、とはいかないですが、その大半は。
長いリーチを生かし、一定上の威力を持つストレートパンチを高い精度で当て、なおかつ無駄なパンチを減らし、受けに回っても安易に下がらず、動かされず我慢して、また構え直し、突き放して距離を保つ、という「タスク」は、極めて難易度の高いものですが、今日のヨルデニス・ウガスは、その闘いを、ほぼ「完遂」した、と言って良いでしょう。
ジャッジも単にヒットの差のみならず、ウガスによる試合展開構築をしっかり見て、妥当な採点をした、と思います。



敗れたマニー・パッキャオですが、対エロール・スペンス戦に向けたトレーニングは、少なくとも現状においては充実したものだったのでしょう。
立ち上がりはまずまず好調に見え、大柄なウガスをスピードで翻弄して崩す展開に、すんなり持って行けるのかな、と思いました。
しかし徐々に、ウガスがしっかり構えて突き放す「堅陣」を敷くと、思うように攻め崩す流れが作れませんでした。
攻防共に足捌きが抑えめに見えたのも、ブランクや年齢、相手変更の影響以上に、ウガスが思った以上の「苦手科目」だったせい、と見るべきなのかもしれません。
大柄で頑健な肉体と、五輪銅メダルのアマチュア歴に裏打ちされた防御の堅さ、攻撃の精度、そしてひとつの作戦に徹する確かさは、現状のパッキャオを苦しめるに十分なものがあった、ということでしょう。




エロール・スペンスとの、待望のビッグマッチが流れてのカード変更は、世界中のボクシングファンを落胆させましたが、終わってみれば「代打」が期待以上の「ええ仕事」をして、大スターたるパッキャオを破る、殊勲の星を挙げました。

ご多分に漏れず、パッキャオ敗戦を残念に思う気持ちはありますが、同時に、やはりボクシングとはこうでないといかんな、とも思います。
昨日までは完全な脇役だった男が、アジアのデュラン、甦ったアームストロングと言われる歴史的なスターボクサーを破り、一夜にして檜舞台で勝ち名乗りを受ける。
「リングの上では肩書きは闘わん」とは、若き鬼塚勝也の名言ですが、まさにボクシングの峻厳さを端的に言い尽くしたこの言葉が、試合を見ながら頭の中を巡っていました。

当初予定の相手と闘っていれば、勝っても負けても、パッキャオの拳歴の掉尾を飾る試合として充分な華々しさがあっただろう、とは思います。
それに比べれば、試合展開といい相手の名前といい、何か地味な印象の試合ではありました。それは確かです。
とはいえ、それが悪いもの、後味がどうこう、というものだったかというと、全然そんな風には思いませんでした。
これはこれで、充分に見応えのある「劇」であり、運命の交錯であり...「闘い」である。そう思った次第です。




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マニー・パッキャオ復帰決定、相手はエロール・スペンス

2021-05-23 00:08:41 | マニー・パッキャオ



マニー・パッキャオ復帰戦が決定、相手は「まあ、決まらんやろう」感ありありだったテレンス・クロフォードがやはり外され、PBCの枠内でエロール・スペンスに。
8月21日、日本時間だと22日ですね。これは当然、WOWOWで生中継の運びとなりましょう。


パッキャオは再三、クロフォード戦の話題が出てましたが、ボブ・アラム側があれこれ吹聴?すればするほど、傍目には実現が遠のくような感じがしていました。
まして中東で、誰かがどーんとお金だしてくれたら、みたいな話になって、ああ、これはいよいよアカンやつや、と。
結局、クロフォードがアラムと完全に切れない限り、無理なのかもしれませんね。


スペンスは前回、交通事故からの復帰戦でダニー・ガルシアを無難に下しましたが、以前のベストよりは少し...「慣らし運転」にしては強敵相手で、やはり凄いな、とは思いましたが。
しかし二戦目で、念願だったであろうビッグネームとの対戦ですから、さらに仕上げてくるでしょう。


パッキャオについて、年齢やブランクのことを心配しても無駄かもしれませんが、今度は単に相手の実力そのものが脅威、という感じがします。
もし、過去のベスト時期に見せた縦横無尽の動きと、的確な強連打がフルに出ても、それでもなお激戦となるのでは、と思ったりもします。
巧さと経験でパッキャオ、もし強打の応酬になったら、強打と狙いの鋭さでスペンス、というところでしょうか。
今から楽しみなカードですね。



と、これに関連した話題?かどうか何とも言えませんが、こちらもWOWOWで生中継、とのこと。
この「試合」、やるやるとネットで記事が出ていましたが、見出しだけ見てクリックせず、記事の中身を見ていないんで、ああ、そうでっか、まあ頑張っておくんなはれ、としか思っていなかったんですが...。

率直に言って、生中継と言われても「して要らん」としか思いません(笑)。
まあ、視聴者の需要があるなら、それまでの話で、私なぞが何を思おうと関係ないんですが。
しかし、現地では日曜の開催なので、日本での生中継は月曜の午前なんですね。いやはや。


これでWOWOW、来月は生中継3本です。スタッフの皆様も大忙しでしょう。
個人的には、これに費やす労力があるなら、他の試合を生中継してほしいですけど...まあ、最近は大抵やってくれるんで、これ以上は言えんか、という気持ちでもありますが。



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ということで、一曲。
warbear「ダイヤモンド」。







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パッキャオ、次戦の「置き所」決まる? マイキー、ウェルター級初白星

2020-03-02 17:46:47 | マニー・パッキャオ




昨日のDAZN、メインはマイキー・ガルシアvsジェシー・バルガス戦でした。
ノンタイトルかと思っていたら、WBCダイヤモンドベルト王座決定戦、とのこと。

プロモーターとか選手サイドとか、こんなんに承認料払わなならんのか、と怒り出したりせんのやろうか、といつも不思議なんですが...それなりに代価があるというか「証文」が出てたりするんでしょうかね。
まあ、芯からどうでもええ話ではありますが。


試合ですが、総じて爆発的なものはないが、実力はウェルター級世界ランカー、という言葉で言い表すと、水準以上のものをきちんと持っているジェシー・バルガスに対し、体格的には劣るマイキー・ガルシアが、細かい巧さとワンツーのヒットでまさり、判定勝ちでした。

5回のダウンシーン以外にも、それより前の4回、或いは7、8回など含め、コンパクトなワンツー、右の威力で試合の流れを引き寄せたガルシアでしたが、それ以外のパンチはいまいち効かず、バルガスの抵抗を断ち切る、とはいきませんでした。

見るこちらとしては、元々クラスが違う選手の組み合わせであり、それを思えばマイキーの技量力量は本当に凄いものだ、と改めて思いはします。
もしこれ、相手がスーパーフェザーやライトくらいの選手だったら、とうの昔にひっくり返ってるで、と見える場面が、何度もありました。

階級のベストを追求するより、ひとつでも上の階級で、少ない試合数ながら高額の報酬を、という方針に進んだ段階。
マイキー・ガルシアのキャリアは、是非や好悪はおいて、現実に、そういうところにあるのでしょう。

で、この勝利により、前回、純正ウェルター(ないしは、それより大柄)の相手に苦しんだ者同士対決、ということか、マニー・パッキャオとマイキーの対戦話が動いているそうです。
パッキャオもスペンスの事故があり、クロフォードは会社が違い、ほな誰と、となっているところ、色んな意味で「丁度良い」相手が浮上してきてくれた、という感じなのかもしれません。


皮肉な言い方かも知れませんが、傍目にも、色々と収まりが良いというのか。
技術的には相当、基本から応用までレベルが高いが、ベストの階級は下。爆発的な強打や、大柄な体格は持たない。
しかしヒスパニックのファンベースを持ち、カードとしては大規模なものになりうる。
パッキャオにとって、次の相手としては、非常に有り難い要素が盛り沢山になっています。

もっとも、それはマイキーの側とて、似たようなことを思っているのかもしれません。
そして、お互いが同じことを思っている、そういう場合にこそ、大きなカードというのは組まれるものだ、とも言えるでしょう。


あちらの事情に詳しくないのでよく分からないのですが、パッキャオがDAZNに出る可能性もあるんでしょうか?
サーマン戦含め、最近のPPVは数十万件の範囲で収まっているようですので、それならDAZNがワンマッチで奮発すれば、ということになるんでしょうか。
それともマイキーが、DAZNとの契約を一試合で打ちきって、PBCに出るのか。

世界のウェルター級は、スペンスの復帰がどうなるか、クロフォード今後の展望やいかに、というところが見えていない今、パッキャオとマイキーの人気者対決が、次の目玉といえるのかもしれません。
仮にこのカードがDAZNの手に入ろうとも、日本ではWOWOWがやるのかもしれませんが、実現すればなんだかだ言って楽しみですね。



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ところでこの配信の実況ですが、元世界王者のOBや、元専門誌記者といった解説者はおらず、実況アナウンサーがひとりでまかなっていました。
昔、TV東京の杉浦アナウンサーなんかが、たまにそういうことをやっていた(やる羽目になっていた?)ことがありますが、こういうの久し振りやなぁ...と。

で、言っちゃなんですが、この日テレの人がひとりでしゃべっている分には、けっこう聞きやすくて良かったです。
時々、ひとりなのに誰かに問いかける口調になりかけていたのはご愛敬として、長年の経験もあり、試合の周辺情報なんかも、程良い「濃さ」で提示していたりも。
元選手、OBなどには、その試合について何も調べてへんのかい!とツッコみたくなる、解説とは名ばかりの「ゲスト」に過ぎないお荷物、邪魔者がいて、こんなもん、おらん方がええわ、と思ったことが過去に何度もあります。
最近はさすがに、そこまで酷いのはないと思いますが...何にせよ、期待してなかったこともあってか、これはこれで悪くない、と思った次第です。





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40歳にて驚異の「第一線」復帰 パッキャオ、サーマンとの熱戦制す

2019-07-21 19:31:28 | マニー・パッキャオ



マニー・パッキャオvsキース・サーマンは、期待以上の大熱戦、目の離せない濃密な12ラウンズとなりました。
簡単に感想から。


試合前は、大柄な強打者ながら、最近は技巧派という印象が増し、ブランク明け2戦目のサーマンが、当然、小柄で小回りが利き、機動力に優れたパッキャオを突き放して、距離を開けて闘おうとするだろう、と思っていました。

実際、初回はその流れかと見えました。しかし右リードで先制、と括れるはずだったのに、バックステップしたところを「追尾」するかのような踏み込み(走り込み)で打つパッキャオならではの攻撃を受け、右フックでダウン。
初回早々、ということも含めて、パッキャオと闘う選手は、絶対これやっちゃいかん、という後退の仕方。
終わってみれば、これは痛い失点でした。

2回も、さらにパッキャオが連打、サーマンを「追尾」するかのような足運びで、なおも打つ。足が良く動く。40歳とは思えない。
ラウンド後、あまり上手くは無いシャッフルを踏み、それを誇示?する場面も。

しかし3、4回はサーマンが構えを変え、上体を動かして、外すことを優先。構えて圧して突き放す、という立ち上がりの「方針」を一旦、棚上げした感。
これで一旦流れを止め、5回あたりから、軽い連打で入った後、強めに打つ、というコンビネーションの攻撃が決まり出す。

5回はパッキャオがラストで巻き返しの連打を見せるが及ばず。6回はそれも封じられる。
7回は互角の打ち合いもあるが、それ以外のヒットの分、サーマンか。
内容と採点、共に競ってきたという感じの中盤を経て、終盤はさらに一進一退。

しかし、サーマンが流れを掴んでいたかと見えた10回、パッキャオのレバーパンチが決まり、サーマン効いて、動きが止まる。
試合も終盤に来て、30歳が40歳に決めるならともかく、逆。感心するやら呆れるやら、という次元でした。

ところが11回、サーマンが右決めて逆に抑える。最終回はまた逆で、パッキャオが取ったか。


採点は割れて2-1でしたが、ダウンの分だけパッキャオか、と見ました。
さうぽん採点は、PPSP SSSP SPSP、初回ダウンのぶん、114-113、パッキャオ。
3回、4回、ちょっと迷いましたが...サーマンには残念ですが、逆はないかな、と見ました。


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これで再起後、3連勝となったパッキャオ、40歳にして、この充実した試合ぶりには、驚かされました。

初回のダウンは、サーマンの方にもミスがあった、と言えば言えるかもしれませんが、10回のレバーパンチによる「形勢奪取」は、かつて劣勢の中でファン・マヌエル・マルケスをぐらつかせた左の一撃を思い出しました。
また、相手のバックステップを「追尾」し、同時のタイミングで踏み込んで、打ちながら次のステップを探して、さらに踏み込む「走り込み」も、ダウンシーン以外に数回見られました。
小太刀のような右ショートフックによるリード、身体を右に逃しつつ打つ左、回り込んで内外からアッパー、フックの連打攻撃、その他にも、往時のパッキャオが見せていた技と力が、ふんだんに盛り込まれた闘いぶりは、まるでパッキャオの歴戦を振り返るような内容で、見ていて感慨深いものがありました。

もちろん、往時と同じレベルの体力、爆発力が完全に戻ったわけではなく、またそれが戻るわけでもないでしょうが、それを補う試合運びの巧さと共に、これらの技と力を存分に発揮して見せてくれた12ラウンズに、ファンとしては改めて感嘆し、拍手するしかありません。
それも、かつてはこのクラスの第一人者であり、今も第一線といっていい、キース・サーマン相手に、ですから。

昨年、マレーシアでマティセに勝った試合について、本当の本当に「頂点」を目指して闘う意志あっての再起なのだろうか、という疑問を感じたものですが、この相手にこの試合を見せられた今、それは雲散霧消してしまいました。
エロール・スペンスとショーン・ポーター戦の勝者との対戦という話が具体化しているそうですが、そうなって当然、という気さえします。


そして、対するサーマンの方も、最初の作戦が上手く行かなかったら、即座に修正を施し、そこに逆襲されたらまた構えを作り直し、という具合で、多分ですが、やれることは全部やり、打てる手は全部打った、という試合だったと思います。
しかし、それでも10回、そうした人知を超えた何か、勝負強さとか「持っている」とか、そういう表現をするしかないものに形勢逆転され、屈したわけですが、こちらも終始、充実した闘いぶりを見せてくれました。

両者ともに、世界ウェルター級の超一流に相応しい闘いぶりでした。期待以上の試合を、大いに楽しめました。改めて両者に拍手です。



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ということで、知らんかったんですが、今朝は、というか深夜、未明、どれが正しいのかわかりませんが、午前2時から英国の試合をDAZNがライブ配信していて、朝方にメインのディリアン・ホワイトの試合が見られました。
そして、午前10時からWOWOWオンデマンドで、ネリーvsパヤノ戦が流れ、11時からWOWOW本放送開始、という流れ。

昨日の今日で、朝からこれですから、本当にえらい週末になりました。
まあ、昨日のについては、自分の勝手で、オンデマンドPPVを契約して見たんですから、えらいも何もないんですが...。


ディリアン・ホワイトは、コロンビア人オスカル・リバスの、連打の中の右アッパーを、目視出来ないタイミングで食ってダウンしましたが、それ以外はタフなリバスを正確なダブルジャブで圧倒し、大差の勝利。
ただ、WBCベルトが出てきて、それが暫定王座だという話で、へ?と。知らん間に、イリミネーションではなく、暫定王座決定戦になっていた模様。
もう好きにしなはれ、としか言いようがありませんが。

ルイス・ネリーは、受け身の姿勢から徐々に攻めて行き、9回に左のレバーパンチでファン・カルロス・パヤノをKO。
連打は雑に見えますが、打ち出したら止まらず、威力も充分。
ただ、本当に、異様なほどに身体に力があり、重みも感じる姿には、先入観を抜きにしても違和感あり。
今時、こんな闘い方があり得るのかなあ、と。
また、打たれてもさっぱり堪えませんし、パヤノがダウンや、きついKO負けを経ていることを考慮しても、異様なものを感じてしまいました。

セルゲイ・リピネッツは、大阪で矢田良太をKOしたフィリピン人サウスポー、ジェイアール・インソンを2回、左フックでKO。
インソン、立って笑顔を見せていたものの、ファイティングポーズを取るのが遅い。カウントアウトされて悔しがってましたが...。

セミのウガス、フィゲロア戦は、ウガスが初回に右でダウンを奪い判定勝ち。クリンチばかりで酷い内容。
フィゲロア、荒川仁人戦の勇姿はどこへやら、という感じでした。むー。



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驚異の復調、されど「復活」なのか否か パッキャオ、9年ぶりのKO勝ち

2018-07-15 17:05:25 | マニー・パッキャオ



ということでWOWOWの生中継を昼前から見ておりました。

ほぼ一年ぶりの再起戦、即WBA王座挑戦のマニー・パッキャオは、
前回の不調から一転、快調な試合ぶりで、強打ルーカス・マティセを一蹴しました。


パッキャオ、初回から右リードが良く出る。真っ直ぐなジャブ、フック気味のショート。
左右ボディを叩き、ジャブが上に返る。肩振って左ストレートも。

マティセは先制され、前に出たいが出られず。
下がって受けて強い選手ではないだけに、この展開はきつい。
3回、外からの右を警戒していたところ、インサイドに左アッパーを食ってダウン。

4回以降、パッキャオ変わらず好調、多彩な右、当てて遠ざかる左が決まる。
5回、僅かにマティセが右当て、さらに出られるかと見えたが、右フックで膝をつかせる。
6、7回もワンサイド、最後は左アッパーでKO勝ちでした。


試合前は、ジェフ・ホーン戦のパッキャオの不出来を思えば、さらに一年経って、
39歳になって闘う試合に、何を期待出来るのだろう、と思っていました。
稀代の英雄、アジアのボクシング史上最高のボクサーが、ついに終幕を迎える試合、
それも、しばし目を背けたくなるような展開を見せられるのではないか。そんな風にさえ。

しかし、実際はというと、考え得る中で、もっとも好調なパッキャオの姿が見られた一戦でした。
よくぞ、これほどの復調を示せるものだなあ、と驚かされました。
単に体調が良いだけでなく、右リードを多彩に出し、そこから次の攻め手を適切に選び、
相手の裏を取る狙いで、長短、内外を打ち分けて崩していく闘いぶりは、
今回陣営から離れたという、フレディ・ローチの教えが生かされた、質の高いものでした。

もちろん、ルーカス・マティセの、強打者としての天分に隠されてきた、
技術面での不足、展開構築力の乏しさがあり、パッキャオからすれば、
思う以上に「手が合った」面もあるのでしょう。
しかしこの試合は何よりも、パッキャオが今だに、普通の常識では計れないボクサーである、
その事実が改めて見えた試合でした。


そして、同時に、この試合の勝利が、真の「復活」を祝う「祝祭」ではない、
そのように喜ぶには、あと一歩、届かないところでの闘いだった、とも思いました。

かつて、ロベルト・デュランはレナード第二戦の「ノーマス」事件で王座を失い、
さらにベニテスにも敗れ、その評価、名声を失った状態から、
ピピノ・クエバスに勝って浮上し、デビー・ムーアを倒して「復活」を果たしました。
会場であるニューヨークのMSGは、パナマのフィエスタ、英雄復活を祝う、祝祭の場と化したものです。

今日、クアラルンプールの大会場は、パッキャオがマティセを倒すたび、大歓声に包まれました。
勝利の瞬間は、デュランがムーアを下したMSGの光景に、重なって見えもしました。


しかし、試合後、今後の試合について、何一つインタビュアーに言質を与えなかったように、
往時のデュランのように、飽くなき頂点への渇望を抱えて闘っているわけでもない、
現状のパッキャオがゆく「路線」の延長線上にある試合だった。それもまた事実です。

デュランがムーア戦の後、帝王マービン・ハグラーや、強打トミー・ハーンズ戦へと突き進んだように、
パッキャオがエロール・スペンスやテレンス・クロフォードとの闘いに、
自らの栄光の全てを賭けて挑むようなことになれば、それはもう、結果や内容以前に、
ボクシングの歴史上、繰り返されてきた「王位」の継承劇となるのか否か、という観点から、
誰もが勝敗を超越した、崇高なる闘いとして、その試合を見つめることでしょう。

しかし、昨今のボクシング界は、そのような「宿命」の「然るべき闘い」から、
チャンピオンやスター選手を遠ざける理屈や事情、手管には事欠かない世界でもあります。
ここ最近のパッキャオとて、その世界の中において、自身が設定した「枠」の中で闘っている、
そう言わざるを得ない面がありました。

今日の試合内容と結果が、パッキャオの今後を、そのような現状とは違うものに変えるのか。
もしそうなるなら、今日の試合を後に振り返ったときに、違う心境を抱くこともあることでしょう。


しかし、彼の現状、国会議員としての責任、39歳という年齢、英雄として護らねばならぬ名声、
その他諸々を考えれば、単にひとりのボクサーとして彼を見て、思うことだけで、
全てを語りきるには無理があるのも確かです。それは重々、わかってはいるのですが...。


改めて、今日の試合は、予想以上に良い内容での勝利でした。
それだからこそ、試合前には思っていなかったことを、あれこれと思いもしました。
今後がどうであれ、マニー・パッキャオは、稀代の英雄であるが故に、
その存在そのものが、さまざまな思いを抱かせます。それだけは変わりない事実、ですね。



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名王者「晩年」の取りこぼし、その雛形 パッキャオ、白昼の豪州で陥落

2017-07-03 04:14:45 | マニー・パッキャオ



昨日は当然、お昼の生中継を見ておりました。
正直、大層に生中継するほどの試合でもないか、これよりブルックvsスペンス戦なんかをやってほしかったなぁ、
とか思っていたりしたんですが。

いざ放送が始まると、その「のんびり」な気分が、だんだん重くなっていきました。

練習や会見、両選手や陣営のインタビューがあれこれ流れているのを見ると、
パッキャオが、政治活動の合間に、非常に厳しいスケジュールでの調整をしていて、
それを陣営の誰もが、口では「大丈夫」と言いつつ、表情が悉く曇っている。

解説の浜さんや、現地にいたブラドリーの言葉もまた、
普通ならパッキャオが勝つに決まっているが「間違い」もありうる、という示唆が込められている。


紹介されたジェフ・ホーン過去試合の映像からは、さほど伝わるものはなかったですが、
いざ、雲一つ無い快晴の下、白昼のスタジアムに両者が現れて対峙すると、
そのあまりの体格差に、不安は頂点に達しました。

「状況」は多少違えど、会場の「絵」としては、ホセ・ナポレスがストレイシーに負けた時に似ているなぁ、と
試合直前にちらっと思ったりもしました。


序盤から、大柄なホーンが先手。ジャブも右も遠くから飛ぶ。
パッキャオは当然下がるなり回るなりして外し、かいくぐって打ち返すはずが、
どうも思うに任せない風。
ホーンは打ちながら左に移動して、右に戻って、という繰り返しも見せる。

小柄な方のパッキャオが、動きの量、質で劣り、スピードも切れもベストに遠い。
本来、まさっていなければいけない部分で、ホーンに先行されている。

白昼のスタジアム、大観衆の声援にも後押しされ、ホーンは健闘。
ガードを絞って足を止めるパッキャオの「休憩ガード」の真ん中を
アッパーで狙うなど、単にパワフル、ラフなだけでない、研究の跡も見える。

対するパッキャオの攻めは、それなりに精度はあるが散発的でもあり、中盤までは微妙。

そして、徐々にバッティングが目に付きはじめる。
ホーンは、三発四発と手を出し、それが全て外されると、頭から突進し、ロープに押し込む。
そしてさらにアウトサイドから左右フックで追撃。懐かしのジェフ・フェネック戦法。

確かに汚いやり口なれど、パッキャオもこんなことやらせている時点で駄目だなぁ、と
思っていると、6回、パッキャオが自分からアタマを持って行く。
露骨なお返しやなと思った直後、不幸なことにそれで自分が切ってしまいました。

この辺はもう、パッキャオの「コンディション」が、肉体のみならず精神的にも
「出来」てないところを、モロに見てしまったような気がしました。

8回でしたか、もうひとつ頭部を切り、終盤、パッキャオは血まみれ。
瞼を切ったわけではないから、影響は最小限だったと言えるかもしれませんが、
微妙な採点になっている?以上、ジャッジに与える印象、「絵面」の悪さを考えると、
どうにもよろしくない。

9回の猛攻も、好機にヘッドハンターになるパッキャオの悪癖が災いした...
というよりは、攻めの迫力が明らかに不足。
終盤、追い打ちをかけられず、微妙な感じで終了。


採点については、あの会場の雰囲気で採点していれば、こういう数字もありうるか、という感じ。
厳密にヒットの精度を見ればパッキャオかと思いますが、それも7対5くらいか。
逆もあり得る内容、というか「絵」を作ったホーンの健闘でもあり、
ホーン程度の相手にそれを作られたパッキャオの「取りこぼし」でもあった、のでしょう。



かつて、誰の手も届かない、天空高くを飛翔する鷹のようだったパッキャオも、
今はこの程度の「雑兵」の弓矢や槍、剣が届くところで闘っている。

かつて見せた英雄としての輝き故に、晩年になっても様々な宿命を背負い...
というか、絡め取られて、というべきか、ボクシングのみに専念出来ない状況で、
格下のラフな行為も「果敢さ」と見なす、敵地の大観衆の中、白昼の会場での苦闘。

その末に、完全に討ち取られたわけではないが、かつてなら負わなかった傷を負い、敗れた。
その姿は、やはり悲しいものでした。

かつて数多の名王者もまた、晩年には、このような悲しい姿を見せたものです。
パッキャオもまた、名王者であったが故に、その落差は大きいものでしょう。


試合後、前向きに再起、再戦への意欲を語ったパッキャオでしたが、ファンの勝手を言えば、
心身共に、こういう「出来」でしかリングに上がれないなら、もう止めといた方がいい、と思います。

しかし、もう、そういうことではなくなってしまっている、その現実も容易に想像はつきます。
その宿命を背負った、かつての英雄、名王者の姿を見ることもまた、ボクシングを見ること、なのでしょう。

見て楽しかったり、爽快感のある試合ではまったくなかったですが、
やっぱり、ある意味では、生中継で見られて良かったのかな、という試合ではありました。


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ジェルウィン・アンカハス対帝里木下戦は、アンカハスの7回TKO勝ちでした。

実力的にはやはりアンカハスが上だろうから、帝里が序盤から相手に合わさず、
どれだけ動き、仕掛け、それこそラフにでもいいから「暴れ」て、アンカハスにやりにくさを与えられるか。

そこが勝負だ、と思っていましたが、立ち上がりから、割と普段どおりの構え。
左狙いはともかく、アンカハスが持つ攻防の「枠」の中に、すっぽり収まり、捉えられる感じで、
これではまずいなぁと思っていたら、早々に古傷の瞼を切ったことも含め、劣勢に。

敵地での調整、高温の屋外での試合など、難しいこともあったのでしょうが、
パンチの精度をはじめ、実力では上回る相手と、力関係がそのまま全部出てしまう展開では、
いかにも苦しい、という印象でした。

帝里はせっかくの長身を曲げて、覗くように構える傾向がありますが、
右ジャブを出しているときは、それを矯正したバランスになりもするので、
正対して構えて闘うなら、もっとジャブから攻めてほしかった。

何より、長身で大柄、サウスポーという部分を、相手から見たやりにくさとして生かす発想が
ほとんど見られず、まともにやりあってしまったのが、残念に思えました。
策を弄して闘うことに意味を見出さない、という考え方も、当然あるのかもしれませんが。

しかし、強い王者に敵地で挑んだ結果ですから、仕方ないことでもあります。
こういう「挑戦」を、どんどん見たいし、やっていくべきだとも思いはします。
その内容が、結果が厳しいものであれ、それを踏まえて、次につなげることの積み重ね、
それこそが「挑戦」そのものであろう、とも。


アンカハスは攻防共に、高いレベルでまとまっていて、なかなか強いところを見せました。
あれでけっこう爆発力もあったりするんですから、今後が楽しみではありますね。
日本の選手との対戦も、さらにあるのでしょうか。
もっとも、今回改めて、強いとこを見せて「しまった」ことが、どう影響するか、という見方もありましょうが。



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「復帰戦」としては上々、されど今後は? パッキャオ、まずは破綻なく勝利

2016-11-06 15:20:21 | マニー・パッキャオ



ということでWOWOWの生中継を見終えました。
タイトルマッチ三試合、ひょっとしたら飛ばされるのかな?と「邪推」していた
大沢の試合含め生中継、ありがたいことです。

今後もオンデマンド含め、生中継があるようですので、楽しく拝見したいと思います。
まずはとりとめも無く今日の感想文を。


マニー・パッキャオは、7ヶ月ぶりの「復帰戦」でした。
計量の映像を見ると、ちょっと身体に張りが無い、筋肉量が少し減ったか?という感じ。
実際、試合始まってしばらくは、動きが切れないなあと見えました。

ジェシー・バルガスは、セミセミでノニト・ドネアに勝ったジェシー・マグダレノ同様、
広めのスタンスで踏ん張って迎え打ち、後ろの足をこまめに動かして後退、
困ったらクリンチ、という流れを作ろうとしていました。
しかし2回、パッキャオの右足の上に、自分の左足が乗ってしまった瞬間に打たれ、
実質片足でしか踏ん張れない、不運な状況で喫したダウンがあり、
そこから少しずつリズムを失い、目論見が狂った感がありました。

4、5回あたりは、待ちの展開で、リズムやテンポを落とす試合運びが出来ていましたが
6回くらいになると、見るからにスタンスが狭まり、踏ん張りが利かず、迎え打ちの威力を落としてしまう。
このあたりから、パッキャオがそれまでよりも踏み込んで打つ頻度が高まり、
終盤は再三にわたって攻め込まれてしまいました。

パッキャオは若干幸運な?感じもありましたが、序盤のダウン奪取から、
徐々に調子を上げ、中盤以降もペースを落とさず、終盤はさらに好打を重ねる「復調」ぶり。
爆発的な追い上げはなかったものの、左ストレートの速さと右回り、右リードジャブの切れなど
往年の片鱗をちりばめつつ、きっちり差を付けて勝ちました。
中に一つ、何ソレ採点が混じっていたのには驚きましたが。

もし、練習不足の影響が出るようなら、途中まで好調でも、突然の失速というような事態が
いつ起こっても不思議は無いと思って見ていましたが、そのような心配は無用でした。
パッキャオはやはり、このあたりの相手なら、順当に勝つ力を普通に持っている、
その事実を改めて見た、復帰戦としてはまずまず、上々の試合だったと思います。

しかし、今後の試合について、名前の挙がっているテレンス・クロフォードや、
ウェルターの他団体王者との対戦などがあるのだとすると、この試合の出来では不安でもあります。
まずまず良かった、破綻は無かった、というレベルでは、これらの相手に勝てはしないでしょう。

かつて当たり前のように、試合の度に見せていた「驚異」のマニー・パッキャオを取り戻せるか否か。
そこが成否を分けることでしょうね。

もっとも、彼がそのような彼自身を取り戻して闘い続けることを、本当に心底から希求しているのか、
それが若干、疑問だったりもするのですが...。
もしそこまでの覚悟があるのなら、議員との両立状態のまま再起することはないんじゃないかなぁ、という。
まあ凡百の身に、これほどの巨大な「星」の心情など、計り知れようはずもないですが。



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セミファイナルのオスカル・バルデスvs大沢宏晋戦は、ワンサイドの展開で進み、終わりました。
内容は、事前の想像通りだった部分と、そうでなかった部分とがありましたが。

まず、王者バルデスの様子が、開始早々から奇異に見えました。
動き自体は前見た通りかな、と見えたのですが、顔色が何だか悪く見える。
スピードの差でリードしている展開なのに、気づけば2回にはもう口が開きっぱなし。
動きも、コンビを打つ動作は滑らかなのに、全体的にはブツ切り、細切れの印象。
その止まっている間に、大沢のジャブを出させてしまい、攻勢を切られる場面も。

対する大沢は、序盤から勝負を、と言っていたそうですが、スピードの差、
それも手足や身体の運びというより、いつどこ打つか、の「判断のスピード」で大きく劣り、
打つ決意をする間が見つからず、後手に回っては打たれ、の悪い回りに追いやられてしまいました。

元々はライト級でキャリアをスタートさせた大沢が、体格の利を生かせる場面は
残念ながらほとんどなし。優勢なのに苦しそうな表情をさらして闘うバルデスに、
何とか押し込んで攻められないか、と思って見ていましたが...。

4回にダウンを奪われ、7回に左フックで効かされて詰められ、ストップ。
心情的な部分で、地方の小さなジムからベガスの大舞台に立った事実を称えたい気持ちもありますが、
試合自体は善戦健闘とはいえない、厳しい評がなされて然るべきものでした。残念です。


試合後の報道などを見ていないのでわかりませんが、バルデスは何か重篤な負傷か、
体調不良の状態にあったのではないか、と見えました。
もしこの状態のバルデスに、細野や下田、天笠あたりが挑んでいたら...と
言うても詮無いことを思ってしまうほどでした。


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ノニト・ドネアの敗戦は、いよいよ彼の身体的限界が来てしまったのかな、という印象でした。
ドネアよりも分厚い上体のサウスポー、マグダレノは、広いスタンスで踏ん張り、
左(アッパー含む)と右フックの迎え打ちに専念し、クリンチやホールドで接近戦を抑えて、
後ろ足から小さく後退のステップを刻み、懐を深く使う、迎撃ボクシングでドネアの切れ味を封じました。

メインのバルガスは、体力不足とダウンの影響から、早々にこの構えを崩してしまいましたが、
マグダレノはバッティングによる出血にも動じず、終盤まで持ちこたえました。
10回くらいになって、すこしスタンスが狭くなり、迎え打ちの威力が落ちたところを攻められましたが、
最後まで踏ん張って、中差の勝利を収めました。

以前なら、相手が来れば鋭い「合わせ」のカウンターがあり、相手が引けば旋回してサイドから崩す、
自在な攻撃ボクシングを見せてきたドネアですが、相手の体格や懐の深さに苦しんだせいもあり、
どうにも攻め口が直線的で単純でした。これではいくら個々のパンチが切れても勝てん、という感じでした。


軽量級の歴史において、これだけ攻撃指向が強く、なおかつ技巧の冴えを見せ、
多くの強敵と闘い、勝ちまくってきたチャンピオンは、そうそういるものではありません。
ジョフレやゴメスに匹敵する戦慄的な強打を持ち、原田同様に大幅な階級間移動をこなし、
過去に類例なきほど、数多くのスペクタクルな勝利を重ねてきたノニト・ドネアの
偉大なキャリアにも、とうとう終焉の時が来たということなのかもしれません。
敗れた相手がリゴンドーのような驚異的な強豪でも何でも無い選手だったこともまた、
そのような思いを強くする一因ではあるのでしょうが。



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過不足なき引退試合 パッキャオ、難敵ブラドリーをクリアに下す

2016-04-10 16:15:07 | マニー・パッキャオ



ということで生中継を見ました。

過去二試合では、懸命に動いては打つティモシー・ブラドリーに、好打はあれど強打は決まらず、
時に手こずり、持てあまし、という風だったマニー・パッキャオでしたが、
結果は判定でも、三試合目ではこれまでよりも相手を捉え、攻めきった印象でした。

初回はこんな感じがまた続くのかと思ったのですが、2回から、パッキャオが距離を目に見えて詰め、
狭い空間での攻防がスタートラインになって、そこから踏み込み、打って外す展開。
ブラドリーの速い動きで外され、速い連打を浴びたら、悪い流れになってしまうリスクもありながら、
敢えて遠くから見て闘うのでなく、自らリスクを取って出たように見えました。

ブラドリーも当然ながら、これまで通りに抵抗しましたが、距離が詰まって密度の濃い攻防になれば
パッキャオとの根本的な質の差が徐々に露わになります。

パッキャオの警戒を誘うために高く掲げて振りかざす右も、懸命なボディーワークの繰り返しも、
パッキャオの設定した密な攻防ライン、速いテンポ、狭いスペースでは、余裕を持って展開出来ず、
どうしても隙間が出来、漏れ落ちが見えました。7回のスリップは気の毒ながら、9回の左被弾、
直後の軽い左アッパーでのダウンは、結局は全体敵な質の差が、形になって表れたものでしょう。

ブラドリーはそれでも次の10回に反撃したように、全力を出し切って闘いました。
しかし、選手としての質、格という部分で、明確にパッキャオが差を示した、そういう試合でした。


パッキャオについては、晩年というべき今でもなお、これだけのレベルを示した、流石だと思います。
しかし彼が過去の試合で見せた、階級の壁を破壊し続けた常識外れの爆発力、技術面での質の高さは
それぞれ、確実に一定程度は目減りしてしまっている。それもまた同時に見えた試合でした。


これで引退と本人が改めて明言しましたが、メイウェザー級ならともかく、他の選手となら
誰とやってもまだまだ、興味深い新旧対決が見られるのでは、という気はします。

純正ウェルターの強打、ブルックやサーマン、またはクロフォードのような完成度の高い技巧、
いずれもパッキャオにとり脅威であり、それが敗北へと繋がるのかもしれません。
それでもなお、ボクシングの歴史を彩ってきた、新旧交代なるか否か、というテーマの試合に臨むのは
スーパースターたる者こそが果たすべき、ひとつの責務なのではないか、と思います。賛否あるでしょうが。

しかし、あまり言いたくないことですが、パッキャオ本人がそれを望まず、そういうつもりで
再起してきたわけでもない、というのが現実であり、今日の試合はあくまで、それ以上の意味はない試合でした。
そういうものだ、と思うしかないのでしょう。
その意味では、過不足ない内容であり、引退試合としてはきれいに収まりがついた試合でした。



改めて、過去に彼が見せてくれた数々の驚異的な試合ぶりには、賞賛と感謝しかありません。

そもそも、フライ級時代の大柄な強打者ぶり、タイでの王座強奪、比国での感動的な王座防衛だけで
彼は充分「東洋のヒーロー」だったわけです。
ですから、その後の「労働者」としての渡米を経て、代打出場でのスーパーバンタム級王座奪取は、
それだけで充分「アジアの枠を越えた快挙」でした。

ところがさらに勝ち続け、バレラ、モラレス、マルケスらとのライバル対決に勝ち越す頃になると、
彼は真にワールドワイドなスーパースターとなりました。
東洋の選手が米国のリングで、王国メキシコのフェザー、ライト近辺のトップ選手3人を総なめにするなど、
あの頃(というか、パッキャオを除けば今でも)には、とても思いつかないレベルの「夢」だったのです。

そしてその先、デラホーヤ戦以降のウェルター級進出になると、もはや妄想の域でした。
本当に、振り返れば現実味を感じられない出来事の数々でした。
感動、興奮というものを越えた衝撃的な勝利の数々は、おそらく今後、二度と見られるものではないでしょう。


今後の活動については、報じられているとおりのものになるのでしょうが、
どのような道であれ、つつがなく第二の人生を生きてほしいものだと、それだけを切に願います。
偉大な英雄が、その余生を、幸福なまま生き抜くことは、それもまた、ひとつの闘いかもしれません。
彼がそこでもまた、勝利者であることを信じたい気持ちです。彼への感謝と敬意故に。


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6度倒れてなお足を使う不思議 パッキャオ完勝なれど、アルジェリ・ワールド全開

2014-11-23 18:51:48 | マニー・パッキャオ


本日の生中継はちょうど正午から判定三連発。
しかも、早い試合終了があり得たはずものが終わってみれば...というのが三つ揃って、
見終えたあと、何だか不思議な感じが残りました。


マニー・パッキャオは、今時珍しい徹底したフットワーカーのクリス・アルジェリを
6度倒して大差の勝利。しかし最初のみっつのうち、ふたつはレフェリーの判断次第、というか
はっきり言えばミスだったと覚しきものでした。

長身のクリス・アルジェリは、足は使うが、動きの中で必ず左足を軸に、パンチを打てる「壁」を
身体の左側に維持しながら動ける、腰が無駄に引けていない、上質なアウトボクシングが出来る選手で、
今日の試合でも、序盤はその良さが出ていました。パッキャオが簡単に打っていけないのは、
速くて遠いだけじゃなく、反撃の脅威を感じていたからだったはずです。

しかし、それでもパッキャオ相手にフルラウンド捌ききれる道理もなく、徐々に打たれ、
不運なのも込みでダウンを重ね、6回と9回にはホントのダウンと追撃を受け、
ストップされても不思議の無い劣勢でしたが、最終回まで生き延びました。

パッキャオは久々に強打が火を噴き、快勝と言える試合だったと思いますが、
そのパッキャオ復調云々以前に、大差でリードされていることを承知の上で、自分の型を崩さず、
懸命に足を使って動き、ジャブで距離を取って、サイドに回って...と真顔でやっているアルジェリが
どうにも不思議で、理解不能でした。君、それは競った試合の最終回にやることやで、と
思わずTV画面に向かって語りかけそうになりました。

まあ、ちょっと変わったキャリアの選手ですし、我々が普通に思い描くのとは違う情緒で、
ここまでの試合と、今日の試合を闘ってきた選手なのかもしれませんが。
単に判定まで生き延びたい、という女々しさとも多少違う、彼なりのこだわりのようなものなのか、と
見ていて不思議ながらも、何だか貴重なものを見ているのかなあ、という気もしました。

今後、この選手の試合をどの程度見ることがあるかはわかりませんが、妙に気になる存在ではありますね。


パッキャオは試合後、明るい表情でメイウェザー戦の希望を語っていましたけど、
もう少し爆発的な踏み込みが頻繁に出るようでないと、苦しい展開が待っていそうですね。
まあそれ以前に実現するかどうかが不明なんですが...今後さらなる復調があると仮定すれば、
今日の時点ではこのくらいの出来に留めておいた方が、試合実現へのプラス材料だったりするのかも知れませんね。
メイウェザーって、ビジネス云々の話を取り払ってしまえば、結局はそういう人だ、と私は見ております。
どうでしょうかね。


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セミファイナルはゾウ・シミンが、WBO3位のクワンピチットというタイの選手に判定勝ち。
何でもIBF王者アムナット挑戦が内定してるとかで、その前哨戦という位置づけの試合だったそうですが、
相変わらず締めた構えが長続きせず、さりとて手を下げる割に目で外せる率が意外に低くて打たれるという、
いつも通りのゾウさんワールドでした。

どうもこの人、プロでの試合ぶり限定ですが、あちらを立てればこちらが立たず、という印象です。
ハンドスピードはあるが腰高なのでパンチ力に欠け、カウンターのタイミングは良いが手を下げないと打てない。
構えを締めて重心を落として打つと遅くなり、手を下げると速いが、相手の反撃を外しきれるほどには目が良くもなく、
さりとて距離で外しきれるほどに足も速くなく、結局は腰高のまま打ち合い、速さで打ち勝つが倒しきれない。
従って相手が一定以上粘れる力がある選手だと、結局はけっこう苦戦する。いつもこんな感じですね。

けっして弱いわけじゃなく、普通の選手にはない強みと特色を持っていますが、今の状態でアムナットとやるというのは...
アマチュアの強豪対決といえば聞こえはいいですけど...アムナットのジャブやアッパーによる距離構築に対し、
ゾウが目で外す防御と、速いパンチの「合わせ」で切り込めるのかどうか、という、まともな攻防が繰り広げられるのは
結局は序盤だけかせいぜい中盤までで、それ以降は互いの弱み、アムナットの失速とクリンチ増加、ゾウの被弾増加が相まって、
あまり見映えのしない展開に、という、あまり楽しくない想像をしてしまいます。

きついようですが、この試合が実現しても、せいぜい野次馬根性で見るくらいの感じかもしれません。
ゾウがもっと自分の良さだけを試合に出すために、最低限考えないといけないことをしっかり考えて
冷静に闘えるようになれば、話は違ってくると思うのですが...。


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セミセミの好カード、ワシル・ロマチェンコvsチョンラターン・ピリャピニョは、ロマチェンコの大差勝利でしたが、
これもまた、ロマチェンコの左手負傷?の影響で、どう見ても中盤くらいでKOかTKOかと見えた試合が、判定になりました。

7回に露骨に左手を痛そうに振ったロマチェンコの、プロとしての甘さが指摘されましょうが、それ以前に、
あの序盤の展開で、いかにチョンラターンがタフだとはいえ、もう一押しの攻撃が無かったことも責められるべきでしょうね。
ジャブの正確さ、サイドステップの速さ、常に死角から打てるアングルの確保と、その位置への適切な移動の連続、
いずれもなるほど世界最高峰、と感嘆させられるロマチェンコが、あんなに甘い試合運びと、危機管理の欠如をさらけ出すとは、
正直言って驚き、というよりも奇異にすら感じました。アマチュアはラウンドが少ないから、怪我を相手に悟られても
何とか乗り切れてきた、とでもいうのでしょうかね。まあ今後に向け、良い教訓になったのでしょうが。

しかし2勝1敗の世界王者と、52勝1敗の挑戦者による世界タイトルマッチ、というのも実に珍しいですね。
面白いものを見せて貰いました。

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大竹秀典は英国リバプールで、スコット・クイグに3-0の判定負けとのこと。
映像を見ていませんが、最近華々しくノックアウトを重ねている王者相手に、健闘したのでしょうか。
結果は残念でしたけど、広い世界に打って出ての闘いは、それ自体がまず貴重だと思います。
大竹の今後に期待します。

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