さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

好機が来たらすぐ雑になる 村田諒太、課題積み残しのKO勝ち

2016-01-31 08:41:52 | 海外ボクシング


村田諒太9戦目、上海での試合は、2回KO勝ちとなりました。
WBCスペイン語圏元王者というガストン・アレハンドロ・ベガを圧倒しての勝利でした。


序盤の積極的なジャブ、手数の多さは良し。好スタート。
あれだけ左が出れば右も付いてくる...と簡単に言っていいのかどうかわかりませんが、
右クロスがテンプルの、けっこうきつそうなとこに決まってダウンを奪う。

しかしこの後、変化なく同じパターンで、正面から雑な攻め口で出たものだから、
余計なお返しをもらい、それが単発でなく何度か繰り返される。このあたりは驚くほど拙い。

良い流れや好機が来ると、雑になり、単調さが際立ってしまうという、
これまでの試合で見えた課題、というより悪癖が、そのまま露呈した印象。

それでも2回、ボディ攻撃も出て、攻め立てる。何度も同じ軌道で右をミスするが
右ボディが効いて止まったベガを、上への右で倒してKO勝ち。パワーの差を見せました。



今回、序盤からジャブで相手を崩し、早々に倒した好スタートは見事でした。
しかしその後の展開力の無さ、追撃パターンの乏しさは相変わらず。
ジャブが減り、打つのは右クロス、左右ボディに限定され、返しの左フックが出ない。

空振りでも良いからこれを出せば、バランス復元をして、また連打ができそうなものですが、
右が決まって効いても、またいったん動作を切ってから右を打つんで、相手に外される。
短い試合の中でさえ、何回同じ事を繰り返すのだろう、と不思議に思うほどでした。

また、上記のとおり、好機になるほど単調さが出るのみならず、雑な見切りで強引に攻め、
強い相手なら致命傷になりかねない頻度で反撃を受けてしまい、
結局「取り逃がし」てしまう展開も、過去の試合で見えたものと通じるものでした。

結局、立ち上がりに見えたジャブを端緒とした先制攻撃は良かったものの、
その後は多くの課題が積み残しのまま、という試合だったように思います。



「すぽると」のコーナー枠に収まる、序盤KO勝ちは、まずは良いとしましょう。
何もこの段階で世界上位の強豪と闘えなんて言うべきでもないでしょうし、
むしろ「このくらいの試合」を、もっと数多くやっていくべきだ、とさえ思っています。

現状では、陣営の方針に沿った「年内に世界」云々は、どんなものかと思わざるを得ません。
その時々の都合か、情勢の変化か何か知りませんが、我々が普通に見る現実とは
あまりにかけ離れた世界の話だなぁ、というのが、率直な感想です。


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今回の試合、試合中継の枠ではなく、ニュース番組の中での録画中継、という形でしたが、
隣国とは言え海外での試合を当日、結果知らずで見られたのは、有り難く思わねばならないのでしょうね。
その前の時間帯に放送されていたバラエティ番組に、村田や井上、八重樫が出演していたことも含め、
それなりに力を入れてくれているようでもありましたし。

しかし、結局は、まだまだ不足があり、課題も多い選手を、近いうちに世界へ、という言葉で
追い立てるような見せ方をしないと、こういう「番組」が成り立たないのだとしたら、
村田諒太という「素材」の段階にある選手にとっては、色々辛いところかもしれないなぁ...と、
この辺もまた、これまでの試合と似た感想になってしまいました。



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続々と決まる試合について雑感

2016-01-24 08:24:02 | 話題あれこれ



春が来るまで試合も少なく、観戦予定もまったく無し。
GW前後にまた、ばたばたとあちこちにお出かけすることになるのでしょうが...。

記録的寒波が過ぎ去れば、また暖冬に逆戻りで、早々に花粉も飛ぶとか。
何とも過ごしにくい日々ですが、とりあえず、あれこれと試合が決まっているようですので、雑感など。


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今年、国内最初の世界戦は山中慎介、木村悠のダブル世界戦...なのですが、場所は京都。
意表を突かれた感じですが、湖国からの応援団の方々にすれば、見に行くの楽で良いですね。

リボリオ・ソリスという相手選びについては、ちょっと微妙な感じ。
スリヤン・ソールンビサイとアンセルモ・モレノに次ぐ、最上位挑戦者であることは事実なんですが、
弱い選手じゃないけれど、特に上等でもないというか。
リズムやバネじゃなくて、力で打つんで、元気なうちはけっこう強いが、疲れたらそのまま落ちる選手、という印象です。

もし、山中がモレノ戦の苦闘を経て、スランプに陥るということがあれば(ないでしょうけど)
馬力に押されて苦戦、という可能性もあるでしょうが。ないか。


木村悠の相手はガニガン・ロペス。いっぺんだけ、直に見たことあります。
新井田豊と高山勝成の試合の前座に出てました。
肩幅が広く、遠心力を生かしたフックの連打が良く出ましたが、見た目の印象ほどの強打者ではなく、
正確に当てることが持ち味の選手やな、と思った記憶があります。

世界上位に長く、昨年はペドロ・ゲバラに指名挑戦者として挑み、判定負け。
この敗北もあり、ランクは今、6位だそうですが、それなりに厳しい相手選びかな、という印象です。
ゲバラとの再戦がないなら、もっと下から引っ張ってくることもありうると思っていましたので。


この興行、一応前座からG+で生中継があり、メインのみ日テレ系で全国放送という運びのようです。
もし観戦に行けなくても、全試合観られるわけですね。これは助かります。


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チャンピオン・カーニバルの記者発表会があり、全階級のカードが揃っています。

ミニマム級は九州ダービーですね。CSのどこかでやってくれませんかね。
ライトフライは関西対決ながらホールで開催。まあ、その方が評価に繋がるのは事実でしょうが。

バンタムは畑中ジムの元ユース王者田中裕士が日本タイトル挑戦。真価が問われますね。

ライト級は徳永幸大が強豪・荒川仁人の挑戦を受けます。京都開催とありますね。
評価はまだ荒川が上でしょうが、力ではなく時の勢い、流れが逆の結果を生む可能性もあるか。

スーパーライトは再戦ですね。初戦はえらくものごっつい激闘やったそうで。
外園、中澤といった帝拳勢を圧倒した岡田博喜の試合ぶりには、ご多分に漏れず感心させられっぱなしですが、
小原佳太の後を追って世界へ打って出たいなら、この相手にも「寄せ付けない」勝ち方が欲しいところですね。


しかしなんだかんだ言って、全階級見渡すと、面白そうなカードばかりで、壮観です。
以前あった、5階級くらい集中開催する興行などがあれば、有り難く観戦しに行くところですが...(^^)


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井上尚弥様の次戦は、今のところ2位のダビ・カルモナでほぼ決まりとのこと。
3位にゾラニ・テテが突然入ってきた、って話もあり、そっちも見てみたいですが、とりあえず順番と。

以前動画を貼った、対ワレリト・パレナス戦で、いいとこ(コンビが速く、足が使える)と
悪いとこ(パワーと体力がやや不足、動ける反面ガードが甘い)も全部さらけ出してしまってますので、
カードとしてはいまいちの感がありますが、強豪王者のところには、その強さ故に、
「そういう試合」が回ってくるものだったりもします。これはこれで、凄い話です。

何より、カード以前に、井上尚弥の場合はその試合、というか姿を見たい、見ねばならぬ、
というような気持ちになってしまっています。これは外さず観戦するつもりです。


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世界では、ヘビー級が激動の時期に突入しているようです。
タイソン・フューリーがウラジミール・クリチコを破り、リングマガジンの最優秀選手を受賞。
先日のデオンテイ・ワイルダーの試合後には、律儀にも足を運んで、ひと仕事したのやそうで。
好みの問題を抜きにして言えば、頑張ってるなぁ、というところでしょうか。

昨年のクリチコ戦は、好試合とはとても思いませんでしたが、自分より大柄な相手に
いつもの「のしかかり休憩」の時間が取れなかったクリチコが苦闘するさまには、
「天罰覿面やな」という気持ちになりました。我ながら、良い趣味ではないな、と思いつつ。

しかし、新王者フューリーが、新時代を画す王者になりうる器かというと、
今のところ、とてもじゃないがそういう風にも見えません。
群雄割拠のその先に、そういう存在が現れる流れを作った殊勲者、というところに収まる感じ、でしょうか。



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最高試合/三羽烏/風見鶏/転級を誓う?/9戦目

2016-01-13 18:53:01 | 話題あれこれ



年末怒濤の観戦ラッシュで気が抜けてしまった感じですが、
新たな話題もあれこれ出てきたので、とりあえず更新します。


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敗北自体は無念なれど、誇らしくもあり、凄いものを見た、という満足感もあった
三浦隆司vsフランシスコ・バルガス戦が、リングマガジンのファイト・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。

負けた側での受賞とはいえ、日本人ボクサーとしては史上初の快挙です。
これ以外にも、ESPN、ボクシングシーン、USAトゥデイに加え、
スポーツ・イラストレイテッドもこの試合を年間最高試合に選んでいるとのことです。

バルガスとの再戦がすぐに実現するか否か、情勢は今のところ不確かですが、
こういう評価が再戦への後押しになりこそすれ、邪魔にはならないだろう、と思います。
今度は是非、勝って雪辱してほしいですね。激闘でなく、一方的に勝つ試合ならなお良し、です。


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ひとつのジムに三人も王者がいると、こういう賑やかな年明けもありうるんですね。
ワタナベジム三羽烏、ってな趣です。なんだかだいって、凄いことです。

三者それぞれに、今年は飛躍を期すための試合が待っているでしょうが、
勝ち負け以前に、大きな試合がすんなり決まって欲しいものですね。
いざ決まれば、あとはやるだけ、応援するだけ、の話ですから。
それ以前のあれやこれやは、出来るだけ気にせずに済めば、それが一番です。


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こちらは風見鶏です。
あちらにいい顔、こちらにいい顔、ってことなんでしょうね。

亡くなった元WBCプレジデントなんかはよく、こういう誹られ方をしていましたが、大なり小なり、
ボクシングの統括団体の長というのは、こんな調子でないと務まらないってことでしょうか。

つまらん話ではありますが、筋論通せば通したで、団体が衰退したり、それこそまた分裂して
チャンピオンの頭数が増えたりする。それがボクシング「業界」の世界近代史だったりします。

まあ井上尚弥なら、誰が来たって関係ないでしょうし、誰もが夢見る大勝負に至るまで、
もう一、二試合あったって構わないですけど...ダビ・カルモナかぁ。
速い勝負になるか、そうでなければ追いかけ回す、って感じの絵が浮かびますね。
まあ、そういうのもたまにはアリかな、というくらいでしょうか。


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田中恒成は成人式に出る歳なんですね。偉いですね、あの歳で。

で、本人は新年初戦から転級する、と語っているそうです。
年末の試合後、これはいよいよ待ったなしだと思いましたが、本人も陣営も、
そういう方向に舵を切りたいようですね。

しかし、いきなり世界組むのも難しい...というのは、二団体認可時代の話で、
四団体認可後の悪い面として、我々の想像も及ばぬような試合が組めてしまう現実があり、
ひょっとしたら、田中恒成も次戦でいきなり、という可能性がないわけではないでしょう。

とはいえ、今、ライトフライはOPBF王者がジョナサン・タコニングで、日本王者が拳四朗です。
どちらも、田中恒成と闘うとなれば、場所がどこでも見に行きたい組み合わせです。
どちらかに挑んで、二階級制覇に挑む実力を108ポンドで証してほしい、と思ったりもしますが、
こちらはほぼ可能性ゼロでしょうね。残念なことです。


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年末の世界戦、ないしはそれにつぐ好カードや注目試合が嵐のように過ぎ去ったのち、
地上波のTVでボクシングを見る最初の機会は、おそらく村田諒太9戦目の中継となりそうです。

今度は上海、相手はアルゼンチン人。前回のベガス・デビュー戦は、とても好評とは言えない試合で、
こういう試合がセットされただけ、まだ有り難いことなのでしょうね。

このクラスで、急いで上を目指せるほどの驚異的なものを見せているわけではない現状自体は、
別段批判されるようなことでもありません。
逸ることなく、丁寧に外し、地道に打つ。その積み重ねの先にしか「成長」はありえないでしょう。
そういうものをじっくりと見られる試合を、まずは期待しましょう。



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「因縁決着」は脱モラトリアムへの過程か、否か 井岡一翔、レベコをKOで返り討ち

2016-01-03 00:10:52 | 井岡一翔




やれ今度は相手に全裸計量を強いたとか、グローブの選択で揉めたとか、
まあどうでもいいような話題が試合前から報じられてはいたものの、
そもそも前回の判定も含めて、大した「因縁」があるとも思わなかった組み合わせですが、
一応、WBAが再戦指令を出したことを受けて(これ幸いと?)
さも大きな試合であるかのように喧伝された井岡一翔とファン・カルロス・レベコの再戦は
前回とは違ってノックアウトで終わり、因縁決着という形になりました。


展開自体は、体格やリーチでまさり、やや遠目の位置を取れるときの井岡一翔が見せる、
落ち着いて距離を構築し、捌いていく展開が基本でした。
レベコは前回、不当な判定で負けた、という気持ちでいるらしく、果敢に攻めて出ましたが、
序盤などはまさに井岡の思う壺、という感じで迎え撃たれていました。

実はこの選手こそ、出てくる相手の力を左に回って外し、左ジャブ、フックの上下を当てる、
という流れが一番の持ち味のはずが、井岡が無理に出ないので自分から行かざるを得ず、
そこで悪い展開にはまってしまった、というのが前回の試合だったように思っていました。

今回も流れはほぼ同じ。3回には少しヒットも取ったかと思ったが、ボディ攻撃を受け失速。
ただ、食事改善による体調の良さをアピールして、パワーや体格で前回以上にまさった井岡が
攻めに傾き、前に出る頻度が増した中盤は、レベコにも良い回りからの好打が増えました。
中盤までは、レベコが抑えた回もけっこうあったように見えました。

しかし8回あたりから、井岡のパワーが試合の流れを明白に決めて行きます。
レベコは懸命に粘るも、目に見えて失速し打ち込まれ、11回右ボディで倒れ、立てず。

世界フライ級戦線において、頂点を争うところまではいかずとも、
長きに渡って上位に位置してきた技巧派、レベコに連勝した井岡一翔の実力は、
それに取って代わるレベルにある、それを実証した一戦となりました。


しかし、よく言われる井上尚弥や他の選手との比較以前の問題として、この試合をTVで見ていると、
とてもじゃないが諸手を挙げて万歳という気持ちにはなれませんでした。

レベコの好打の大半を無視し、井岡の軽打があれば声を張り上げる実況、
その流れに棹さす意志が皆無では無いにせよ、薄弱な内藤大助と、
もはや聞き流す以外、こちらとしてはお手上げな鬼塚勝也による解説が、
井岡陣営の言いなり、良いなり、という感じのストーリーに沿った言葉を堆く積み上げていく、
その様は毎度の通り、ひたすら空々しくて不快です。

試合後のインタビューは聞かず、TV東京系の方に切り替えたのですが、
(ちょうど、田口良一の試合が始まったところでした)新聞報道で試合後や翌日のコメントを見ると、
真に受けるとしたら、是非どうぞ、そのとおりにやってくださいませ、と思うような話が散見されます。
こういう話通りになるのなら、数年前から続く井岡一翔の「モラトリアム」の時がやっと終わり、
彼の闘いぶりを、余計なことを頭に入れずに見られるかもしれません。それは大変嬉しいことです。

今回、小柄なレベコとの比較のせいだったかもしれませんが、
体格もパワーも、徐々にフライ級に馴染んできた、出来上がってきた、という印象でもありました。
単に迎え撃ち中心だけでなく、押しの強さも出せるようになってはいました。


もし本人や陣営が、相性的には悪くはない?ような気もするファン・フランシスコ・エストラーダとの、
真の「WBAフライ級タイトルマッチ」を実現させる意志を持ち、自信を深めるきっかけとなるなら、
今回の「因縁決着」には、とても大きな意味があったと言えるでしょう。

しかし、結局何も変わらず、レベコ攻略をもってフライ級(というより、WBA単体ですが)を
「制覇」したという前提で、それに差し挟まれる疑義を排除した空間に居続ける、
従来通りの道行きが続くなら、結局は大した話でもなかったな、と言っておしまい、ということになります。


今年は、いよいよその分岐点が、はっきり見えてくる一年になる...のでしょうか。
なんだかんだ言って、ナニワのスカ屁兄弟とは、ボクサーとしての技量力量がずいぶん違う選手ですから、
いつまでも同じような「所業」をしていないで、まっとうな道に戻ってきてもらいたい、という願いは、
ほんの僅かであっても、心中から消えてはいません。

今年こそは、井岡一翔の「脱モラトリアム」が実現することを、年頭の希望として挙げたいと思います。
新年早々の儚い願い事で終わってしまうのかもしれませんが。


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高山勝成の試合は、若干のディレイで放送されたようでした。

えらく大柄なホセ・アルグメドの頑強さとリーチ、そして頭突きに苦しみ、
速く動いて捌こうにも長いパンチを外しきれず、攻めてもダメージを与えられず。
しかもリターンで来るパンチの重さに脅かされて、自分も力を入れて打つ流れに巻き込まれ、
本来ならまさるはずの、リズムやテンポを落として、相手に合わせてしまい、また劣勢に、という
何もかもが悪く回る流れの中、終始苦闘が続きました。

負傷判定になり、普通なら負けだろうけど...と思っていたら採点が割れていたのには
驚きも半ば程度、というところでしたが、やはり負けは負けでした。

いずれにせよ、試合の度に切ってしまうことも含め、色々な意味で限界が来ているのかも、と思います。
前回の原隆二戦からの調整期間が短く、スパーを一切せずに、傷の治癒も完全でないまま試合に出た
今回の判断からして、どんな事情か知りませんが、正常な判断であるとは思えません。

人もあろうにあの高山勝成に対して、失礼千万を承知で言いますが、
このような周辺事情の元でリングに上がるべきではなかった、と感じました。

この試合、相手がどう、試合展開がどう、という話ではなかった、と思います。
仮にもタイトルマッチと称した試合でありながら、見ていて、試合に集中できませんでした。
そして、結果が負けであったことに対しても、悔しいよりも安堵の気持ちが先でした。

そんなんじゃまずいでしょう、という感じです。
こういうのはもう、勘弁してもらいたい、というところですね。


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良さが半分も出ていない 田中恒成、劣勢を一撃で精算し初防衛

2016-01-02 10:30:40 | 中部ボクシング



中部地方在住の友人の厚意により、田中恒成初防衛戦の映像を見ることが出来ました。

田中恒成は攻防ともに抜群のスピードが持ち味でしょうが、
立ち上がりから速いパンチを当てて行く反面、リーチが長くパンチ力も感じる
ビック・サルダールのジャブを端緒とした攻撃をかわせず、ヒットを喫する、悪いスタート。

スピードでは勝っているように見えるにも関わらず、威力はあるが単発かワンツーで止まる
サルダールの攻撃を、思うように外せない。
2回にはけっこう力入れた右を打たれ、後退。
3回、挽回を図るが、ある程度打たれることを覚悟の上で出る、という風になってきて、
この時点での構図は、あらゆる面で「劣勢」そのものでした。

田中は時折、単発ながら左のボディ打ちをきれいに決めてはいました。
これまで、強打者であり、なおかつ世界的強豪との対戦がないサルダールは、
強打を決め手に勝つ試合が多く、劣勢を乗り越えて勝つという試合をあまり経験していない。
従って、受け身になると経験不足、耐久力不足を露呈する可能性はある。

以前、プレビューめいた記事を書いたとき、いくつか動画を見てそんな印象でしたが、
いくらなんでもこの試合内容で、数少ないボディ打ちが決まった程度では、
そういうところに相手を追い込めるとは、到底思えない。

5回にはまた出たところに右クロスを被せられ、ダウン。
いよいよ苦しい、と見えましたが、田中は6回、セコンドに焦らず小さく打って攻めろと
指示を受け、ガードを締めて前に出て、こつこつと上下の連打を当てて行く。

これに対するサルダールの対応が、言っちゃなんですが稚拙というが、知恵が無いというか。
ここまで優勢にありながら、手の内見え見えの田中の前進に対し、ジャブで止めるでもない、
足を使って田中を泳がせる工夫もない、漫然と受け身になりつつ、単発の強打を飛ばすが、
逆にボディを再三打たれる。

減量に苦しんだ田中は、動きが重く、防御面では思うに任せぬ様子で再三打たれている反面、
その分、いざ押し込んで攻める段になれば、パンチの重さでは負けていませんでした。
右アッパーから左フックのボディ打ちが決まると、サルダール崩れ落ち、立てず。
田中恒成、大逆転のKO勝ち、しかもボディ一発でのKOという、軽量級らしからぬ倒し方でした。


本人は試合後、思ったより元気な様子で、しかしKOまでの過程を「完全に負けてた」と自省していました。
彼の言う通り、ポイントで劣勢、ダウンも喫した試合内容は、減量苦の影響もあって、これまで見た
田中恒成の試合の中でも、一番良さが出ていないと感じさせられるものでした。

しかし僅か6戦目の若い選手が、色んなタイプの相手と闘い、思うに任せぬ展開があることは、
よくよく考えれば当然で、この試合を世界タイトル云々抜きで見れば、田中恒成は上位クラスの
強打を持つ難敵に苦しめられながらも、腹の据わった闘いぶりで逆転し、貴重な経験を積んだ、と
そういう目で見られる試合でもあったはずです。前回のフリアン・イエドラス戦とほぼ同様に。

しかし、事ここに至っては、彼のキャリア構築を批判的に語っても遅いでしょうし、仕方も無いでしょう。
今後は彼の手にした肩書きを維持するためでなく、ボクサー田中恒成の内実がいかなるものか、
という現実を踏まえて、適切な道を進んで欲しいと思います。


とりあえず、誰もが思うことでしょうが、まずは転級でしょうね。待ったなし、という段階でしょう。
今回の試合は、正直、見ていて辛いものがありました。
とはいえ、ライトフライ級の現状、タイトルホルダーの「分布」を見た上で、
田中や陣営の周辺事情を考えると、色々難しそうではあります。

それはまあ、何も焦ってすぐ世界、という話にしなければいいだけのことなんですが、
もう、そういうわけにもいかなくなっている、のかもしれません。
それが転級を阻む、先送りする決断に繋がる、というのも、いかにもありそうな話に思えます。
そういうことになってほしくはないですが。


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壮行試合?で一撃KO 今年も大トリ内山高志、ニカラグア人を一蹴

2016-01-01 18:14:06 | 関東ボクシング



大晦日は東京、大阪、名古屋三興行で、タイトルマッチ5試合挙行。
TVで見るだけでも本当に大変です。
ましてディレイあり、生中継あり、関西地方では見られないものもあり。
友人の厚意により、かろうじて見られたものも含め、順次、簡単に感想を書いていき、
毎度の通り新年のご挨拶に代えさせていただきます。


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そういうことで、いよいよ米国のリングに進出することが現実的に語られている内山高志は、
「壮行試合」の趣さえある対オリベル・フローレス戦を迎えました。

彼の実力に見合わぬ不遇、国際舞台への飛躍を妨げるマネジメントの貧困については、
長きに渡りファンの間で不満の種でしたが、どういう理由か算段か、はたまた周辺事情の変化かは
ともかくとして、一応は「内山の慢性的な故障が全て治癒し、体調が良いから」というお題目のもと、
対ニコラス・ウォータース戦に向けてのゴーサインが出た、と報じられていました。

内山にとり、そしてファンにとっても待望のビッグマッチが来年にも実現する。
ただし、当然ながらこの大晦日に取りこぼしがなければの話です。

内山高志とて、相手には負けなくとも、時の流れに負けるときは、いつか必ず来る。
それが何時なのかが問題であって、彼の年齢を考えれば、それが「次」であっても驚きではない。

内山高志なら、そんな不安を吹き飛ばして、また勝つに決まっている。
そう思う一方、本人や周辺が語る「今こそ好調で、どこも悪くなく、完全な状態」という言葉を
鵜呑みにしていいものだろうか。試合前はそんな風にも思っていました。

ところが、実際に試合を見ると、試合前に飾り付けられたそんな言葉の数々が、
ひょっとするとまんざら嘘でもないのかと、つい思ってしまう...というか
どこから見ても本当なのではないか、と見えてしまうものでした。


内山は、僅かに左側に重心をずらして立ち、軽めながら威力十分の右でリード。
フローレスが上体を左右に揺すって外す動きを、左ジャブで追撃。
2回からは左フックの上下も加え、左サイドに回って右を返す。
3回は右のボディアッパーも覗かせ、右がダブルで決まり出す。

これはいよいよ攻め上げるかなと思った直後、たぶんフローレスが右から左を打つ
その動作の直前だったか、身体を締められないタイミングで左のレバーブローが入り、
フローレスがキャンバスに落下、そのままKOとなりました。

サウスポーを攻略する「崩し」の攻めが、そのまま決め手になってしまう。
内山高志の圧倒的な強さを改めて示す、強烈なワンパンチKOでした。

オリベル・フローレスが弱い選手だとも思いませんが、内山高志の前では
「壮行試合」の引き立て役に過ぎなかった、としか言えません。
またしても圧倒的な強さを見せた、いつも通りの内山でした。


それにしても11度防衛を達成した36歳のボクサーが、これほど心技体全てに充実し、
新たな大舞台への、遅すぎるかに見える挑戦にも、不安より先に希望をもって語られる、
そのこと自体が驚異的です。

前々日の井上尚弥と共に、その圧倒的強さは、今の日本のボクシング界では抜きん出ています。
今年、話の通りに、大きな試合の話が実現するとしたら、期待は膨らむばかりですね。
この試合ぶりを見て、相手や陣営が方針を変えたりしないだろうか、なんて気にもなるくらいで、
その辺も井上に通じるものがありますが...。


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セミファイナルの田口良一は、またしても壮絶な試合を繰り広げました。

初回からルイス・デラローサの果敢なアタックに、悪い意味で「お付き合い」をしてしまった感じ。
田口はパンチの威力ではまさるが手数で劣り、多くのヒットを許してしまう。

それに対してどう応じるか、の選択に少し迷いがあったか。しっかり離れてジャブを突くのが
一番良かったのでしょうが、勢いに呑まれている面もあり、さりとて打ち合いにも踏み切れず?
序盤は単発の好打を決めてもデラローサを止めきれず、失点を重ねているように見えました。

中盤以降、無理をしていた面のあるデラローサが徐々に失速、田口は身体全体をしならせた
強烈な左フックやボディ打ち、右ストレートや、スイッチしての右ジャブなども見せ、挽回。
9回には右のクリーンヒットを重ねてデラローサを打ちまくり、棄権に追い込みました。


最近の戦績が良くないとはいえ、かつてはコロンビアのホープでもあっただろうデラローサが、
ラストチャンスに賭ける気迫というか、勝負への執念は凄まじいものがありました。
それは認めた上で、その闘志を全て引き出してしまうかのような、田口良一の闘いぶりは、
あまりにも正直過ぎるというか。良くも悪くも、これぞ田口良一の試合だな、という印象でもありました。

同じ事の繰り返しですが、あまりに容易に、相手が望む展開を与えてしまうし、気前よく打たれすぎます。
相手が変われば対応も変わる、という面もあるでしょうが、派手な試合をし過ぎますね。

豊富な練習量を感じさせる、良く鍛えられた天与の体躯とパワーを、より効率の良い展開で生かし、
今年実現するであろう上位選手との対戦を勝ち抜くために、今年は技術や戦術の改善、
さらにいうなら発想の転換が求められる一年になるでしょう。

そのあたり、少しでも良いから変化の兆しが見られれば、と思っていましたが、
今回の試合に限っても、そういうところにはまだ手が回っていないのかなぁ、という印象でした。
見ていて面白い試合をするという意味では、非常に存在感のある選手ではありますが...。



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