さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

黄金のバンタム、もう全員勝ちでもいいという顔ぶれ

2020-04-30 03:14:41 | 海外ボクシング



さて、遂に井上尚弥登場、バンタム級ですが...。
マガジンによるエントリー、一回戦は以下の通り。


エデル・ジョフレvsオルランド・カニサレス
ルーベン・オリバレスvs井上尚弥
ファイティング原田vsノニト・ドネア
長谷川穂積vsカルロス・サラテ


...日本人3人入れちゃいますか、というツッコミもありましょうが、それはさておいて。



エデル・ジョフレ。ブラジル初の世界王者にして、同国史上最高のボクサー。人呼んで「黄金のバンタム」。
世界王座が一つしかなく、ジュニア、スーパー階級もない時代に、軽量級で世界王座を8連続KO防衛。
それはまさしく、当時の常識から大きくかけ離れた、破天荒としか言いようのない業績だったことでしょう。
それを考えるだけでも、バンタム級史上最強の評価は納得です。

アルゼンチンとイタリアにルーツがあるブラジル人で、なるほど見た目はそんな感じ。
堅牢なガードによる防御と、コンビネーションの中でいつ強打するか、という狙いの鋭さが見える攻撃。
そして、狙って決め打ちするパンチの威力が桁外れ。打ち出しが小さく、打ち抜きが深い強打。

今見ても、本当に「強い」という印象です。少なくとも、まともに行ったんでは無理や、という。
カラー映像が見られる晩年、フェザー級に転じた、30代後半の映像を見ても、まだけっこう強かったりします。

動画はけっこう数があります。バンタム級時代のものはどれも断片的で、画質が良くないですが。
実は去年、一度思い立って、検索して出る動画全部見たる!という感じで、ジョフレを見まくったことがありました。
どうも、フェザー級時代の映像の方が多くて、バンタムの頃のは、見づらいものがほとんどです。

とりあえず、誰とやったのかわかるものの中から、選んでみました。


59年、世界王者になる前のノンタイトル、比国のダニー・キッド戦。ダウンを奪って判定勝ちですが、今ならストップかも。





60年、エロイ・サンチェス戦。世界王座獲得の試合。





62年、3度目の防衛戦、EBU王者ジョニー・コードウェル戦、10回TKO勝ち。
今風に言えば王座統一戦みたいなものでしょうか。
伸びる左アッパー、右クロスで脅かし、右から左の返しで倒し、詰めて相手コーナーが棄権。





63年、初来日。6度目の防衛戦、青木勝利戦。伝説的に語られる、左ボディによるKO。





同年、比国で7度目の防衛戦。青木戦を終え、日本から比国へ直行したのでしょう。おそらく、二試合パックの契約だったのでは。
ジョニー・ハミト(フィリピン)に12回TKO勝ち。青木戦に続いて、左ボディの威力が凄い。
ただ、ハミトの手数とスピードに少し苦戦した、という内容だったそうで、原田戦の敗北に繋がる何かが、この試合にはあったのかもしれません。





そして、9度目の防衛戦で陥落した、ファイティング原田戦の4、5回。
二試合、全部で30ラウンズありますが、この2回ぶんだけ見れば、両者の力、試合内容が凝縮して見られる、そんな6分間。
もちろん二試合とも、フルに見る価値大いにありですが。CSフジでの放送は、最近はあるのかなぁ。
それにしても原田さん、よう倒れんもんですね。どっちも超人です、もう。





カラバージョ戦や矢尾板貞雄戦、ビセンテ・サルディバル戦など、見てみたいと思うんですが見つかりません。残念。




いきなり長くなりましたが、対するはIBF王座16度防衛のオルランド・カニサレス。
IBFが徐々に認知されていく過程の頃の王座獲得だったもので、ケルビン・シーブルックス戦も、専門誌がグラビアページを割いて報じていなかったような記憶あり。
しかしWOWOWエキサイトマッチが始まり、試合が見られるようになると、WBAやWBCの王者より上なのでは、と思うようになりました。
当時は、AやCの王者も、エリセール・フリオやジュニア・ジョーンズ、辰吉丈一郎ら魅力あるボクサーがいましたから、彼らとの対戦を見てみたかったですね。

代表的な試合、KOシーンを紹介と、普通なら考えますが、この人の場合、ある意味決定版的な動画があります。
なんでもマネージャーだったジェシー・リードの息子が編集した?映像とのことで、もうカニサレスへの愛情に満ちたハイライト集です。





カニサレスの防御から攻撃、その合間に挟む「ひと仕事」、サイドステップの見事さ、上下の打ち分け、「開いたトコ」への狙い打ち。
カニサレス大盛り、という動画です。これ見たら十分、お腹いっぱい、という感じですね。



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続いて王国メキシコの「ミスター・ノックアウト」ルーベン・オリバレス。

こちらはジョフレ以上のKO怪物で売り出しましたが、当のメキシコ国内では、ハードパンチャー、というのではなく、メキシカン・ボクシングのサイエンスを確立した攻撃的テクニシャンという側面を評価されている、といいます。
上下のコンビネーション、ことにダブル、トリプルパンチによるボディ攻撃の効果を利して、いかに相手の防御を崩し、KOパンチを打ち込むか。
そのパターンを開発し、確立したのが、オリバレスであると。

世界奪取のライオネル・ローズ戦、その時点での戦績は52戦、51勝1分無敗。そのうちKO勝ちが49。
思わず言葉を失いますが、実際に映像を見ると、画質のせいもあるかもですが、戦績の数字から想起するような底抜けの強打者ではなく、組み立て、崩しの巧さと、集中攻撃の鋭さで倒しているなあ、という印象でもありました。


まずはハイライト動画。短くまとめてあります。ローズ戦の様子が長めに入ってますね。





67年、無冠時代。31戦目、ファイティング原田の弟、牛若丸原田戦。
この弟さんも日本チャンピオンになる人で、相当強いはずなんですが。





こうして見ると、当てる巧さがかなりのもの。
トランクスのデザインや背格好なんかのせいで、遠目に見ると、ファイティング原田が倒されているように見えてしまいます。むー。


69年、東京五輪金メダリスト、桜井孝雄戦。





サウスポー相手でも、上下の打ち分けが冴えます。
どちらに力点を置いて打つか、その選択も適切です。こういうところか、と。


こちらは2度目の王座獲得後、71年に初来日。
二度目の対戦となる金澤和良戦。伝説の死闘。





この辺になると、王者として色々と誘惑もあったようで、その辺の乱れが試合ぶりにも出ています。
最後、何ごとか吠えるように叫びながら打っていく挑戦者、金沢の姿は、壮絶です。


よく知られるとおり、ストイックな節制などとは無縁な御仁で、王座奪取後、転落と奪回を繰り返すキャリアでしたが、本人曰く「きちんと練習していれば最強だったが、相手ではなく、遊びの楽しさに負けた。でも、人生ってそんなもんだろ」。
なんかこう、カラッと朗らかなのが良いですね(笑)。




さて、対するは井上尚弥。
ファイティング原田以来、こういう場にてらい無く推せる日本人ボクサーが出た、というだけでも凄いのに、それ以上の評も多いのですから...。

トータルバランスに優れ、それでいて突出した強さもある。
今回のブランクや、前回の試合で2回に打たれるまでの過程で、自ら少し止まった、あの辺の選択がどういう意味を持っているものか、など、気にかかることもありはしますが、現状のみならず、歴代最高クラスの王者と目されるのに相応しい実力を証しています。

動画なんて今更ですので、これ。
次の試合、早く実現してほしいです。






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さて、少し前まで、日本最高のボクサーといえばこの人、一択だったファイティング原田。

日本人二人目の世界王者であり、当時の最年少世界王者でもあり、さらに黄金のバンタム攻略という快挙でもって、世界のボクシング史に特筆される存在でもある。
その果敢な闘いぶりは、当時の日本人の心情にマッチしていて、まさに国民的スポーツヒーローとして、その名を知らぬ者はない、というレベルだったそうです。
ていうか、私も現役をリアルタイムで見てはいませんが、名前を知ったのはいつだったか、覚えていません。何故か知ってましたね。

しかし、よく言われる果敢さ、勇気、同じ人間だから負けるわけがない...というような精神的な部分ばかり語られる原田像には、違和感があります。
キングピッチ戦、ジョフレ戦、メデル戦を通して見れば、攻撃的でありながら、足で外す防御に秀でていて、単なる突進ファイターでないのは一目瞭然。
しかも当時の常識に反して、試合全般を通じて攻防のリズムを落とさず突っ走る闘い方で、それを実現するスピードとスタミナを兼ね備えていた。
キングピッチやジョフレが、初対戦のときに、戸惑っているように感じるのは、本当にこの調子でやるつもりなのか?という疑念からではなかったか、と思います。

当時「リング」誌主筆のナット・フライシャーが「私が求めていた、攻撃型のチャンピオン」と称えたそうですが、ファイティング原田の闘いぶりは、単なる日本のナショナルヒーローの枠内だけでは収まらず、当時のボクシング界において、革新的なものだったのでしょう。

動画ですが、またしてもこちらのハイライトにお世話になります。





技術面でもうひとつ注目してほしいのは、ジョー・メデルとの二試合ですね。
初戦、攻勢に出たところを捉えられた原田が、再戦でいかに距離の取り方、位置取りを徹底的に研究して対抗したか。
そして、にもかかわらず、その原田を最終回、あわや捉えかけるメデルの鋭さも。
世界の頂点を争奪する闘いとは、これほど凄いものか、と感心するしかありません。




エロルデ、パッキャオに次ぐフィリピンのグレート。ノニト・ドネアはバンタム級でエントリー。
ウラディミール・シドレンコ、フェルナンド・モンティエル戦は、確かにいずれも強烈な勝ちっぷりでした。
とりあえず二試合、動画。







井上尚弥戦など含め、バンタム「復帰」後のドネアも、違う怖さを持つベテラン強打者ですが、この頃はもう、近寄っちゃいかん、というレベル。
シドレンコ、モンティエル共に、日本来たとき直に見て、その強さを実感していただけに、この負け方は信じがたいものがありました。
ここをベストとして他と比較すると...かのジョーさんに「ジョフレより、サラテより上じゃないかと思った」と言わしめたのも納得ですね。



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さて、神戸のジムから初の世界チャンピオン、技巧で倒すサウスポー、長谷川穂積。
その巧さ、強さのみならず、キャリアを重ねるに連れ、辰吉丈一郎に次ぐカリスマとしても、人々の記憶に残るボクサーとなりました。

まー、拙ブログは、言ってみれば長谷川穂積応援ブログみたいなものでもありまして(笑)今更何をどうとか書きようもないです。
今回のマガジン、バンタム級歴代ベスト8選出については、依怙贔屓感情でいけば「当然!」となりますが(笑)
えー、ピントールとかチャンドラーとか、それこそマヌエル・オルチスとかはいいんですか?そしたら山中は?とか、色々思う気持ちも、心の片隅にはあります。

でもまあ、そういうのはええか、せっかく選んでくれてはるんやし、ということで(笑)。
対戦想定でも、連戦連勝で優勝にしたろかな、とか思ったりもしますが(笑)

まあ冗談はおいといて、真面目な話、ピントールやチャンドラーなら互角か、若干上に置いてもいいかな、と思います。
5連続KO防衛の「ベスト」の頃なら、完全に上かなと。
オルチスは今回、外す方針が誌面に語られてましたし、あとは山中...こちらは、辛抱しておくなはれ、というところで(笑)


とりあえず動画。
この人の試合は、西岡利晃同様、それこそデビュー戦から手撮りの動画で、それがないものでも会場で、ほぼ全部見てますが、YouTubeではまたしてもこちらのハイライト動画。
世界戦全部入り、従ってバンタム級での勝ちっぷりもしっかり見られます。







大トリ?はオリバレスの後、王国メキシコの看板として最強を謳われた長身のパワーヒッター、カルロス・サラテ。
バンタム級歴代の中でも、ジョフレの後に現れた王者の中で、最強にして難攻不落と目される存在でした。
また、マイケル・カルバハルが登場するまでは、リングマガジンのファイター・オブ・ザ・イヤーの中で、歴代最軽量級のボクサーでもありました。

細身の体つきですが、見た目のイメージと違い、けっこう強引、力づく、確信的な「破壊者」だなあ、というのが、初めて映像見たときの印象でした。
外連味の無い、真っ向勝負で打ち崩すボクシングだと。

何しろ長身、リーチがあり、遠くから打てて、そのパンチは右ストレート、左フックとも、恐ろしく正確で強烈。
そして、相手のガードをよく見て、左のボディブロー。これで再三倒してます。
相手にしたら、向かい合っている時点で八方ふさがり、こんなんズルいやん、というレベル。まさしく無敵に見えました。

ゴメス戦の敗北(リング外で色々大変だったとか)、ピントール戦の論議を呼んだ判定負けなど、不運の影も見えるキャリア晩年でしたが、ベストの時期は、確かにジョフレと双璧の強さだった、と思います。

動画はフルのものはたくさんありますが、まずはハイライト。横幅が以下同文ですが。
内容的には良いんですが、そこだけが残念。





WBC王座奪取の、ロドルフォ・マルティネス戦。豪快。





アルフォンソ・サモラ戦。WBA、WBCのバンタム級王者同士が、ノンタイトルながら対戦するというビッグマッチ。
元々同じクーヨ・エルナンデス門下の両者、因縁の対決。
この試合の時点で、サモラ28戦28勝(28KO)無敗、サラテ45戦45勝(44KO)無敗。
全世界注目の大一番は、サラテが完勝。キャリア最大の勝利でしょう。
サモラも、この試合までは怪物的に強かったんですが...。





珍しく、日本語実況のもの。8度目の防衛戦、エミリオ・エルナンデス戦。
画質は悪いですが、杉浦アナの実況が懐かしいです。






9度目の防衛戦、メンサ・クパロンゴ。左ボディで効かせ、仕留めるシーンから。






どうでもいいですが Carlos という名前の表記は「カルロス」じゃなくて「カーロス」にしたらいいのになあ、と、ずっと思っています。
カーロス・リベラみたいで、そっちの方がカッコイイやん、と。駄目ですかね?



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ということで、またしても長くなってしまいました。
対戦については、非常に難しいというか、それぞれ思うところがありすぎますね。誰も彼も素晴らしいので。

でもまあ、簡単に。独断ですので、異論反論は覚悟の上で。あくまで「ベスト」を切り取って比較します。

ジョフレvsカニサレスは、巧みに外し、回り込むカニサレスにジョフレが苦戦。
しかし一度でも強打すれば仕留めきる力のあるジョフレが、追撃でカニサレスを止める。ジョフレ。

井上vsオリバレス、多彩な左上下で攻めてくるオリバレスに、井上がカウンターの左フックを滑り込ませる。
激戦の末、一発ずつのパワーの差が出て、井上。

原田vsドネア、ドネアのカウンターを警戒しつつ波状攻撃の原田、ドネアはカウンターも、原田が強打狙いではないので、長引く。
しかし要所でドネアの強打が原田を食い止める。ドネア。

長谷川vsサラテ、正面から分厚い攻めを仕掛けるサラテ、長谷川は速い連打とカウンターで対抗。
ロープ際に追われ、回り込むより打ち返す長谷川をサラテが打ち込む分、サラテ。


準決勝、ジョフレの堅牢なガードを井上が叩き、動かして当てて行く。ジョフレの強打を怖れず井上が切り込み、スピードでもまさる。井上。
ドネアvsサラテ、一発で倒せる者同士だが、カウンターを取れるドネアが競り勝つ。

決勝、全盛のドネアと、好調時の井上。互いに切れのあるパンチを応酬、井上苦しむが、徐々に強打をヒットして逆転。井上。


...まあ、無理して勝敗つけなくてもいいかなあ、と今頃になって思い直しております。
あくまで紹介のつもりでやっているのだから...今頃、我に返っても遅いですね。嗚呼。




コメント (3)
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スーパーバンタム級、階級の歴史を作った功績は偉大だが

2020-04-29 03:15:59 | 海外ボクシング



新設クラスというものは、スーパーチャンプの手により発展する、という典型例かもしれません。
スーパーバンタム級、マガジンのエントリー、一回戦は以下の通り。


ウィルフレッド・ゴメスvs西岡利晃
ウィルフレッド・バスケスvsジェフ・フェネック
エリック・モラレスvsギジェルモ・リゴンドー
ダニエル・サラゴサvsマルコ・アントニオ・バレラ




スーパーバンタム級の価値を高めたボクサーとして、そして脅威のKOモンスターとして知られる「プエルトリコのバズーカ砲」ウィルフレッド・ゴメス。
何しろ17連続KO防衛という、問答無用の偉業です。このクラスはこの人抜きには語れません。

若い頃から晩年まで、たぶん30試合近く見てますが、王座獲得後、初期の頃は、攻防共に緻密で丁寧。
天性と強打を存分に発揮し、鮮やかで、かつ豪快な勝利を重ねていました。
日本でもロイヤル小林戦で、その実力を存分に見せつけています。
しかし減量苦もあり、フェザーに転じたがサンチェスに敗れ、スーパーバンタムに戻った前後から、力ずくの闘いぶりが目に付くようにもなりました。

あと、試合の数を多く見たせいで、色々と要らんとこまで見えてしまって、正直、実力や強さとは別に、あまり好ましい印象が持てない面があります。
肘打ちやなんかも、けっこう目に付きますし、ゴング後やダウン後に打つ頻度がかなり高い。
それどころか、試合終了後に、たった今、自分が打ち込んでストップした相手に、さらに襲いかかったこともありました。
また、キャリア晩年、フェザーやジュニアライトでの苦闘も、歴戦の疲弊故とはいえ、見ていて辛いものがありました。


とはいえ、このクラスではやはり凄いです。ことに若い頃の試合ぶりは。
動画はまず、主要試合のハイライト。負けた試合は外してあるやつです。





キャリア最大の星はやはりこれか、カルロス・サラテ戦。
この試合の時点で、王者ゴメスが26戦25勝(25KO)1分、サラテは54戦54勝(53KO)。
全世界注目の大一番、今ならアメリカのプロモーターが、かっさらっていくカードです。
ご覧の通り、ゴメスの地元サンファンの会場は異様な状況。
ゴメスがしっかり集中して足を使い、敏捷に外すのに対し、サラテが見るからに重く、不調。
試合としては若干、残念なものでもありましたが、ゴメスの方は切れ味鋭く、見事な出来でした。





フェザー級でサンチェスに敗れたが、スーパーバンタムの防衛は17回にまで伸びる。
最後の防衛戦は大激戦。元バンタム級王者ルペ・ピントール戦。
これはフルラウンド探して見て貰いたい一戦です。ピントールの奮戦も感動的。
ちなみにこの試合はセミで、メインがハーンズ、ベニテス戦。豪華!







対するは日本のスピードキング、早熟の天才にして大器晩成、西岡利晃。
新人王時代から関西ローカルのボクシング番組で取り上げられていましたし、手撮りのデビュー戦映像から、そのキャリアはほぼ全て、つぶさに見てきました。
これまでも色々と書いてきた選手ですし、付け足すことはありません。

まずは日本バンタム級王座を獲得した試合、渡辺純一戦。





初防衛、仲里繁戦。今思えば世界戦で通るカードだったわけですね。
高砂の会場です。懐かしい。





続いて、世界戦を全部網羅した動画。ありがたい作りです。助かります。





こうして見ると、抜群に切れる左、詰める際の爆発力が光ったバンタム級から、ウィラポン戦の苦闘を経て、海外進出に至る過程で、波の少ない安定感と、決め手の威力をバランス良く発揮するボクサーとして、スーパーバンタムを制した過程がよく分かりますね。


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こちらもプエルトリコの「ウィルフレッド」バスケス。
ベニテス、ゴメスと並び、プエルトリコの「三大ウィルフレッド」と言われるそうです。
初めて見たとき、そんな「大を成す」選手になるとは、全然思わなかったですが...。

ハードヒッターで知られるが、技術に欠け、ミゲル・ロラやアントニオ・アベラルに負けていて、コンテンダーとしても一流とは言えない。
87年、韓国でWBAバンタム級王者、朴讃栄に挑んだときのバスケス評はそういうものでした。
なんでも、王者の朴がランカー10人のビデオを見た中から「この選手にする。スピードが無いから勝てる」と自ら選んだのだそうです。

しかし朴は好調に攻めていた5回、ロープ際から放ったバスケスの右で倒れ、ダメージ甚大、セコンド陣がインターバルを引き延ばしたりと、見苦しい真似をしたもののかなわず、10回KO負け。
新王者となったバスケスは、この試合の次に、大阪で六車卓也と引き分け。その後、タイで陥落。
イスラエル・コントラレスにも初回KO負けを喫するなどして、もう浮上してこないのだろうと思っていました。

なので、一度負けている、メキシコの長身ラウル・ヒバロ・ペレスを倒しての戴冠と、その後の躍進は正直言って予想外でした。
その実力に対しても、葛西雄一戦までは、どこか軽く見ていた面もあります。

しかし、ロラや朴と闘っていた頃から、劣勢でも勝負を投げず、ロープ際からの右で倒したり(朴戦)ダウン応酬の激戦を闘ったり(ロラ戦、アベラル戦)ロープに押され続けても粘り強く打ち返したり(六車戦)、不器用そうに見える反面、その勝負強さは光ってもいました。
フェザー級も制し、ハメド戦に進むまで、カニサレスやエロイ・ロハスに勝つなどの戦績は、歴戦の経験を糧にしての開花、というべき、堂々たるものでした。


動画あれこれ探しましたら、「日本人キラー」としての特集動画がありました。これも有り難い。
展開どうあれ、相手を良く見て、しっかり狙っているところが強みですね。







対するはダウン・アンダー初の三階級制覇、ジェフ・フェネック。
バンタムからライトまで世界戦をやってますが、上の二つではネルソン、フィリップ・ホリデーに阻まれ戴冠ならず。
バンタムからフェザーまでの中で、スーパーバンタムではタイの天才サーマートを倒した殊勲があるが、正直、どのクラスを切り取っても、史上ベスト8選出には不足あり、という気がします。
キャリア全体を見て、合わせ技、ってことなんですかね。
このクラスで、という分け方なら、ブヤニ・ブングとかの方が上だと思います。

ただ、ネルソン戦で見せたスタミナとタフネス、闘志は飛び抜けていて、ネルソンやサーマート相手に、それで押し切っているところは凄いですね。

試合ぶりは、とりあえずご覧ください、としか。
こんな感じです。好みに合うか合わないかは人それぞれですが...。





一応内訳。新垣諭(二戦目)、ジェローム・コフィーまでがIBFバンタム級。
三試合目がサーマート・パヤカルン、WBC王座奪取。次がカルロス・サラテ戦。
その次がビクトル・カジェハス戦で、WBCフェザー級です。
タイロン・ダウンズ戦、そしてマルコス・ビジャサナ、アサバチェ・マルチネス、そしてネルソン第一戦です。


ところで私、一度この人、直に見たことあります。
確か、石田順裕がナデル・ハムダンと対戦したときだったと思います。
府立の地下の会場で、ハムダンのセコンドについていました。
試合後、ハムダンそっちのけ(笑)のファンに囲まれ、握手や撮影に応じていました。まんざらでもない風でした(笑)。


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続いて王国メキシコから「エル・テリーブレ」恐怖の男、エリック・モラレス。
活躍の場はスーパーバンタムに留まらず、バレラやパッキャオともライバル関係でしたが、ベストがここと言われればそれも納得。
見た目、ちょっとぎくしゃくしてるようにも見えますが、痩身から繰り出す強打で倒しまくりました。

動画はHBOハイライト。サラゴサを沈めた右ボディストレートは強烈です。





このハイライトで主要キャリアは見られますが、入ってない試合で、印象的なのが猛毒ジュニア・ジョーンズ戦。





国境の町ティファナで生まれたメキシカンが、地元のリングで、アメリカの強打者を迎え撃ち、倒す。
メキシカンが「売れる」ための、絶好のロケーションで見事に勝利して、スター街道に乗った試合です。
試合後、モラレスが勝ったのに、何故か客席から椅子が飛んできて、えらい騒ぎになってました。
フルラウンドの動画なら、確認出来ると思います。




対するは「闘う馬耳東風」ギジェルモ・リゴンドー。40歳だか41歳だか、とにかく現役。
世界選手権と五輪を連覇し、プロ転向後も、負けたのは二階級上のロマチェンコ戦のみ。一種の怪物ですね。
今はバンタムに下げて、井上尚弥戦を熱望していると伝えられますが、エントリーは当然こちら。

現役だし、拙ブログでもあれこれ思うところを書いていることもあり、動画もあれこれ貼ることはないでしょうね。
これはHBOと切れる前に作られた映像みたいですが、中頃から。





BGMの歌声が「打てー打てー♪」と聞こえるのがいとおかし、です。


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さて、若い頃から「老雄」ぽかった技巧のサウスポー、ダニエル・サラゴサ。
この人も王座から転落したあと、復帰してくるとは思ってなかったという点で、バスケスと通ずるところがあります。

バンタム、スーパーバンタムでWBCタイトルを獲ったものの、いずれも決定戦。
メキシカン優遇の匂いが強く、試合内容も「部外者」の目にも鮮やかな、とはいかず。
90年、ポール・バンキに敗れて転落したあと、1年のブランク。この間、33歳になっていました。

しかしそこに、日本から畑中清詞挑戦のオファーが来て、8回戦をひとつやってから来日。
日本側の目論見は、当時、人材豊富で充実期にあった世界のスーパーバンタム級ランカーの中で、一番弱いと見て選んだ、というものだったそうですが、判定勝ちで王座奪取。
その後も王座転落と奪回があり、その中で辰吉丈一郎に2勝したり、ウェイン・マッカラーに勝ったりと、長く活躍を続けました。

名匠ナチョ・ベリスタインの指導を受け、その名がヒルベルト・ローマンと共にジム名に冠されるなど、その技巧としぶとい闘いぶりは、ひとかどの名ボクサーとして認められたものです。

動画はこれまた日本人キラーもの。凄いなぁ...。






最後は、逆に、ベテランになっても少年の面影が残った「ベビーフェイス・アサシン」マルコ・アントニオ・バレラ。

最初は、川島郭志の王座を狙う、指名挑戦者候補として名前を知った選手です。
メキシコの次期スーパーチャンプと目されるということで、これはえらいことやと思っていたら、挑戦者決定戦で体重超過。
一気に二階級上に上がってしまいました。

WBOタイトルを獲る前から、その試合ぶりが見られた(WOWOWのみならず、NHKのBSでも)ほどで、タイトル獲ったあとは、短期間で試合を重ねて倒しまくる。
そのハードスケジュールが祟ってか、ジュニア・ジョーンズに連敗して停滞したが、ほどなく復帰して、宿敵モラレスと激突。
惜敗するも勝っていたような内容で評価を上げると、その後はナジーム・ハメドに初黒星をつけるなど、王国メキシコの看板スターとして大活躍を続けました。

こちらは第一次王座のときの、ケネディ・マッキニー戦。激戦でした。





ハメドに初黒星をつけた一戦。よく見て、打つべき時は惜しまず打ち、見るべきときはしっかり手控えて勝つ、という風。
単なる強さだけで無い、バレラの知性を見た一戦。





一度、後楽園ホールで直に見た(当然、試合ではなく、観戦してるとこ)ことがありますが、穏やかな様子で、試合まで間があったので全体的に丸かったせいもあり、本当にボクサーぽく見えませんでした。
輪島さんが、リング上で紹介されて挨拶するバレラを「このお兄ちゃん、誰?」という感じで、不思議そうに見つめていたのを覚えています(笑)。



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さて、対戦ですが...ベストの比較をしたら、やはりゴメスの正確さと威力が、西岡を上回るか。
バスケスvsフェネック、大柄なフェネックが押し、猛ラッシュ。バスケスの強打に耐え抜いて、かろうじて押し切る。フェザーで当たれば保たないかもですが。
モラレスvsリゴンドー、残念ながらリゴンドーの足捌きをモラレスが止めきれない。リゴンドー。
サラゴサvsバレラ、バレラの攻勢にサラゴサ押され、こちらは捌ききれず、止められず。バレラ。

準決勝、ゴメスvsフェネク、ゴメスの強打とラッシュに、粘るフェネックも終盤、倒される。ゴメス。
リゴンドーvsバレラ、攻勢を取りつつ正確さを見せるバレラだが、捉えきれず、リゴンドーのカウンターで止められる。リゴンドー。

決勝、ゴメスの切れ味に対し、その分、集中を増すリゴンドーが先制し、捌いて、またカウンターでリードを重ねる。リゴンドー。

ありゃ、ゴメス一択かと思っていたら、リゴンドーになってしまいました。しまいましたって何だ...。




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フェザー級、夭逝の王者が最大の不確定要素に

2020-04-28 14:13:41 | 海外ボクシング


さて、階級の名称、どうにかならんかったんか、ハエや鶏より軽いやないか...と、今更なことをちょっと言ってみたくもなる、迫力の伝統クラス、フェザー級。
マガジンによるエントリー、一回戦は以下の通り。


ナジーム・ハメドvsテリー・マクガバン
サルバドール・サンチェスvsビセンテ・サルディバル
ウィリー・ペップvsエウセビオ・ペドロサ
サンディ・サドラーvsファン・マヌエル・マルケス




今月号のマガジン、別枠記事で増田茂氏がナジーム・ハメドについて書いてますが、本当に、最初見たときは驚いたものです。
確かスティーブ・ロビンソンに挑戦した試合をWOWOWが放送した際、それまでの主要試合のハイライトを一気に流し、そしてロビンソン戦のフルラウンド、という形で、その日の放送回は一本まるまる、ハメドの試合だけ、でした。
余程のことがない限り、あり得ない番組構成だったと思います。それほど、世の耳目を集める存在だったのですね。





当時見ていて思ったのは、色々と条件が揃わないと成り立たないボクシングだが、それが成り立っている以上、誰も文句言えんなあ、ということでした。

下半身の強靱さが、上半身の傾き具合からは予測できないパンチ、コンビネーションを実現しているが、相手の反撃を外す目の良さ、勘が生きていないと、いくらでも打たれてしまうだろう、と。
結局、何をもって防御の軸とするか、という部分が危うく、その特異なスタイルと、秀でた才能によってその難点を隠せているうちは良いが...という。
当時「ガード上げて普通に闘ったら、もっと強いのに」という、身も蓋もない評も聞いたことがありますが(笑)本当にそうだったかもしれません。

また、あの、リスクの高い防御で闘えたのは、ワンパンチで倒せる強打が備わっているから、でもありました。
早く試合が終われば、打たれる可能性はそこで無くなる。それを頼りに闘えた、という面があったのも事実でしょう。
そういう決め手を持たないにもかかわらず、スタイルだけを模倣して、痛い目を見た事例もいくつか見たことがあります。

ただ、増田氏も書いているとおり、下肢の強靱さをベースにした強打者、という点で、井上尚弥と通じるものがあり、それは当時、新たな驚き、発見でもありました。
違うのは、井上が防御の軸を技術面でしっかり持っているのに対し、ハメドは勘頼り、という面です。
相手のレベルが上がり、また研究されるうち、その部分でどうしても不足が出てくるのは当然でした。

しかし、ベストの時期は、本当にスリルがあり、圧倒的に強かったと思います。アルゲリョがエントリーされていない以上、階級最強の評があるのも当然だろう、と思うほどに。




対するは「テリブル」テリー・マクガバン。初めて見たのは...ウソつけ、という話ですね。当然、今回が初見です。

クラスの区分けが色々ややこしかった19世紀末から、20世紀初頭にかけて、今でいうバンタム、フェザー、ライトの世界的選手を総なめにする強さ、対戦相手に挑発されてリング上で「喧嘩」を繰り広げたりする気性の荒さと共に、貧しい子供達の面倒を見たりする人情家の面もあり、大衆に広く愛された王者だったそうです。
その激しい闘いぶりは、マイク・タイソンが台頭してきた頃「まるでマクガバンのようだ」と例える声があったといいます。

動画探して見たら、カラーつけてあるものが複数ありました。びっくり。
画質自体も、かなり手を入れてあるのか、けっこう見やすいです。こういうのがもっと広まれば、色々楽しく見られそうですね。


こちらも殿堂入りファイター、ジョー・ガンスを2回に沈めた一戦。なんと1900年12月。明治33年です。
始めて見ましたが、ヒジを上げた左右フックは強烈ですね。





ただ、栄光は短く、1901年、1903年と、ヤング・コーベット2世に連敗。
初戦はダウン応酬の末に倒され、再戦でもKO負け。動画は再戦の方です。
黒か濃紺?のトランクスがマクガバン。白がコーベット。11回KOで試合は終わります。
リング狭い!とか、終わった時の様子が「時代やなー」という感じ。





相手のコーベットという人がまたガラの悪いお方で、試合前に控え室に乗り込んで行って、マクガバンに「アイリッシュのネズミ野郎」と悪罵を浴びせ、それに逆上したマクガバンが冷静さを失って負けた、という話があります。
しかし後年、引退後にコーベットの方がマクガバンを訪ねて和解し、仲良くエキシビションマッチを戦ったのだとか。
この他、ジョージ・ディクソンなどの対戦相手も、このイベントに加わった、といいます。
引退後、レフェリーをやっていて、退屈な試合をした選手を二人まとめて、リング上で叩きのめしてしまったとか(そんなアホな...)とにかく色々と逸話も多いお方でした。


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永遠のチャンピオン、といえばこの人、サルバドル・サンチェス。
ある意味、多くを語る必要も無いので助かる、という一人です。

普通の相手との防衛戦では、苦戦も凡戦もあるんですが、ダニー・ロペス、ウィルフレッド・ゴメス、アズマー・ネルソンといった強豪相手に見せた、鮮やかで印象的な勝ちっぷりはどれも見事。
ことにゴメス戦は、その驚異的な内容、見れば見るほど味わいのある試合ぶりで、ボクシングファンなら知らぬ者のない「クラシック」のひとつです。
フルラウンドの動画貼っておきます。これはお勧めです。見始めたら、割とあっという間に終わります。





なんでこんなに、相手のやること全部承知、みたいな闘い方が出来るものか、いまだに不思議です。
また、普段の試合ぶりのとおり、大したパンチ持っているように見えないのに、その気になったら?ズバッと倒すし、華奢に見えて、打たれても全然堪えないし...得体の知れ無さ、という意味では、歴代最高のボクサーではないでしょうか。

当時のプロモーターが企図していたという、アレクシス・アルゲリョ戦が実現していたら、どうなっていたかな、と思います。
普通に考えたら、パワーでも体格でもまさるアルゲリョの圧勝なんですが、この人だけは、そういう普通の想像が当てはまらないんじゃないか、と。
いったい、どんな試合になったものやら...見果てぬ夢、ですね。




対するはメキシコの先達、サンチェスとは何かと対象的な「赤い鷹」ビセンテ・サルディバル。
東洋最強を謳われた関光徳との二試合でも有名ですが、全盛期の強さは凄まじいものがありました。
また、サウスポーは受け身のボクシングをする、という当時の常識を覆した、攻撃型サウスポーの先駆者と言われることもありますね。

当時、世界タイトルがひとつの時代、フェザー級の強豪選手を悉く跳ね返した中でも、関光徳との二戦、ハワード・ウィンストンとの三戦が特筆されます。
関には初戦でダウンを奪われ、KO負け寸前から逆転の小差判定勝ち。しかし再戦では、凄まじい猛攻でTKO勝ち。
その最後のシーンです。





異名通り、鷹が獲物に襲いかかるような姿に圧倒されます。
この関との二試合は、昔、リング・ジャパンのビデオで見ましたが、数年前、CSフジで高画質の放送があって、ありがたく拝見しました。
しかしYouTubeでは、初戦の動画がないようです。残念。


続いてハワード・ウィンストン、第三戦、12回のストップシーン。
二度闘ってKO出来ず、苦戦した相手、後のWBC王者ウィンストンを遂に仕留める。
最後に、有名な涙の引退表明シーンが少しだけ。





最後におまけ?昔見たとき、思わず二度見したシーン。
4度目の防衛戦、これも強豪フロイド・ロバートソンを見事、2回で仕留めた試合ですが、終わった直後、カウントアウトを終えたばかりのレフェリーと歓喜の抱擁。これこれ(^^;)
まー...そういう時代だったんでしょうけど、ねー...。






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さあ、これまた古い「鬼火」ウィリー・ペップ。
1940年代から活躍したイタリア系の技巧派で、当時の水準を超えた防御技術の持ち主。
映像を見ると、目の良さが抜群、足捌きもよくて、相手の背後に回るシーンが多いこと。
ここまで徹すれば、防御で人気者になった、というのも納得です。

しかし宿敵サンディ・サドラーとの4戦、今の時代なら反則勝ちだろう、という試合を闘わされ、負傷で棄権した試合も含め、1勝3敗と負け越し。
動画はカラーを後からつけた?見やすいものがあったので貼ります。4戦目。少し長くて19分。9回終了後、ペップが棄権します。
コメンタリーがロッキー・マルシアノです。たぶん、イタリア系のペップを擁護する内容になっているんでしょうね。





ペップの動画は数多くありますが、カラーだし画質も良いし、この動画の前半部分に、ペップの良さはかなり出ています。
後半、ことに7回以降は、試合自体が奈落の底へ落ちていく感じですが...。

しかし、歴代屈指の技巧派であることはわかります。今のボクシング界に生きていれば、ある意味、もっと評価される類いの選手かもしれませんね。



対するのが歴代最多、19度防衛の黒帯王者、エウセビオ・ペドロサ。
この人も亡くなったときに、少し取り上げたんで、その記事貼ります

80年代、中南米の王者が、敵地へ出かけて稼ぐ、という形が生きていた最後の時代の王者でした。
今なら、北米のマーケットでいかに「売れる」かが問題になるでしょうから、こういうスタイル、立ち位置というか、それを貫くボクサーはそんなにはいないと思いますが。


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さて、エロルデやペップの項で動画も紹介した、通算100KO超えのサンディ・サドラー。
日本では金子繁治戦で見せた強さにより、評価が高い王者です。短い映像(1分弱)を見たことがありますが、頭一つ身長が違い、体格で劣る金子に左フックを効かせ、右で倒し、再開後タオル投入、という流れでした。
確かに当時の日本のレベルと比べると雲の上だったのかもしれません。伊達に100KO勝ちなんて出来るものでもないでしょう。





ですが、欧米のボクシング批評においては、そのダーティーファイトから評価は低めで、歴代ランキングでも宿敵ペップの上に置かれることは、ほぼ皆無だそうです。
まあ、試合映像見たら、それもしょうがないかなと思います。

しかし、今よりも反則行為に対する規制が緩い時代、これも含めた「闘い」がボクシングである、というのが現実だったのでしょう。
ただ、そういう面を抜きにしても、両手を前に出して攻める防御は、いくらでも打ち崩しようがありそうに見えます。というか、ペップ戦では景気よく打たれてもいますね。




対するはメキシコの英雄、パッキャオの宿敵としても知られるファン・マヌエル・マルケス。
確かにライト級でも強かったですし、ウェルターでパッキャオをKOしたときは、色々と疑惑が言われましたが、フェザー級でのエントリーなら、心置きなく、というところで。

さて、不遇の長かったマルケスがやっとタイトル獲得したマヌエル・メディナ戦、2回の迎え撃ち三連打。





これは見事。好きですね、このパンチ。
このシーンだけ切り取って動画アップしてる方がいるくらいなんで、同感してくださる方も多いと思います。

あとはHBOのハイライト。
パッキャオとの初戦は、本当に、何という試合だったのだろう...と改めて思いますね。







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ということで、対戦ですが、さすがにマクガバンの闘志も、ハメドには届かず。
サンチェスvsサルディバル、メキシコの新旧対決。これは難しいですが...サンチェスの「予知能力」が発揮され、サルディバルを振り切るか。
ペップvsペドロサ、防御の達人同士ながら、よりインサイドに小さく打てるペップで。
サドラーvsマルケスは、サドラーの塗り壁ガードの内外から、マルケスの強打が入る。マルケス。

準決勝、ハメドvsサンチェス。完全に外すというわけにもいかない同士、サンチェスも「追尾」して好打を重ねるが、ハメドが強打の威力で競り勝つか。
ペップvsマルケス、マルケスの連打攻撃を、巧さ故に見てしまうペップが外しきれず、マルケス。

実現しなかった夢対決、ハメドvsマルケスは、パッキャオを執拗に攻め続け、技量では上回っていたマルケスが、ハメドの強打に耐えつつ、防御を打ち崩す。マルケス。


試合のたびに、どう出るか、或いは「化ける」かわからないサンチェスという、不確定要素が大きなクラスですね。
やはり夭逝の王者というのは、色々と悩ましい存在です。



コメント (2)
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スーパフェザー級、改めて「痩身の破壊者」の偉大を思う

2020-04-27 23:12:42 | 海外ボクシング


さて、日本ボクシングにとっても、実はけっこうなボリューム・ゾーンである、スーパーフェザー級です。
マガジンによるエントリー、一回戦は以下の通り。


ワシル・ロマチェンコvs内山高志
アセリノ・フレイタスvsフラッシュ・エロルデ
アズマー・ネルソンvsブライアン・ミッチェル
サムエル・セラノvsアレクシス・アルゲリョ




まずは現役のP4Pナンバーワン、ワシル・ロマチェンコ。
試合自体はライト級に上げてからの方が面白いですが、相手との体格差が良いハンデになっている、という見方もあり、その通りかもしれません。
ローマン・マルティネス戦なんか、ついに「開花」したかな、と思わせましたし、ベストはここかもです。
フィニッシュの左アッパーから右フックは、あんなに力み無く滑らかに繋がった連打というだけでも凄いのに、それが決め手になっているんですから、脱帽するしかないですね。





ただ、数試合の中では、売り出しの時期だったせいもあるのでしょうが、闘牛士の真似したり、要らん遊びもあり、試合運びもそれに引きずられた部分がありました。
その辺は好きじゃ無かったです。とはいえ、歴代最高クラスの選手であるのは確かでしょうね。



対するのが、WBA王座11度防衛のKOダイナマイト、内山高志。
この歴代ベスト8選出については正直、微妙な印象ではあります。
実力的に、そうなる可能性は持っていたが、実際の試合で、それを証す機会を得られないままキャリアを終えた選手、と見るべきかもしれません。
しかし、その試合ぶりが非常に印象的で、風格のあるボクサーだったことは確かです。
全盛期、好調時の強さは、誰と当てても面白かっただろう、とも思います。





デビュー戦からのハイライト集。
これほどの強打を持ちながら、どんな相手でも侮ることなく、丁寧に当てて外して、という積み重ねを続けた結果の大成、その過程がよくわかります。


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歴代王者の数は多くはないが、たまに王者が出ると「怪物」クラスだったりするのが不思議な国、ブラジル。
そのブラジルから、エデル・ジョフレ、ミゲル・デ・オリベイラに続く、3人目の世界王者が、デビューからKOの山を築いたアセリノ・フレイタス。
愛称は「ポポ」。
以前、よく似た顔のブラジル人サッカー選手が登録名を「ポポ」としていて、Jリーグにも在籍したことがありましたね。

WBO王座獲得試合からWOWOWで見てますが、広いスタンスで思い切り踏み込んで強打するスタイルは、迫力十分。
えらい選手が出てきたな、と思ったものです。





左右へのステップもあって、攻撃は大胆な中にも巧さがありましたが、見るからに防御は甘く、攻めることで相手を抑えられないと、打たれる頻度も高まりました。
ディエゴ・コラレス戦は、先制のヒットは取ったが倒すところまで行かず、体格にまさる相手が持ちこたえ、その弱点が露呈した、という流れでした。
まあこれはライト級の試合ですが。



対するはアジアのオールド・グレート。フィリピンの英雄、フラッシュ・エロルデ。

白井義男の世界フライ級王座に挑戦し、接戦を演じたタニー・カンポという選手がいましたが、このカンポは、白井に挑む前に、比国で17歳の少年に負けています。
その相手がフラッシュ・エロルデ。映像などは当然ありませんが、まさに逸材、天才少年だったのでしょうね。

1955年、軽・中量級で史上最多の103KO(諸説あるんでしょうが、だいたいこのくらい)を記録した、世界フェザー級王者サンディ・サドラーがアジアに遠征しました。
まず日本で金子繁治をTKOしたあと、その12日後に比国で、エロルデと対戦。
エロルデが判定勝ちの殊勲を挙げ、それを受けて翌年、両者は世界タイトルマッチで再戦します。そのハイライト動画。





この映像、フルでも見ました(後に、CSフジでも6回以降が放送されました)が、内容的には完全にエロルデのリード、というか、勝ち。
しかし悪名高いダーティーファイターのサドラーが、足を踏み、頭や肩をぶつけ、サミングも加えて、負傷によるTKO勝ちに持ち込みます。
敵地サンフランシスコにおける、当時のレフェリングの杜撰さは酷いものです。

しかしこの強豪王者との対戦で自信をつけ、ジュニアライト級の世界王座を10度防衛。最後は沼田義明に敗れました。
これと前後して、ライト級のカルロス・オルチスに二度挑む(共に14回KO負け)など、世界的選手として活躍しました。

また、母国フィリピンのため、私財を投じて学校や病院、教会を建てたことでも知られる「偉人」でもありました。
モハメド・アリがフレイジャーとの対戦のため、フィリピンを訪れたときにそれらの施設を目の当たりにし、エロルデの業績に感銘を受けた、という話もあります。

当時のサウスポーぽく、右リードは甘い、というかあまり出ませんが、左右共にパンチが切れるし、長身の相手に対しても前にのめらず、バランスも良い。
今の目で見てもなかなかの好選手です。パッキャオやドネアの先達との歴史的評価、妥当だと思いますね。



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さて、これも長くなってしまいそうなチャンピオン(笑)。ガーナのプロフェッサー、アズマー・ネルソン。

フェザー級でサルバドル・サンチェスのラストファイトとなる試合の相手を務め、最終15回逆転TKO負け。
空位の王座に就いたウィルフレッド・ゴメスを痛烈にKO。
その後スーパーフェザー級でも長期政権を築いた名選手。ライト級はウィテカーに阻まれましたが、これは相手が悪すぎました。

ベストは荒々しくも強かったフェザーかもしれませんが、技巧が冴え、試合運びも冷静になったスーパーフェザーの頃が、安定はしていました。
ヘナロ・エルナンデスとの闘いもまた、ヘナロが示した戦士のマナーと共に、印象深い名勝負でした。

スーパーフェザーで切って言えば、総合力で秀でたところが見えた反面、フェザー級のときより、迫力は目減りした感がありましたね。
この辺は一長一短あるのでしょうが。

画面の横幅が広くなっているものですが、ハイライトです。
自分で直してアップし直したいですが、多分色々あって面倒そうなので...。







対するは王者在位時代がネルソンと被っていた、南アフリカが生んだ流浪の王者、ブライアン・ミッチェル。

反アパルトヘイトで、各スポーツ団体が、それこそ競うように南アをボイコットし始めた頃、その直前にWBAタイトルを獲得し、母国での防衛戦を禁じられたため、常に母国以外で闘うことを義務づけられる中で、12度防衛というクラスレコードを築いたチャンピオン。
敗戦は無冠時代、7戦目に一度のみ。その相手とは4度闘い3勝1敗。4度目の対戦では12回KO勝ちを収めたが、相手が死亡するという悲劇も。

防衛戦ではプエルトリコ、パナマ、フランス、イタリア、スペイン、イギリス、アメリカを転戦。
12度目の防衛戦でIBF王者トニー・ロペスと引き分け。
再戦前にWBA王座剥奪。再戦に勝ち、IBF王座獲得後、ほどなく引退。
こうして書くと、本当に、映画の主人公みたいなボクサーです。

当時、WBCでチャベス、ネルソンという、米大陸で闘う長期政権王者が続いたので、ミッチェルの試合が全世界的に注目されることはなかったですが、猛ファイターのロペスに対し、敵地サクラメントで激戦を繰り広げ、その実力を改めて証明しました。
私はこの頃、試合映像をやっと見ましたが、こだわりなく左が出て、パンチは無いが要所で右を当て、無駄の無い足捌きに、目もなかなか良い、しかも打ち合いになってもしぶとくてスタミナもある。いかにも「長持ちタイプ」の選手だなあ、と思ったのを覚えています。

このパンチ力で長期防衛、南アのミゲル・カントだ、とも。
今思えばカントも半ば「流浪」の王者だったわけですが、当時、そんなことは何も知りませんでした。


とりあえず複数試合のハイライト。



11度目の防衛戦で、当時無敗のフランキー・ミッチェル(後にスーパーライトでチャベスに挑戦)を下した試合のハイライト。




なんか、同姓同名の有名人が他にいるのか、名前だけで検索してもあまり試合動画が出ません。
wba superfetherweight champion とか、対戦相手の名前とかを付けて検索してみてください。



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さて、日本にもお馴染みサムエル・セラノ。当時の日本上位クラスと多く闘った王者です。
雑に言ってしまえば、確かに巧く、全体的にレベルは高いが、アルゲリョに比べたら全然、十分手が届く、という感じで見られていたような記憶があります。

ただ、実際、当時は日本のボクシングが全体的に停滞、下降していった時期でもあり、その前の時代...沼田、小林、柴田といった選手なら、十分攻略出来そうな感じにも思いました。
上原康恒による「攻略」は、事実一度はなったわけですし。





このKOシーンまでは、現地の実況も退屈してか、それとも他に思うことがあってか、笑い声を漏らしていましたが、一撃で全てが覆りました。
痛快な場面ですね。

正直、日本勢との試合の印象でいうと、自分には良い試合をする責任はない、勝てば良い、という風情に見えて、好印象はありません。
で、地元プエルトリコの試合では違うのかというと、これまた「地元だし」という感じで、のらくらやって勝つ、という風でした。

もちろん「その先」へと追い詰めることが出来なかった挑戦者達にも問題はあったんでしょうが。
防衛回数こそ多いですが、その数字ほどの内実があるのかな、と見た限りでは思います。史上ベスト8選出は、微妙かなと。
ディエゴ・コラレスとか、ホエル・カサマヨールの方を入れてほしかったですね。



そして、最後に「痩身の破壊者」アレクシス・アルゲリョです。
語り出したら長くなりますが、逆に多くを語らずとも済む王者です。そういう意味では楽です。有り難い(笑)。

こちらも思うところは、亡くなったときに記事で書いてました
動画はあれこれ貼り出すと終わりませんが、とりあえず短くまとめてあるのをひとつ。
正味6分強。プライアー戦は外してありますね。





冷静かつ凶暴、芸術的かつ破壊的。
その存在そのものが、ボクシングが生み出した芸術品であり、傑作。
それがアレクシス・アルゲリョです。
その記憶は、未来永劫語り継がれていくことでしょうね。



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さて、対戦はというと、ロマチェンコと内山...闘ってみてほしかったですが、結果としては厳しかったでしょうね。

フレイタスとエロルデ、130ポンドで比較すると、パワーの差でフレイタスが押し切るか。
サドラー相手に打ち勝ったエロルデを買いたい気持ちもあるんですが。

ネルソンvsミッチェル、良いときが重なっている王者対決。
ミッチェルも地味に強いが、ネルソンの破壊力と安定感を取ります。

セラノvsアルゲリョ、当然後者。
アルゲリョが破ってきた相手の中には、このくらいの選手は何人もいます。

準決勝、ロマチェンコがフレイタスを空転させる。強打した後、バランスを戻す前のフレイタスを、ロマチェンコが捉えるでしょう。
ネルソンvsアルゲリョ、夢対決。とはいえ、これも激戦の末、アルゲリョがまさる。名勝負になりそう。

決勝、見切って捌くロマチェンコを、伸びる強打のアルゲリョが追い上げる展開。
いつも以上に動かされるロマチェンコ、体格差にも苦しみ、徐々に追われ、終盤に捉えられるか、判定で逆転を許すか。
いずれにしてもアルゲリョを推します。

ライト級で若干、相手の体格に苦しんでいるロマチェンコが、その苦しみをスーパーフェザーで強いられ、しかも詰める段になると爆発的なアルゲリョが勝つ、と見ます。
逆にアルゲリョは、この階級までは見ても攻めても崩れない上に、爆発力も兼ね備え、隙が無い。
ライトで比較したら、バランスに乱れも見えるアルゲリョの方が危ない、ロマチェンコが体格差を埋められる要素が出てくる、と見ますが。

この辺はもう、微妙な比較だと思います。
しかし、時代を超えて、ロマチェンコに勝てるだろう、と思わせるだけでもアルゲリョは偉大だなあ、と改めて思う次第。





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ライト級、オルチスvs小坂戦動画追加

2020-04-27 21:49:48 | 海外ボクシング
ライト級の記事、カルロス・オルチスvs小坂照男、動画ありました。
中日ニュース、というところの動画です。





私の見たやつは、リング・エプロンから見上げるようなアングルの映像もあって、これとはまた別のやつです。
今回、ナレーション入りのを初めて見ましたが、けっこう厳しいですね(笑)。


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ライト級、名選手揃いだが、やはり落ち着くところは...

2020-04-27 05:42:30 | 海外ボクシング


伝統クラス、といえば最たるもの、ライト級。
マガジンによるエントリー、一回戦は以下の通り。


ロベルト・デュランvsマイキー・ガルシア
エドウィン・バレロvsエステバン・デヘスス
アイク・ウィリアムスvsケン・ブキャナン
ヘクター・カマチョvsカルロス・オルチス



やっぱり、1位はこの人、石の拳ロベルト・デュラン。
メキシコ人の父とパナマ人の母の間に生まれたハーフで、イスマエル・ラグナに代表される典型的パナマ・スタイル(痩身、長身のボクサータイプ)の防御勘と、メキシカンの攻撃性、タフネスを併せ持った、特異なファイターでした。

ライト級王座12度防衛、ウェルターでレナードに初黒星をつけ、当時の権力者が「デュランの日」という休日を設けるほどの英雄となる。
しかし再戦で「ノー・マス」事件を起こし、ベニテス、ハーンズらにも敗れるが、それと前後してJミドルとミドルでタイトルを獲得するなど、長きに渡り不屈の闘志で闘い続けました。

全盛期は当然ライト級。スーパーライトでアントニオ・セルバンテスと闘っていたら、さぞや凄い試合になったでしょうが、そこ飛ばしたのが惜しまれますね。
動画貼っておきます。宿敵デヘススとの闘いなどは、別記事書いたばかりなんで、省きます。

まずは、ライト級時代の映像がけっこう見られるハイライト。
防衛戦以外のノンタイトルでも、ばんばん倒してます。





こちらはWBAライト級、8度目の防衛戦。敵地ペンシルバニアで、ルー・ビザロを14回KOした試合。





「ロベルト・デュランが、インテリのボクシングマニアに受けたのは、彼が、対戦相手を本当に殺したがっているように見えたからだ」という評がありましたが、この試合の様子を見れば、それも納得です。
デュランの攻撃力、という表現では収まらない「殺傷本能」が、この短い映像だけで端的に見える試合ですね。


こちらはライトではなく、Jミドルですが、レナード、ベニテスらに敗れ、没落期にあったデュランが、MSGのリングで若き王者デビー・ムーアを下した「復活祭」。





のちのバークレー戦勝利に比べても、こちらの方が感動的です。
翌日の新聞は “LEGEND LIVES ON!” の大見出しを打ちました。まさしく、という。



対するは現役、マイキー・ガルシア。
最近はウェルター級で戦っていますが、その体つき、無理して頑張って上でやっている姿は、往年のデュランと重なります。
しかしここはライト級で、ということで。しかしこの人、ライトでも小さいように思いますが。
さらにいうと、ライト級タイトルマッチは2試合しかやってません。むー。





最近の選手なんで、ロバート・イースター戦、短いハイライトだけ。
ちょっとサンプル不足ですね。実力は十分わかっていますが。
フェザー級で出てきたときは、これはホンマの本格派やなあ、と思ってファンになりましたが、最近は増量の無理の方が目について、どうにもこうにも、です。


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続いて、強打と本能のサウスポー、エドウェイン・バレロ。

一度、本望信人戦で直に見たのを含め、数多くの試合を見ましたが、アゴが上がったフォームのまま強振するので、これでよく通るものだなあ、いつ痛い目見るかわからんぞ、なんて思っていました。
しかし、アントニオ・ピタルアやアントニオ・デマルコまでをも圧倒するのを見て、ああこれはそういう問題ではない、一段上の人なんや、と納得しかけた頃に、非業の死を遂げてしまいました。

薬物中毒や暴力衝動、反米思想などがその身を滅ぼした、というところなんでしょうが、リングの上で見せる姿は、圧倒的なものばかりでした。
ただ、あまりにも反社会的、というのを通り越して「非人間的」な面があり、正直、こういうところで俎上に乗せるのもどうかな、と思ってしまいます。
人格と試合は別だ、と割り切るのも迷うほど、度を超してます。
その昔「覚醒剤止めますか、それとも人間止めますか」ってフレーズがありましたが、まさに「人間止めた」んやな、としか思えなかったですね。





ハイライト貼っておきます。
トップランクで試合するようになったとき、胸にベネズエラ国旗のタトゥーが入ってて、まあそれは良いんですが、そこに人の顔みたいなのが見えて、何だこれは、と思っていたら、かのウーゴ・チャベス大統領の顔だ、と後に知り「あちゃー」と思ったのを覚えています。
これではパッキャオ戦など、遠ざかるばかりではないか、と。色んな意味で「破滅」は避けようがなかったんでしょう...かね。



対するはデュランのライバルといえばこの人、エステバン・デヘスス。
少し前に記事でデュランとの試合について書いたばかりなんで、ハイライトを。
最初の相手は誰かわかりませんが、30秒過ぎからガッツ石松、セルバンテスと来て、次の赤いトランクスのサウスポーがパズソー山辺。
続いてソウル・マンビー戦。最後がデュランとの三試合です。





それぞれ、探せばフルラウンドもあるんで、お時間あるとき、是非どうぞ。



===============


これまた、けっこう古いとこ持ってきましたマガジンさん、アイク・ウィリアムスです。
この人の映像は、だいぶ前に、確かバート・シュガーが監修した映像作品を、Number がビデオソフトで発売したものだったか...その中で見たような記憶があります。
確かボウ・ジャック戦の映像でした。うわー、こら強い!と思ったものです。
とりあえずハイライト動画。





もちろん、時代相応のボクシング、という感じもありますが、すごい迫力です。ロングだろうがなんだろうが、思い切り振って倒します。
左の威力、連打力があるのは、現代に近いレベルだ、とも言えるでしょう。
世界タイトルが8階級か10階級かの時代に、通算8度の防衛というのも納得ですね。



対するは、ライト級史上屈指のグッドジャバー、ケン・ブキャナン。
デュランの前の世界ライト級チャンピオンとして知られます。また、ローブローによるKO負けで陥落したことでも。





この裁定は、今の目で見ても本当に問題だと思います。
もっとも、レフェリーの視界にはまったく入っていないようで、その点では「嘘」はない、とも言えるんでしょうが...。
まあ、今でも酷い見過ごしはありますし、当時の映像技術や、粗雑な批評、時代背景を全部ひっくるめて言えば、再戦の機会があるならばまだしも、とは言えるでしょう。
何よりの問題は、結局それが無かったこと、ですが...。

この試合の内容と結果自体ではなく、再戦がかなわなかったことが、後年、ブキャナンを精神的に苦しめたそうですが、その影響があったかなかったか、後にWBC王座に挑むために来日したものの、時の王者、ガッツ石松にも敗れます。
ガッツ石松の世界的評価は、ラグナ、デュランに敗れた選手、という印象が大きかったのでしょうが、この勝利で、その評価がかなり高まったそうです。

それくらい、世界戦の戦績以上に、その実力が評価された選手でした。
典型的なアウトボクサーですが、そのジャブはまさに天下一品。石松戦でも、序盤はジャブで圧倒していました。今見てもほれぼれしますね。





===============


こちらは80年代、レナードと並び、ボクシング界屈指のスターボクサーかと期待されたプエルトリコのトリックスター、ヘクター・カマチョ。
踊りながらの入場や、奇抜な衣装などでも話題を呼びました。

ただ、ライト級に上げて以降は、ちょっときつい試合の方が多かったかな、と思います。
ライバルのエドウィン・ロサリオ戦など典型ですが、ラミレス戦やエドワーズ戦なども同様で。
ベストはジュニアライトの頃までかな、と率直に思ったりもします。

まして、スーパーライトより上の頃になると、きついようですが「新興団体の営業に乗って糊口を凌ぎつつ、ビッグマッチ(チャベス、デラホーヤ、トリニダード戦)にありつく機会を待っている」ようにしか見えず、マンシーニ戦なども「ライト級でやっておけば良かったのに、今頃」という気分でした。

しかしそれも、出始めの頃の印象が余りに鮮烈だったからだ、と思います。
ナリは派手でしたが、やっているボクシング自体は、別に変なものでもない。
右リードが良く出て、足が動き、その上、目も良く、カウンターも取れる。
好打したら一気呵成、思い切りが良く、詰めが鋭い。単純に、素晴らしかったと思います。

最初の戴冠、バズーカ・リモン戦などは、まさにニュースター誕生!という勢いでした。
それだけに、その後が「停滞」「失速」に見えてしまった、というところがありますね。





とりあえずハイライト。やっぱりベストはジュニアライトまで、ですかね。



そして、プエルトリコ史上最高の王者とする声も多い強打者、カルロル・オルティス。
来日して、帝拳の誇るツートップ、高山一夫、小坂照男を連破した試合は、世界のトップの強さをまざまざと見せつけるものとして、オールドファンの方々が、伝説的に語ります。

小坂戦の、無音声の短い映像を見たことがあります。当時、映画館で流されたニュース映像なのかもしれません。
サウスポー小坂が果敢に攻めるが、ロープを背負ったオルティス、左フックカウンター。小坂ダウン。
それでも立って、なお攻める小坂ですが、5回に右アッパー、一撃で倒れ、立とうとするが腰が砕けていて、立てない。

当時、フラッシュ・エロルデのライバルとして、日本の枠を超えた強さを証明していたた小坂を倒し、世界ライト級王座初防衛を果たしたオルティス、当時26歳。
確かに、圧倒的、というしかない強さでした。

とりあえずハイライト貼ります。試合日時や相手もわかり、見やすいものです。





日本では数年前、CSフジのクラシックファイト番組で、イスマエル・ラグナとのラバーマッチがカラー映像で放送されました。
67年、ニューヨークのシェイ・スタジアムで行われた試合です。
あの番組、かなり頑張って続けてましたが、なかなか難しかったんでしょうね。
今、スポーツ中継が止まっているとき、ああいうのを放送して欲しいものですが...。



===============



ということで、デュラン以外も多士済々です。
対戦については、絶好調のライト級デュランと、ライトで2試合のマイキーでは、デュランを推さざるを得ない。
ズラチカニン、イースター戦のガルシア、悪くは無いですが、デュランには及ばずでしょう。

バレロvsデヘスス、どこか逃げに徹しきれないデヘススを、苦しみながらもバレロの左強打が捉えるか。

ウィリアムスvsブキャナン、ブキャナンの左が展開を支配するでしょう。

カマチョvsオルティスのプエルトリカン対決、ライト級で比較すればオルティスが圧倒でしょうね。
ライト以降のカマチョは、何かにつけて中途半端というか、迷いが見えてしまいます。

準決勝、デュランvsバレロ、ある意味夢の対決ですが...離れてもくっついても、デュランの防御勘が生きるのではないかと。
ブキャナン、オルティスは実際にやって、ブキャナンが勝っていますが、あれはオルティス晩年の不調な試合。
ベスト比較をすれば...難しいが、ラグナにも勝ち越したオルティスが競り勝つか。

決勝、デュランVSオルティス。強打対決だが、より柔軟に、時に天衣無縫に動いて打てるデュランで。
結局、こうなるんかい、という感じです。すみません。



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再開は最短でも7月から 興行自粛さらに延期

2020-04-26 20:19:16 | 話題あれこれ


そろそろ、田舎でも身の回りにあれこれ影響が出てきた新型コロナウィルスですが、ボクシングの興行自粛は6月末までさらに延期とのことです。

小刻みに伸ばすより、この方が現実に即していると思います。
ボクサーにも感染者が出たそうで、防止策の見直しも求められるでしょう。

引き続き、選手からの声を吸い上げて、という方針が確認されたとのことです。
しかし元々、経済的に余裕の無い業界だけに、今後ますます厳しい事態が続きますね。

感染者数の減少が進み、事態は改善されるのか、果たしてそれがいつ頃なのか。
また、当面、観客を入れるか、或いは半減(で済むのかどうか不明ですが)させるか、或いは無観客になるのか。
配信や放送のビジネスが確立していない現状は、ボクシングにとり、大きな足枷です。
業界の一致団結してのビジネスがない以上、非常時に出来る補償や互助にも限界があるでしょうね。

楽観的な見立ては何一つ立てようがないですが、都市部を中心に、かなり人出を減らし、耐えている効果が、徐々にでも表れてほしいものです。
気候の変化も、もちろん証明されたことではないですが、好転の材料になってくれるでしょうか。


ところで、井上尚弥が色々と、力強いコメント出しています。
本来なら、今日がカシメロ戦の日だったのですね。
彼も我々と変わらず苦しいはずですが、いざ闘わんというその時に、変わらず強い自分でいるために、膨大な労苦を費やす覚悟でいるのでしょうね。


ところで、ニカラグアでは感染者が少なく、興行が行われてるんですね
計量の様子にはびっくりしましたが。
ドイツでは「将来、フットボーラーはマスク着用でプレーする日が来る」かも、なんて声もあるそうですが、ボクシングも...?


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スーパーライト、チャベス一択というほど簡単ではない

2020-04-26 06:22:55 | 海外ボクシング


さて、中量級の充実故に、合間に作ったクラスだけど強豪続々、というスーパーライト級。
マガジンによるエントリー、一回戦は以下の通り。


フリオ・セサール・チャベスvsニコリノ・ローチェ
アントニオ・セルバンテスvsコスタヤ・ジュー
テレンス・クロフォードvsミゲル・コット
ティモシー・ブラドリーvsアーロン・プライアー




フリオ・セサール・チャベスは、一番多くタイトルマッチを戦ったこの階級でエントリー。
それは納得ですが、ライト級においてWBA王者エドウィン・ロサリオを破った試合こそ、チャベスの生涯ベストの試合ではないのか、という気がします。




これだけ自分から前に出続け、でもほとんど打たれない。たまに打たれてもさっぱり堪えない。
サルバドール・サンチェスがウィルフレッド・ゴメスを破った試合にも似て、まるで超能力者か超人か、と見えたものです。
この一階級下、ライト級においてロベルト・デュランに対抗しうるのは、この試合のチャベス以外、いないのではないかと思うくらいで。

まあしかし、それは今回、ひとまず置くしかない話です。
ジュニアライトでWBC王座9度防衛、ライトでWBA、WBC王座統一(ロサリオ、ラミレスに勝利)して、このクラスではアンクル・ロジャー、メルドリック・テイラーを撃破。
昨今そこら辺に転がっているものとは違う、非常に価値ある三階級制覇でした。





正直、スーパーライトでは、無駄を省いた良さがあったのは初期で、圧倒的に勝っているうちに、繊細さが目減りしていった感もありました。
良さが残っていた最後の方の試合が、ヘクター・カマチョ戦ですかね。
これは対サウスポー攻略戦法の、ひとつの雛形としても、記憶に残る試合です。
頭の位置を変える毎に、打つパンチの選択も適切に変える。攻めと外しの完成形やなあ、と感心したのを覚えています。

これは画質の良い動画があるので、フルで。お時間あるときにゆっくりと。






対するは日本で戴冠した、アルゼンチンの「インカトブレ」ニコリノ・ローチェ。
日本で藤猛から王座を奪った時点で、実に107戦89勝2敗14分の戦績。いやはや...。





ハイライト中心に、意外に動画は数があります。
見た目、風采が上がらないとしか言いようがないんですが、動き出したらまあ鮮やかというか、お見事というか。
この動画でも、藤は当然、セルバンテスやオルティス相手にこんな感じで対していた様子がよくわかります。
単に昨日今日巧いだけの人じゃない、相当な自信家というかクソ度胸というか。並外れてます。

まあ「世界」っていうのは、本来こういう「トンデモ」な相手と闘う場、なんでしょうね...。


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続いては、コロンビア史上最強のボクサー「キッド・パンベレ」アントニオ・セルバンテス。
その実力は、当時共に絶好調だった、石の拳ロベルト・デュランとの対戦がさかんに待望されるほどでした。
お互いに、やれば良かったものを、と思うのは他人の勝手でしょうか。

しかし、若手時代は4連敗を含め、けっこう黒星もあるとおり、大柄でパワフルだが技術的に粗かったそうです。
大物マネージャー、ラミロ・マチャドが、負けが込んでいた若きセルバンテスの素質を見込み、契約して、おそらく良いトレーナーをつけたものか、左リードが磨かれて強くなり、大成した、という話ですね。

これはローチェを破って王者になったパナマのアルフォンソ「ペパーミント」フレイザーをKOした一戦。強い!





動画の日付は第一戦のものですが、説明欄にはタイトル防衛、とあり、どちらかわかりません。
何しろフレイザーへの挑戦時、セルバンテスは34勝9敗(!)1分の戦績でした。

当時は日本のボクサーも、このクラスの相手とけっこう闘っていた最後の方の時期で、タイトルマッチで対した門田新一やライオン古山、ノンタイトルではバトルホーク風間などと闘っています。
古山はこの強打セルバンテスにアウトボクシングを強いた、ということで、そのタフネスを称えられましたが、逆に言えばほとんどの試合で、倒すなり打ち込むなりして、クリアに勝っていたということになりますね。

そして、その強さ故、二度の王座転落がそれぞれ、世界的大ニュースになることも。
これは一度目の王座転落。11度目の防衛戦で、17歳の挑戦者ウィルフレッド・ベニテスに敗れた一戦。
世界中のボクシングファンが結果を見て「誤報だ」と思った、という...。





この試合、本当に好きでして、何度もフルラウンド見返したことがあります。
静かな展開から、じわじわと盛り上がっていく感じが、なんとも言えないんですね。
もしお時間あらば、フルでも見てください。好みに合えば、楽しめると思います。当たり前や...。



対するは豪州在住のロシア人強打者、コスタヤ・ジュー。
ロシアや東欧、中央アジアの「旧共産圏」のボクサーは、今は大勢、プロのリングでも見られますが、日本の協栄ジム「ペレストロイカ軍団」と共に、この頃、プロしか見ないファンにとって、新鮮な驚きのあるボクサーでした。





空手っぽいというか、一発で相手を仕留める力のある右を、あまり「崩し」の手管なしに当ててしまえるんだなあ、という印象が強く残っています。
相手の左右、長身短躯、速かろうが打ってこようが関係ない。ぐいぐい強打狙いで出て、上下左右と打ちまくる。
良い表現なら豪快、爽快となるんですが、あまりにも「裏」がなさ過ぎるような気もして(ファンの勝手ですが)見ていていまいち面白みを感じませんでした。
たいてい、結果知った上で録画放送で見ていたせいもあるのでしょうが。

打たれ脆さというより、体調の問題だったのか、一度王座を失いましたが、二度目の戴冠後は、チャベスに引導を渡し、ジュダーを仕留めるなどの大きな星もありました。
デラホーヤ戦など、もう一段上の話には手が届かず、負傷ブランクのあと、リッキー・ハットンに敗れましたが、あれはもう、相手に負けたというより、時の流れに負けたんでしょうね。


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ハグラー以来(以上かも)の名スイッチヒッター、テレンス・クロフォードはここでエントリー。
4団体統一は偉業、というより、然るべき人が然るべき仕事をした、という見方でもって、大いに称えたいです。
ライト級で初めて見た時、自分だけ試合の最中に、相手との位置関係を俯瞰で見ているような感じがして「久々に、ホンマのホンマに巧い奴が出てきたなあ」と思ったものです。



確かにウェルターより、このクラスに留まって「王者」で居続けていても面白かった、と思いますが、そこは条件など色々あったのでしょうね。
史上ベスト8入りは納得の実力です。



そしてミゲル・コット。一応、4階級制覇ということになってるんでしょうが、ホントのホントに良いときはここだったなあ、と思います。
なんか、えらい大飯喰らいで、すぐ体重増える、なんて微笑ましい?話も聞いたことがありますが...。

出始めの頃、世界タイトルの前からWOWOWで試合が放送されていて、ケルソン・ピント戦、ビクトリアノ・ソーサ戦など、その上昇期の闘いぶりは鮮明に覚えています。
タイトル獲ってからも、リカルド・トーレスやポール・マリナッジらの強敵と、KOだろうが判定だろうが関係のない、見応えありな試合を多く闘っていました。
攻防共にレベルが高いが、どうも八の字ガードの脆さが心配でした。アントニオ・マルガリート戦で、まともに打ち崩されましたが、それはウェルターに転じた後の話ですね。



最近の選手だけに、良い動画がたくさんあります。とりあえずHBOから。スーパーライトの試合はふたつだけですが...。



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さて、ティモシー・ブラドリーですか...弱い選手ではないですが、史上ベスト8ですかね、と思います。
速いし動けるし巧いし、左も良いし、頑張るし、良い選手なんですが、やっぱりあのアタマはどないかならんか、と思いますし、全体的に見て、歴史的な選手かなあ、と。

とはいえ、大物相手に健闘し、良い試合も残しています。とりあえずHBOハイライト。



しかし、ウェルターの試合も多いですし、この選手入れるなら、それこそセンサク・ムアンスリンやら、エディ・パーキンスとかを入れた方が良いような気もします。



最後はシンシナティの鷹、アーロン・プライアー。
その強さ、壮絶な闘いぶりは脳裏に焼き付いていますが、同時に、色々とややこしいこともあったらしく、その辺はどうしても割り引いてしまいますね。

アントニオ・セルバンテス二度目の王座転落、その相手。
今のように、世界中の強豪が米国のTVネットワークに乗ることを目的に闘う時代だったら、アメリカでメジャーなスターボクサーだったはずのセルバンテスを蹴落とした一戦。
1、2Rと、3、4Rに別れた動画です。








こちらは亀田昭雄戦ダイジェスト。
...これでろくに練習してなかった、っていうんですからねえ(余談)。




そして、伝説的に語られるアレクシス・アルゲリョ戦。一戦目ダイジェスト。




荒っぽいボクシングですが、フォームのバランスはわかった上で崩している感じもありました。
打つパンチの選択が間違ってないというか、精度が高い。手数やスタミナも相当なもの。加えて打たれ強さもです。
その辺に対する疑義が、後にいろいろと言われましたが、見ていて、確かになあ...と思ってしまったのも事実ですね。


=================


一応対戦ですが、チャベスがローチェの防御に苦しみつつもボディから攻め上げる。
セルバンテスvsジューは、難しいですがセルバンテスが左の差で抑える。
クロフォードvsコットは、やはりクロフォードの連打がコットのガードを破るだろうと。
ブラドリーvsプライアー、ブラドリーの左に苦しみつつ、プライアーが攻めきる。

準決勝はチャベスの執拗なアタックに、若干腰高になるときもあるセルバンテスが押し切られるか。僅差。
クロフォードvsプライアー、クロフォードが打ち勝って、なおかつ反撃を捌ききる。

決勝、チャベスvsクロフォード、大激戦ながらクロフォードが丁寧にサイドに回り、ヒット数でまさり、チャベスの攻勢をしのぐか。

各年代を代表する名選手、なおかつ底を見せていない選手もいて、難しい階級ですね。


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ウェルター級「縛り」なら、やはりこの人を推したい

2020-04-25 00:49:31 | 海外ボクシング




ということで、みんなの憧れ、ウェルター級。
マガジンによるエントリー、一回戦の組み合わせは以下の通り。


フロイド・メイウェザーJr.vsヘンリー・アームストロング
フェリックス・トリニダードvsホセ・ナポレス
シュガー・レイ・レナードvsオスカー・デラホーヤ
パーネル・ウィテカーvsマニー・パッキャオ



フロイド・メイウェザーについては、拙ブログでもカテゴリひとつ設けて、長年に渡り「ウォッチ」してきた対象です。
良い表現をすれば、ボクシングという競技形態の中で、ひとつの極限にある「天才」を体現する、希有なる存在です。
しかし...まあその辺は長くなりますし、今更という感もありますので省きますが。

動画、ひとつだけ貼っておきます。
この人、ロイ・ジョーンズとも通じますが、ハイライトで見ると、実際、リアルタイムでフルラウンドの試合を見たときよりも、ずっと見映えが良いですね。
まあ実際、ディフェンスのハイライト、となっている動画ですが、攻防一体とはまさにこういうことか、と感心せざるを得ません。
ていうか、素直に感心せえよ、と言われれば返す言葉もないですが。




※動画貼り替えました。こちらの方が画質が良いので。



対するは三階級同時制覇のヘンリー・アームストロング。





フェザー、ウェルター、ライトの順で連続して世界王座を奪取。
ルー・アンバースに勝った時点で、確かに三階級の世界タイトルを同時に保持していたことになります。
その後、ウェルターで19度防衛を果たした伝説のファイター。

ただし当時から、短期間で防衛を重ねる中、挑戦者の質が疑問視されることもあった、とのことですが。
試合ぶりは前進して身体を寄せ、打ちまくるというもので、この時代の中でも抜きん出てタフで、スタミナがあったとのこと。

動画は正直、あまり見ようとも思わなかったですが、今回検索してみると、ミドル級で引き分けたセフェリノ・ガルシア戦や、バーニー・ロス、ルー・アンバース戦なんかにカラーをつけた?動画などが色々とありました。
皆さん、色んなことして楽しんではるんですねえ(笑)。

引退後、確かハーンズが史上初の4階級制覇に挑む前、マガジンに、林一道氏によるインタビューが載っていて「ハーンズの幸運を祈る」と語っていたのを覚えています。
見た目は厳つい老人でしたが、同席した奥さんのバイタリティに圧倒されていたり(笑)気の穏やかな人なんだろうなあ、という感じでした。

ただ、メイウェザーと対戦となると...まあ、仕方あるまい、というところでしょうね。
その凄まじい闘いぶりに敬意を払いたいのはやまやまなれど。



==============


こちらはプエルトリコ史上最強のパンチャーかもしれません、みんな大好き、フェリックス・トリニダード。
無理な筋肉をつけない柔軟な体つきから、当て際で伸びて撃ち抜く左右の強打と、打たれたらサクッと倒れる打たれ脆さを併せ持ち、でもすぐ立ってきて逆襲する。
その試合ぶりはスリルに溢れ、実に魅力的でした。

こちらは主要試合のハイライト。正味12分弱。負けた試合はもとより、逆転して勝った試合のダウンシーンも外してあります。
この辺は「わかってないなぁ...」と思うところですね(笑)。





ウェルター級時は無敗で乗り切っていて、デラホーヤ戦がラストでしたが、この頃は減量もきつかったのでしょうね。
唯一、アイク・クォーティー戦が見たかったですが...同時代にその強さをつぶさに見られて幸福だった、と思えるチャンピオンでした。
個人的にはマヘンギ・ズル戦のノックアウトが一番好きですね。左フック二発によるフィニッシュですが、独特の「間」を感じるKOシーンでした。



そして対するがキューバ生まれ、メキシコ亡命により開花した技巧派のKOアーチスト、ホセ・ナポレス。
以前、亡くなったときに少し記事で触れましたが、もしキューバ革命が起きず、キューバで闘い続けていたら、技巧派の選手としては評価されても、歴代屈指の名王者にはなっていなかったかもしれません。
実際、レコード見たらキューバ時代は判定ばっかりです。メキシコに亡命して以降、明らかに闘い方を変えたのがわかります。

ナポレスに限った話じゃないですが、昔の選手の動画を探すと、どうしても画面の縦横の比率が違うものが多くて、気になります。
その中でこれは、きちんど当時のサイズに合っているので、ご紹介。





2分52秒くらいから始まり、唐突なストップで終わる(バッティングによる出血だが、当時のルールでTKO負け)試合が、ビリー・バッカスとの初戦。
次が再戦です。
防御に自信があり、前に出る頻度が高い割りに打たせない。しかしその自信がやはり仇となることもあり、傷については数少ない泣き所でした。


==============


さて、80年代黄金の中量級シーンにおいて、メインキャストとして活躍したスーパースター、シュガー・レイ・レナード。
アリが晩年を迎えたボクシング界が求める、明朗快活なニューヒーローの役割を全うして見せた、実力とスター性を兼ね備えたボクサーでした。

引退と再起を繰り返した後年、毀誉褒貶に晒された時期もありますが、それも含めて、このボクサーの持つナルシズムは、ビジネスの算段を時に超越し、蹴たぐってしまう「頂点への挑戦」への意志に貫かれてもいて、再起即ハグラー挑戦という、当時誰もが無謀と思った一戦での僅差勝利など、好悪を超えて畏敬の念を抱かざるを得ないものでした。

ただし、この、ボクシング界全体が価値観の転換期を迎えた、という意味で時代の岐路となった一戦の後、レナードは記録達成や、自分のコンディションの限界を糊塗するための政治的策謀により、そのエゴイズムを批判されるようにもなりました。
皮肉なことに、時代は変わり「ハグラー的」な価値観を捨て「レナード的」なものにボクシング界が靡くようになったのに、まさにその時、その時代を担う力量が、当のレナードにはもう、残っていなかった。
実質、そのキャリアの終焉となったノリス戦は、その現実が如実に表れた一戦でした。

しかし、そういう話より前、ウェルター時代はベニテスとの緊迫の攻防、デュランとの連戦、宿敵ハーンズとの名勝負など、ただただ輝かしいキャリアを残しました。
今回の顔ぶれの中で、心情的にナンバーワンに推したいのは、やはりこの人です。実際の対戦を想定するとあれこれあるにせよ。





ざっと見てみると、改めてベニテス挑戦への過程で、それが近づくにつれ、徐々に「仕上がっていく」様は見事だなあ、と思います。
試合数自体も多いですが、ランザニーやプライスといった強豪と当たる段階で完成に近づき、タイトルマッチでピタッと嵌まる、というか。
この辺はマネジメントやトレーニングの環境が最高だった、と言えるでしょう。また、レナードがそういう環境を得るに相応しい逸材だったのだ、とも。



で、対するのが90年代、レナードが去ったボクシング界で、その後継を期待された「ヒスパニック版レナード」オスカー・デラホーヤ。

この人のベストはライトかスーパーライトで、ウェルターでも優れた王者ではあったが、真に唯一の頂点に立てたか、というと、僅かながら届かず、というところだったかな、と思っています。
ウィテカー戦やトリニダード戦において、実際の勝敗や内容の優劣とは別に、その限界が見えたように思います。
名勝負となったクォーティーも、倦まずに逆襲の機会を狙い続け、最終回に猛攻した姿に感動はしたものの...という。

しかしその全キャリアを通じて、時代が求めるスターボクサーとして健闘を続けたことは、称賛に値すると思います。
ホプキンスと、メイウェザーと、しまいにはパッキャオと闘って見せてくれたわけですから。

なんのかんのといって、これは良い試合だった、ということでクォーティー戦。
ゴールデンボーイ、全キャリアを通じて最高の試合だった、と思います。






==============


こちらも、ウェルターに持ってくるんか、と思ったりもしますが、パーネル・ウィテカー。
この人もすでに故人ですね。なんともかとも...。





昨年、亡くなったときに少し触れた記事に、思うところはだいたい書きました。
ウェルターでの「ベスト」といえば、その記事に貼ったチャベス戦が一番わかりやすいと思います。145ポンドでしたが...。
当時、誰と闘ってもこの感じになってしまうんやろうか、と思ったものですが、デラホーヤ戦では、論議を呼ぶ判定ながら、大柄な相手が手数で押し込んでいけば可能性はある、ということも見えました。
そしてトリニダード戦では、しっかりと攻略されてしまいました。これは晩年、仕方ないところでもありましょうが。



最後に来るのが、まだ現役「アームストロングの再来」「アジアのデュラン」マニー・パッキャオです。
デラホーヤ戦以降、ウェルター近辺で大きな試合を闘っていますし、その闘いぶり、勝ちっぷりはもとより、負けた試合でも強烈な印象を残す。
あらゆる意味で規格外のスーパーボクサーですね。





ベストと言えばハットン、デラホーヤ、コットにマルガリート戦あたりでしょうか。本当に、どこまでも天高く飛翔していた、というイメージです。
この頃にメイウェザーと闘えていればなあ、とは、いまだに思うところですね。



==============



実際の対戦、あくまで私見ですが、メイウェザーがアームストロングの猛攻を外して勝ち。
トリニダードvsナポレス、どっちも好きですが(誰もそんなことは聞いていない)、ベストならナポレスがカウンター決めて競り勝つか。
レナードvsデラホーヤのスター対決、レナードがスピードで勝る。
ウィテカーvsパッキャオは、パッキャオの爆発的スピードがウィテカーの防御勘を僅かに狂わせ、パッキャオ。

準決勝、メイウェザーvsナポレスは、前進してくるナポレスに対し、メイウェザーが止まって食い止めようとするも難しく、頑張って動いて捌き、辛勝。
ナポレスは追い足の部分に若干の不足あり。
レナードvsパッキャオ...難しいですが、パッキャオのワンツーに、レナードがアングルを変えつつ速い連打で対抗。足も使えるレナードが逃げ切るか。

決勝、メイウェザーvsレナード。夢対決のひとつ。
止まって外し、マイペースで闘いたいメイウェザーに、レナードがその想定を超えた高速連打でまさるか。
足使い合ったら、このクラスではレナードが速い。
メイウェザーは相手が自分以上に速く、リードパンチを外せないとき、ファイター化して捉えにかかり、またその展開でも地味に強い。
しかし、そのスタイルではレナードを捉えきれない。
従って微妙ながらレナード。

ベストの比較という前提、そしてウェルターでという縛りでは、こういう風に思いますが、如何でしょうか。



=================



あと、ベスト8に入れないのは納得していますが、個人的にウェルター級の歴史上、もっとも印象的なノックアウトってこれじゃないか、と思う試合の動画。
お察しの通り、ドン・カリーvsミルトン・マクローリーの世界ウェルター級王座統一戦です。
レナードvsハーンズ戦に続く、ウェルター級の頂点を決めるスーパーファイトは、違った趣きながら、鮮烈な印象が残る結末になりました。





以前も貼ったことあると思うんですが、本当に、後にも先にも、これ以上のものを見たことがあるのかな、といまだに思う、見事なダウンシーン。
この試合を見て、近い将来「帝王」ハグラー打倒を果たすのはこの男なんじゃないか、と思ったし、そういう評が世界的に広まった時期が確かにありました。
実際には、多くが見たとおりの夢は、実現せずに終わるわけですが。


あと、同級史上最高の試合といえば、当然レナード、ハーンズ第一戦です。
今更紹介するまでもないんですけど、一応貼っておきます。
当然、フルラウンドで見るべきものです。未見の方、もしおられましたら、お時間あるときに是非。








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ライトヘビー級ひとり書き漏らし マイケル・モーラー追加

2020-04-24 19:20:30 | 海外ボクシング

ライトヘビーの記事コメントにて、マイケル・モーラーを推すコメントをいただきました。
言われて、同感でした。うっかり書き漏らしていました。

クロンクが晩年を迎えたハーンズの後継と期待したサウスポーで、新興団体WBOとはいえ、ライトヘビー級王座を獲得し、倒しまくっていた頃のモーラーは、当然、後年ホリフィールドやフォアマンと闘った頃とは違い、体型もスマートで、見た目に鮮やかなボクシングをしていました。

ヘビー級への増量により、得たものと失ったものがあり、その是非を一概に言えはしませんが、この頃のモーラーは、ベスト8の誰と闘っても立派にやれた、と思います。
そういうことで、動画貼っておきます。





この頃の試合ぶりは、ちょうどTV東京からWOWOWに海外ボクシングの放送が移る時期で、ほとんど見られなかったですね。
数年前、これの元になる動画を見つけて、楽しく見たのを思い出しました。


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