さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

共に「後半」勝負?/互いに万全/ヒットマン引退/こちらは狙撃手

2016-08-27 20:39:01 | 関東ボクシング


ということで来月16日の府立ダブルをゴールとして、色々注目試合や話題など。


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河野公平とルイス・コンセプション、激突は来週水曜日です。
まあ、世界戦といえばこのくらいの試合が年に一回くらい無いと嘘ですから、
取り立てて「よく組んだ」「よくぞ受けた」と褒めるのも却って失礼なのやもしれませんが。

さすがに月末平日に上京は難しく、まあ田口の方がペタルコリンでなくなったこともあり、
ディレイのTV放送で見るとしますが、楽しみは楽しみです。

さて、河野は「後半勝負に持ち込む」と語り
コンセプションはというと、動画で河野を見た上での「分析」を語っています

厳しく言えば河野が語ったのは自信で、コンセプションは分析を語っているわけです。
いずれにせよ、実際にそれを試合の中で具体化し、実現する能力は、また別物なのも事実です。
結局はその能力が勝敗を分けることでしょう。

私は、コンセプションは序盤から叩きに来るものだとばかり思っていて、
それを凌がないと河野には勝ち目がない、という先入観がありましたが、
実際コンセプションはどんな立ち上がりを見せるんでしょうかね。
この辺は非常に面白いというか、興味深いところです。

あと、勝敗を分けるのはやはり防御でしょうか。
河野は悪いですが雑で、ある程度打たれるのを込みで闘うようなところがあります。
コンセプションは強打で相手を押さえ込めず打たれるとき、非常に悪い打たれ方をします。
身体を逃さず、無防備なまま「芯」で喰ってしまう、というか。
この辺の粗を、どれだけ出さずに済むかどうか。その差が明暗を分けるでしょうね。


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田口良一宮崎亮ともに、コンディション万全とアピールしています。

共に万全、なおかつ「良いとき」の比較をすれば宮崎が勝つ...と思ったりもしますが、
そういう前提には意味は無く、結局は現状の力が全てです。
苦しい展開もありながら、一定以上の相手と闘い続け、勝っている田口の方が、やはり有利なはずです。
逆に言えばこの試合に宮崎が勝つなら、それは相当高く評価され、称えられるべきことでしょう。

この試合は、指名試合としては、残念ながら一定の水準に達していない一戦ではあります。
しかし、カードとしてはそれなりに興味深く、また宮崎亮というボクサーの魅力に、
かつて大いに惹き付けられていた者としては、やはり見逃せない一戦です。

勝敗は知らず、言葉通りの「万全」が見られることを、何よりもまず願っています。


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京都のヒットマン、徳永幸大引退表明

体格と強打を武器に、真っ向から相手と切り結んでいく数々の試合は、どれも強烈な印象が残るものでした。
日本上位との試合が多く、その内容の濃いキャリアと、京都のジムからの王座奪取は、大いに称えたい業績でした。

今後は大森将平のサポートに回る、と記事にありますが、こちらでも健闘を祈りたいと思います。


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ヒットマンの次は、スナイパー、狙撃手の話題。

9月4日、座間のセミファイナルについては、以前も少し触れました
その追加というか、井上拓真の対戦相手、フロイラン・サルダールの動画を貼っておきます。

アローヨ戦以降の動画が見つからず、最近の様子がよくわからないのが残念なんですが、
かつて次期世界王者候補と目されたころの、何とも派手なノックアウトをいくつか紹介します。


まず2010年11月23日、レミュエル・オビドス(と読むんでしょうか)戦。
WBOアジアパシフィック、ユースのフライ級王座決定戦。10戦目。
迷彩?柄のトランクスがサルダール。初回、見事なワンツーで強烈なKO。





続いて2011年5月28日、ジャック・アミサ戦。手撮り映像。
これも初回、フックかアッパーかわからんような右で初回KO。
力量差が大きく見える。最後は世に言う「ディレイド・リアクション」か、
それとも単なる嫌倒れか。





2011年12月23日、ネルソン・ラノス、でいいんでしょうか。これまた初回。






こうして見ていると、なんならこの選手がメインでお兄さんに挑戦したって良さそうなものですね。
勝っている試合での様子は、そんなことまで思うほどの強烈な強さです。
しかし...。

2014年6月19日、プエルトリコのバヤモンに遠征。
当時のIBF王者アムナット・ルエンロエンへの挑戦権を賭けて、
マックウィリアムス・アローヨと激突。





若手の頃よりも上体が大きくなっている。
大きく動いて距離で外し、ロングのパンチを打ち込むスタイルだが、
その分構えが低くなっていて、胸を張り気味にも見える。
強打アローヨと闘うにはいかにも危険、自信過剰。

2回、右ダブルの後に左フックを打たれ、直後に距離が詰まったところにもう一発。
顔の真ん中に拳の芯が入った、見た目以上に強烈な一撃。立てず、KO負け。



この後、4連勝ながら、昨年9月9日を最後にブランク中。
今度の試合がほぼ一年ぶりの試合ですね。何があったのかは知りませんが。

しかし、もし状態が良ければ、今時の世界戦なら充分、強豪挑戦者と目されるレベルです。
今回はメインの挑戦者がアレなこともあり、この試合こそ要注目、ですね。
大いに楽しみな一戦です。TVの放送枠にも入れて欲しいですね。


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良いところが全部出た 大森将平、WBC5位ヒメネスに完勝KO

2016-08-25 11:28:57 | 関西ボクシング



昨夜は京都にて観戦してきました。
ひさびさに快調な大森将平の勝利を見ることができました。

WBC5位エドガー・ヒメネスは、戦績は大したことがないですが、ここ最近浮上してきた叩き上げ。
試合ぶりは動画でひとつ、そして今回見たわけですが、目に見えて鮮やかな選手ではなくとも、
全体的に安定していて、良く手が出るし、粘り強さが出る展開になると、非常に厄介、という印象。

対する大森将平は、再起二戦目にしては手強そうな相手で、ちょっとこういう勝負に出るのは早いかな、と
見ていたのですが、これが予想以上に好調で、終わってみれば一方的な勝利を収めました。


初回、大森はジャブから入る。左から右返し。
ヒメネスはじりじり出るが、大森は膝を柔らかく使い、上体を揺すりつつ、突き放すように打つ。
左二発ヒット。ヒメネスはややスピードに欠ける。大森左、ヒメネスのけぞる。続いてボディ。

2回、ヒメネス巻き返したいのか、出てくる。大森はジャブ、ロングのパンチ。左カウンター決まる。
ヒメネス下がる。苦しい展開、スイッチする。大森意に介さず左をレバーへ。続いて左が上に。
大森左右を上下に打ち分け、多彩な攻め。左がまた決まってヒメネス後退。

3回、ヒメネスは足使って回る。大森しっかり見て右ジャブで追い詰めていく。
左ボディ、右フックが決まり、大森さらに詰める。左ロングフック、ボディから上に連打。
全部決まってヒメネス、ダウン。ダメージ深く、カウントアウト。


最初、少しだけ硬いかなと見えもしましたが、すぐに大森が自分の良いときの流れを掴みました。
体格とリーチを生かし、膝を柔らかく使って上体を振り、突き放しつつ前に出て、
多彩な左ストレート、打ち抜きの効いたボディ打ちで攻め上げていく、ベストパターンの大森でした。

こういう流れに乗ったときの大森は、本当に強いなあと改めて感心させられた一戦でした。
相手との相性、展開に恵まれた、という面もあるかもしれませんが、
それでもなお、昨年末のショッキングな敗戦から、わずか二試合目で、こういう試合が出来る大森は、
やはり大したものだなあ、とも。


対するヒメネスは、動き自体は良く、けっして弱い選手ではないはずでしたが、
大森を良い流れに乗せてしまったあと、それを覆す爆発的な何かは持っていませんでした。
もし大森が序盤、どこかで躓きを見せれば、それに乗じて粘りを見せ、接戦に持ち込む力を
持っていたはずですが、今回の試合では、その力はまったく発揮されませんでした。


試合後の報道では、陣営は年内にも世界を、本人はまだ先か、というコメントが出たようです。
私はどちらかといえば本人よりの見解です。
自分の良さを出したときの大森はやはり強い、と思う反面、今回の試合はあまりに「完勝」過ぎた。
そんな風に感じたりもします。

しかし、タパレス戦で序盤に叩かれた反省が、今回の立ち上がりからの好調、
しっかりジャブから入って自分の距離を掴み、その展開を手放さずに突き放し、詰め切った勝利に
存分に生かされていた、という見方も出来る。そういう意見もあることでしょうね。


いずれにせよ、今回の勝利は実に見事でした。
大森将平は、良いときの自分の流れに乗ってしまえば、こんなにも強いのだというところが
存分に見られました。
今後の話はひとまず置くとしても、彼は今、順調な「回復基調」にある。
それを確かめることが出来ました。見ていて、嬉しい気持ちになれた一戦でした。


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昨日の第一試合は5時半開始、私は6時少し前に、会場に入りました。
プログラムを見ると全部で5試合。4回戦が一試合ありましたがこれは見られず。
女子の試合がふたつと、セミは男子。いずれも日タイ戦で、早々に決着。
内容については記しませんが、皆様ご想像のとおり、というところでした。

で、メインまで25分ほど休憩。
リングアナの方(恰幅のいい方です)が「本日は進行が早くなっておりますので休憩を」と
場内に説明しておられました。

進行が早くなっておりますって、カード並べた時点で誰の目にも明らかやろう。
ひとつたりとも、長引くような試合があるかいや、と心中、ツッコミが出ました(笑)
まあいちいち、そんなことで腹を立てるわけではありませんが...。

で、メインもまた、早く終わって、全試合終了が7時10分(!)。
さすがにこんなのは初めてです。平日ですし、間に合わなかった人もいたかもしれません。


場内の入りは、世界ランカーを呼んだにもかかわらず残念なものでした。
あまりメディアに大きく取り上げられていなかった感もあり、仕方ないのかとも思います。

あと、場内にはTVカメラが入り、リングサイドには放送席ぽいものもありました。
たぶん毎日放送だと思いますが、後日、録画放送でもあるんですかね?
今のところ、どこにも情報がありませんが。


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最悪ではないが、やはり残念な終わり方 高山勝成、加納陸を負傷判定で下す

2016-08-20 17:43:29 | 高山勝成



ということで本日の加納陸対高山勝成戦、映像を見ることが出来ました。

関東地方では完全に放送がなく、関西でもTV大阪の受信地域のみで見られるという状況。
あと、中部では生中継があり、九州でも一部録画放送があったとか。

正直、日本やの、関西やのという以前に「近畿地方」すらカバーされていない試合が
「世界」タイトルマッチと称する時点で無理がある、と言いたくもなります。
が、まあそれは置くとして、加納陸と高山勝成、関西最軽量級の
新旧対決として、カード自体は良くも悪くも関心ある試合ではありました。



この試合については以前の記事で、両者の現状について思うところを書きました。
加納が高山に勝つためには、前の試合からさらに大きな伸び幅がないと苦しい、と見ていましたが、
今日の試合を見ると、前のサビージョ戦から、大きく飛躍した何かは感じませんでした。

もちろんそれでもキャリアの浅い、18歳のボクサーとしては充分に大したものですが、
昨年末の苦杯から捲土重来を期す、高山勝成を攻め落とすには不十分だったということでしょう。


初回は加納が左を好打。高山は最初出たものの、その後は加納に先手を抑えられた印象。
もつれたところからしか手が出ず、バランスも崩れ気味。

しかし加納は好スタートの展開を維持させてもらえない。
2回、また左を決め、右アッパーなどものぞかせるが、高山の執拗な巻き返しに遭う。
高山打たれながらも懐に入って連打、ボディも攻める。

3回、高山バッティングでカット。左瞼に大きな傷。しかし手数で圧す。
攻めては離れ、離れては攻め、硬軟自在な闘いぶりで、早々にペースを奪回。
このあたりはさすが高山という感じ。

これ以降、加納は徐々に手数で劣り、左が時折決まるが単発。
右ジャブがほとんど出ないので、高山にしたら、左さえ外せば前に出られる。
5回は高山が再三右で攻め立てる。6回、ドクターチェックで試合終了。

負傷判定は3-0で高山。だいたい、見たとおりの採点だったように思います。


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序盤に高山が左まぶたを切り、それがけっこうな幅の傷だったのを見たときは、
負傷ドローになるかと思い、暗澹たる気分でしたが、試合は何とか6回まで続きました。
最悪の結末だけは避けられました。

しかし、試合の度に大きな傷が出来、簡単に出血してしまう現状は、どうしても気になります。
相手の加納陸にしてからが、試合成立ラウンドの4回より早く出血した相手に対し、
本来なら考えなくてもいいことまで考えていたのではないか、という疑念さえ抱きます。

TV映像で見る限り、さほどきついバッティングだったとも見えなかったのですが、
それでも傷は相当なものでした。負傷を利して勝った、というような試合内容ではなく、
3回以降は高山がペースを握った試合だったことが救いではありますが。

若い相手に地力の違いを見せたと見える反面、負傷の治癒に時間が相当要るだろうということも含め、
暫定含めて5度目の戴冠は、ちょっと残念なものでもありました。



加納陸は、改めて、年齢やキャリアを考えると、将来が楽しみな好選手のひとりだと思います。
もう少しキャリアを積んで、身体が出来てきたら、高山や原隆二あたりと闘っても、良い試合が出来る、
充分やれるレベルにいけると思います。
現時点ですでに、高山が退けたここ最近の日本人挑戦者たちと、ほぼ同レベルにあるとも見ていました。

そこから大きな成長を遂げていれば、高山攻略の可能性もあるかと見ていましたが、
初回こそ左を再三好打したものの、すぐに突進されて懐に入られ、
そのまた次は足を使われ、という具合に、展開を変える術を知り尽くした高山のキャリアの前に、
せっかくの好スタートを生かせないまま、失点を重ねてしまいました。

負傷判定での負けは、いろいろ思うところもあるかもしれませんが、
現状の力では、試合が続いていたら逆転できたという印象ではありませんでした。
試合運びの巧拙(右ジャブの数が乏しいため、良い距離を維持できない)もそうですが、
体力面でも高山に押されている感もあり、残念ながら、数試合ぶん早い挑戦だった、と言わざるを得ないでしょう。

今後は日本タイトル獲得をひとつの目処として、再起してもらいたいですね。
まだ若いですし、本当の勝負はこれからでしょう。


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そういうことで、動画紹介しておきます。
たぶんすぐに消えるか、或いは消されるか。
なにやら物々しいですが(笑)
なるべくお早めにご覧ください。











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見る度に、着実に強くなっている 拳四朗、健闘の大内淳雅を退け二冠王者に

2016-08-08 14:03:14 | 関西ボクシング



ということで昨日は府立地下にて、拳四朗vs大内淳雅戦を観戦してきました。
BoxingRaiseにてライブ配信がありましたが、出来るだけ多くの人に見てもらえたらいいなぁ、
と素直に思える好試合でした。経過から。



初回から、大内が積極的に出る。早速、右のヒット応酬。手数とアクションの多さでやや大内か。
2回、拳四朗が右ヒット、大内が少したたらを踏む。アッパー、フックを巧く組み合わせた4連打。
拳四朗、また以前より鋭く、強くなっている。拳四朗。

3回、両者、右ヒット。大内が右、ボディ。拳四朗左ボディから上。大内右返す。密度の濃い攻防続く。
手数で大内か。
4回、大内右決めるが拳四朗はその度にジャブを連発。ボディ攻撃も効果的。拳四朗。

私のここまでの採点は38-38。公式は39-37×2、39-38で拳四朗3-0。


5回、採点を聞いた大内、巻き返しにかかったか、ペースアップ。
ワンツーで出て、右決める。拳四朗後退、効いたか。彼の試合で初めて見たシリアスなピンチ。
しかし拳四朗ジャブ出して立て直す。大内スリーパンチ、攻勢を取るが、
拳四朗の左フックが決まり、ロープ際で追撃を受け、ダウン寸前。ロープがなければ倒れていた?
大内もまたここから反撃、打ち合いに。場内歓声の中ゴング。

この試合の、というより今年見た試合の中でもベストラウンドか、という3分間。
攻めた時間は大内の方がやや長いが、好打の際のリアクションの差で、やや拳四朗か?迷う回。


6回、大内取り返しに来る。拳四朗ジャブで間を取り、ボディ。
これが決まると大内が若干ながらペースダウンする。拳四朗振りの小さい左フック。拳四朗。
7回、大内はボディを返すが、拳四朗が敏捷に右を合わせる。拳四朗左で煽って右決める。拳四朗。

8回、両者左の応酬、続いて右の応酬か、と見えたとき、拳四朗の右がカウンターで決まる。
大内ダウン。立った大内、粘って手を出す。10-8で拳四朗。

公式採点79-73×2、79-72。

9回、大内苦しい中、それでも果敢に攻めて右ヒット。しかし左に右を被せられ、また劣勢に。
10回、大内出てワンツー、右。拳四朗左ジャブ、右の上下。大内きつくなってきたか、失速。
終盤、拳四朗が右で追撃。レフェリーが一瞬ストップを考慮したような様子も見える。

11回、大内なおも懸命な反撃。右ボディ決める。しかし拳四朗ジャブで流れを切る。
大内単発ながらヒット取るが、拳四朗は左ボディ、ワンツー、右から左の返しと多彩に攻める。
12回、拳四朗左フックのカウンター。大内一瞬止まるが、最後の意地を見せ奮戦。
右を上下に飛ばす。拳四朗ブロックして右、ヒットを取って抑える。

採点は117-111、119-109、119-108の3-0、拳四朗でした。

採点は大差でした。しかし、試合内容自体は、少し違った印象を残すものでした。


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拳四朗は、デビュー戦から会場で、或いは映像で全部見てますが、試合の度に着実に成長しています。

最初は小柄で俊敏で、よく左が出て、というイメージだけでした。
しかし徐々に、相手との距離感、間合いの取り方が秀でている、と見えるようになり。
また、少しずつですがパンチ力が増し、スピード感や切れ味も感じるようになり。

堀川謙一との試合では、それらが合わさったひとつの集大成のようなものに見えましたが、
先の初回KO勝ち、そして今回の試合では、従来の良さに加えて、巧さや鋭さがさらに増していました。
2回に見せたコンビネーションは、一目見ただけでは「え、今の組み合わせ、何?」と
見ているこちらの頭が追いつかないようなものでした。

そして、ロリー・スマルポン戦のダウン以上に深刻に見えた5回のピンチ。
私は拳四朗のことを、淡々とペースを刻んでいくのがベストパターンの選手、と見ていました。
故に、こういう展開は最悪のケースのはず、と見えた危機を、彼はその回のうちに反撃して挽回し、
逆に大内をダウン寸前まで追い込む逆襲をしてみせました。

試合の流れを読めて、間が空けば左ジャブを出せて、相手との間合いが見えているクレバーさを持ち、
それに加えてスピード、パワーも増し、そして危機にあっても冷静で、逞しさもある。
デビュー2年かそこらのキャリアで、拳四朗はすでに、日本チャンピオンとして一級品のボクサーになりました。
その着実な成長ぶりは、目に見えて驚異的です。

実力者の大内相手に、攻め込まれる場面があったことは反省材料にせよ、それに対して、
時に距離を外し、ジャブでいなし、カウンターで迎え打ち、ボディを叩いて力勝負でも押さえ込む。
その実力は、真に一級品の王者と呼ぶべきものでした。

この階級の情勢からいって、遠からず世界という話も出てくることでしょうが、
その成否以前に、まずはそのこと自体を書き記し、大いに称えたいと思います。

暇割いて、身銭切って試合を見に来るだけの価値が、彼の試合には確かにあります。
会場では、遠方からの観戦組の方々にも会えましたが、皆さん共々、大いに満足感のある観戦でした。


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敗れた挑戦者、大内淳雅の健闘についても。

以前、少し書いたとおり、故郷の姫路に戻って以降、艱難辛苦の、というべきキャリアを過ごし、
それを乗り越えて挑んだ二度目のタイトルマッチは、文字通り彼の人生を賭けたものでした。

その実力は日本上位のものでありながら、あと一歩というところで頂点には立てなかった。
その無念を晴らすべく費やした日々の労苦を、そこで培った力を、
彼は拳四朗という俊才との一戦において、存分に発揮しました。

常に果敢に、積極的に攻め、抜群の距離感を持つ拳四朗の防御を突破し、
5回には大チャンスを得もしました。
しかし、ほどなく逆襲され、危機に立ち、それ以降、劣勢が続きます。

それは、傍目に見ているこちらが、これだけ頑張って、また実際強いのに、それでも敵わないのかと
絶望的な気持ちになってしまうような状況でした。

しかし大内は、最後まで勝負を捨てず、果敢に、懸命に戦い続けていました。
終盤の劣勢にあっても、出せる手は全部出し、拳四朗に大勝は許しても、楽勝はさせませんでした。
試合展開がどう、技術がどう、という話を越えて、彼がこの一戦のために、
どれだけ膨大な労苦を費やし、全てを賭けて闘っているのかが、ひしひしと伝わってきました。

敗れてもなお、感動的な、という、いかにもありがちな言葉しか思いつきませんが、
大内淳雅の闘いぶりもまた、勝者である拳四朗と共に、大いに称えたい、素晴らしいものでした。


見終えて、本当に良い試合を見た、というに尽きる一戦でした。
両選手に感謝、そして拍手です。


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我が目を疑う終盤の連続失点 斉藤幸伸丸、またも王座を逃す

2016-08-01 20:39:46 | 関西ボクシング



そういうことで昨日はまたも暑いさなかに、住吉区民センターにて観戦してきました。
簡単に感想。


メインは技巧のサウスポー細川貴之に、タイトル挑戦6度目という斎藤幸伸丸が挑戦。
輪島ジム初の王者誕生という悲願もかかった一戦でした。

立ち上がり、斎藤は手数少ない。もっと圧さないと、と思うが、細川が軽い右ジャブを出す。
初回は、言っては悪いが、どっちも支持したくない内容。

2回、細川は動いてトリッキーなフェイント、そして右ジャブヒット、というよりタッチに見える。
しかしこれでも、ペース掌握の意志我にあり、みたいな感じでポイント行くのかもなあ、と
思っていたらところ、斎藤が出て右。綺麗に決まって細川ダウン。
追撃する斎藤、しかし水に濡れた赤コーナー前のキャンバスに足をすべらせスリップ。

序盤から強打炸裂、ダウン奪取、好スタートというべき展開。
ところがこの後も、斎藤はちょっと見過ぎの印象。もっとがんがん行けばいいのに、というか。
相手が何されたら嫌なのか、困るのか、という発想が、残念ながら見えない。

逆に、がんがん来られたら困る細川は、それが嫌さに一生懸命。
足使って、クリンチして、当たらなくても、格好だけでも、ジャブを出す。
さわる程度のジャブばかりかと思えば、たまに力入れたジャブ、ワンツー。
時折左アッパーのカウンターがこれに混ざる。数発ヒットもあり。

4回後の採点は38-37×3。つまり、斎藤がダウンを奪った2回以外、全部細川。

※この途中採点は細川ではなく斎藤リードでした。コメント欄にて、キュウさんにご指摘いただきました。
お詫びして訂正します。実際はダウンを奪った回と、もう一つが斎藤で、残り二つが細川でした。

私は1,3,4回を全て細川の「競り勝ち」だとは見ませんでしたが、そういう採点もあり得るか。
けっして悪質な「地元判定」でもない。ただただ、試合自体が、どうにも煮え切らない。


5回、同様の展開。6回は斎藤がボディ攻撃で少しペース上げる。やっとか、という感じ。
7回、細川も左アッパーをボディへ。パンチの交換が増えてくる。
8回、細川が赤コーナーで迎え打ち、左当てるが右を食う。斎藤単発で右ヒット。
斎藤出て追い、細川軽いワンツー。終盤、斎藤の左フック?で細川膝をつく。
これはプッシングのようにも見えたが、ダウンの宣告。細川痛い失点。

8回後の採点は76-74×3、斎藤。8回のややラッキーなダウンがあっても、この差。
これまた、こういう採点もあるのだろう、という印象。
とにかく斎藤、パワーで勝っているんだからもっと攻めんと、という感じ。


9回、細川迎え打ち、手数増やす。しかし斎藤が右を決め、細川少し効いたか。
斎藤攻め込んで優勢、細川も左フックを打ち返し、場内沸く。
細川は足が止まり加減。ここは斎藤チャンスのはずが、また見てしまう。甘い。

とはいえ、さすがに、この試合は斎藤のものかと思ったのですが、10回以降、細川も踏ん張る。
左アッパーのレバーパンチが出て、これが効いた?のか、攻めていた斎藤が
ロープ際に後退、ロープを背負って止まる。誘っているようなジェスチャーだったが、
細川の左フックを打たれ、失点。11回も来い来いと誘う仕草を見せ、攻めは散発的。

最終回も打ち合い、ヒットも取っていたのに、スタミナ切れかボディのダメージか、
また自らロープに下がって止まったり、正直不可解、意味不明。
クリンチのあと、細川が手数自体は出す形で終了。


採点は115-111斎藤、あとふたりが113-113のマジョリティドロー。

私は、1回と5回をどっちにしたらいいのかわからず、それを除いて数えると斎藤の勝ちでした。
しかしどういう見方があったとて、実際、8回終了時に、細川が競った回をほとんど抑えているという
公式の採点が出ている以上、それを基準に残り4回をどう闘うかと考えれば、
10回以降の斎藤の闘いぶりは、どうにも納得がいきません。
はっきりいって、充分勝てる試合を、自ら捨てたようにさえ見えました。

試合を見ずに結果だけ聞くと「二回ダウンさせてドロー、地元判定か」と
思われる方もきっといるとは思います。
しかし、内容自体はこういう採点もあり、と思えるものでした。
私は斎藤のパンチの効果を採りましたが、そうでない採点も充分ありえる内容にも見えました。


試合自体については、両者ともに持てる力の限界の中で、懸命に闘ったのかもしれません。
ことに細川は、過去にたくさん見たどの試合よりも、良い身体を作ってきた印象でしたし、
終始自分の持ち味を出して、相手にとってやりにくいスタイルを貫きました。
ただ、序盤に打たれて倒れたのは反省材料でしょう。当然、そのせいでかなり苦しい試合になりましたし。

対する斎藤幸進丸は、序盤から一発でダウンを奪うなど、パワーに秀でたものがあり、
その上に、やや幸運な二度目のダウンを得たにもかかわらず、敗れました。
しかしそれを敵地での悲運とは言えない部分もあると思います。

この内容で、仮に場所が後楽園であったら、甘いジャッジに勝利を告げてもらえたかもしれませんが、
中立の目で見ると、あまりにも手数が出ず、攻めに厚みが足りない。
挙げ句に終盤3回の不可解な失速、後退が招いた連続失点は、見ていて我が目を疑うようなものでした。
いったい何をやっているんだ?あとひとつ、何でも良いから抑えれば勝ちなのに、
途中採点でそう出ているだろうに、と。

正直言って、これではタイトル獲れないな、という、良くない方の納得感が残った試合でした。



ということで、試合後は難波の居酒屋にて、同道した方々と飲み会。
長年に渡る筋金入りの輪島ファンの友人が、怒りと嘆きのあまり方々に火を噴いて、
お店の中は大混乱に陥ったのでした。色んな意味で、ちょっと残念な観戦になってしまいました。



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前座について、ざっと。
太尊康輝は75キロ契約の試合でイ・ジュヨンと引き分け。
右ロングを思い切り振ってくる韓国人選手を持て余し、危ない場面もあり。不調でした。
6回には相手にバッティングの減点があり、それが無ければ負けていたことになります。

向井寬史は川端遼太郎と3回負傷ドロー。この日随一のシャープな攻防が見られた試合。
2回に向井が見事な左ストレートでダウンを奪うも、3回にバッティングで向井が切り、試合終了。
一発で物凄い出血でした。残念ですが妥当な裁定。

坂本真宏はベテラン諸一宇に判定勝ち。2回に右でダウンを奪うも、諸も粘って反撃。
坂本はどうも試合見るたび身体が重く見え、安易に打たれて苦しみ、打ちつ打たれつになる印象。
この日もその展開を踏襲。試合後、今回は肋骨を傷めていたという話が出ましたが、
そうでなくても似たような試合が続いています。ちょっと心配です。

ストロング小林佑樹は、神之浦博に判定勝ち。強打のサウスポー神之浦ですがスタミナに難あり、
失速に乗じて小林が反撃。序盤打たれて苦しんだものの、挽回して勝利。

4回戦はスーパーバンタム級の一試合だけ。
原優奈(前にも見ましたが、女子ボクサーかと思ったら男子でした)が
今橋将勇(これで「ユキオ」と読みます)に2回見事なKO勝ち。
シャープなワンツーを決めて快勝でした。もう少し、それこそ拳一個分だけ相手から離れたら、
もっと良いな、という印象でしたが。とにかく好選手でした。3戦3勝、これが初KOだそうです。



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