さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

上々の再起戦

2011-07-31 09:10:05 | 名城信男
昨夜は住吉区民センターにて観戦してきました。

メインの名城信男再起戦、相手は二十歳のWBO8位、比国フライ級王者レイ・ペレス。
再起戦としては手強い相手と見られていましたが、なるほどなかなかの強敵でした。

まず立ち上がり早々に印象づけられたのが「これでフライ級?」と見えたペレスの体格の大きさ。
名城より明らかに大柄に見え、そして闘い方も足を使って動くのかと思ったら、
意外にも名城と正対して構え、打ってくる。ちょっと想像と違いました。

正直、この辺は相手の名城からすると、危険もあるが自分の力も出しやすい感じ。
右は重そうだし、アッパーを交えて打ってくる怖さがあるので、名城にリスクもあるが、
今日は打ちに出て、打ち勝てればノックアウトもあるかと、序盤には思っていました。

しかし名城は、思いの外、冷静な闘いぶりでした。
名城と言えば固いパンチを「ゴツン!」と打ち込んで相手を止めてさらに攻め込む、
というイメージが強かったのですが、この日はパンチの力感は以前ほどではない代わりに
よりハンドスピードを出し、切れのあるパンチを打とうとしている風に見えました。
そして好打のあとも、追撃を焦らず、ペレスの反撃を丁寧にガードし、
さらに足を使って追撃を外す、というシーンが多く見られました。

ペレスは動きにはスピードを感じませんでしたが、右のクロスやアッパーの
タイミングや角度には鋭さを持っていて、まともにやりあって打たれていたら
名城にもピンチのひとつやふたつ、当然あったはずです。
しかし名城はまず、そういうリスクを回避した上で、より速く正確なヒットを重ね、
防御にも気を遣った、意識の高いボクシングで、難敵をポイントアウトしました。
判定は97-94×2、99-92の3-0で名城。
さうぽん採点も97-94で納得でした。

ここ最近の名城は、強打の手応えを欲しがって相手を追いかけて、
結果、リターンパンチを数多く食って失点し敗れるというパターンで、
世界戦にも連敗しているわけですが、そのあたりを真剣に省みて、
意識の面から闘い方を変えてきているな、という印象でした。
何よりガードで外すだけでもなく、動いて外すだけでもなく、
その両方の配分をうまく出来ていた防御面に、はっきりと改善の見えた試合でした。

先のトマス・ロハス戦での敗戦のあと、けっこう厳しい感想を書きましたが、
この試合をちょっと大袈裟に言えば、新生・名城の第一歩、と言えるかもしれません。
8戦目での世界獲得までのように、単に強いだけでなく柔軟性を兼ね備えた名城が
こと意識づけ、心がけの部分でよみがえってきつつあるというか。
強打や闘志以外の面、巧さ、冷静さを見せてくれた昨夜の試合は、
再起戦としては上々の出来で、今後に期待を持てる内容でした。


昨夜の興行はメインだけでなく全体的に満足度の高いものだったことも附言します。

まず最初に、舞台の上に第1試合からメインまでの全選手が順番にコールされ登場、
名城が代表で観客に御礼と挨拶をしてスタート。
前座試合も、西日本新人王準決勝二試合に、元王者鈴木哲也のまさかの敗戦など、
色んな意味で見所の多い好試合ばかりで、最初から最後までまったく飽きず、楽しめました。
また全試合、全選手の入場に紹介画像、映像、戦績がスクリーンに映されるなど、
ファンへの情報提供が可能な限り考えられていて、非常にありがたかったです。


あと、前座試合の中での白眉は、スーパーフェザー級西日本準決勝で
初回ノックアウト勝ちを飾った六島ジムの西脇一歩でしょうか。
果敢に攻めてくる角谷隆哉(グリーンツダ)のガードの隙間に、右ボディアッパーを打ち込み、
ダウンを奪うと、場内が驚愕するなか、今度は左ボディでダウンを追加、ツーダウンKOで快勝。
デビュー以来4連続ノックアウトで、新人王決勝進出を決めました。

痩身、長身、長いリーチをどう生かすのか、と見ていたら、とにかくあっという間でした。
デビュー二戦目も見たことがあるのですが、その時も開始早々、相手の出鼻を右アッパー(顔面)で
叩いて二度倒し、さっさとKO勝ちだったので、正直、まだ彼のボクシングの全体を見ておらず、
どうこう言うことは出来ないです。

しかし、初回早々からボディ一撃で相手を倒す、パワーだけでなく打ち込むタイミングの鋭さ、
パンチの軌道と打ち抜きの深さなどは、ちょっと普通の選手にはないスケールの才能を感じます。
これで技術面をうまく伸ばせたら、今後、大きな期待をかけていい存在になるかもしれません。

中岸風太の年を最後に、しばらくご無沙汰だった新人王戦観戦ですが、今年は久々に行くかな、と
いう気持ちになってきました。もちろん、この西脇一歩をお目当てに。

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西岡、マルケス戦決定

2011-07-26 22:04:22 | 西岡利晃
海外ではもう決定と言われていたラスベガス開催の
西岡利晃vsラファエル・マルケス戦、
今日、正式発表があったそうです。
待望の一戦、ついに決まりましたね。

相手のラファエル・マルケスは昨年のファンマ・ロペスとの死闘に敗れて、
先に行われた再起戦でもちょっと不安定だったそうですが、
やはり歴戦の勇士、たった一度でも相手がミスをすれば、
それをモノにして勝ちを掴んでしまうレベルにあるでしょう。

4月の試合で痛めた左拳も含め、西岡にも歴戦の疲弊がないわけではないでしょうが、
この相手にそんなことを言ってはいられないでしょう。
早熟の天才にして大器晩成、西岡利晃にはジョニー・ゴンサレス戦、レンドール・ムンロー戦に続く、
彼のベストパフォーマンスを期待したいですね。

http://www.wowow.co.jp/kaikyoku/#/lineup/index.html

ちなみにこの一戦、10月1日からデジタル放送を3チャンネルで行うWOWOWが
生中継してくれるそうです(^^)

ついでに10月からエキサイトマッチの放送時間が日曜日夜に変わるそうで。
つまり、アメリカで行われる現地時間土曜日夜のビッグマッチを、
数時間の情報シャットアウトで結果知らずに見る機会が増えるということであります。
これこそ本当の意味での「タイムリーオンエア」になりますね。
もちろん、生中継が一番ではありますが、これは大変良い報せですね(^^)

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少し早過ぎた試練の一戦

2011-07-17 20:52:39 | 関西ボクシング
今日は阿倍野区民センターという会場で観戦してきました。

メインは、八尾ジムのサウスポー、デビュー5戦目の松井里樹(まついりき、と読みます)の試合。
小学生の頃、大橋ジムでトレーニングをしていた天才少年ボクサーとして、マスコミに取り上げられた選手です。
今は地元の大阪、八尾ジムからプロデビューして4戦全勝、ノックアウトは無し。
しかし好センスの持ち主で、今回は5戦目にして強敵相手、試練の一戦ということで、見てきました。

相手は真正ジムの伊藤秀平。
ミニマム級の西日本新人王で、確か11戦して負けたのは全日本決勝の原隆二戦のみ、という選手です。

これ、ホントに勝てると思って組んだんかなあ、とさえ思ったほどの強敵です。
もちろん負けるとは思っていないから組んだんでしょうけども...。
ただ、逆に言えば、6回戦とはいえ、5戦目でこの相手に勝つようなら、少年時代から天才的と言われた
松井里樹の才能は本物だった、ということにもなるわけです。

しかしやはりそんなに甘くもなく、簡単な話にはならず。
序盤から伊藤が頭を振って、松井の左ストレートを出すきっかけをかなう限り与えずに
うまく懐に入ってボディから攻め上げる、出入りの激しいボクシングでリードします。
松井は2回、伊藤の連打の打ち終わりに左右のアッパーを鋭く決め、しばし伊藤も
前進を躊躇するような様子を見せますが、3回からまた懸命に出入り。
時折見せる松井の左ストレート、アッパーは徐々に出すきっかけがなくなっていき、
結局伊藤が手数、攻勢でまさり3-0の判定勝ち。松井は4戦目にして初黒星となりました。

やはりプロでの試合数、経験、闘い方の巧拙において、伊藤に一日の長がありました。
しかし時折、鋭いパンチで伊藤をひるませた松井の才能にも目を引かれた一戦でした。
頭の位置を変えながら、時にラフに突っ込んでも来る相手を見過ぎて、
受け身の試合運びに終始し、自分から試合を作れずに敗れた松井でしたが、
今日の時点で、この相手だから無理もないかもしれません。
まさしく試練の一戦でした。少し、組むのが早過ぎた試合だったかも、ですね。

とはいえ、松井はもう少し試合数を重ねて、身体が出来てくれば、今後楽しみな選手だと思います。
また、彼の試合を見に来よう、と思いつつ帰途につきました。

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嘆くにはあたらない

2011-07-10 18:29:39 | 関東ボクシング
かつてラスベガスと並び、アメリカのビッグファイトの舞台として知られた
アトランティックシティで行われた下田昭文の初防衛戦は、無念の結果となりました。

序盤から、指名挑戦者リコ・ラモスの右リードを時に食いつつも、頭を振って外し、
接近戦で右ガードを上げて左を防ぎ、右ジャブから左、ボディ打ちで攻め込んで
ラモスを守勢に追い込んで、採点でもリードしているように見えました。

ただ、序盤から、思いの外ふところの深いラモスとの距離感が掴めないせいか、
或いは初の海外、米国遠征ということでの気負いなのか、ややもすると大振りのミスがあり、
前にのめったところに小さい右リードを合わされる場面もありました。

全体的に下田が攻め、ラモスはそれを見て対応、という形で試合は進み、
中盤にさしかかる頃にはラモスがやや下田を持て余しかけていると見えていたので、
7回の終局はあまりに唐突に映りました。

あまりにも唐突に動きが落ち、止まり、ガードも低い状態の下田に、
ラモスが右で探って、左フック。まともに決まって下田ダウン、立ち上がれず。
ちょっと見たことが無いくらい唐突で、衝撃的なフィニッシュでした。


新王者リコ・ラモスは、なるほど要所に豊富なアマチュアのキャリアを感じさせ、
冷静に下田を見た上での対応も的確でしたが、同時に下田の力を持て余し、
思うに任せない展開に、消極的に見えるところもあり、下田なら十分攻め落とせたかと思います。
それだけに惜しい、と改めて思わされた試合でした。

ボクシング界の国内市場の現状から、致し方ないというのが実情だろうとはいえ、
若き王者下田が、ボクシング・シーンの国際市場にデビューする一戦だっただけに、
なおさら今度だけは勝って欲しかったです。
本当に、最後の唐突な失速が惜しまれます。精神的な部分も大きかったのかもしれませんが。


しかし、米国東海岸のリングで、日本人ボクサーが強豪と真っ向から闘うという、
従来の日本のボクシングの常識からすれば「冒険」であるこういう試合に臨むことに、
今回の結果をもって、不要な恐れをを持つべきではないと思います。

こういう試合に挑めば、時に西岡利晃のように快哉を叫べる勝者がいて、
時に今日の下田のように、悲嘆に暮れる敗者を見ることになります。
そして、そういう勝敗を積み重ねることこそが、日本のボクシングが
世界のスタンダードの中に生き、どうも今や日本国内では得られそうにない、
ボクサーにとっての真の名誉と栄光を掴むために、避けては通れない道なのです。


今日、下田昭文は敗れました。敗北はさまざまに敗者を責め、苦しめるでしょう。
しかし彼の喫した敗北は、選ばれし者のみが喫することの出来る、嘆くにはあたらない敗北です。
彼が再び起ち、今日闘ったような試合のリングで、彼の姿を見られる日を待ちたいと思います。


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目指すべきものは

2011-07-01 22:04:56 | その他
一連のJBC騒動についての、傍目の感想です。


安河内剛「前」事務局長に対しては、さまざまな疑惑が持たれていたようですが、
真偽の程を知りうる立場になど無い、一介の田舎のボクシングファンの目にさえ、
報じられている限りの話を話半分としてみても、この人、やっぱアウトなんちゃうの、と
思わせるに充分なものがありました。
一応、公益法人での横領疑惑なのに、内部調査で問題ありませんでした、で
話を通そうとする、これだけとっても、どう見ても怪しいわけです。

ただ、そこからさらに愛人雇用とか、道具購入の裏金とか、特定業者との癒着云々など、
際限なく話は広がっていき、ファンの目には見えないところの話が増え始めました。
そしてその後、事態がどう動くのかなと見ていたら、協会が次期事務局長を推挙する、
しかもその人物が森田健、という、あらゆる意味で異常な話が持ち上がってきました。



今から5~6年前くらいでしたか、前任者の小島茂氏が退任し
安河内氏が事務局長に就任してしばらく後、当時、足繁く通っていた関西の試合から、
地元判定が激減し始めました。
これは名古屋での試合でも似た現象がありました。目に見えて変わったな、と
ファンの立場からはっきりと、氏の就任の後に変化があったのです。

そして、関西や名古屋の会場には、別にタイトルマッチや大きな試合でもないのに、
リングサイドでメガネを光らせている安河内氏の姿がありました。
えらいまた熱心やなぁ、やっぱお目付で来てるんかなー、
もしこの人の力で判定がまともになったんなら、大したものやなあと感心していたものです。

ところが、たまにお邪魔する後楽園ホールでの観戦では、相も変わらずというか、
旧態依然の試合運営が続いていました。大手、古株ジムの選手がどんな反則行為や
乱暴狼藉のレベルに達するラフファイトを繰り広げてもお咎めなし、もちろん失格処分もなし。
微妙な判定は悉く「こういう場合は、あっちやな」と思う方に振り分けられ、という感じでした。

地方での劇的な判定の改善は、結局は安河内氏の功績などではなかったのか。
或いは、中央での改革こそが一番の難事なのか。答えは見つかりませんでした。

しかし、はっきり言えることは、安河内氏就任前の時代に、中心的な審判員として活動していた
内田正一や森田健といった人々は、こうした旧態依然の業界の支配体制における、
恣意的な試合運営の中核を担う存在だったということです。
そして後に、特定の業者との癒着を疑われた安河内氏もまた、そちらの方向に
沈んでいったように、私の目には映っていました。



今回、協会が事務局長の後任に森田健を推薦し、結果としてその通りに就任が決まりました。
本来、これ自体が異常なことだと言われなければならないでしょう。
協会とは、本来コミッションに管理される側の立場なのに、その人達が推薦する人間が
事実上コミッションの実務を行う責任者の座に就くなど、筋違いの話でしかありません。

もし、今回、安河内氏に関して公益通報を行った役員、審判員達が、真にコミッションを
改革したいのなら、協会(=業界有力者)の力をこそ、まず最初に廃除しなければならなかったはずです。
その力を借りてしまえば、その先にあるのは、形を変えた安河内的なシステムの再現であり、
さらに言うなら先代事務局長、小島茂時代への先祖帰りでしかありません。
特定業者と統括団体への橋渡し云々どころの騒ぎではなく、自らWBA副会長を兼ねている、と
堂々と公言し、それを誰も異常なことだと思いもせず、批判もしなかったあの時代への回帰なのです。



先日報じられたところによると、安河内氏はクビにはならず降格のみ、
森田健氏が後任の事務局長に就任、コミッション分裂回避を大橋秀行協会長は歓迎、とのことでした。
やはり森田健が出てきて、さらに先週末にコミッショナーとの面会がならず、
結論が週明けに、となった時点で、こういう「お茶濁し」への道はすでに決まっていたのでしょう。

今日にも日本タイトルマッチがあり、試合日程も詰まっている中で、
コミッション分裂など不可能、という、目先の話だけではありません。
長い目で見ても、結局は自分たちを厳しく管理するのではなく、自分たちの都合に沿った形での
コミッション存続が業界の望みであり、その線さえ外さなければ、中身はどうだって良い。
それがボクシング業界を率いる、支配体制の人々の意志なのでしょう。


この一連の「騒動」については、さまざまな意見があるかと思いますが、
ファンの立場から言えば、目に見えないところの話がほとんどです。
安河内剛氏の行状が全て事実かどうか、訴えた審判員側が必ずしも正義なのか、それさえも、
突き詰めて言えば真偽の程などわからない話です。

しかし、上記した通り、昨日今日の話でなく、明らかに誰の目にもおかしいものはおかしいのです。
本来なら時に、さまざまな運営の場面で意見や利害が対立する関係であるはずの協会とコミッションが、
今回の騒動を収める過程で、片や協会が後任人事を提案し、片やコミッションがそれを受け容れる。
安河内氏の行状が真に解任に値するものであったとしても、全てはこうした歪な構図の延長線上に
あった話ではないでしょうか。


今言えることは、今後のJBCのみならず、何かにつけて恣意的にしか動かないボクシング界に対し、
ジャーナリズムやファンが、今まで以上に公正さを求め、厳しい視線を向けねばならないということです。
単に善人と悪人の、勧善懲悪のドラマではない、真に批判され、監視されねばならないものは何か。
コミッションの改革とは、そもそもいったい何を目指して行われるべきものなのか。

今回の騒動が、そうした視点からの論議をを新たに生み出すものとなるならば、
災い転じて...と言える日が、遠からずやってくるのかもしれません。


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