さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

「未来永劫」の記憶は残らず メイウェザー、49連勝で引退

2015-09-13 14:47:23 | フロイド・メイウェザー



ということで、生中継を見終えました。

アンドレ・ベルトの闘い方は、力及ばずではあっても、方向性としては正しいものだったと思います。
トレーナーにバージル・ハンターがついていたそうですが、なるほど一流の指導者というものは、
ボクサーをこれほど正しく導き、良き示唆をもって闘わせられるものなのだろうか、と感心しました。

踏み込んだ距離での相打ちで、より良い右の角度とタイミングを取って打ち勝つ、という以外に
あまり持ち味を感じなかったベルトですが、抜群の距離感と反射神経を持つフロイド・メイウェザーに対し、
強いが当たる確率が見込めない右を控え、速い左を多用して間を詰め、メイウェザーに楽をさせない試合運びは、
もちろん完全にとはいかずとも、これがメイウェザー攻略への、遠回りに見えて一番の近道である、という意味で
見ていて納得感のあるものでした。

メイウェザーは、格下(あくまで、メイウェザーと比べたら、ですが)の相手が、思いのほか
力んだ無理押しに出てくれないので、けっこうやりにくそうで、思うに任せない感じでもありました。
もちろん要所に巧技を見せ、最近の試合よりは力感の見える右カウンターを打っていましたが、
残念ながらベルトを止め、闘志を断ち切るほどではなく、得意の突き上げる左のカウンターも決まらず。
最終回の右アッパーは見事でしたが、追撃はならず、拍子木の音を聞くと踊り出す、お寒い締め括りでした。


=================================================


本人が言うには「引退」なんだそうですので、メイウェザーへの思うところを、ざっと振り返ってみます。


リッキー・ハットン戦までのメイウェザーはまだ、ボクシング界を代表する天才として、
その試合ぶりには説得力を感じましたが、一時引退というか休養を経てのファン・マヌエル・マルケス戦以降は、
カネロ戦のような大仕事はあったにせよ、基本的には「驚異的な才能を持つ、変わり種」の域を出ていなかったと思います。

例えばウェルター級史上最高、レナードよりも上と言われる「マンテキーヤ」ホセ・ナポレスと比較すると、
見る者の想像を超えた防御勘、速さや巧さは共通しても、やはりそれを防御というのを通り越した「保身」と
「自己顕示」にばかり使っている、という印象が拭えません。それは突き詰めてしまえば、メイウェザーの弱さなのでしょう。


中継終了後、ジョーさんが「メイウェザーはボクシングを誤った方向に進化させた」と語りましたが、ほぼ同感です。
ビジネス面のみならず、ボクシングの競技形態においても、おそらく様々な意味で、大きな揺り戻しが起こることでしょう。
そして、それを「ポスト・メイウェザー」の時代とするなら、その時代はもうすでに始まっていて、
その流れの中で彼が試合前からしきりに語っていた自賛の言葉は、遠からずその意味を失っていくことでしょう。

試合前のインタビューでの、空疎な言葉の数々や、Tシャツにプリントされた"THE BEST EVER"のロゴには、
正直、反発を通り越して、哀れみさえ感じました。
これだけの才能を持ち、大金を稼ぎ...しかし、彼のことを、過去のみならず未来永劫、最高のボクサーと
位置づける人はどのくらいいるのでしょう。私は、その中には入らない一人です。


とはいえ、過去にもあれこれつべこべ書いてきたように、過去の一定の時期においては、本格派とは言えずとも
ボクシングというものが生み出した、特異な才能の持ち主として、他では見られない希有なる天才性を、
彼自身のやり方で十全に表現して見せてくれました。
そのことに対しては、改めて敬意を払わねばならない、そう思わせてくれる存在でもありました。


あと、引退云々については、本当なら本当でいいし、翻意があるならそれもいいでしょう、という感じです。

ボクシングの歴史上で、未来永劫、最高のボクサーとして語られる資格がある者など、ごくごく少数です。
もちろん人ぞれぞれに意見があるにせよ、シュガー・レイ・ロビンソンとモハメド・アリは外せないでしょうが、
それ以外に何人のボクサーを取り上げることが許されるでしょうか。デュランでもアルゲリョでも厳しいでしょう。

そして、あともう一試合があろうがなかろうが、その中にフロイド・メイウェザーが入るとは、私には到底思えません。
どうなとしたらよろしい、という感じ、ですね。



=================================================


今回、中継終了後、ジョーさんが久々に、ボクシング批評家らしい仕事を(TVで)してくれましたね。
正直、中継自体は、高柳さんの実況が、注意力や集中に欠けた散漫なものでしたし
(最近、他のスポーツでも目に付きますが、試合中に何が起こっているかを無視して「お話」が優先されてしまう)、
今回のマッチメイクへの評も非常に甘く、どうにも見ていて気分の良い物ではありませんでした。

しかし、それまでいろいろ制限されていた部分もあったのか、試合終了後、言わずにおれないという風で
久々に往年のジョーさんを少し思い起こさせる「評」が聞けましたね。
もちろん賛意もあれば異見もあるんでしょうが、一応お金払って見てる番組なんですから、
視聴者向けの宣伝の体裁に従うばかりではなく、きちんとした「評論」があって然るべきです。

かつぐ神輿の言いなりになって、その筋立てに従うばかりの、阿呆な地上波の中継とは、
ひと味違うところを見せてもらいたい。そういう日頃の不満が、少しだけ解消されました。
これからも、この調子で頑張ってもらいたいものです。



コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

地球は揺れず、世界も止まらず ベテラン同士の攻防はメイウェザーの勝利

2015-05-03 16:34:49 | フロイド・メイウェザー



思っていたほど酷くはないが、やはり大したこともない試合、というのが、
見終えた今の率直な感想です。



初回、メイウェザーが彼にしてはどっしり構えて、パッキャオを突き放しに、叩きにかかる感じ。やや意外な立ち上がり。

この時点で私は愚かにも「あれ、さすがに今日という今日は、いつもと違うのかな、やったるぞ、という気合いなのかな?」と
思ってしまったんですが、この回最後の方になると、もういつもの受け身とクリンチでお出迎え、という形になっていました。


序盤はメイウェザーが取り、4回はパッキャオが左を一発、それ以外は連打で攻める。
すると5回、メイウェザーがまた強めに構えて、右カウンターを当てる。
しかし6回はパッキャオがその構えを押し返し、手数を出す。

7回、その展開に応じ、メイウェザーが初回とほぼ同様かそれ以上にスタンス広く構え、右リード、右カウンター。
明らかにパッキャオを「止め」にかかっている。それは良いが、その先のことは何もしない。

ラウンド序盤は強く構え、途中からは引いて回って、カウンター、クリンチ、という展開を維持するメイウェザー。
パッキャオはメイウェザーが「設定」する距離を崩せはしないものの、連打の最後にボディのヒットを取っていく。

9、10回は採点を迷う回。パッキャオ前進、しかしヒットはあっても浅い。
メイウェザーは、外してカウンター取るが、回数が少ない。
11回も同様。パッキャオ前進、メイウェザーは押して引いて、といつもの感じ。
ポイントはメイウェザーだが、メイウェザーが良いとかまさるとかいうより、パッキャオのヒットが乏しい。

最終回はメイウェザーが明らかに流す。本当に、いつもの感じ。

さうぽん採点は116-112。迷った回をひとつパッキャオに振っても115-113まででした。


パッキャオは以前の爆発的な踏み込みと、それを支えた自信が、やはり完全には戻っていませんでした。
残念ながら、こればかりは人間のやることで、仕方ないと言わざるを得ません。
でも、ここ数試合の中ではもっとも好調だったし、集中も感じました。終盤も動き自体は落ちませんでした。
現状の精一杯に近い仕上がりで、リングに上がって来てくれた、という印象でした。


メイウェザーは相変わらず、よく考えて闘っていました。手は少ないが当てている、というラウンドを多く作り、
攻勢に出て連打は出すが、ヒットは乏しいパッキャオを常にリードしていたように思います。

また、パッキャオが好打したパンチがあれば、即座にそのパンチを止める手立てを用意して、
小さく鋭い右をカウンターし、左のチェックフックで脅かしと、局面ごとに適切な対応をする。
その上で僅かに作った空間の余裕を生かしては、スウェー、ダック、サイドステップを駆使し、
パッキャオの攻撃の大半を無力化していました。

こういう展開の中、昔日の採点基準なら「イーブンでええわ、こんなもん」と思うような回も、
今の採点基準で振り分けるならメイウェザーのポイントになる、という回がいくつかありました。
それ以外のクリアな回も、双方、有効打としては浅いものしか見られませんでした。
そして、そのまま試合が終わりました。


率直に言って、試合としては平坦なものでした。
今世紀最高のスーパーファイトという喧伝に見合うかどうか、という物差しを持ち出すまでもなく、です。

共に38歳と36歳という年齢、歴戦の疲弊を考えれば、非常に良く仕上げてきて、集中力も極めて高く、
流石に巧い、速い、強いと思えました。
しかし、試合前にさんざん喧伝され、煽られた、様々な数字や話題を取り除いてこの試合を見れば、
はっきりいってこれよりも良い試合、凄い試合は、スーパーファイトの歴史を振り返るまでもなく、
数多存在し、見ようと思えば、いくらでも見られます。


まあ、試合に盛りつけられる様々な虚飾の言葉をあげつらうようなことは、良い趣味だとは思いませんが、
それでも、こんな試合のために地球が揺れたり、世界が止まったりするかいや、と、皮肉のひとつも言いたくなるような試合でした。


でもまあ、両者の現状を考えれば、どちらかといえばメイウェザーに対し不満はありますけど、
パッキャオが彼の設定した展開を打ち破る爆発力を発揮出来なくとも、それはもう仕方ないし、彼は精一杯闘った。
それでメイウェザーを捉えられなかった以上、メイウェザーの方が優れていた、ということなのでしょう。

と、安い料金で試合を見られるボクシングファンとしては、そういう風に思ってそれでおしまい、で全然大丈夫でしょう。
こういう試合もあるわ、という。


しかし、所詮他人事とはいえ、そうではない範疇の人々にとっては、そういうわけにいくのかどうか、疑問ではあります。

まるでアメリカの富裕層の慰みもののように扱われた試合のチケットの話や、あちこちからえらい収入を掻き集めたという話が、
それこそ階級社会を形成する信仰心や神に取って代わって崇められる「金」を絶対視する価値観のもと、
様々なメディアによって話題になっていました。
その話題性につられてこの試合を見た人や、金銭を始め様々に過剰な負担を強いられた人たちの間において、
この試合はどのように受け止められ、評価されるのでしょうか。

彼らがボクシングを代表するふたりのスーパースターであることは理解しますし、納得もします。
しかし、少なくとも今になって実現したこの試合は、やはり、ボクシングファンの枠を越えた試合には、なり得なかった。
その危惧は、試合前から誰の心中にもあったと思います。


ボクシングの内実を無視した様々な要素によって、果てしなく膨張した様々な数字が積み重なった果てに、
こういう試合内容と結果が残ったことが、今後の両者の行く末などではなく、ボクシングそのものの今後に、
いったいどういう影響を及ぼすものなのだろう。そんな疑問が心中に残っています。


結局、自分自身が思うことだけが全てだろうし、余計なことかとも思いはします。
しかし、どうしても、この試合に対する、今後の反響が気になってしまいますね。



コメント (11)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

華々しい幕切れか 墓標に名を刻む儀式か メイウェザーvsパッキャオ、遂に決定

2015-02-23 17:18:36 | フロイド・メイウェザー



ということでメイウェザーvsパッキャオ、ついに決定。
やっとこさ、今更、という言い方もありましょうが。


何よりもまず、メイウェザーという人は、ファンの期待や要望に応えるのでなく、止むに止まれぬ事情なくば、
この手の試合、相手にも一定以上の報酬配分を認めなければならぬような試合には出ない、という現実を
改めて思い知らされたような、試合決定までの流れでした。

ま、こうやって引っ張るだけ引っ張って、上手いこと話題になったやないか、てなものなんでしょう。
私なんかは頭が古いもので、とうの昔にやっとかないかん試合を、やっとやる段になってまだコレか、
ようやるのう、という気持ちです。大人の態度で理解を示す、という心境にはありません。

試合自体に関しては、メイウェザーはどの道、あの通りだろうから、パッキャオの奮起に期待するだけ、というところです。
逆に言えばそれがなければ、良い試合にはならないと確信しています。
要は今度の試合で、メイウェザーが、ハグラーに「感動的な逃げ勝ち」をしたレナードになるのか、
それともデュランとのラバーマッチのときの「無味乾燥な完勝」をしたレナードになるのか、ということです。

対するパッキャオの現状には様々な見方があるでしょうが、明るい展望はない、という見方もあり得るでしょう。
マルケス戦のKO負けは、いわば「勝負」に行った結果、と言えますが、その前のブラドリー戦の「油断負け」から
彼のボクサーとしての心のありようが瓦解しつつあったのだ、というのが私の見方です。
そこに、強烈なKO負けによる心身のダメージが覆い被さっているとしたら、そこからの復調が、再起後の試合で
証されたのかどうかは、正直計りかねます。


それでもなお、この試合は、ひとつの時代を画する一戦であり、注目に値する試合だとも思います。

ハグラーvsレナード戦で、両者合わせて2500万ドルくらいだった報酬が、ほぼ10倍になろうかという話ですが、
はっきり言って現状のメイウェザーとパッキャオが、どれだけフルに互いの持ち味を発揮したとしても、
あの試合と比較しうるようなスペクタクルになるとは、現時点では思えません。
仮にそうなったとしても、10倍の報酬額というのは、PPVインフレの頂点というべき数字です。

レナード、ハーンズらが先鞭をつけた、複数階級制覇路線と共に、世界王座の権威ではなく、誰と闘ったか、を
価値基準とした「スーパーファイト」の時代と、それを下支えしたPPVビジネスの飽和。
その極限、到達点として位置づけられるのが、今度の試合なのでしょう。

そして、今度の試合内容が、多くの期待に反するものになるだろう、という予測が、
私のような一介のファンひとりではなく、米国のボクシング関係者にも多く存在するのではないでしょうか。
アル・ヘイモンが、PBC中継をひとつのTV局に独占提供するのではなく、合計4局にて流すのは、
メイウェザーとパッキャオの時代が遠からず終わり、その次に彼らに成り代わるスター育成の舞台として、
より広範に、多くの視聴者に見られる試合中継の場が必要だという、彼の時代への展望そのものだと思えます。


いわば、すでに新たな時代が動き出している今になって、やっと組まれた両巨頭の対戦は、どういう試合になるのか。
ひとつの時代の趨勢に乗り、その最先端を走り続けた二人による、盛大なフィナーレといえる試合になるのか。
それとも、飽和したビジネスのスケールにはもう追いつけなくなった二人が、その名を、時代の墓標に刻むような試合になるのか。


この二人の闘いをいざ見られるという段になって、もっと違った感慨を持っていたかった、と思います。
しかし残念ながら、そうなりえた筈の時は過ぎ、今はいささか、複雑な心境でいます。




コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

再戦する意味は、やはり「そっち向き」の意地だった メイウェザー、マイダナを捌いて返り討ち

2014-09-14 15:43:55 | フロイド・メイウェザー


果たして、仰々しく再戦するほどの試合なのかな、と試合前から思ってはいました。
普通、初戦で苦戦(?)した王者が、再戦に応じるとなれば、今度はきっちり倒して力を見せつけてやる、
という筋が普通ですが、メイウェザーにそんなベタな発想を求めるほど、私も「昨日今日」やない、ですし。

きっと、前回ロープに押し込まれ、不覚にも何発か「ド突かれた」こと(反則打含む)に対して不満足なだけで、
再戦したら、ホレホレこんなに綺麗に外せるで、見たか!みたいな場面が増えるだけの話ではないのか、と。

ただまあ、それが実際に実現すれば、それはそれで鮮やかなもので、見ていてけっして悪いものではないはずです。
実際、3回の終わり頃に右一発食うまでの、メイウェザーのサークリング中心のボクシングは、それなりに見ものでした。
なるほど、ロープ際で止まる「ずぼら」を止めたら、こんな風になるのか、という興味が満たされた、ということも含めて。

しかし見ていて、これをフルラウンド続ける力は、もうメイウェザーには無いだろうな、最初から張り切ってしまってるけど、
きっとどこかで落ちてくるから、そこでまた揉み合い増やして時間潰してやり過ごして、その分ボクシングの密度が薄くなるやろな、
と思っていたら、思った以上に4回以降、退屈度の高い試合になってしまって、実に残念でした。

ところどころで光るメイウェザーの才能は、散発的に見ることが出来ましたが、対するマイダナはというと、
ロープ際で止まってくれる回数を激減させたメイウェザーの「方針」の前に、攻め手の半分以上を失った感じ。
時折見せたジャブの連打や右の強打も、もっと惜しみなく繰り出してメイウェザーのリズムやテンポを
切り崩すような意図があればともかく、結局は強打者が手応えを欲しがって打っているに過ぎないので、
展開を変える何事かを期待は出来ず。

8回でしたか、指噛んだの噛んでないだのという、どうでもいい話以外に、結局何も変わったことは起こらず仕舞い。
最終回なんか、メイウェザーが確信的に手を出さず、1ポイントを「くれてやった」くらいで、勝敗は明白でした。


しかし、冒頭に書いたとおり、わかっていたこととはいえ、メイウェザーの「意地」の方向性が、相手を打ち据えて
自らの強さを証そうというのではなく、捌ききって余裕を見せて、自分がより「優れている」ことを見せたい、
というものであることをまざまざと見せられたわけですが...もうそれは見飽きるくらい見ているのだから、
何も同じ相手と二度やってまでそれを改めて見せてくれんでもええよ、というのが、率直な感想だったりもします。

まあ私らは、ボクシング以外にも映画や音楽やサッカーやテニスや、あれやこれやと全部見られて2千数百円のTV局で
言えばお手軽にこの試合を見られるわけですが、以前も書いたように、アメリカのPPV視聴者の皆様は、果たして
このような試合に数十ドル払うことについては、特にご不満は無いのでしょうかね。やっぱり不思議です。


判定、今回は3-0で揃いました。アナウンスの直後、それが嬉しかったのかどうかは知りませんが、
メイウェザーがけっこう「ええ顔」で笑っていたのを見て、やっぱり私のような凡人には、こういうレベルのお方の
ものの感じ方は理解できんへんなぁ、としみじみ思った次第です。


だいぶ昔ですが、疑惑判定の問題について、「判定問題は、定期的に起こった方が良い。
何故なら、ボクサーたちが、所詮判定など当てにしてはいけない、
相手を倒すことでしか、確かな勝利を掴むことは出来ないと思うようになるからだ」
という意見を見たことがあります。

もし、前回や今日の試合などで(無茶は承知ですが)判定がマイダナを支持するようなことがあったらば、
再戦においてメイウェザーは、いったいどんな闘い方をするのだろうか、と試合を見終えて、ふと思いました。

...まあ、基本的には何も変わらず、自分を曲げてまで打って出るようなことはしないんでしょうけどね。
今日のように、あえて最終回を捨てたようなことだけは、最低限しないようにはなるのかもしれませんが。


コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

乱暴狼藉もあの辺が限界 メイウェザー、やはり盤石の天才

2014-05-05 00:49:59 | フロイド・メイウェザー


昨日の阿倍野の試合が物凄く良かったので、まあ今日は別に良い試合じゃなくてもいいや、という感じで
お昼の生中継をのんびりと見ておりました。

マイダナは最近じゃなかなか見ないレベルの居直りで、アタマを嫌がらせに使い、
後頭部や頭頂部や下腹部に多彩なパンチというか殴打を散らし、まあ何でもいいから打ちまくってました。

メイウェザーは得意のクリンチ、というかヘッドロックや腕固めで抑えてましたが、
そこからまだ出るマイダナの乱打を上下のブロックで防ぎ切れず、おまけに瞼を切るなどして、
前半はちょっと苦戦、というか「難儀」をしている風ではありました。


マイダナの闘いぶりについては、感心はしませんでした。
しかしその反面、極めて無責任な「メイウェザー相手ならこのくらい許してやらんと、試合が締まらんし」という
日頃この拙いブログなどであれこれつべこべ言っていることを棚の上に放り投げた物の見方でいきますと、
実際、あれだけ無茶苦茶をやってでも、マイダナが間を詰めて闘ってくれたおかげで、
いつもこちらを退屈させてしまうほど見事なメイウェザーの見切りが少々狂い、余裕の構えでもなくなり、
試合のリズム、テンポが速くなって、見ていて「これはちょっと面白くなるかも」的な楽しみ方が出来た。
それも事実だったりします。


しかし中盤くらいからマイダナがやはり疲れてきたこともあり、少しずつ余裕が見えてくると、
よける動作を、同時にパンチを溜める動作にして打つ小さい右カウンター、スウェイバックと一緒に打つ「ずぼらアッパー」等々、
いつも見ている得意技をあれこれ出して、結局はきっちり躱し、突き放し、クリアに勝ちました。というか、そう見えました。

判定については「またひとりくらいドローがおるかも」と思ったりはしましたがホントにいましたね。
まあ、リングサイドから見てるとそういう見方もあるのかも...いや、ないなぁ、やっぱり。


そんなことで、このレベルの試合に出る選手としては、昨今類例無き「なりふり構わず」だったマイダナですが、
あれだけの強打を持つ選手が、あれだけ居直って「乱暴狼藉」を働いても、結局試合の半分すら支配出来ない、
やはりメイウェザーって「大師匠」やなぁ、と、そんなことをぼんやり思いました。

正攻法のカネロも、押し込み強盗みたいなマイダナも、どっちもそれぞれの道において現代の大家だと思いますが、
結局はどっちみち通じない。37歳、46戦、本来の体格より上のクラスで大柄な相手と
もうずいぶん多くの試合を闘っていて、あちこち悪いとこもあると聞きますが、それでもなお...。

改めて、好き嫌いは別にして(←まだ言うか)大したお方であることは認めざるを得ません。
日頃の節制、調整の上手さ、集中力、身のこなし...どれを取ってもお見事です。
汚いことをされても動じず、揉み合いでも負けず、こそっと肘で嫌がらせしてたり、とにかく何やっても負けませんね。
これと比べてしまうと、ブローナーあたりとは、才能以外の面で、あれこれだいぶ差があるなぁ、とも。



何回か似たようなこと書きましたが、ホントにあと何試合かやるというても、相手どうすんの、と思いますね。
ブローナーとやらないみたいですし、カーンは正直、うーん、です。
マイダナとの再戦というのは、要は視聴者の皆様のご意見次第なんでしょうが、何が何でもせなならん、
という内容でもなかったように思います。
そうするとパッキャオとか、若手(?)だとキース・サーマンくらいでしょうかね。

なんか、GBP内部で、社長さんと番頭はんが揉めていてどうのこうの、ってな話があるそうですが、
その辺から違う会社の選手との絡みが、穏便な形で生まれたら良いなぁ、というくらいしか、思うところがありませんね。


コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

これ以上、何を証明する必要があるのだろう 不変の天才メイウェザー、俊才カネロに完勝

2013-09-15 22:48:18 | フロイド・メイウェザー


この相手に、これだけの差を見せて勝つとなると、彼は次の試合で誰と闘えばいいのだろうか。
今日の感想は、こういうところから始まってしまいます。

試合展開はもう、ご覧のとおりとしか言いようがありません。
36歳になり、5階級に渡り、いくつか数えるのも面倒なくらい多くのベルトを手にし、
逃れられない疲弊と、さまざまな負傷も抱えているはずの身でありながら、
23歳の若さと、少年時代から天才を謳われた才能と、大柄な体格を持つ挑戦者の攻撃を
立体的というより異次元の動きで無力化しての完全勝利。
またしてもメイウェザーの天才と、ボクシングの科学が華麗に融合した12ラウンズでした。


今回は、心技体ともにかなり締めてきた、という印象ではありました。
ロバート・ゲレロ戦と比べても、攻防の密度が高く、動きの切れも上だったと思います。
若き天才、カネロ・アルバレスとの対戦は、ゲレロ戦がビジネス面で「大」成功とはいかなかった
現実を踏まえて組まれたものだと報じられましたが、メイウェザーはそういう実利面から決まった
この若き、脅威のはずの相手との対戦をむしろ、心から楽しんでいるようにも見えました。
顔つきも試合前から明るく、良い意味で前向きな態度が見えました。
このレベルのお方が、気持ちから「乗る」と、これだけのものを見せるのか、と、
今日はただただ、感嘆し、脱帽するしかない、という気持ちです。まいったね、という感じです。


カネロ・アルバレスの闘い方については、あれで駄目なら何をやっても駄目だったと見ています。
素人目には、もっと手を出せとか、思い切り打っていけとか思うところなんですが、
過去にメイウェザーの試合をさんざん見て、さすがにその辺は私も学習しています。

強引に、打たれてもいいから捨て身で攻めろ、といっても、本来のジャブからの崩しといった
普通の攻防で勝てないから捨て身で攻めようという相手に対する対応、或いは封殺こそが
メイウェザーの得意分野、日常業務であり、立体的というより異次元のレベルにあるボディーワーク、
スタンスの微妙な調整によるバランスの移動、距離や角度の細かい変動によるディフェンス、
そしてアングルを変えた上体を小さく回転させて打つ多彩なカウンターパンチは、
相手が通常の、正攻法の攻防展開を諦めたら、さらに光彩を放って試合を支配してしまうのですから。

以前、プレビューめいたことを書いた際、まともにジャブを当て、外し、という攻防で
メイウェザーを速さや巧さで抑えられるボクサーこそが、メイウェザーに勝てる選手なのだ、と書きました。
そして、カネロは今日、そのように闘って敗れましたが、これで敵わないなら仕方がない、と見ます。
あれで自分の型を崩して出たところで、見た目の盛り上がりが多少得られはしても、
結局は、ほんのわずかの片鱗すら見えなかった「勝機」を、自分から投げ出すようなものだったろう、と。


それにしても、今、カネロ・アルバレスにこんな勝ち方をして、一体、メイウェザーは次に誰と闘えばいいんですかね。
セミで勝ったダニー・ガルシアが候補だと聞きますが、正直言って闘う意味が見出せるのかどうか。
さすがにゲンナジー・ゴロフキンと闘うことはないでしょうが、そんな名前でも引っ張り出さない限り、
誰とやっても試合にならない、という感じさえします。

かつてカルロス・モンソンは、ロドリゴ・バルデスとの再戦に勝利したあと
「もうリングの上で証明することは何もない」という名セリフを吐いてリングを去りました。
まあ、時代やな、という感じがする言葉ですが、いかにも「当世風」なメイウェザーとて、
契約した試合がすべて終わったあとには、同じようなことを彼なりの情緒で言うのかも知れません。

しかし、彼は今日、すでにこの言葉の状態にあるのではないか、と強く感じさせられました。
カネロでさえこうなのだから、他にいったい、誰がメイウェザーの築いた牙城に迫れるというのか。
いや、それ以前にもう、彼と相対する誰かに、対戦相手として、見る者にその試合を見る「意味」を
提示出来る者が存在するのだろうか、とさえ思うのです。

例えば再起するマニー・パッキャオが、目覚ましい復調を示して、そうしたカテゴリーに
自分の名前を書き記し、挑戦者として対戦相手に選ばれる、ということでもない限り、
メイウェザーの試合には、闘われる意味が見出せない、というところにまで来てしまっているのではないでしょうか。
それも、もっと早くに実現していてほしかった幻の名勝負の影を追う、という意味でしかないのかも知れませんが。


真の天才は無人の野を行く、ということならば、フロイド・メイウェザーは今日、
その天才ぶりを改めて全世界に示しました。
その特殊な才能は、煌びやかに映る反面、対戦相手の心技体というよりは、存在価値を打ち砕くもの、と感じます。
そのような彼の才能、その方向性を、手放しで称賛し、英雄視する気持ちを持っているわけではありませんが、
ボクシングというものが生み出す、美しくも残酷なひとつの「天才」の形として、他では見ることの出来ない、
稀有なるものをフロイド・メイウェザーは表現している。そのことには多大なる敬意を払わねばならない...と
私のようなものにも心底から思わせる、今日の試合はそのような試合でありました。



コメント (10)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

僅差が詰まるか、大差を生むか メイvsカネロ決定

2013-06-27 17:27:56 | フロイド・メイウェザー

この試合決定を知ったときは、だいたい皆さんと似たような感想だと思うのですが
「あれ、思ったよりあっさり、早くに決まったなあ」という感じがしました。
メイウェザーの試合って、大きなカードほど、決まるまでにうだうだうだうだうだうだうだうだ、
うんざりするほどあれこれあるのが常で、悪くすると結局やんない、とかいうこともあったりするので。

メキシコの若き天才カネロ・アルバレスは、昨年連敗のマニー・パッキャオにとって代わり
打倒メイウェザーの一番手と目されています。
実際、ここまでの試合を見ると、若さと勢い、強打や馬力だけでなく、天性の勘の良さに加え、
若くして試合数を多くこなしてきた経験から来る、試合運びの巧さ、判断の確かさも備えていて、
どの角度から見ても、コレはモノが違う、といえる大器です。

先のオースティン・トラウト戦、絶妙の距離感でトラウトの右リードの大半を外しつつ、
ほとんど相手を休ませない、楽をさせないプレスをかけ続け、それに耐えかねたトラウトが見せた
一瞬の綻びを即座に突いてダウンさせ、判定勝利。
トラウトの技巧と粘りもさすがでしたが、楽勝ではないが完勝、という、
ある意味、強敵相手に対する理想的な勝ち方で、さらなる成長を感じさせました。

しかし、この試合を見て、カネロの実力に感心したと同時に、
それでもまだ、これよりもひとつ上のレベルにあるのが、メイウェザーの防御勘であり、
相手の防御を様々な方法で狂わせ、隙を生じさせては打つ攻撃技術ではないのか、と感じもしました。

リーチぎりぎりの離れた位置ではやや低め、距離が詰まれば高く掲げるガード、という棲み分けを
実に繊細に行うカネロの防御をも、多彩なトリックで徐々に狂わせ、打つパンチの組み合わせ、
長短、内外、緩急を自在に変えるコンビネーションでメイウェザーが打ち崩すのではないか。
どうも今のところ、そんな想像が勝っています。

ただし、両者の差は、決して大差ではなく、僅かなものだという気もします。
ボクサーの実力を数値化などできないのは重々承知で、あくまで例えとして言うと、
全盛期、例えばアルツロ・ガッティを寄せ付けもせず破ったメイウェザーをベスト、100点だとすれば、
現状は僅かに落ちて、95~97点というところか。
で、カネロはというと、先のトラウト戦における、緻密な攻防を最大限に評価すれば、
90点前後、というところまでは来ているのではないでしょうか。

この、ほぼ5点差くらいの実力差、確かに僅差、ではあります。
しかしこの僅かな、と見える差が、いざ試合を終えたとき、
極端な話、120対108のスコアを生むことだってあり得ます。
僅差の戦力差も、その僅かな差が積み重なれば、そういう結果になる、それもまた、ボクシングの一面です。

そして、逆に言えば、この僅差が、両者の上昇、下降によって重なる場合もあり得る、ということでもあります。
若く、試合ごとに成長を見せるカネロが、その力を伸ばし、対するメイウェザーが僅かながら落ちるとすると、
両者の力が、95点前後のポイントでクロスする、ことによると逆になるかもしれません。


うだうだ何を書いてきたかというと、要するに、今回の試合は、最近いくつかあったメイウェザーの試合、
やる前から、余程のこと(トラブルやアクシデント、大幅な戦力の減退など)がない限り、
相手との技量、力量差が明白で、どう見ても逆には転びそうにもない、という試合とは
全く違う、戦力的に僅差の相手との戦いである、ということです。
オルティス戦、ゲレロ戦は言うに及ばず。昨年のミゲル・コット戦なども、コットを弱いとは言いませんが、
あの時点では既に、確実な差が感じられたのも事実でした。

そして、その僅差が、いつも通りに大差を生むのか。
それとも、何かの理由で、僅差が詰まり、逆転が起こるのか。
私は今のところ、前者の可能性をより強く感じていますが、
同時に、カネロ・アルバレスは、フロイド・メイウェザーの対戦相手として、
久々に現れた、大きな可能性の持ち主だと思っています。


ということで、当然WOWOW生中継でしょうから、これは楽しみですねー、と
ただそれだけを言いたいわけですが(^^)
今年に入って、WOWOWの生中継試合は、あまり盛り上がらない試合になる、という
言われてみれば「ほんまやね」と言わざるを得ないジンクスがあるようですが、
この試合だけは、蓋を開けたら...といういつものパターンが覆るかもしれません。

そうなれば、一筋縄ではいかないほど複雑な、メイウェザーへの愛憎渦巻く私ですけど、
ひとまずそういうややこしいことは置いて、うおーと盛り上がってしまうと思います(^^;)
もちろん、いつもの通り「今日も世界は何も変わらず」となるのかも知れませんけど。
はてさて、どないなりますやら...。

コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

多階級制覇流行の弊害極まれり 最高峰なのに退屈 メイウェザー、またも大勝

2013-05-10 11:38:16 | フロイド・メイウェザー

今更ですが日曜日の、メイウェザーvsゲレロ戦について。

展開についてはあの通り、予想のまんまというかなんというか。
最近は、一試合にひとつずつ、ちょっとどうかなと思わせるところもあるメイウェザーでしたが、
今回は序盤にロバート・ゲレロが果敢に攻めたものの、穴が開きそうな予感は皆無でした。

マルケス戦で、体重超過を金銭で処理した件。オルティス戦の倒し方。
モズリー戦、2ラウンドの危機。コット戦では若干苦闘。そしてその後の収監と再起。
こういう過程を経て、若干風貌が「ムショ帰り」ぽかったのは笑えましたが、
試合ぶり自体は、相変わらず抜群の防御技術と勘が冴え渡る、メイウェザーならではの
ボクシングの科学と天才の華麗なる融合、とも言えるものが、
フルラウンドに渡り、滞りなく披露され続けるものでした。

と、凄く良い表現をすれば上記のとおりですが、それが見てて面白いのかというと
全然そうではありません。同様の感想をお持ちの方も多いと思います。

メイウェザーの防御を攻め崩す技量、力量が見るからに欠けているゲレロ、
防御は見事だが、攻撃に関しては必要最小限、「打倒」が期待できないメイウェザー。

両者の闘いは、技術的には見どころがあっても、傍目の我々が期待するスペクタクル、
スリルといった要素が乏しく、何一つ戦前の予想、想像を裏切る要素がない展開が
延々と続く試合は、言っちゃなんですが退屈の一語でした。

まあ余計なお世話かもしれませんが、こんな試合で数千万ドルの報酬を得るといっても
そんなお金、どこの誰が出してんのかね、と不思議に思います。
アメリカのPPV視聴者って、こういうのホントに好き好んで見てるんかね、と。

何だか、アメリカのトップシーンって、結局のところは複数階級、というより
もはや「多階級」制覇の王者が乱立し、それによってステイタスを得た者同士が
PPV放送のビッグマッチを闘うことが成功、という図式になっています。

しかしその挙句、選手がベストウェイトを外してボクシングの質を落としてしまい
(マニー・パッキャオのような、驚異の例外もありますが)、
これ、ベストの階級でもっと早くぶつかってればな、と思うカードもけっこうあります。
昨年ならメイvsコットですね。140ポンドのときにやってればな、と思いました。

そして、もしメイウェザーがライト級あたりに留まって、防衛や統一戦を続けていれば、
抜群の防御センスとともに、もっとスリルのある攻撃、KOシーンが多く見られたのではないか、とも思います。
実際、このあたりでは、カスティーヨ戦は苦闘でしたが、フィリップ・ヌドゥ戦や
スーパーライトでのアルツロ・ガッティ戦など、強敵相手に見事なKO勝ちをしています。

結局、ビジネスとして成功であっても、それにより犠牲になっているものもある、と思えてならないのです。
統括団体乱立、階級増加により、真の強さや王座の権威が高額報酬に繋がる図式が崩壊した結果、
ビジネスとしては肥大したものの、ボクシングの魅力自体が削られている面があります。

ウェルター級より上に上げてからのメイウェザーの試合を見るたび、そのように感じることが多かったですが、
今回の試合などは、本当にその典型というべきもので、もしゲレロとの試合が、
下の階級で闘っていたころに実現していたら、まったく違った内容と結果になっていたでしょう。


往年のレナード、ハーンズによって先鞭がつけられ、デラホーヤ、パッキャオ、メイウェザーらが主導した、
近年のこうしたボクシング・ビジネスの傾向は、
いい加減限界に近づいてきているのではないか、という気もしています。

実際、今回SHOWTIMEへの移籍初戦で、メイウェザーの試合にしては、PPVの契約件数が少なかった、とか。
当初、カネロ・アルバレスvsオースティン・トラウトとのダブルメイン?予定だったことから、
視聴者の購入意欲を削いだ結果なのかもしれませんが、今回の試合内容が容易に想像できるものだったことも事実でしょう。


そしてこの流れに掉さす新たなスターは現れないのでしょうか。
メイウェザーやパッキャオも、遠からずリングを去る日が来るでしょうが、
その後に世界のトップシーンを担う、次世代のスーパースターといえばなんといっても
エイドリアン「アホと天才は紙一重」ブローナーということになるのでしょうが、彼も彼とて、
次の試合は一気にウェルター級、しかも一番攻略容易と目されるポール・マリナッジに挑む、ということになっています。

今はかつてのメイウェザーと同じく、ライト級でバッタバッタと相手を倒しているブローナーですが、
今後はそういうわけにいくのかどうか。今のところ、強打者揃いの140ポンドをパスしていますが、
そのうち真の強敵と出くわしたとき、いったいどうなるのでしょう。

今のところ、メイウェザーよりも相手との距離を外さず、密度の濃い攻防一体のボクシングを繰り広げている
天才ブローナーですが、彼もまたクラスを上げることにより、その密度を薄めて、防御に比重を置いたスタイルに変わるのでしょうか。

そして、そのような変容の末に、多階級制覇を果たしたとして、それが変わることなく、
選手のステイタスと、高額報酬を保証するものなのでしょうか。

米国における現状のボクシング・ビジネスには、次世代の選手層育成や、ファン層の維持という面において、
かなり不足した面があるように感じていますが(ヘビー級の衰退はその先駆けのような気がします)、
往年のように、ひとつの階級で多くの防衛と統一戦を重ねるスタイルが評価されるようになる、
そういう揺り戻しはないのでしょうか。今のところは、そんな兆しはどこにもありませんが。


話は戻りますが、もしメイウェザーが、ライト級に留まって闘い続けていたとしたら、
いったい今頃、世界のボクシングシーンはどうなっていたのでしょう。
パッキャオ、マルケス、カサマヨールにエドウィン・バレロ...もし彼らと、メイウェザーが
135ポンドで対戦していたら、きっとボクシングの歴史に残る、凄まじい試合ばかりだったことでしょう。
そしてメイウェザーがこれらの試合に勝ち抜けば、彼は石の拳ロベルト・デュランを凌駕する、
同級史上最強の評価を得たはずです。

しかし、そういう夢というか妄想というか、こうしたものが実際に試合として提供されるときには、
双方の選手が本来の体格よりも数階級上の肉体をまとっているのが、近年の常識です。

やはり、そういう傾向は、どうも好きにはなれませんし、
そして、長い目で見て、けっして良いことだとも思いません。
今回の試合を見て、フロイド・メイウェザーの才能が稀有なものだと改めて感じたからこそ、
余計にそういう思いが強くなりました。


コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最低最悪の終わり方

2011-09-18 14:24:53 | フロイド・メイウェザー
生中継を見終えました。

序盤から今時珍しいほどにあからさまなヘッド・ブラッシュを見せていたビクター・オルティスに、
それについて何も注意をしないレフェリーのジョー・コルテスを見て、嫌な感じはしていたんですが。

オルティスは劣勢のうちに迎えた4回に、せっかくの攻勢を自ら断つ「頭突き」で減点。
そしてグローブタッチの後、無防備だったオルティスにフロイド・メイウェザーの左、右。
もろに入ってオルティス、立てず。メイウェザーのKO勝ち、というのが大まかな流れですが、
本当に考えられない、想像出来ないほどに酷い終わり方で、思わずため息が出ました。

これが全世界注目のビッグマッチとされる試合なのですかね。
あまりのアホらしさにすっかり呆れ果てました。


まともにボクシングをしても敵わないから、という理由でしょうか、
せっかく攻勢をとれたその時に、わざわざ頭突きを繰り出して相手を止めようとし、
結局自分の数少ない好機を台無しにしてしまったオルティス。

自分は頭突きをされた被害者だから、やりかえしてもOK、という次元の低い発想で、
グローブタッチの直後、レフェリーの指示も待たずに打って相手を倒し、
挙げ句にインタビューでそれを正当化しようとしていたメイウェザー。

そして序盤から目に見えて悪質だったオルティスのヘッド・ブラッシュを無視し、
4回のアクシデントの直後、一番肝心な時に、両選手への管理を怠ったコルテス。


試合の終わる過程において、リングの上には、世界レベルの試合に相応しい
意識の高さを持つ人間が、ただのひとりも存在しませんでした。
そのことにすっかり呆れております。アホらしいやら情けないやら。
しっかりしてもらわな困るで、という感じですね。


気を取り直して試合自体ですが、やはりメイウェザーの才能と実力は凄いですね。
何を今更、って話ですが...私の心中には、この天才への感嘆の気持ちと、
その影に隠れたどす黒い怨念(笑)が共存しており、
ある意味で、今日の試合はその両方を満たすものでした(笑)

本当に、試合の終わり方というか終わらせ方というか、とにかく結末は最低最悪でしたが、
彼の持つ才能の止めどなさというか果てしなさには、本当に感服しております。
やはり、マニー・パッキャオとの「決戦」は、何とか実現してもらいたいですね。


相手のオルティスについては、あらゆる意味で、やはり顔やなかったな、という一言でしょう。
二元中継で出たカネロ・アルバレスの将来性にこそ、打倒メイウェザーの期待を持てそうです。


最後にセミセミ?に出たエリック・モラレスですが、おそらく批評家やマニアから
広範な支持や祝福を受けるものではない「4階級制覇」を見て、どうも複雑な心境です。

あくまで今日の試合は、スーパーライト級の若手有望選手に勝った、という以外に
何の意味も内実もない試合でしょう。あの勝利にベルトがついてくる、というのは
見ていて、とてもじゃないが良い絵だとは言えませんでした。

今後、上位やチャンピオン・クラスとの対戦では、おそらく厳しい結果が待つでしょう。
そして、彼が勝利を献上する試合が、おそらくボクシングの歴史につきものの、
王位継承というような儀式めいた意味を持つ試合として、遠からず行われるでしょう。
そこで彼が誰を相手にどのような「退位」を見せるのか、きついようですが
それ以外に今後、彼の試合を見る意味はどこにもないように思え、少し悲しい気持ちでいます。

コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ご無沙汰更新であります

2009-09-24 22:10:28 | フロイド・メイウェザー
最近、すっかり更新が滞っておりまして...。
こんな拙いブログでも見ていただいている皆様、申し訳ありません。
これからはあれこれと注目の試合が続きますので、ぼちぼちやっていきます。
宜しくお付き合いくださいますよう、お願いしますm(_ _)m


さて、月曜日は情報シャットアウトでメイウェザーvsマルケス戦を見ました。

ま、引退やブランクや、というのとは違って、単なる加療とリフレッシュを兼ねた「休養」に過ぎまい、と
アタマではわかっていたつもりでも、やはり1年9ヶ月ぶりの試合であの違和感の無さというのは...。
好みの問題はおいて(←まだ何か文句あんのか、というツッコミが聞こえてきますが)やっぱ凄いですね。
フロイド・メイウェザーの身体の運び、眼の良さ、勘の良さには、ただただ感心でした。

ただ、純正ウェルター級の強打者相手だと、まだちょっと危ないかなという場面もありましたね。
今回の完勝は、体格に加えてスピードでもまさるという前提を考えないといけないでしょう。
以前はバルドミールやデラホーヤのような大柄な相手でも、まあ間違いは無かろう、という印象でしたが、
そこから比べると、やはりまだ...どうかな、と思う場面もありましたね。


完敗を喫したファン・マヌエル・マルケスですが、相手が普通の世界王者だったら、
例え純正ウェルター級相手でも、展開次第で勝てるんじゃないか、と思わせる仕上がりでした。
右がややループ気味で真っ直ぐじゃなかったのが気になりましたが、あれはメイウェザーの
ショルダーブロックの上を滑らせて当てようという試みだったのかも知れません。
しかしメイウェザーの速い身体の運びに、ほとんどヒットが取れませんでしたが。

それにしても、ストレスの溜まる12Rだったことでしょうね。
あれだけ「当たる」という確信を持てる射程を得られないままに1試合を終えた経験は、
マルケスのようなレベルの選手には、一度もなかったんじゃないでしょうか。
それでも懸命に出て奪った数少ないヒットは、ライト級でも体格面を不安視される選手としては、
驚異的な果敢さ、勇敢さの証だと思います。
米国上陸後のパッキャオが唯一、屈服させられなかった実力者、マルケスの強さを
改めて見たような気がしました。


各々の階級において最強の両者の対決は、ワンサイドと表現される試合になりましたが、
それも両者の、特にメイウェザーのスタイルの特殊性によるものなのかな、と感じました。
かつてのマービン・ハグラーvsロベルト・デュラン戦が意外な接戦になったのは、
ハグラーがデュランの土俵に乗ったが故、という理解がされましたけど、
メイウェザーは相手の土俵には乗らないという前提のスタイルを持ちます。
結果、懸念(←だから、何で「懸念」するんや、という話ですが)したとおりに、
内容的にはメイウェザーvsアルツロ・ガッティ戦に似た試合となりました。



あと、契約ウェイトと罰金の件について、ですが...。
自分の商品価値に自信を持ち、高い報酬を得ることを試合成立の条件にするぶんには構いませんが、
どのウェイトで良いコンディションを作れるかどうかのリスクを、カネで回避する、とは。
コンディションの面にまで、ビジネスの論理を持ち込む発想、私には、到底理解できません。

いつからか知りませんでしたが、メイウェザーには「マネー」なるニックネームがついてるんだそうですね。
試合のたびに高額の報酬を要求することを揶揄しているのなら、それはお門違いだと思っていましたが、
今回の一件を経て、なるほど、外してないな、と思った次第でございます、ハイ。

===============================================

で、今日、記者会見が行われて、発表されたんだそうですね。
内藤大助の次期防衛戦。相手はなんと(笑)亀田興毅だそうです。

何か書こうと思ったんですが、何か書くほどの思いが、自分の中に何もないことに気づきました。
現時点では「へえ、ホンマにやるつもりなんや」というのが、唯一の感想です。


まあ、実際に試合が行われるのなら、そしてそれを見られるのなら、何か思うことはあるはずです。
その時にまた、何か書くとしましょう(^^ゞ

コメント (9)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする