さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

ヘビー級、栄光の時代再びか ジョシュア、クリチコをTKO

2017-04-30 14:06:45 | 海外ボクシング



早朝からWOWOW生中継を見ておりました。

事前の期待、想像を超えた激戦でした。
ヘビー級のタイトルマッチが、試合前からこれほど大きな注目と期待を集め、
実際の試合がそれに応えるものだったのは、果たしていつ以来のことか、と思います。



序盤、ウラディーミル・クリチコは、手数自体は多いわけではないが、早々から間合いを「詰め」て、
ジャブの合間も身体を弾ませ、フェイントをかけ、という具合で、能動的に動き続ける。

強打を決めてアンソニー・ジョシュアを抑えられれば一番だったのでしょうが、
それがかなわずとも、キャリアの浅いジョシュアに、余裕を与えたくない、という意図が見えました。

それはある程度まで成功していて、普段ならもっと柔軟で多彩なジョシュアが、いかにも硬い。
動きの範囲が狭く、リズムもなく、テンポもスロー。
全てにおいて、クリチコがジャブと右で叩ける枠内に収まっていて、
思うに任せぬ、という風が、露骨に表情に出ている。不安な立ち上がりでした。


とはいえ、2回、3回は多少ジャブも増えたジョシュア。
だが、クリチコは大きな身体を弾ませ、ステップを踏んで対応。
ジョシュアはリズムに乗って攻めていこうという矢先に、常に機先を制せられる、という具合。

しかし、いつもならジャブと右の合間に揉み合って、のしかかって休んで、という感じのクリチコだが、
ジョシュアの体格もあって、休み休みの試合運びは出来ない。

序盤は概ね、ハイテンポな展開を回避したいクリチコのペース。
しかし、あの大きな身体を休ませる時間が、あまり取れていない展開でもある。
このあたりはひとつ間違いがあれば崩れる、危機と紙一重、というところか、とも見えました。


5回、ジョシュアが早々に急襲。いったい何の手応えがあって、こんなことをするのかと
見ていて驚くような展開でしたが、この攻めのさなか、左フックの強打が決まり、クリチコがダウン。

クリチコは前に重心を崩す場面もあり、これは相当効いた、と見えたのですが、すぐ逆襲。
右を決めて、今度はジョシュアがぐらぐら。
クリチコは驚くほど早く回復し、ジョシュアはこちらも驚くほど早々に疲れ、失速。
スリリングな展開に興奮しつつ、いったいこれはどうなっているんだろう、と思いもしました。


6回、クリチコが踏み込んでワンツー、まともに決まってジョシュアがダウン。
これは正直、何の変哲も無い、という感じのパンチだったが、まともに喰ってしまう。
ジョシュアなんとか立ったが、膝が伸びてしまっていて、バランスが取れない状態。
これは終わった、と思ったが、なんとかクリンチで凌いで、ゴングに逃げ込む。


7回以降、スリル満点の攻防にしびれつつ見ていたものの、
よくよく見ると、展開が急にスローなものに変わっていることに気づく。
クリチコは追撃出来ず、ジョシュアは苦しいながら回復に努める。

もちろん、双方一杯のところで、片や攻めきれずともポイントを取り、
片や失点しても追撃は断ち、回復するまで耐えている、必死の闘い。

双方ともに好機を得て攻めるが、頑健に過ぎる肉体故か、すぐに目に見えて疲れてしまう。
しかしながらその頑健さをもって、スーパーヘビー級(といっていいでしょう)の強打を浴びても、
なんとか耐え抜き、立て直す脅威の回復力を持ってもいる。
この辺の良し悪しが、けっこう露骨に見える、起伏の激しい試合でした。


終盤に入り、徐々にジョシュアが立て直し、クリチコの左腕の内側に、
何回か右のショートをねじ込む場面が出てくる。
10回、クリチコは右ショートのカウンターを取るが、11回、早々にジョシュアが出て、
右から攻め込み、右アッパーを決めて追撃、ダウン。二度目は左フック、三度目はロープ際で連打。
ここでレフェリーがストップし、ジョシュアのTKO勝ちでした。


まずは両者に拍手すべきでしょう。
41歳のボクサーとしてはこれ以上望めない、最高の仕上がりでリングに上がり、
その経験を十全に生かした闘いぶりを見せたクリチコ。
9万人の大観衆の前で、序盤は硬く、抑え込まれた感じもあったものの、
封殺されることなくその展開を打破し、危機を乗り越え、逆襲して勝利したジョシュア。

近年のヘビー級タイトルマッチが、実質スーパーヘビー級というべき大型ボクサーによる
内容の薄い試合ばかり、という不満は、ほぼ解消されました。

ことに、難敵相手に、ここぞと勝負をかけて打ち勝ったジョシュアは、ひとつの大きな山を越えました。
今後、ワイルダーやフューリーとの対戦で、真の世界ヘビー級チャンピオンを決めることになれば、
ヘビー級に、かつての栄光の時代が再びやってくるかもしれません。
そして、その中心を担うのは、間違いなくアンソニー・ジョシュアその人でしょう。



しかし、同時に、新スター誕生、と諸手を挙げて喜んでていいのかな、
という気持ちにもなりました。


だいぶ昔ですが、海外のフォーラムで、欧米のファンが、軽量級のボクシングを好まない理由について、
語っているのを見たことがあります。


軽量級のボクシングは、パンチ力が足りないから、防御がいい加減で、打たれることに対し、鈍感だ。
少々打たれても、打ち返せば良いという発想で闘われているから、質が低い。
ああいうデタラメなものは、ボクシングを衰退させる。発展性がない。それを見るのが嫌なんだ。


概ね、こういう趣旨の意見だったように記憶しています。
偏見やな、と思いましたが、部分的には当たっているのかも、と今にして思ったりもします。

今日の試合を見ながら、この記憶が甦ってきたのは、軽量級ボクシングのそれとはまた違った方向で、
現在のヘビー級ボクシングもまた、同様の問題を抱えているのではないか、と思ったからです。


現在のヘビー級は、あまりにも大型化しすぎて、クリチコ兄弟がキャリアの前期後期で見せた、
種類の違う限界に、その弊害が出ているように思います。

キャリア前半、体格とパワーで相手を圧倒していたクリチコ兄弟ですが、ひとたび攻勢を凌がれたら、
大柄な体格故に「燃費」が悪い欠点を露呈し、逆襲を受けて敗れる、という試合がいくつかありました。

それ故、キャリア後期において彼らは(ことにウラジミールに顕著ですが)相手との体格差を生かして、
クリンチ、揉み合い、のしかかりによって危機を回避し、体力を温存する試合運びを続けてきました。


そのウラジミールが、タイソン・フューリー戦に続き、自分と同等の体格を持つジョシュアに敗れたことは、
正しく彼の限界そのものでした。ボクシング以外のことをやって、休める時間帯が確保出来ず、
それ故に、フューリー戦では疲れから打たれる頻度が増し、ジョシュアの攻勢を受けた際も、
防御の質を維持出来ず、打たれてしまった。

それはつまり、体格面において優位であるか否かが、勝敗に大きな、大きすぎる影響を及ぼしている、
その証左であるように見えました。


ジョシュアとクリチコは共に、現状のヘビー級のなかでも、抜きん出た大柄な体格に、
膨大な量の筋肉をまとっています。
あの体格で、傍目にまったく「遅く」見えないことは、それだけでまさしく驚異です。

そして、その攻撃力、パワーは互いの耐久力を越えていて、同時に膨大な体力の消費を伴います。
それ故に、試合の流れから見れば唐突な印象さえある、攻勢をかける決断、タイミングにより、試合の流れはあっという間に一転します。

そこに、ボクシングのスリル溢れる魅力を感じる反面、過剰に、肥大していく一方の肉体「のみ」が
勝敗の要因、その大半を占めるのだとしたら、そこに「発展性」はありえるのだろうか、と思います。

まあ、そんな硬い話ではなくても、そこに「ヘビー級が動くが如く、ボクシングは動く」とされた、
ヘビー級の栄光が再現されることはあるのだろうか、と。


アンソニー・ジョシュアの今後が、あの見事な、見事すぎるほどの肉体からくる優位性のみならず、
ボクサーとしての心技体を伴った形での成長と共にある、真の栄光であってほしい。
彼にはそれを実現する、ボクサーとしての素質も充分にある、と思うのですが。







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久田戴冠/大沢再起/またも恣意的な?/関係悪化/唯一無二

2017-04-25 13:04:05 | 関西ボクシング




先の金曜日は、府立地下に行きたかったのですが、残念ながら行けませんでした。
堀川謙一vs久田哲也の日本ライトフライ級タイトルマッチは、過去2敗の久田が判定勝ち
BoxingRaiseの動画配信で見ましたが、なかなかの好試合でした。

序盤、久田が右の強打を狙い、堀川はそれを凌いでボディから攻める流れ。
重心を低めにして入り、攻め上げてくる堀川に、久田が左右を合わせると、
堀川も上下にパンチを散らして対抗し、久田は逆にボディを狙う。
攻防の切り替えが共に鋭く、正確。レベルが高く、日本タイトルに相応しい内容。

4回と6回、堀川がバッティングか何か、判然としませんでしたが減点を2度取られ、
双方の応援団が、リングを挟んで言い合いになる場面もある中、
7回早々、久田が出て左フックをヒット。堀川をロープ際に追って追撃の連打。
久田が攻め、クリンチに出ようとした?堀川が前にのめって倒れ、これがダウンの裁定。

ダメージによって起こったダウン、と見た裁定なのでしょうが、ちょっと微妙にも思えました。
難しい判断ではあったでしょうが。

試合内容自体は接戦だったと見ましたが、減点ふたつに加え、このダウンがあり、
採点上では、はっきり差が出ました。
久田は三度目の対戦にして、初めて堀川に勝利。日本タイトル獲得となりました。

堅実な技巧と共に、パンチの威力も増している印象の久田は、拳四朗との対戦が流れ、
気の毒な面もありましたが、その代わりに、早々にこれまた闘い甲斐のある相手、
堀川との試合がセットされ、見事に勝利しました。

世界上位、というか王者が国内に多数いる階級で、これからさらに上昇して欲しいところですね。
見応えのある試合ぶりでした。堀川にも拍手したい内容で、出来れば会場で見たかったですが。


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大沢宏晋、再起戦は6月4日、堺で
相手はWBA15位のエクアドル人、フリオ・コルテス。13勝11KO無敗。
けっこう、手強いところを選んだような印象です。実際は見てみないと、ですが。

日曜日、刈谷の会場で、大沢の姿を見かけました。
大沢に敗れたのを最後に、8連続KOで王座に駆け上がった坂の姿は、
彼の目にはどう映ったのでしょうか。

あの熱戦のあと、両者はスパーリングを何度もやるなど、交流があり、
大沢が坂にいろいろアドバイスをする、という関係にあると聞きました。
闘う男の友情、素晴らしいですが、同時に、再戦を見たいという気持ちもありますね。
まあこれは、ファンとしての勝手ではありますが。


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土曜日、府立地下の試合で、リング渦が起こりました。
OPBF王者、大石豊が最終回TKO負けで王座陥落、ダメージ甚大で緊急搬送されたと。
幸い、開頭手術には至らずとのことですが、引退の方向と報じられています。

これは実際に見ておらず、動画も見当たりません。
ただ、伝聞ですが、見るからに深いダメージを負っていると見えたにもかかわらず、
陣営が棄権せず、レフェリーも試合を止めず、結果として余計に打たれた選手が、事故に遭った。
非常に恣意的なレフェリングであった、という見方がある、ということです。

少し前にも、WBOアジアの試合で、どう見てもまともなクリーンヒットで日本の選手が
倒されたにもかかわらず、平然とスリップダウンの裁定を下した例がありました。

結果を知っている試合を、ネットの動画で見て「え-!」と声が出ることなど、
普段はほとんどありません。笑い事では済まないような、常識外のトンデモ裁定でした。

数年前から、一時期実現していた正常化への流れが止まり、逆行しつつある、と
折に触れて感じることがありましたが、全体的にはマシになりつつあると感じる反面、
時にこのような、恣意的な裁定、試合運営が依然として行われているのも事実です。

広く取り上げられたり、問題視されたりはしていないようですが、暗澹たる気持ちになります。
何とか、再び正常化の流れに戻ってほしいものですが...。

タイ陣営側の撮影と思われる動画がありました。
ラスト2つのみで、画質も良くないですが、ことの次第はだいたい見られます。


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一時、関係良好と言われたプロアマの間で、またこんな問題が。

なんというか、いかにも昔懐かしいプロアマ関係、という感じの話題ですが、
こと少年ボクサーたちの話で、大人同士が揉めているというのは、どうにも気持ちの悪い話です。

どちらがどう、という断を下せるほど、事情を詳らかに知っているわけではないですが、
なんとか、風通しの良い関係を構築することは出来ないものですかね。
東京五輪という大イベントを控え、プロアマ協力の元、ことに当たってもらいたいものですが。


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高視聴率獲得、なんだそうです。

数字と中身が釣り合わない、なんていうのは何の世界でもあることでしょうが、
正直言って、ここまで来ると理解不能です。
ボクシングファンとしての勝手な気持ちを有り体に書けば、
大勢に見てもらいたいという気には、まったくならない試合でした。

そして、どれだけ良い数字が出ようと、それが発展的な何事かに繋がるかというと、
そんな期待はするだけ時間の無駄、というのが現実です。私はもう飽きました。

試合前後の「話題」という、いわば幻の世界に棲み続ける井岡一翔は、
ある意味では確かに、唯一無二の存在として、永遠に記憶されるのかも知れませんね。


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歴戦の王者を圧倒 坂晃典、8連続KO勝ちで戴冠

2017-04-24 18:48:58 | 関西ボクシング



昨日はある縁から、早々に名古屋、というか刈谷にて観戦する予定を立てていました。
その後に、大阪でのダブル世界戦が決まったので、ちょっと困ったなと思ったりもしましたが、
結果として、非常に爽快感のある観戦となりました。


歴戦のキャリアの末に、ついに日本王者となった...のみならず、
初防衛戦で元世界王者、下田昭文をも下した中部の雄、林翔太に、
関西期待の強打者、坂晃典が挑む、日本フェザー級タイトルマッチ。

阿倍野区民センターで、大沢宏晋との熱戦に敗れて以降、7連続KO勝ち。
地元大阪はもちろん、東京から山口まで、日本全国KOの旅、とでもいうようなキャリアを重ね、
その全てをノックアウトで飾ってきた坂は、その成長の跡を、中部のリングでも見せつけました。


初回、いつもよりやや左を下げ加減?で、林の右を引き出そうという構えの坂。
本人にしたら軽めの、しかし充分威力もありそうなジャブを連発。
力み無く出るボディブローがそれに続き、早速ペースを掌握。
初のタイトル挑戦にもまったく臆さず、リラックスしていて、冷静でした。

対する林は下田戦同様、序盤は抑えて立つのかと思ったが、ジャブを立て続けに食い、
ボディも打たれて、そういう余裕はなくなったか、やや前に出て右を返す。
しかし芯でヒットは取れず、さらに打たれ、早々に顔が赤くなる、劣勢のスタート。

2回、坂がさらに深く踏み込み、ボディを続けてヒット、上下に左、右も伸びる。
林は右瞼をヒットによって切り、さらに苦しい。

3回、林は揉み合いで坂を跪かせ、次は軽く投げて倒す。
直後、コーナーで右手を軽く上げる。どういうつもりか。冷静さを失っている?

少し戸惑った感のある坂に、林が右をヒット、攻め込むが、坂が逆襲。
打ち合いになるとパワーの差は歴然。ワンツー、右を決め、ダウンを奪う。痛烈だったが林、立つ。
しかし坂が追撃、左が決まってダウン、レフェリーが止め、TKOとなりました。


上昇中の坂の勢いが、歴戦の王者、林を圧倒した一戦でした。

林翔太の試合は、名古屋で観戦することが多かった頃からよく見ましたが、
正直、タイトル獲得となると、ちょっと難しいかなと思っていました。
それが王者となり、初防衛戦で下田を下し、次が日本1位の坂という、
王者として堂々たる防衛ロードを進んできたことは、大いに称えたいと思います。

しかしその王者をも、序盤から圧倒してしまった坂晃典は、
こちらが期待した以上に鋭く、かつ骨太な強さを身につけていました。
緊張も力みもなく、最初から冷静で柔軟で、なおかつパワーも充分でした。
これまで、敵地のリングであっても堂々と闘い、倒して勝ってきただけのことはある、と
納得させられる強さでした。

ある意味、今がボクサー人生の中で、一番滑り足の良い時期なのかもしれません。
今後はさらに上を目指すために、国内上位との対戦などで、その実力を問われるでしょうが、
勝ち負け以前に、どこへ出しても恥ずかしくない、魅力的な選手です。

細野、竹中、或いは盟友でもあるという大沢宏晋との再戦など、
楽しみなカードもたくさんありますし、今後にさらなる期待をかけたくなる、新王者の誕生でした。




動画紹介しておきます。
水野拓哉vs大里登戦のハイライトも最後にあります。
数日で消えますのでお早めに。





しかし、なかなかにたいがいな実況ではあります。
止めてしまったぁー、やないでしょうが...無茶苦茶ですわ、ホンマに(^^;)




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確かにアンフェア、されど自身も不調 大森将平、前王者に返り討ち喫す

2017-04-23 23:03:09 | 関西ボクシング


今日は名古屋遠征、刈谷にて観戦しまして、府立には行きませんでした。
心の片隅には、ハシゴかけたろか、という気持ちもなくはなかったのですが、
前日にマーロン・タパレス計量失格、王座剥奪の報を知り、その気持ちは萎えてしまいました。

ということで帰宅後、録画を見終えましたが、当然、色んな意味で苦い感想です。


計量失格した王者の試合は、世界でも、日本でも、色々と過去にありました。
アランブレット、ワンディー、ノーウッド、パーラなどなど、思いつくだけでもこれだけ。
古くは名王者チャチャイ・チオノイも。

この中で、計量失格後、試合当日に何ポンドまで、という縛りをかけて
行われたのは、知る限りではパーラと坂田健史の三戦目だけではないでしょうか。
海外ではリカルド・ロペスとロセンド・アルバレスの再戦で、アルバレスが失格し、
当日115ポンドまで、という縛りの元、試合が挙行されたと覚えています。

計量で体重が合わない選手同士を、グローブハンデもなく闘わせる。
しかも、失格した方が、試合当日まで好きなように食事をし、体力を削らずにいる状態で。
どう見ても、釣り合いが取れない話です。正しく暴挙だと思います。

いい加減、世界的なルール整備が必要だ、と、もう10年以上前に書いた記憶が
おぼろげにあったりしますが、ホントに何も変わっていないことには、溜息しか出ません。


そして、大森将平は雪辱を期す一戦を、その条件で闘わざるを得ませんでした。

試合全般を通じて、大森のパンチがまともに入っても、タパレスの耐久力がまさり、
ダメージあったと見えても、回復が早いのに対し、大森は打たれるごとに弱り、
確実に削られていきました。

単純に「アンフェア」と言いたくもなろうというものです。
ただでさえパンチの威力に秀でた相手、しかも一度敗れた相手です。

しかし、同時に、試合開始早々から、あまりにも良いときの大森将平とは違う、
動きが硬く、縮こまっていて、パンチも伸びない。これはどうしたことか、と見えもしました。

序盤は丁寧に外すこと優先、だったのだと思います。
それは良いのですが、リーチを生かして突き放すストレートが伸びず、
タパレスのリターンパンチが届く位置取りで、ガード自体は心がけていたものの、
やはり打たれる頻度が高く、5回の好機も反撃されて逃し、7回は効果自体が乏しく。

10回のダウンで、陣営がタオルを入れない、異常な判断に驚かされたのち、次で試合は終わりました。

もちろん、条件が違う試合だったことは前提です。
しかし、大森将平の闘いぶり自体にも、早々から不調の影が色濃く見えたのも確かでした。

大森将平の今後はどういうものになるのでしょう。
不運、悲運であったことだけではなく、彼自身の現状にも、厳しいものが見えた、
二重の意味で苦く、重い試合となってしまいました。残念です。


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井岡一翔vsノックノイについては、実力的には確実に差がありましたが、
いつも選んでいるような相手とは、ちょっと「寸法」が違ったかな、という印象でした。

いつもは、井岡が相手の距離の僅か外に立ち、そこから相手を前で捌く、という流れが作れる、
そういう距離の選手を厳選しているな、という印象で、その寸法に収まるならば、
ファン・カルロス・レベコ級の相手まではOK、という基準なのでしょう。

しかし、今回の相手、腕の長さ自体はともかく、肩幅が想定より広かったかな、と。
丁寧に城攻めをする井岡に対し、勝ちには届かない程度の反撃が出来たのは、
その辺に、若干読み違いのようなものがあったからかな、と見えました。
もちろん攻撃力には不足あれど、細かい巧さや粘りがあった、ノックノイの健闘でもありましたが。


しかし、両者の攻防自体もそうですが、単に「絵」として、世界どうこうという
試合には見えませんでした。困ったことではありますが。

ノックノイは、普段よく見る「噛ませさん」的な、風呂上がりのおじさん風ルックスが
なかなか味わい深かったですね。
あれで61連勝、12年間無敗、無冠の帝王...以前も少し書きましたが、
往年のマービン・ハグラーも下駄履いて逃げ出すような触れ込みと相まって、
なんとなく愛着がわいてくる選手でありました(笑)



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ロングの左伸び、インファイトにも進境 久保隼、セルメニョをTKO

2017-04-09 18:13:00 | 関西ボクシング



今日は会場には行けず、さいわいにも生中継されたTVを見ておりました。
BSフジでも放送されたので、全国でも多くの方々が、王座奪取劇を見られたことでしょう。


試合としては、序盤から久保の得意な距離で、彼の良さが出る展開になりました。

ネオマル・セルメニョは技巧で鳴らすベテランですが、立ち上がりから見るからに遅く、
攻防の切り替えに切れがなく、打ったあと素早くバランスが戻らない。

右ストレートをリードに入るも、踏み込みにスピードがなく、インファイトが得意でもなさそうで、
久保にしたら、ジャブがやや甘い欠点を露呈せず、左ストレートを伸ばして当てられる展開。

左ストレートの威力にはなかなかのものがある久保は、左を当てて先制。
上にカウンターを合わせ、踏み込んでボディにも突き刺す。

3回、久保が左ボディアッパーを決める。セルメニョの表情が早くも歪む。
4回、セルメニョ右目下に傷。
久保コーナーから「左を流すな、切れ!」良い指示が飛ぶ。
直後に、その通り、切るような左を決める。

6回、久保に余裕が見える。左ヒット。セルメニョ左グローブのテープ剥がれる。
しかし再開後、久保がボディ攻撃で打ち勝つ。インファイトに進境が見える。


このまま押し切って圧勝か、とさえ見えた7回、まさかの、というか、怖れていた展開。
セルメニョ、少し打つタイミングを変えた?右ロングが決まり、久保止まる。
セルメニョが猛攻、右連発、久保がダウン。
再開後もクリンチに持ち込めず攻められるが、なんとかゴングへ。

距離を取ることに防御を依存する久保にとり、間が詰まり、手数が多い展開になったら危ない、と
思っていたパターンが現実になり、これはまずいと思ったが、ここが若さか練習量か、久保は崩れず。

8回、セルメニョ出るが3分続かない。久保が左当ててペース奪回。
9回は久保が警戒しつつ要所で左を決め、10回はセルメニョが出るが、この回終了後、棄権。
久保がTKO勝ちで新王者となりました。


久保の勝因は、従来見られた左ストレート、アッパーの威力を生かして、
長い距離での攻防を続けられたことだと思います。
そして、見るからに苦手だったインファイトにおいても、左アッパーを中心に打ち勝ちました。
この辺には、これまでの試合からの進境が見えました。

セルメニョが久保と同じく、インファイトが得意なタイプではなかったにせよ、
長年のキャリアは伊達ではないし、出てきたらここから綻びが...と心配でしたが、結果として杞憂でした。
それどころか、逆にダメージを与え、優勢だったのですから、これはもう、脱帽するしかありません。


ただ、セルメニョの現状もまた、見ていてちょっと寂しいものには映りました。

上記のとおり、試合開始の時点で、動きに切れがなく、序盤から口が開き、息が乱れていました。
次の試合も来日して...という話があったという件も含め、おそらく油断があったでしょうし、
それがなくてもあまりにスピードがなく、攻防の切り替えも鈍い現状では、
和氣慎吾、久我勇作といったところと闘っていても、厳しい展開が待っていたことでしょう。


ただ、自らの良さを生かし、弱点もある程度まで克服してきた久保の闘いぶりは、見事なものでもありました。
左ストレート、左アッパーの威力は、これまでの試合でも見られましたが、
当然ながらこれまでとは違う重圧のあっただろう一戦で、自分の力を出し切ったことには、改めて脱帽です。

試合後、本人は小國以載やレイ・バルガスの名を出して、今後への意欲を語りましたが、
おそらく次に対戦することになろう、指名挑戦者ダニエル・ローマンらとの対戦で、
真価を問われることになるでしょう。
今回は露呈しなかった弱点にしても、例えば長谷川穂積を破ったときのキコ・マルティネスのように、
インファイトの専門家、というような相手だったら、さらに厳しい闘いだったろう、とも思います。

しかし、今回いかに「手が合いそう」な相手だったとはいえ、予想しろと言われれば、
当然不利だと見えた試合を、思った以上に堂々と闘い抜いた久保隼は、
これまでとは一段、二段上のステージに飛躍したように思います。
ある意味、小國以載以上の、望外の王座奪取、お見事でした。



※しかし、採点がセルメニョのリードだったとは驚きました。どういうことなんでしょうかね。
私はラウンド数で7対3でしたが。妙な感じですね。


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またも、役者に見合わぬ舞台 井上尚弥、ビッグマッチ決まらず

2017-04-06 21:36:24 | 井上尚弥



5月の有明2デイズ(誰ぞのライブみたいですが)の一環として、
井上尚弥の防衛戦が決まりました。相手はWBO2位リカルド・ロドリゲスだそうです。

相手次第では、即日何か記事を書いていたかもしれませんが、相手の名を知って
まあええか、ということで、今頃ですが簡単に。


記者会見では記事の通り、ザキヤノフやアンカハスとの試合が締結寸前まで行った、
次の試合では米国からオファーが、という話が盛りつけられていて、
相手のロドリゲスのことは後回し、という感じです。

この辺については、語り手が大橋秀行ということもあり、こちらとしては
「どこまでホンマやら」としか思えません。
まあ、話半分としても、最低限悪い話ではないか、くらいですね。
良い話やなー、と喜ぶ気持ちは、ゼロに近いです。

まあ、仮にこれらの「盛りつけ話」が全面的にウソではないにしても、
結局はプロモートとマネジメントの相反する権益を不当に独占する「会長」に過ぎない
大橋秀行の立場が、これらの話を積極的に推進するものでないことは、容易に想像がつきます。

話の存在自体は事実としても、それをどう扱うかについて、彼が何かを言ったのかどうか
記事では微妙な印象です。これが、自分の権益を削ってでも、井上尚弥の国際的キャリアを
積極的に構築していく、とでも言ったのならまだしも、こちらとしては「ああ、そうですか」で終わりです。

これが欧米の有力ボクサーだったら、自分の望む大きな試合を組んでくれないマネージャーや
プロモーター相手に、それこそ裁判沙汰になっても契約解消を求めるところやないか、と思います。
井上尚弥のようなレベルの選手ならば、実際に起こりうる話でしょう。

しかるに、日本ボクシング界の「安穏」は、既得権益者をそのように責めることはありません。
何とも言い難い感情を持ちますね。


相手のロドリゲスは、少し前まではWBOの5位だったと思いますが、
2月に「挑戦者決定戦」で15位くらいの選手をKOして、ランクが上がった模様です。

専門誌でそんな記事を見て、動画をその時に見てみましたが、
小柄で前に出る選手、ボディ攻撃が執拗で、パンチはそこそこ、ないわけでもないが...
16勝5KO3敗とかで、なるほどそのくらいかな、と。
過去にダビ・カルモナに2回負けているらしいですが、多分足使われたんやろな、という感じです。

もちろん、油断して隙見せて、となればいかんですが、井上尚弥を攻略できそうな選手には見えません。
井上の側に不調があったりした場合、アタマから来られて持て余したり、粘りを許したり、
という展開まではあり得るでしょうが。

まあ、想像した中で、最高と最低のちょうど真ん中、やや下かな、という相手、でしょうか。
これより酷い選択肢も想像しましたが、そうはならなかったわけですし。


しかし、WBCタイトルを巡る情勢が、いよいよ115ポンド級の活況を独占する形になりそうで、
そこからいつまでも無縁のまま、井上尚弥が闘い続ける様を見るのは、何とも惜しい、と改めて思います。
この試合に勝った先に、米国リングでの「参戦」があってほしい、と切に願いますが、はてさて。


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勝機を生かせるか/不安も残る大勝負/引退と卒業と夢/「ほっそん」も引退

2017-04-05 17:38:18 | 高山勝成


いっぺんにあれやこれやと発表があったこの週明けですが、
次の日曜にはもう、世界戦があったりと、一気に賑やかな春のボクシング界です。
とりあえず、手当たり次第に触れていきたいと思います。


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ということで9日、日曜は府立でネオマル・セルメーニョvs久保隼戦です。
この試合は観戦予定が立っていません。当日行ければな、と思っていますが。

以前も少し触れましたが、セルメニョの直近三試合、たぶん中国のプロモーターと契約しての試合ですが、
YouTubeで見た感じ、全盛期は残念ながら遠く、ずいぶんスローになったなぁ、という印象。

技巧派のボクサータイプなので、インファイターに距離を詰められるのが苦手な久保には、
基本的には手が合うタイプかな、と。
つまり、久保が苦手なことを積極的にやる相手ではなさそうなので、
あとは力と技を、互いの距離で比べ合う、という展開で、久保がどこまでやれるか、です。

離れた距離での攻防なら、久保の左ストレート、アッパーは一定以上の威力を発揮します。
セルメニョは強打者ではないが、巧さと経験、精度では上か。
予想しろと言われたらセルメニョ有利でしょうが、久保にも勝機はあると見ます。
その勝機を逃さず、生かし、勝利へと繋げる試合運びが出来るかどうか、ですね。

TV放送は関西テレビ(関西ローカル)のみならず、BSフジでも放送あり。
一応、全国で見られます。
あと、中谷正義vsゲーオファー、小西伶弥vs谷口将隆はネット配信されるとのこと。

民放BS放送やネット配信などは、今後もどんどんやってもらいたいですね。有り難いことです。


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5月20日有明、村田と拳四朗に加え、比嘉大吾の世界初挑戦も決定
世界戦は日テレ興行、山中慎介の防衛戦と一緒なのかと思っていたら、早かったですね。
(比嘉の試合についての過去記事はこちら

初防衛戦のファン・エルナンデスに指名挑戦者として挑むわけですが、
以前動画を貼ったエルナンデスの、タイにおけるKO勝ちの快挙は実に見事なものでした。

ナワポーンの馬力に押され気味だったものの、しっかり動いては当て、
左アッパーの好打から一気の攻勢でのストップ勝ち。
ミニマム級時代より、当然ながら身体が出来ていて、安定感があり、攻撃の威力も見えました。

しかし、矛盾するようですが、フライ級でパワーのある相手と対すると、
ちょっと押される傾向も、今後見えてくるかな、という印象でもありました。
問題は比嘉大吾が、そのレベルの攻撃の質量を見せられるか、ですね。

一発の威力のみならず、連打の組み立てに理屈が見え、厚みのある攻撃ボクシングで、
浅いキャリアのうちから韓国やタイでKO勝ちし、日本のリングでもOPBF王座を獲った比嘉ですが、
これまでのレベルにはない足捌きと、左の打ち分けが出来る、世界上位のメキシカン相手に、どこまで迫れるか。

きつくいえば、比嘉のWBCランキング上昇は、対戦相手の質からいえば「嵩上げ」の印象があり、
一年ぶん、3~4試合ぶん早いかな、と思いますが、その試合内容は魅力的で、将来性を感じます。
陣営が、情勢を鑑み、勢いのある内に勝負に出るのも、わかるような気はします。

もし、この一戦を突破すれば、比嘉にとり、大きな飛躍の一戦になることでしょう。
不安も期待も同時にある、比嘉にとっては文字通りの「大勝負」ですね。


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世界戦発表の報と同時に、高山勝成「プロ引退」の表明がありました。

興行日程のみならず、発表やら会見やらもバッティングするのかと、思わず苦笑してしまいますが、
歴戦のキャリアの末、プロ引退、アマチュア、というかオリンピック・ボクシングに転身希望とのこと。

実際やれる話か否かは知らず、いかにも高山らしいな、と思います。
30を越え、やっと高校生くらいには見えるようになってきた幼い風貌とは裏腹に、
その心は、長きに渡って培ってきた攻防一体の、質の高いリズム・ボクシングへの誇りと自信に
満ち溢れていて、それを新たな世界で披露したい、という思いなのでしょう。

私は、彼が彼の望むものを追う、その生き様に、長年に渡って心を惹かれてきました。
最近は残念に思う試合も多かったですが、高校卒業という節目もあり、ここで一区切りつけて、
新たな夢を追うという決断をしたことには、なるほど、と思う部分があります。


しかし、様々な事情はあれど、昨日今日考えて出した結論では無いでしょうから、
それならもう少し早く決断し、表明しても良かったのでは無いかと思いもします。
そうなっていれば、福原辰弥の世界戦に「暫定」の文字がつかずに済んだろうに、とも。

拳四朗の試合キャンセルやら、試合日程の重複もそうですが、傍目が思うのとは別の事情があるにせよ、
物事、もう少し適切な時の配置があればなぁ、と溜息が出る、そんな話が多い昨今ですね。


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この日曜日、もうひとつの引退。
細川貴之のラストファイトが行われます。

六島ジムの興行は、名城信男の試合をお目当てに、何度も足を運んだものです。
当然、細川の試合も、思いの外、数多く見る機会がありました。
体格やパワーで不利な試合も多かったですが、常に彼なりに懸命に闘い、
そのキャラクターも相まって、どこか気になる選手でもありました。

この日は観戦には行けませんが、長年お疲れ様でした、とファンとして伝えたい気持ちです。


かつてトレーナーを務めた藤原俊志さんのブログには、引退を記念?して、
ほっそんギャラリー」とでもいうべき、写真の数々がアップされていました。
勝手にですがご紹介させていただきます。ただただ、愛を感じますね。



コメント (6)
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不入りの地下にて、健闘を見た 川口勝太、猛追届かず

2017-04-04 19:37:17 | 関西ボクシング



先の日曜日は、府立の地下にて、昼と夜の二部興行がありまして、
私は一部の方だけを観戦しました。
経過と結果はこちらに詳しいです。


OPBFスーパーフライ級タイトルマッチは、王者レネ・ダッケルに川口勝太が挑みました。

関西の興行はけっこう見ている方で、川口の試合もたぶん、2、3回は見たことがあると思います。
その頃はまだ、タイトルどうということではなく、若手の頃だったせいもありまして、
そこから世界ランカークラスに挑んだりした試合ぶりを見てはいないので、
今回は久々に見る試合で、タイトルマッチということもあり、大丈夫かな、という感じで見ていました。

ダッケルは井上拓真に敗れた試合で、一度井上にいいの当ててぐらつかせた印象が残っていました。
翁長呉央戦は見ていませんが、競った試合をダウン奪取で抜け出して勝った、というから、
一発もあろうし、勝負強さもあるのだろうな、と思えば、余計に楽観的な予想は出来ませんでした。


序盤から、両者似たパターンの攻撃を応酬。
左ジャブ、右ストレートのワンツー。右ボディ。左フック返す。右フックはスイング気味、ミスも多い。
これで両者の体格もほぼ同じくらい。
精度で若干、ダッケルがまさり、川口は手数でそれをカバーする、という流れ。

序盤4回はイーブンか、ややダッケルか。
中盤、川口が先手で攻め、ダッケルは雑なミスも目立ち始める。
しかし7回はダッケルが右クロスを正確に当てる。川口右アッパーから反撃。

終盤、両者苦しい展開も、闘志を見せて打ち合い。ダッケルがワンツー、右のヒット。
11回ダッケルが連打で攻め込む。川口は右の相打ちを狙い、ダッケルがバランスを崩すが、ヒットは浅い。

ラストを残して、小差ながらクリアにダッケルのリードかと見えましたが、
このラスト、川口が猛追。左から入って右、連打で攻め、ダッケル後退。
ダッケル右カウンターするが、川口が左ダブルを決め、さらに出る。
応援団の声援がピークに達する中、ゴング。

判定はドローか、ややダッケルか、と見えましたが、川口の(私には予想以上の)奮闘が光りました。
出血にも悩まされ、終盤は疲れもダメージもあったにもかかわらず、見事な踏ん張りでした。
普通でも、ラストラウンドにあれだけ手を出して攻めるだけでも、相当なことだと思います。


この興行はご存じの通り、拳四朗vs久田哲也の好カードがメインに組まれていて、
私もチケットを発注したのは、当然ながらこの試合がお目当てでした。
チケットをキャンセルせず、会場に足を運んだのものの、正直に言って、
川口勝太の試合については、とくに思うところはありませんでした。

しかし、メインが飛んで閑古鳥が鳴く、と言わざるを得ない入りの場内で、
川口は自身の応援団のみならず、私のような観客の目を惹き付けるような奮闘を見せました。
脱帽し、拍手したいと思います。


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その、メイン出場予定だった拳四朗は、京口紘人とのスパーリングを3R、披露しました。

アルマンド・デラクルスを文字通り「一蹴」した京口紘人の強さを、
先日、BoxingRaiseで見たばかりなので、間合いの巧さの拳四朗、パワーの京口とが、
スパーとはいえ、どういう構図を描くかな、と見ていました。

立ち上がりから、両者比較的、本気な感じ。京口がパワフルなパンチを振るい、ヒットも。
しかし徐々に拳四朗が、無駄のない足捌き、当てる間合いの良さ、多彩な左を披露。
京口が果敢に攻めるも、その攻めをほぼ外しきって、攻防を支配。
要所で左フック、右カウンターなども決め、優勢のまま3ラウンズを終えました。

インタビューでは、劣勢だった京口の方が明るい口調で
「(アマ時代の対戦から)久しぶりだけど、やっぱり成長していました」と拳四朗を称えましたが、
対する拳四朗は、快調だったにも関わらず、言葉少なく、重い口調でした。
遠目ですが、涙を堪えているのかな、とさえ見えました。


昨日、発表されたように、WBC王者ガニガン・ロペス挑戦決定を受けて、
この日の出場を、試合前二週間を切った段階でキャンセルした件については、
様々な批判もあったでしょう。

何より、興行面での損失や、その悪影響たるや。
私が座っていたサイドの客席(川口、その他の選手の応援団がいない側、いわば「一般」席)は、
実際、9割方が空席でした。
当然ながら、彼と久田哲也の試合が行われていれば、あり得なかった事態です。

本人の意志も含め、多方面に損害や迷惑を及ぼすことも承知の上で
こういう決断をしたことで、拳四朗の心中には様々な思いがあったことでしょう。

彼と彼の陣営を擁護するわけではありません。
しかし、終始うつむき加減な、彼の様子を見ていて、相反する感情も抱きました。

下向いとる場合やないぞ。とにかく、次勝てよ。何が何でも勝てよ、と。
そんな風に思いもしました。



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WBA1位に挑む、と見る他ないが 村田諒太「世界挑戦」正式発表

2017-04-03 20:57:14 | 関東ボクシング



詳らかには知らなかった話ですが、だいぶ前から話は出ていたらしい、
村田諒太の「世界戦」が正式発表されました。

まあ、色々思うところがあるというか、いろいろありすぎて、うまくまとまりません。
それはいつものことやないか、というツッコミはご容赦いただいて、とりとめもなく。



そもそも、村田諒太の挑む「世界」って、コレだったんですか、という話から。

日本人として、東京五輪以来の、ロンドン五輪金メダリストのプロ転向、しかも階級がミドル級。
これがアメリカ人の話なら、老舗トップランクを筆頭に、世界の大プロモーターが取り合いを始めるところです。
そして当然、もし然るべき試合を勝ち続ければ、その先には世界ミドル級タイトル挑戦があるはずです。

しかも幸か不幸か?今はアルファベット三文字不要の「世界ミドル級チャンピオン」で通る、
有り難いんだか迷惑なんだか?わからないような、しっかりしたお方が、頂点に立っているわけです。


過去に、村田諒太の試合について、TVで見、直に見、あれこれつべこべと書いてきました。

結局のところ、獲得至難なミドル級において、4団体王座のうち、どれか一つを獲得するという話を越えた、
事実上、唯一無二な「頂点」への道が明示された時代に、村田諒太は生きている。
その前提があらばこそ、彼の試合ぶりを、その時々の良し悪しには収まらない関心を持って、見てきたのです。

そして、その挑戦が、世界タイトルマッチに届く前に、挫折として終わったとしても、
真に険しい頂に挑んだ彼の闘いは、千金の価値を持つものであっただろうし、それを称え、労い、敬っていたことでしょう。



しかし、村田をどうこう言うのではなく、想像の範囲内で、言っては悪いが、一番嫌な形になってしまいました。

日本日本と言わずとも、世界的にモラルの荒廃著しいボクシング「業界」では、よくある話でもありますが、
少し前、WBA会長自身が来日して「ホザいた」話を、見事にひっくり返したことなども思うと、
いったい何がどうなってこないなってしまうのやら。もはや、常人の理解を超えています。



この試合は「世界挑戦」ではなく、その前段階の、挑戦者としての資格を問われる試合である。
村田諒太が、プロで初めて、世界的実績を持つ相手、「WBA1位」(けっして「世界1位」ではない)に挑む。
それ以外の意味は、一切読めない、読むべきではない試合です。

そして、そのことだけでも充分、偉大な挑戦のはずです。
かの竹原慎二とて、もしランカー時代に、ホルヘ・カストロに挑戦するより先に、
ジョン・デビッド・ジャクソンやウィリアム・ジョッピーのような、WBA上位の選手と
対戦せねばならなかったとしたら、タイトル挑戦に到達し得たでしょうか?

今回対戦するハッサン・ヌダム・ヌジカム→アッサン・エンダムの現状が、例示した対象と比べ、
どういうものなのか、その評はさまざまにあるでしょうが、世界上位との対戦が多く、
起伏の激しい試合内容を見せているものの、充分に強みも持った選手でもあります。
村田諒太にとっては、充分に難敵、強敵でもあると思います。単純に、見てみたい試合、でもあります。

この相手に勝てば、まだ不足もあるかもしれませんが、それでも、世界の頂点に向け、
一歩前進、接近、挑戦に名乗りを上げる、と言いうる勝利となります。
しかしそれを見て、称えて敬うよりも先に、冠だけが先に「落ちてくる」ような話です。


ゲンナディ・ゴロフキンとて、そもそもの最初は「第二王者」からのスタートでした。
村田諒太の挑戦が、ゴロフキンの「その後」に、少しでも迫れるようなものになれば、幸いではあります。

しかし、普通に見て、強敵相手の挑戦であると見られる試合なのに、それに足らずと、
もう一段上の看板を掛け、お題目をつけたところで、結局、この試合は、実際の価値以下に軽んじられてしまうのではないか。

村田諒太のプロ転向時、世はもっと騒然となり、その耳目を彼に向けたのではなかったか。
その彼が、プロの世界で「世界」挑戦まで辿り着いた。
しかし、その報に接し、沸き立つような思いのみで、心を満たすことは出来ていません。

村田諒太の勝利を願い、そのさらなる未来に対する期待を捨てたりはしません。
しかし、失われるもの、損なわれるものも、少なからずあるだろう。そう思います。


村田本人の一問一答。非常に冷静です。
この、本人の確かさについては、非常に頼もしく、感心させられますね。




コメント (11)
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