さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

彼はもう、関西リングのヒーローだ MJヤップ、強敵益田を逆転KO(動画追加)

2017-07-31 13:23:17 | 関西ボクシング



ということで昨日は、住吉区民センターにて観戦してきました。

試合順でいうとセミ、しかし実質メイン、お目当ての試合は、早々からエキサイティングな試合でした。


日本のリングで当初は連敗スタートだったものの、岩佐亮佑戦の健闘など、
徐々に試合内容の良さが注目され、14年に六島ジム所属となり、翌年から連戦連勝。
久高寛之を2度破り、ランダエタを下し、山本隆寛を強烈に倒してOPBF王者に。
マーク・ジョン・ヤップは気がつけば、堂々たるWBCランカーとなっています。

そのヤップのタイトル初防衛戦は、なかなか挑戦に名乗りを上げる選手がいなくて、
実際、王座獲得後の次戦はノンタイトルになったりもしましたが、
その後、二度日本王座獲得の益田健太朗が挑戦者に決まりました。

益田が赤穂亮との対戦をせず、日本王座を返上した際は、つまらん話やなと思いましたが、
その先に強敵ヤップへの挑戦があるとなると、話は違ってきます。
このカードは是非見ないといかん、しかも有り難いことに、場所が大阪ですから、
喜び勇んで見に行くことにしました。


試合は開始早々、両者意欲に満ちたスタート。
いきなり、ヤップが右クロスから左アッパーを上に返すコンビで、益田を脅かす。

しかし、早々の鋭い攻撃を受け、少しバランスを崩したかに見えた益田が、すぐ立て直す。
前にのめったかと思った姿勢を戻し、ぐいと踏み込んで、強烈な右フック。
これがヤップを捉え、いきなりのダウン奪取。

立ったヤップだが相当効いている。ロープに追われ、また右食ってダウン。二度目。
また益田が攻め、三度目のダウン。ヤップ立つが益田左フックで飛び込み、追撃。
ヤップ何とか外すが、体勢崩してスリップダウン。ここでゴング。
益田がこの一戦に賭ける、並々ならぬ闘志を見せつけた初回。

ところが2回、益田がやや手控え気味、手数が少ない。
ヤップはまだ腰が据わっておらず、踏ん張れないまま少しずつワンツーを出す程度だが、
益田はそれでも要警戒と見たのか、それともヤップの手を引き出す作戦だったのか?
右単発、終盤は少し攻めたが、もっと行かないと、と思ったのが正直なところ。

3回、ヤップが少しずつだが落ち着いてきた印象。益田は右ロングを決めるが、
ヤップが右アッパーをヒット。このパンチに手応えを感じたか、ヤップはコンビネーションに
この右アッパーを組み込んで攻める。

4回、ジャブの応酬から打ち合いになり、ヤップが出て益田が足を使う。
ヤップが右クロスを決め攻勢。ロープ際に追い、右から左、連打で攻め立て、ダウン奪い返す。
益田立つがヤップがまた右アッパーを組み込んだコンビネーション。
益田がまた後退、ヤップ追って打ちまくる。最後は右、右、また右、左も返り、
益田がロープの下に崩れ落ち、大の字。大逆転のKOとなりました。


4回の2分59秒に試合が終わるまで、時間としては短い間でしたが、
一瞬たりとも目の離せない、濃密でスリル溢れる、物凄い試合でした。
場内は歓声と悲鳴が飛び交い、最後は大歓声に包まれました。
勝ち負け云々はまず置いて、とにかく両者に拍手です。


敗れた益田健太朗の落胆たるや、相当なものがあるかと思います。
昔のスリーダウンKOルールなら、初回で王座奪取だったわけですし、
傍目にはちょっと疑問もあった2回の自重も、理由どうあれ、結果として悔やまれるでしょう。
しかし、大阪のリング(二回目でしたっけ)でも堂々たる闘いぶりだったと思います。
この選手の試合は、大森将平や川口裕との試合などもあり、関東の選手としては
よく見る機会がありますが、いつも厳しい鍛錬の跡が見え、果敢さが伝わってきます。
今回、結果は残念でしたが、強敵相手にその力はしっかり見せてくれました。


そして勝者マーク・ジョン・ヤップ。日本の上位陣にとって脅威の「輸入ボクサー」と、
俗に言えばそういう表現になっていたかもしれません。
しかし、その試合ぶりは、つまらない逃げがなく、力と技で、相手と真っ向から切り結ぶ、
魅力溢れるものばかりです。
これほど続けて、ボクシングファンの心を惹き付け、揺さぶり、見事な闘いを見せる
この選手は、もはや関西リングのヒーローである、と言ってもいい、と思います。
さらには、日本のボクシングファンにとっても、と言うところまで進んでもいいのかも、と。

試合後、インタビュアーに対する第一声を「おめでとうございます」と返し(笑)
その後も日本語で何か語ろうと試みるも、すぐにモゴモゴ、となってしまう。
その人柄が滲み出るユーモラスな姿に、場内からは暖かい笑いが起こっていました。

その実力とキャラクターは、広く知られれば、人気を集めるだろうと思いますし、
何しろ試合ぶりが魅力的です。また次の試合も見に行きたい、と今から思っています。
日本の上位陣からも、どんどん挑戦に名乗りを上げてほしいと思います。
その辺はなかなか難しいかもしれませんが。


しかし、改めて、素晴らしい試合でした。
互いに強敵と知る相手でありながらも、さらなる高みを目指すが故に、
避けることなく拳を交え、結果、このような素晴らしい闘いが生まれた。
それを運良く見ることが出来ました。会場に足を運んだ甲斐があったというものです。
見に行ったこと自体を「勝った」な、と思える(笑)、そんな試合でした。


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動画発見。ご紹介します。





うーん、4回に右アッパーは出てへんなー...まあ、ええか(^^;)




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黄金の時、終わる 130ポンド級王者ふたりが引退表明

2017-07-29 21:01:41 | 関東ボクシング



世界的に選手層が厚く、ここだけはジュニアやスーパーの階級を設けて止む無し。
オールドファンの作家、安部譲二氏もそう書いておられた記憶がありますが、
このスーパーフェザーからウェルターまでのゾーンは、実際に人材豊富で、
過去の王者やタイトルホルダーの顔ぶれを振り返っても、なかなか「穴」が見つからない、
そういうのが却って珍しい、という感じさえあります。

その130ポンド級で、11度防衛の「王朝」を築いた内山高志と、
粟生隆寛の失った王座を、即座に取り返すのみならず、海外リングに飛躍した三浦隆司。
ふたりの元王者が、揃って引退を表明しました。


内山のデビュー戦からの流れは、G+でけっこう頻繁に見られました。
聞けば当時、日本のアマチュアの「パウンド・フォー・パウンド」は彼だ、とのことでしたが、
パワー充分、正統派のスタイル、そして何より、相手どうあれ丁寧に試合を組み立て、
とりあえず今勝てば良いというのでなく「先」を見据えた試合運びに、
なるほどこれは他とはちょっとモノが違う、心がけからして違う、と納得させられたものです。

クラスがクラスだけに、世界となるとわからんけど、この選手ならひょっとして...と
心中、期待していたものですが、時のWBA王者がホルヘ・リナレスだったこともあり、
あまり明るい展望は持っていませんでした。

しかし、リナレス初回KO負けの陥落を受けて、新王者サルガドに挑んだ試合では、
内山高志はその実力を十全に発揮し、世界レベルの実力を証明しました。
それ以降の堂々たる戦歴には、今更何も語ることはないでしょう。


三浦隆司については、小堀佑介戦の前後から、これまたG+やなんかで良く見ました。
この頃の試合は、なんといっても矢代義光との二試合が白眉で、初戦引き分けの後、
第二戦での壮絶なKO勝ちは、今思い出しても鳥肌が立つようなものでした。

パンチがあって、アグレッシブで、なおかつクリーンな闘いぶり。
こういう選手こそ、真のプロ、暇割いて身銭切って見るに値する選手というものだ、と
好感を持って見ていたことを思い出します。

内山高志に挑んだ最初の世界挑戦は完敗でしたが、ダウンを奪うという「爪痕」を残し、
再挑戦に至るまでの試合では、判定の試合でも中身のある試合を見せていて、
二度目の世界挑戦の試合は、勝って当然、と見る前から思わせるだけの成長を遂げていました。


このふたりのその後を語るとしたら、やはり米国での試合がかなったか否か、という話になってしまいます。

内山は米国での試合オファーが何度かあったと聞いていますが、国内の興行事情に縛られてか、
結局、実現はしませんでした。
マイキー・ガルシアやエイドリアン・ブローナーと米国で闘っていたとしたら、
その時、日本でやっているようなコンディションで、実力を十全に発揮出来たとしたら。
彼らと伍して闘えたか。或いは「粉砕」されたか。
ただ、いずれの結果であったとて、内山高志というボクサーの存在が、
より広く世界に知られ、認められたであろう、それだけは確信しています。
見果てぬ夢のまま終わったことが、ただただ残念ですが。


三浦隆司は、メキシコで一度、ベガスで一度、ロスで二度闘いました。
トンプソン、バルガス、ローマンにベルチェルトといった猛者たち相手に、
一歩も引かずに闘い抜いたサウスポーのファイターは、ひたすら誇らしい存在でした。
かつてヨネクラジムの名匠、松本清司トレーナーが語った
「世界中どこに行っても、倒して勝てるようなのを育てたい」という夢を、理想を、
そのまま体現したかのような姿は、目に眩しくさえありました。


両者ともに歴戦の疲弊を抱え、相性の悪い相手に、徹底的に警戒され、対策され、
王座を失い、奪還ならず、という試合を最後に、リングを去る決意をしました。
世界に好選手ひしめく、層の厚いクラスにおいて、粟生隆寛を加えた3人がタイトルを手にし、
それを保持し続けたあの何年間かは、まさしく黄金の時だったのだ、と思います。
少なくとも、世界戦21連続失敗(20敗1分)の暗黒の頃には、想像もしなかったことでした。

そして、どんな素晴らしいことにも、終わりは来るのでしょう。
その素晴らしいことの始まりから、終わりまでを、しっかりと見られたこと、
見せてもらえたことには、何よりもまず感謝したい、と思います。


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「鬼気」の猛攻止まず 田口良一、1位挑戦者を沈めV6

2017-07-25 19:23:18 | 関東ボクシング



こちらは日曜日、ディレイでの放送となった田口良一の試合ですが、
相変わらず「鬼気」迫る、としか言いようのない闘いぶりに、またしても圧倒されました。


ロナルド・バレラは、前回の挑戦者だったカルロス・カニサレス戦をフルに見た限り、
一定以上のレベルにあることは確かで、WBA1位のランクもまあまあ、頷ける感じ。

スラリとした体型で、好きなスタンスを取れていると、ポンポンと手が出る。
ナチュラルにパンチ力があるとまではいかないが、パワーもけっこうあるか。

しかし、対田口となると、もっとはっきり足使って動く方が良いかな、とも。
なまじ当てるのが巧いし、力もあるから「来て」くれると、田口にもチャンスがある。
そんな印象でもありました。


立ち上がりはバレラがスイッチしながら動いて当てる。強めに打ってくるパンチもあり。
さてこれを、試合のどの段階で止めて、巻き込めるかで勝敗が決まる...と思っていた
初回半ばに、田口良一の左ボディが、芯食って入ったように見えました。

バレラはここで、昨年大晦日のカニサレスのように、動いて捌くことに専念する、
という切り替えをせず、打ち合うときは打ち合いつつ...という感じの対応でした。
もっと足使える選手かと思っていましたが、試合後語った下肢の不調か、
それとも自信か、スタイル故にそうなったのか。

バレラは懐深く使って、田口のボディブローを外そうという風でしたが、
攻めのとっかかりを掴んだ田口の攻めは、そんな甘いものではなく、
左ボディをインサイドへ、或いは外から巻いて打ち分け、上に左右を返してくる。
このへん、攻めに関しては理に適っている。多少の被弾をものともせず、ぐいぐい迫ってくる。

4回あたりから、バレラがロープを背負う場面が増え、見るからに押されている。
6回は懸命に捌くも、左ボディ食って止まり、構えが落ちる場面あり。
田口も好機で、上へのパンチに精度を欠くものの、執拗な攻めは止まず。

7回はバレラが横向いて下がる。田口が攻め、今度はほぼ後ろ向きに。
田口は左フックを決めて出るが、濡れていた?青コーナー前で滑って転ぶご愛敬。
8回、バレラは最後の踏ん張り、ロングのパンチを出すが威力なし。
田口ヒットを取られながら出て、ボディ攻撃、執拗。一発だけ低いのもあり。

9回、前の回で勝負はついていたようにも思うが、田口が右クロス、左ボディ、
右アッパーと決め、レフェリーストップでした。


これで6度目の防衛となった田口ですが、過去の防衛戦の中でも、
相手の実力は多分、かなり高かったと思います。
しかし、序盤から好打し、自分のペースに巻き込んで闘えたこともあり、
強敵といえる相手を、見事に攻め落とした勝利には、率直に言って感嘆しました。

技術的にどうとか、相手と比べて理に適っているかどうかとか、
防御の問題が...というような、気にかかる部分はいくらでもあります。

しかし、ロナルド・バレラを攻略するために、田口がやれること、やるべきことは、
ジャブの槍衾で正面からか、左サイドに踏み込んで右リードからか、という、
セオリーの選択や手順云々よりも、少々打たれても攻めてボディで止める、というものであり、
その選択、というよりも「覚悟」を決め、闘い抜くこと、だったのでしょう。


昨年末、初めて田口良一の試合を、直に見て、改めてその闘いぶりに「畏れ」を感じました。
もはや果敢だ勇敢だという言葉の枠を越えた、鬼気迫る、としか言いようのない闘いぶり、
それを当然のこととして貫く、美男の拳士の姿には、理屈を越えて圧倒される部分がありました。

しかし、いつまで、こんな闘いぶりが続くものなんだろうか、と思ったのも、正直なところです。
カルロス・カニサレスを執拗に追って苦しめ、しかし同時に、自身も被弾し、捌かれ、苦しめられている。

単にダメージの蓄積がどう...というのではなく、このような苦しい闘いを強いられることを、
何よりも前提にした「覚悟」、心の構えを築き上げて闘う繰り返しは、
この白面の美拳士の心身を、相当厳しく磨り減らしているのではないだろうか、と。


しかし年が明けて、7ヶ月めに組まれた1位との試合で、彼の「鬼気」はなお燃え盛り、
相手を捉え、飲み込み、燃やし尽くしてしまったかのようでした。
相手の出方が、しっかりと割り切ったものではなかったことも幸いしたのかもしれませんが、
田口良一はまたしても、壮絶な闘いを制し、勝利しました。

1位相手にTKO勝ち、見事でした、脱帽です...と朗らかな気持ちになる一方、
そういう賞賛のみに収まらない...というか、それとは別の「畏敬」の気持ちもあります。
もっとも、それは今回のみならず、田口良一というボクサーに対して、以前から変わらず
抱いている思いでもあるのですが。


さかんに選手同士がアピールしている、田中恒成との統一戦については、
実現するものかどうかわからないですが、おそらく田口良一の心身を支えているもののひとつに、
この試合実現への意欲があることは間違いないのでしょう。

個人的には、田中恒成との統一戦を、心底から待望するというほどの気持ちではありませんでした。
しかし、またも壮絶な試合を闘っている田口の姿を見ていると、何とか勝ってほしいな、
そして、田中との試合、実現させてあげてほしいな、と思わずにはいられませんでした。


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さて、今回の興行は、前座に船井龍一vs奥本貴之戦なども組まれていて、
「むむ」(←何が「むむ」なのかはさておいて)と思ったりもしたラインナップでしたが、
結局は馬鹿をやらずに、自宅でTV観戦ということになりました。
これが土曜日だったら、「むむ」という思いを、実行に移していたのやもしれませんが。

奥本は残念ながら王座獲得ならずでしたが、河野公平の再起戦があり、
世界戦も日本勢が2勝して、まずは充実した興行であった...はずなんですが、
今回もまた、TV局の都合優先、観客無視の進行だったようですね。

なんでも、田口の試合は8時前に終わっていて、そこから京口の試合まで、
たっぷり一時間以上空いたのだとか。

先日の有明もそうですが、暇割いて身銭切って見に行ってる観客が、
なんでそんなに露骨なしわ寄せを食らわねばならんのか、って話です。
これに対して、関係者諸氏が、ファンに対して申し訳ないという気持ちにならないのか、
どういう神経してんのかな、と不思議でさえあります。


で、そこまでして、視聴率優先の番組作りをしたその結果が、あの放送です。
長谷川穂積、内山高志、田中恒成という、今考え得る中で、最高レベルのコメンタリーを
3人も並べていながら、あの実況アナウンサーの騒々しさ、くどさが全てを台無しにしていました。

煽りVTRのナレーションに至っては、正直理解を超えていますが、あくまで趣味の問題か。
あれを良いという人も、世の中にはいるんでしょうかね。もう何年も続いてるからには。



で、ラウンドごとに現れたシャッチョさんの「ゲスト解説」。
まるで自分を「ボクシングの元世界王者」だと思っているかのような解説ぶりには、
相変わらず、エエ根性してはるわ、と感心しました。

亀田興毅が元世界王者、というのは、今なら例えば、上西小百合が国会議員だ、というのと同じで、
形式上、ウソではないが何かの間違い、というに過ぎないんですが、
当の本人たちは、素知らぬ顔を作って、一生懸命頑張ってはります。痛々しい限りでありますが。

放送席のお歴々と同席することもなく(させてもらえず?)、それでもあれこれと
一人前に語っていました。まあ「また何か言うとるわ」と聞き流せばそれで良いのですが。

ただ、録画した試合を保存するため、CMカットする作業のときに、けっこう面倒なんですよね。
CMのみならず「亀田カット」をしないといけなくなるんで。
しかもインターバルが終わり、試合が始まっても、まだくっちゃべってやがるときがあって、
音声だけは、どうしても残す形になってしまうときがありましてね。
ほとんどオカルト映像です、姿はないけど声だけ残る、って。困ったものです。
TV東京さんには、視聴者に不便を強いるような人選は自重するよう、お願いしたいものですね。


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浅いキャリアで驚きの精度と強度 京口紘人、荒法師アルグメドに競り勝つ

2017-07-23 22:57:26 | 関東ボクシング



ということで先ほどまで、有り難く生中継を見ておりました。
田口の試合が先で、ディレイだったことには少々驚きましたが...。
とりあえず今日はメイン、というか、最後の試合だけ、簡単に感想。


京口紘人は、宮崎拳一戦を府立で、昨年大晦日大田区で、直に見たのは二度。
あとはTVで一回、BoxingRaiseで数試合見ています。

短期間に速いペースで試合を重ね、OPBFは決定戦でベテランに圧勝、という流れでしたが、
初防衛でけっこう強いのとやって、判定も経験済み。
もちろんすぐ世界挑戦となると...と思う反面、若手としては相当強いからなぁ、とも思う選手でした。

ホセ・アルグメドは、高山勝成戦の印象しかないですが、大柄、荒い、タフで、己を知る巧さ、
悪く言えばズルさがあり、加えて「ボクシングはアタマや」というやり口も...という感じでした。
今日の試合も、概ねそのまんまの姿だったと思います。


序盤から、締まったガード、良いフォームでしっかり構えて迎え撃つ京口。
アルグメドは左右とも、強めに振って、徐々にフェイントも見せつつ、入ってくる。

京口の良いボディが決まって、2回早々からアルグメドは少し離れて突き放したい風。
ロングのパンチを振って、クリンチしたらまた離れ、という「方針」になった模様。

京口はアルグメドの打ち終わりやミスの後を、左ボディや右カウンターで打つ。
アルグメドは手数でまさるが、ポイントは微妙、京口の正確さを見る採点もありか。

5回くらいから京口のヒットの方が目立ち始めた印象。
7回、右フックを脇腹に決められたアルグメドが後退、京口攻勢。
アルグメドはスリップダウンやホールドが目に付くようになる。

こうなってくるとそろそろ「アタマボクシング」が始まるで...と思っていたら案の定。
9回、けっこう露骨に右と頭突きを狙ってくるアルグメド、しかし京口はそれに押されたかと
見えた直後に、左フック一発、顔面へ。ぐらついたところに追撃、右決めて倒す。

アルグメド、ダメージあり、右食ってピンチ。しかしレフェリー、何故か割って入り、再開。
京口がまた右決めて、これは次で行けるかと思ったが、終盤はアルグメドが脅威の粘り。
最終回は京口がヒットを重ねるも、自身もさすがに疲れたか、足がよれて前のめりでした。

採点はちょっとだけ、見た印象より開いたのもあるかな、と思うものの、勝ち負けは問題なし。
私はというと、115-112で京口と見ました。
辛く見ても、ダウンの分だけ京口の勝ちだと思います。

実況がしきりに「最短」と言っていたとおり、デビュー1年3ヶ月、8戦目での世界奪取ですが、
そのこと以前に、この浅いキャリアで、このやりにくい相手に、自分の型をしっかり維持して
最後まで闘い抜いたこと自体が、まずは相当凄い、と思います。

最終回はさすがに乱れましたが、あの乱れがもっと早くに出ていたら、勝敗にも響いていたことでしょう。
アルグメドは、それを見逃してくれるほど、甘い相手ではないでしょうし。


最短記録云々の是非は、また別の話として、語るべき点もあるでしょう。
若いのに大したもんやなぁ、と思う反面、こんな好素材を、早々に「世界」とつく試合に出して、
大わらわでタイトルに挑ませることが、必ずしも良いことなのかどうか。
色々思ってしまう部分も、正直にいってあります。

しかし、また1人、この先が楽しみなボクサーが現れた、という意味では、喜びの気持ちがあります。
難敵アルグメドに対し、パンチの精度でまさり、強い構えを終盤まで維持して、
この試練の一戦を乗り越えた京口紘人には、大いに拍手したいと思います。



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追い上げ届かず、間に合わず 三浦隆司、ベルチェルトに判定負け

2017-07-16 15:59:09 | 海外ボクシング



ということで、WOWOW生中継を見終えて、簡単に感想です。


思った以上に、前に出ての突き放しじゃなくて、下がって回って、やなぁ、というのが
初回立ち上がりのミゲル・ベルチェルトを見た印象でした。

ワンツー、さらに左の真っ直ぐを重ねて、突き放しに来るだろうから、
それをかいくぐって、三浦隆司が左上下を当てられるか、という展開を想像していました。
しかし実際には、前に来る三浦の手が届かないところまで下がって、
右から入って左に出る、という繰り返しに徹していた感じでした。

その作戦は、結果として奏功し、三浦の強打は、出すきっかけ自体が少なくなり、
その上ベルチェルトにしたら初回早々、望外のダウン奪取まで。
このリードを土台に作戦を回された、という意味で、三浦にとっては痛い、痛い失点でした。


3回までは上体が止まり、前にのめり、足が付いてこず、音無しだった三浦も、
4回くらいから身体がほぐれ、単発ながらヒットも出始めるが、
ベルチェルトが最後10~15秒くらいに手数を出してまとめる、という繰り返し。

中盤、ボディ打ちの布石だったらいいのだけど、という感じの、三浦の空振りが目に付く。
けっして、ヘッドハンター傾向あり、という選手じゃないのだけど、ちょっとこれはよろしくないなぁと。
その上、打ち合いになっても、ヒット率、精度でやはりベルチェルトが上回る印象。


しかし8回、ボディから攻勢、アッパーを合わされたかと思ったら、打ち勝っていた。
9回は左ボディが数発入り、ベルチェルト目に見えて失速。
ていうか、よく倒れんものやなー、さすがはチャンピオン、という感じの踏ん張りでもあり。
10回など、ベルチェルトの反撃の手が止まり、足だけという感じ。


11回、セオリーとしてここで踏ん張れるかどうか、でしたが、三浦の左も決まるが
ベルチェルトが奮起し、連打からヒット、ボディも決める。
12回も同様、三浦も少し止まる場面あり。

判定は3-0。個別の数字の話をすれば、ボディブロー完全無視やな、という採点が
ひとつだけありましたが、勝敗については異議無しでした。
8~10回のみっつは三浦にせよ、それ以外に微妙な回はふたつあるかどうか。
さうぽん採点は9対3、というところでありました。


これまで、厳しい展開、劣勢を、爆発的な攻撃で覆してきた三浦でしたが、
今回はベルチェルトの警戒レベルが相当高く、遠い位置取りに苦しめられました。

左回りに徹し、三浦の左強打から遠ざかる位置取りを続けた結果、
ボディ攻撃こそ食いましたが、アゴやテンプルへの「致命」の一打は、
とうとう一度も食わずに済んだ。
この作戦の正しさと、それに徹したことが、王者の勝因だったと思います。


しかし、世界一流の王者に、これほど研究され、警戒され、力勝負ではかなわない、
という前提の作戦を立てさせただけでも、三浦は凄いな、とも思ったりします。

かつてサンファンで、カリブの天才エステバン・デヘススがガッツ石松と闘った際、
デヘススは、石松の右強打に対する警戒ぶりを率直に明かしたそうですが、
デヘススのような技巧派というでなく、大柄で強打に自信を持っているものだと思っていた
ベルチェルトが、ここまで徹底して「警戒優先」の闘い方をするとは、ちょっと予想外でもありました。


ただ、全体としては、やはり先行され、驚異的な闘いぶりで追い上げるも、
最終的には届かない、追いつけない、という展開自体は、悪い想像とあまり違ってはいませんでした。

三浦の闘いぶりは、彼の地の観衆をも感嘆させるものだったと思いますが、
ボディブローが効いたなら、それを次の、違った狙いに繋げる、というような闘い方は
最初から望むべくもない、という感じで、一点突破に全てを賭ける闘いぶりでは、
このレベル相手に、徹底的に研究されている限り、やはり厳しいな、と納得せざるを得ませんでした。



世界中のボクサーが栄光を求めて集まる、米国のリングにおいて、
ここ数年、日本人ボクサーの健闘が、数多く見られるようになってきました。
その中において、その闘志と強打で異彩を放った三浦隆司の闘いは、
少なくともこれで一区切りがつくことになるでしょう。

その強さに、闘いぶりには、理屈を越えた凄まじさがあり、ひとたびゴングが鳴れば、
誰もその姿から目を離すことは出来ない。その意味で彼は、真に世界一流のファイターでした。

そして、かなうことなら、その闘いから得た感動のみならず、彼の何が通じて、何が通じなかったのか、
その内実を、実相をも、次に世界の舞台に挑もうとする、次代のボクサーたちに引き継いでもらいたい。
彼の闘いぶりは、様々な意味において、忘れ難いものであり、記憶に残る価値のあるものだからこそ、と。
そんな風にも思っています。


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名王者「晩年」の取りこぼし、その雛形 パッキャオ、白昼の豪州で陥落

2017-07-03 04:14:45 | マニー・パッキャオ



昨日は当然、お昼の生中継を見ておりました。
正直、大層に生中継するほどの試合でもないか、これよりブルックvsスペンス戦なんかをやってほしかったなぁ、
とか思っていたりしたんですが。

いざ放送が始まると、その「のんびり」な気分が、だんだん重くなっていきました。

練習や会見、両選手や陣営のインタビューがあれこれ流れているのを見ると、
パッキャオが、政治活動の合間に、非常に厳しいスケジュールでの調整をしていて、
それを陣営の誰もが、口では「大丈夫」と言いつつ、表情が悉く曇っている。

解説の浜さんや、現地にいたブラドリーの言葉もまた、
普通ならパッキャオが勝つに決まっているが「間違い」もありうる、という示唆が込められている。


紹介されたジェフ・ホーン過去試合の映像からは、さほど伝わるものはなかったですが、
いざ、雲一つ無い快晴の下、白昼のスタジアムに両者が現れて対峙すると、
そのあまりの体格差に、不安は頂点に達しました。

「状況」は多少違えど、会場の「絵」としては、ホセ・ナポレスがストレイシーに負けた時に似ているなぁ、と
試合直前にちらっと思ったりもしました。


序盤から、大柄なホーンが先手。ジャブも右も遠くから飛ぶ。
パッキャオは当然下がるなり回るなりして外し、かいくぐって打ち返すはずが、
どうも思うに任せない風。
ホーンは打ちながら左に移動して、右に戻って、という繰り返しも見せる。

小柄な方のパッキャオが、動きの量、質で劣り、スピードも切れもベストに遠い。
本来、まさっていなければいけない部分で、ホーンに先行されている。

白昼のスタジアム、大観衆の声援にも後押しされ、ホーンは健闘。
ガードを絞って足を止めるパッキャオの「休憩ガード」の真ん中を
アッパーで狙うなど、単にパワフル、ラフなだけでない、研究の跡も見える。

対するパッキャオの攻めは、それなりに精度はあるが散発的でもあり、中盤までは微妙。

そして、徐々にバッティングが目に付きはじめる。
ホーンは、三発四発と手を出し、それが全て外されると、頭から突進し、ロープに押し込む。
そしてさらにアウトサイドから左右フックで追撃。懐かしのジェフ・フェネック戦法。

確かに汚いやり口なれど、パッキャオもこんなことやらせている時点で駄目だなぁ、と
思っていると、6回、パッキャオが自分からアタマを持って行く。
露骨なお返しやなと思った直後、不幸なことにそれで自分が切ってしまいました。

この辺はもう、パッキャオの「コンディション」が、肉体のみならず精神的にも
「出来」てないところを、モロに見てしまったような気がしました。

8回でしたか、もうひとつ頭部を切り、終盤、パッキャオは血まみれ。
瞼を切ったわけではないから、影響は最小限だったと言えるかもしれませんが、
微妙な採点になっている?以上、ジャッジに与える印象、「絵面」の悪さを考えると、
どうにもよろしくない。

9回の猛攻も、好機にヘッドハンターになるパッキャオの悪癖が災いした...
というよりは、攻めの迫力が明らかに不足。
終盤、追い打ちをかけられず、微妙な感じで終了。


採点については、あの会場の雰囲気で採点していれば、こういう数字もありうるか、という感じ。
厳密にヒットの精度を見ればパッキャオかと思いますが、それも7対5くらいか。
逆もあり得る内容、というか「絵」を作ったホーンの健闘でもあり、
ホーン程度の相手にそれを作られたパッキャオの「取りこぼし」でもあった、のでしょう。



かつて、誰の手も届かない、天空高くを飛翔する鷹のようだったパッキャオも、
今はこの程度の「雑兵」の弓矢や槍、剣が届くところで闘っている。

かつて見せた英雄としての輝き故に、晩年になっても様々な宿命を背負い...
というか、絡め取られて、というべきか、ボクシングのみに専念出来ない状況で、
格下のラフな行為も「果敢さ」と見なす、敵地の大観衆の中、白昼の会場での苦闘。

その末に、完全に討ち取られたわけではないが、かつてなら負わなかった傷を負い、敗れた。
その姿は、やはり悲しいものでした。

かつて数多の名王者もまた、晩年には、このような悲しい姿を見せたものです。
パッキャオもまた、名王者であったが故に、その落差は大きいものでしょう。


試合後、前向きに再起、再戦への意欲を語ったパッキャオでしたが、ファンの勝手を言えば、
心身共に、こういう「出来」でしかリングに上がれないなら、もう止めといた方がいい、と思います。

しかし、もう、そういうことではなくなってしまっている、その現実も容易に想像はつきます。
その宿命を背負った、かつての英雄、名王者の姿を見ることもまた、ボクシングを見ること、なのでしょう。

見て楽しかったり、爽快感のある試合ではまったくなかったですが、
やっぱり、ある意味では、生中継で見られて良かったのかな、という試合ではありました。


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ジェルウィン・アンカハス対帝里木下戦は、アンカハスの7回TKO勝ちでした。

実力的にはやはりアンカハスが上だろうから、帝里が序盤から相手に合わさず、
どれだけ動き、仕掛け、それこそラフにでもいいから「暴れ」て、アンカハスにやりにくさを与えられるか。

そこが勝負だ、と思っていましたが、立ち上がりから、割と普段どおりの構え。
左狙いはともかく、アンカハスが持つ攻防の「枠」の中に、すっぽり収まり、捉えられる感じで、
これではまずいなぁと思っていたら、早々に古傷の瞼を切ったことも含め、劣勢に。

敵地での調整、高温の屋外での試合など、難しいこともあったのでしょうが、
パンチの精度をはじめ、実力では上回る相手と、力関係がそのまま全部出てしまう展開では、
いかにも苦しい、という印象でした。

帝里はせっかくの長身を曲げて、覗くように構える傾向がありますが、
右ジャブを出しているときは、それを矯正したバランスになりもするので、
正対して構えて闘うなら、もっとジャブから攻めてほしかった。

何より、長身で大柄、サウスポーという部分を、相手から見たやりにくさとして生かす発想が
ほとんど見られず、まともにやりあってしまったのが、残念に思えました。
策を弄して闘うことに意味を見出さない、という考え方も、当然あるのかもしれませんが。

しかし、強い王者に敵地で挑んだ結果ですから、仕方ないことでもあります。
こういう「挑戦」を、どんどん見たいし、やっていくべきだとも思いはします。
その内容が、結果が厳しいものであれ、それを踏まえて、次につなげることの積み重ね、
それこそが「挑戦」そのものであろう、とも。


アンカハスは攻防共に、高いレベルでまとまっていて、なかなか強いところを見せました。
あれでけっこう爆発力もあったりするんですから、今後が楽しみではありますね。
日本の選手との対戦も、さらにあるのでしょうか。
もっとも、今回改めて、強いとこを見せて「しまった」ことが、どう影響するか、という見方もありましょうが。



コメント (7)
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