連日五輪五輪言うてますが、日本勢、ことに男子は初戦突破は果たしたものの、ベスト16ともなると容易ではなくなってきています。
成松棄権、岡澤、森脇敗退となり、残るは田中亮明ひとりとなりました。
その田中、さきほど中国のフー・ジャンガンと対戦。
早々から積極的に右リード、左ストレート、合間に強烈なボディーブローを突き刺すなどして圧倒。
フーもアジア予選大会で優勝した強敵のはずでしたが、もう気合いからして違う、という勢いで攻めまくる。
フーの反撃は散発的で、さほど効果もなさそう。当然10-9が5人揃う、と思ったら、初回のスコアが3対2で割れ、田中。
あー、圧されて腰が引けたまま打ってるパンチでも、当たれば数の内ということかいな、とはいえ数でも全然やったような...と驚くこちらを尻目に、2回も田中が攻め、フーが瞼と耳の後ろから出血。
三度のドクターチェックを経て試合終了。判定は田中3、フー1、ドローと割れたものの、田中を支持しました。
この内容で何で割れるかね、20ー18フー勝利というジャッジは一体何を見てたのや、というのはともかく、普通に見て、単純に田中の心技体がフーを圧倒していた、という試合だった、と思います。
試合中も打つ度に気合いの声を上げ、勝利のコールを聞いても同様。
喜ぶというよりは「よし、次!」という感じで、自らに気合いを入れ直しているかのように見えました。
フーも上位進出の候補と目されていた選手らしいですが、その一角に競り勝つ、というのでなく、圧倒して勝ち上がる様を見ると、大会前の報道で喧伝されていた、積極的な、攻撃スタイルの実現は、ここまでのところ前向きに捉えてよさそうなものに見えます。
あと一勝でメダル確定となりますが、この際ですから一気に突っ走ってほしいです。
ここから先は単に強いだけでなく、駆け引きやごまかしの上手い選手と当たることになるんでしょうが、ジャブ、ワンツーで「壁」を作って押し切る、という今の型を貫ければ、充分いける、と思えます。
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さてさて、フルカバーとはいかずとも、五輪ボクシング競技を、一回戦の段階からこれほど数多く見た経験はこれまでにないので、色々と発見というか、気づいたこともあります。
総じて、ロシア及び中央アジアの選手の試合は、普段プロの試合中心にボクシングを見ている者の目には、あまり面白くありません。
体力があり、もちろん細かいところに巧さもあり、質実剛健、という魅力はあるんですが、同時に流れがぶつぶつ切れ、優勝候補と目される選手であっても、やたらとクリンチが多いです。
この辺も含め、3ラウンズで終わる条件に、過剰によっかかっている作りやなあ、と思うのも確かです。
まあ、その日の試合が全てじゃなくて、大会日程全般に渡っての闘いで勝たねばならない選手のペース配分なのだ、というのも事実なんでしょう。
この先、メダルや優勝がかかる上の試合ともなれば、いよいよ本当の姿が見られるのかも、と期待していますが。
それ以外では、アメリカのスーパーヘビー級、リチャード・トーレスがちょっと目を引きました。
アメリカでスーパーヘビー級ったら、かつてのリディック・ボウのような大男が出てくるのかと思ったら違って、名前のとおりヒスパニック系の、ずんぐりした、気の弱そうなお兄さん。
しかしこれが動き出したらけっこう巧く、サウスポーからの右ジャブ連打で「作って」相手が来たら、ワンツーと同じタイミングで打つ、見えない左ボディアッパー。
この一発でダウンを奪い、後はヒットでまさり優勢、判定勝ち。
滅茶苦茶強いとか、将来プロで有望だとか思ったわけではないんですが、プロ同様、アメリカではヒスパニックの台頭目覚ましく、反面、アフロ・アメリカンの大柄なアスリートが他のスポーツに流れている現実が、アマチュアにも反映されているんだなぁ、と。
あと、果たしてこのボクシングで、やたら大柄なサウスポー、優勝候補だというバホディル・ジャロロフに勝てるんやろうか、と心配になったりも。
二年前、一度KO負けしているそうですが、二年の間にその力関係が変わったものかどうか、ですね。