日曜は英国ロンドンからのライブ配信ということで、早朝WOWOWオンデマンドにてライブ配信あり。
メインから感想です。
WBC、IBF、WBOライトヘビー級チャンピオン、チェチェンの鉄拳アルツール・ベテルビエフに挑むは、二度目のタイトル挑戦となるアンソニー・ヤード。
リングマガジンのファイター・オブ・ザ・イヤーに輝いたWBA王者ディミトリー・ビボルと甲乙付けがたい強豪王者が、考え得る中で最強のコンテンダーを迎えた一戦でありました。
両者コールの際、ヤードには当然大歓声。ベテルビエフにはブーイング。
国籍はカナダとなっているが、ロシアに対する非難も混じっているだろうことは、容易に想像がつく。
実際、チェチェンにルーツのある彼にとっては、二重の意味で悩ましいところですが。
初回、ベテルビエフが圧して出る。振りの小さいジャブが、重そうな音を立てる。
対するヤードは、これも小さい振りの左フックを合わせていく。互いに威力も切れ味も充分。
重いクラスだから、というだけでは説明のつかない、両者の圧倒的な力が、早々に画面から伝わってくる。凄い...。
ベテルビエフのプレス、相当な「強度」を備え、右クロスや右ボディブローがヤードを脅かす。
2回も変わらず圧して行く。ヤードは右アッパーで押し返し、怖れず?右カウンターを放つ。
3回、ジャブの応酬。ベテルビエフの重そうなジャブがまさる。
4回、ベテルビエフ右クロスで出る。強いジャブでヤードの足取り乱れる。ベテルビエフ、ボディから連打で攻める。
ヤードも反撃、右から左フック返しで、ベテルビエフが初めて、自ら下がる。驚きの光景。
しかしコーナーに追われた?位置から右カウンター、攻守入れ替わる。両者右アッパー応酬。
5回、ロープ背負った位置から、今度はヤードが左フックカウンター。さらにワンツー、右決めて追撃。
ヤードの左フック上下を食って、ベテルビエフ、引いて間を欲しがる。若さと体格でまさるヤード、さらに攻める。
しかし残り15秒くらいで、ベテルビエフ、コーナーに引いた位置から体を入れ替え、タイソンばりの右アッパーダブルを二度。
ヤードは好機一転、また打たれ、6回もスタートからベテルビエフが右ロングで出る。
ヤードは正対して右クロス、左ジャブを当て、ベテルビエフも右返すが、左瞼をカット。
一進一退、激しく攻防が入れ替わり、強打が交錯する展開。息もつけない、とはまさにこのこと。
7回、ヤードはボディへの左フック、上へは右を飛ばす。ベテルビエフ打たれている。
押し返そうと右を振るがミス、バランス乱れてロープへ。らしくない場面。かなり苦しそう。
年齢差、体格差などを考えると、ここから終盤へ向けて、きつくなっていく一方では...と見えました。
ヤード左フック、右もヒット、ベテルビエフを追って出る。
しかしここでベテルビエフ、また巧みに体を入れ替えると、左右フックを上に集め、右ボディから右アッパー上のコンビをまた二度。
さらに左ボディ三連打。連打攻勢をかけて、ヤードをコーナー近くに釘付け。
傍目には明らかに「賭けた」攻勢、と見える。ここで勝負せねば...という切迫感が伝わってくる。
ヤードは右クロスで斬り付け、左ボディを返し、右アッパーで打開しようとするが、ベテルビエフ「覚悟」の陣を敷いて留まり、さらに打ち込む。
8回、ヤードの足が止まり加減。ダメージありか。
正対した位置からベテルビエフの右クロスが浅く入る。危ない間合いが出来ている。
ヤード、ベテルビエフに「見られて」いる感。ここで右アッパーを放つが、ベテルビエフが右クロス、先ほどのと同じパンチを被せてヒット。
ヤード打たれ、踏ん張ろうとするが右の追撃が来てダウン。
ヤード、かなりダメージある。いわゆる「末期のダウン」(佐瀬稔©)と見える。
それでもカウント聞いて、8か9くらいで立ったが、自コーナーの方に目をやる。
闘志がどうという次元の話ではなく、無意識だったか。
レフェリー、地元ということで続行させた?しかしベテルビエフが右二つ当てると、セコンドが棄権の意志表示、TKOとなりました。
感想と言っても、なんと凄い闘いだったか、というしかありません。
7ラウンドの3分が象徴的ですが、強者同士の激しい闘い、密度の濃い攻防の連続に、見ていて圧倒される思いでした。
闘志や勇気がひしひしと伝わってきて、それを凌駕する怖ろしいほどの強打が飛び交う様は、かつては不人気階級みたいに言われる時代も長かったとされる175ポンド、ライトヘビー級の「世界」、その凄さを存分に味わえるものでした。
勝った王者アルツール・ベテルビエフ、38歳という年齢もあり、ことによるとこの試合が、最強王者としては最後の輝きだった、となるのかもしれません。
敗れたアンソニー・ヤードには、まだ時間は残されているという見方の一方、懸命、という単語の前に「一生」がつく闘いだったが故に、ひょっとしたらこの先、このような闘いを見せることはもう二度と無いのでは、とも思います。
両者を否定的に見るのでありません。その逆です。
それほどまでに激しく、凄まじい闘いだった。それ故に、両者のボクサー生命、戦士の魂を燃やし尽くす闘いだったのではないか、という意味です。
どれほどの強者であろうとも、その強さは永遠ではありえない。
ならばこそ、この闘いを見られたこと、それを見せてくれた両者に、感謝と拍手を送りたい。そういう気持ちです。
昨日の興行は、フライ級世界戦のあと、英国の重いクラスのホープの試合が連なるという順番でした。
アルテム・ダラキアンの試合を見たかったので、早起きして4時頃から見ていました。
メイン終わるまでに4時間半くらいでしたかね、けっこうありまして、途中、見ていて気の入らない試合もありましたが、やはり終わりよければ全てよし、ではありました。
しかしダラキアンは強打の精度に欠け、苦しんでいました。
ウクライナ国籍を持つ身で、ベテルビエフのアンダーに出ることは、彼にとり苦衷だったかもしれませんし、さらに戦争やコロナによるブランクの影響ありあり、でした。
リングの上に上がれば、人種も国籍も、その他諸々関係なく、強い者、優れた者が勝ち残るのみ、という前提を支えるのは、究極的にはやはり「平和」であるのでしょう。しかし...こちらは見ていて、何とも重い気持ちになりました。