さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

またも露わになった、畏るべき殺傷本能 三浦隆司驚異の逆襲、最終回KO勝ち

2017-01-29 14:51:19 | 海外ボクシング



生中継を見終えました。
まずは簡単に感想を。

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三浦隆司vsミゲル・ローマン戦は、中盤まで「これは具合悪いなー」という試合でした。

小柄なローマンは、高くて締まったガード、広いスタンスで低い重心を設定し、
小さい割に遠く、懐が案外深い。
三浦にとって、なかなか打ちにくい的になっていました。
そして、三浦が打ちに行くと腕を固められてしまい、そのまま打たれてしまう、という流れ。

これで相手のペースを崩し、執拗な連打で攻め込む、攻め落とす、という
過去のローマンの試合で見られたパターンに、三浦はきっちりはまっていました。


しかし7回、三浦が一打ごとに獣のような声を上げて打っていき、試合の様相が変わっていきます。
「今時やないなあ」なんて冷やかしをも飛び越えた、見ていて怖くなるようなその様は、
必ずしも高い頻度でのクリーンヒットを取れているとも見えず、また、こんな打ち方、攻め方をしていたら
次の回以降に失速するのではないか、それにほぼ完全に防御を忘れているではないか、等々、
こちらの気落ちをざわつかせるものでもありました。

実際、回が進むにつれ、軽打が多かったとはいえ、相手のパンチを、かなりの頻度でもらい続けていました。
ローマンの右アッパーを巧くブロックしたり、右フックをダックしたりは、序盤の何度かだけ。

フランシスコ・バルガス戦で見られた「決壊」が、再び繰り返されるのではないか、と思いつつ、
しかしながら、三浦が露わにした「殺傷本能」剥き出しの姿を見て、震えるような気持ちでもありました。

10回、ラスト10秒切ってからの、刃物で斬り付けるような左ボディブローは、普通のボクサーでは到底打てない、
三浦隆司のそうした本能故に決まった一撃だったというべきなんでしょう。

11回「ストップ用」の連打で倒し、最終回は得意の左一発がようやく決まり、KOとなりましたが、
序盤の劣勢を覆したのは、技術でも戦略でもなく、さらに言うなら「闘志」という言葉すら飛び越えた、
三浦隆司の「キラー」な部分だった。そう思います。


どの試合でも、どんな強敵、難敵相手でも、結局は試合そのものをスリラー、恐怖劇に変えてしまう。
常識では測れない殺傷本能の持ち主、三浦隆司の闘いは、ミゲル・ベルチェット挑戦へと続きます。

この日の試合ぶりを見る限り、大柄でスピードのあるベルチェットがスタートから飛ばしてきたら、
三浦がそれに追いつく時間が足りない、或いは最初からほぼ無い、というような試合展開を想像してしまいます。

しかし、試合の端緒がそのようなものであろうとも、結果が仮に厳しいものであるかも知れずとも、
三浦隆司がその試合を闘う以上、「それだけ」では済まない何事かを見ることになるのだろう、とも思います。

そして、勝ち負け以前の、その何事かに、何よりも心惹かれてしまっている。それが正直な気持ちです。
またしても震えるような闘いぶりでした。
勝利だ敗北だという以前に、これぞ三浦隆司の試合だった、というに尽きる。
今日の試合はそんな試合でした。


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それにしても、この4人をどう組み合わせようと、尋常ならざる試合になるだろう、と
事前に充分想像はしていましたが、いざ実際に、こういう試合を立て続けに見ると、しばし言葉を失います。
そして、WBCのこの辺のクラス上位のメキシカン達の中に、日本人のボクサーが一人混じって、
違和感なくどころか、ひときわ異彩を放ってしまっていることにも、また。

改めて三浦隆司の偉大さ...というか、凄さには、尊敬というより畏敬の念を抱きますね。



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期待は快勝だが/再々戦?/表紙はいまだに/5月にダブル

2017-01-26 19:41:44 | 話題あれこれ



日本時間の日曜日、ありがたいことにWOWOW生中継の
スーパーフェザー級、WBC4強激突マッチ。
フランシスコ・バルガス、ミゲル・ベルチェット、ミゲル・ローマンと共に
LAにて、三浦隆司が会見

こうして並ぶと壮観です。ええ面構えですね、みんな。
三浦も違和感なく?収まっていて、良い感じです。

ミゲル・ローマンについては、過去試合を何度も見たことがありますが、
正直言って、見映えしないことこの上ない、という印象です。
小柄で、遅くて、下手で、ぱっと見ただけでは、なんでこんなレベルの低い、
光るところの無い選手が世界上位にいるのや、と思ってしまいます。

しかし、執拗に攻めて攻めて、劣勢にもめげずに粘り、最後には相手を倒し、
ところ構わず打ちまくって、反撃の手が出ない状態にして、ストップ勝ちしてしまいます。
ポンセ・デレオン、ファン・カルロス・サルガドといった元王者との試合は
いずれもこのパターンです。
直近の試合が「あの」ジェロッピ・メルカド戦だというのには、思わず腰が砕けましたが...(^^;)


もし今回も、三浦の強打に耐え抜き、同じ流れに持ち込んで勝ったら、脱帽ものです。
もう、理屈では測れない世界ですね。
もっとも、三浦にも普通の考えでは収まらない、狂気のような闘志を秘めた選手ですが...。

普通に比較したら、倒して快勝してほしいところなんですが、どうなりますか。
メインのバルガス、ベルチェット戦を含め、物凄い試合が続けて見られそうです。

しかし、ロマチェンコやコラレス、新星デービスらがいる上に、この4強がいるんですから、
130ポンドは本当に充実の一語ですね。
どのカードを組んでも、大いに盛り上がりそうです。統一戦など、どんどん実現してほしいですね。


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130ポンド級といえば、こんな話題

会場で試合を見ていて、確かに「度を超している」と感じた部分ではあります。
まあ、仮に一度くらい減点があったとて、勝敗が逆にはならかったわけですが。

しかし、それよりもまだ、内山に現役続行の可能性があるような話に、虚を突かれた思いです。
そうか、そういう道もまだ、あり得るのか...と。
本人の意志がどうなのか、本日発売の「Number」誌にインタビューがあるそうで、
またじっくり読んでみようと思いますが。


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その「Number」誌、表紙は誰になるのか、ちょっと注目してました。
昔はハグラー、レナード戦から、タイソン全盛の時代を経て、辰吉・鬼塚時代の頃までは
けっこう頻繁にボクシング特集を組んでいた雑誌。
92年の9月でしたか、辰吉、鬼塚、平仲が立て続けに防衛戦をしたときには、
増刊号を出したことさえあります。

スポーツファン全般にとっても、ボクシングがそれだけのトピックであり得た時代でした。
しかし今は...と嘆いても始まりませんが。

で、その久しぶりの特集号で、いったい誰が表紙を飾るのか、
今、世に向けて、ボクシングの顔として選ばれるのは誰なのだろうと。

結果、タイソンでした。ちょっとがっかりでした。
四半世紀前に、東京で敗れた衝撃は、確かに今でも忘れ得ぬ記憶ですが、
現在、書店やコンビニの店頭で、購買層に訴えかける力の持ち主が不在である。
それがただ今、日本におけるボクシングの現実なのだなぁ、と。


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その現実を、これから打ち砕いてくれるかもしれないボクサーたちの
健闘に対する期待は、変わること無く心中にあります。
その代表格たる井上尚弥の次戦は、5月に八重樫vsミラン・メリンド戦とダブルで開催とのこと。
体調さえ万全なら、王者として堂々たる闘いを見せてくれることでしょう。

しかし、マッチメイクに関しては不透明なようです。
現時点で例によって「断られた」的な話もほのめかされています。

3月にMSGでロマゴンがシーサケットと闘い、クアドラスも出場するのを傍目に、
こちらが従来通りの国内開催、フジテレビ放送の枠内で動いていること自体、
ファンの目には「呑気なものやな」と映ってしまいますが...。

3月にMSGでそれぞれリングに上がるロマゴンやクアドラスにオファー、って
話に至っては、何やそれ、という感じですね。
早くからオファーしていたとしても、そんなもの、あっちに行くに決まってるし、
その次にといっても、調整期間が足りない。どっちにしても駄目、という。

今から断定的なことなど言えないですが...ほんまかいな、大丈夫か、というに尽きますね。
選手に負けず、陣営にも「健闘」を期待したいところですが、はてさて...。


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こういう相手だからこそ「まさか」もあり得る? 山中慎介、9位カールソンとV12戦

2017-01-23 18:46:23 | 関東ボクシング



昨年、アンセルモ・モレノ戦でキャリア最高の「大勝利」を挙げた山中慎介の、
V12戦が発表されました。
3月2日木曜、両国国技館で9位カルロス・カールソン(メキシコ)と対戦とのことです。

1位スリヤン、2位ルイス・ネリー(ループ軌道の強打が怖いサウスポー)などの上位陣は、
選ばなかったというのか、先方様もなかなか決断してくれないというか、
どちらかといえば後者なのかもしれませんが、多分下位からになるだろうな、とは
誰の思いも同じだったでしょうね。

で、不勉強なもので見たことも聞いたことも無い挑戦者ですが、
レコードは23戦22勝(13KO)1敗というから、悪くはありません。
26歳、ティファナで活動、デビュー戦で負けて以降22連勝です。
対戦相手で見たことあるのはジョバンニ・カロくらいですが。

で、動画を探すと、なかなかありません。
ようやく見つけたのがふたつ。

デビュー10戦目、2013年2月2日。
この時点で6勝2敗ながら、このあと負けが込み、現在7勝11敗の
アーロン・オリバレスと対戦。
白と黒のトランクスがカールソン、赤がオリバレス。
名前だけなら後者が圧勝しそうですが...。





初回早々、長身のカールソン、右ストレートから左フックを返す。
しかしあまりに無防備、かつ間延びした繋ぎの隙間に、オリバレス左フック。
もろに食らってカールソン、ダウン。

初回だったので回復する余地があり、同じテンポで打ち合ってくれるオリバレスの
詰めの甘さにも助けられ、大柄なカールソンが徐々に攻め返す。
右ストレート、左フックで出て、左ボディでダメージを与え、右で倒す。
再開後、右でオリバレスをロープに飛ばし、TKO勝ち。

パンチはあるが、攻めは驚くほどの丹頂鶴ぶり、そして防御が甘すぎ。
4年前、キャリアの浅い段階とはいえ、なんだこの選手は、という感じ。
まあ、見ていて楽しい試合だといえば、そうでしょうが。


で、他には試合動画が見つからない。YouTubeの検索に引っかかったのはもうひとつだけ。
8分40秒過ぎからのハイライト。
2014年7月25日、ホセ・セン・トーレス戦。
こちらもこの試合時点では13勝4敗ながら、この試合から5連敗で、今は13勝9敗。
ちなみにKO勝ちはひとつだけ。
黒に白ラインがカールソン、紫とオレンジがトーレス。





極めて短いハイライトですが、見た限りでは打ちつ打たれつの打撃戦。
判定は僅差だったようで、相手選手は不満そうでした。



他は計量とか、スパーリングとかばかりで、最近の試合映像がないので何とも言えないですが、
このふたつの動画を見る限り、これで本当に山中慎介に挑むのか...という感じです。

大柄で、パンチはあるが、リーチを生かせず、左で崩さないで右の手応えを求めている印象。
返しの左フックも強いが、パンチを打ったあと、足が動かず、その場に留まるので、
相手の反撃を高い頻度でもらってしまう。非常に出来の悪いボクシングです。
山中からすれば、動画を見るまでもなく格下。見れば明らかに格下です。


ですが、まともな技術の攻防で相手になるようなレベルにないように見える、
こういう相手だからこそ...という不安も、同時にちらりと感じました。
それもまた正直なところです。

はっきりいって防御が甘いです。しかし、大柄で、打たれ強さはあるようです。
左が出ず、右から左の返しばかりで単調です。
しかし、打とうと思えば、遠くから強いパンチを打てる体格があります。
ボディブローにも、試合の流れを変えるだけの威力があります。

最近の試合ぶりが不明ですが、北米王座を3回KO勝ちで獲得していることもあり、
全体的に整ってきているか、或いは強打の威力を増して、より馬力をつけているかもしれません。

少なくとも、以前対戦したディエゴ・サンティリャンのように、
何がどうなっても間違いなど起こりはしないだろう、という、
全体的にまとまった弱さを持つ選手とは、ちょっと違っています。
部分的には突出したところがあり、危険ゼロの相手ではないかも、というか。


何より、かの具志堅用高が、V12戦でチリの強打者マルチン・バルガスに快勝した後、
予想有利と見られたペドロ・フローレスとの2試合における苦闘を経て陥落した流れは、
今の山中慎介が置かれた状況と、けっこう似通っているような気がしてなりません。

11度の防衛、世界戦12試合で25度のノックダウンを記録した驚異のパンチャー、
山中慎介にも、当然ながら歴戦の疲弊はあり、直近のモレノとの再戦における勝利は、
彼のキャリアにとってひとつの頂点でもあったが故に、その次の試合に、
何かのきっかけで深い谷底が待ち受けているのではないか、と。

もちろん、普通に、いつも通りに進めば、山中の圧勝で終わると予想はします。
しかし「こういう相手」に「こういう時」だからこそ、という怖さもありますね。
試合が始まれば「また、阿呆なことをつらつら書いてしもうた」と思うのかもしれませんが...(^^;)


※コメント欄にてhiroさんから紹介いただいた動画、ふたつ追加しておきます。

2015年8月21日、ペドロ・メロ戦。9分30秒くらいから。
黒トランクスがカールソン、白地に黒のラインがメロ。
ボディ攻撃の威力は増している印象ですが、防御の悪さはそのまま。
右食ってダウンしてますが、反撃して判定勝ち。




2015年11月20日、ホセ・エストレージャ戦。7分50秒くらいから。
白地に赤がカールソン、黒がエストレージャ。




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この日は尾川堅一が杉田聖と再戦するカードもあるそうです。
杉田は最強後楽園で見事な試合をしたとのことで、再挑戦の機会を得たわけですが、
前回もけっこう善戦していたので、好試合に期待ですね。

あと、ブライアン・ビロリアが帝拳と契約して、この興行に出るとのことです。
今のフライ級の状況を考えるに、色々思惑があるのやなー、という感じですね。

米国遠征の試合キャンセルという「被害」を経て、IBF指名挑戦権を得た岩佐亮佑も登場。
小國以載の復帰時期からすると、良い日程で調整試合が決まりましたね。


遠征といえば三浦隆司はもちろんのこと、関西勢も頑張ってほしいものです。
向井寛史は香港のスター、レックス・ツォと対戦
敵地で不利なことも多々あるにせよ、このチャンスはどうでも生かしてもらいたいものです。

帝里木下はプエルトリコでのアローヨ戦が延期とのことで、いかにもありそうな話です。
難しいことだらけの遠征試合とはいえ、出かける前(ですよね)からコレかいなと、
さすがにげんなりしますが。



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記録より大事なもの/中部の星/ヘビー級の過酷/天狗登場/30周年

2017-01-15 10:57:52 | 話題あれこれ



新年から、あれこれ試合も始まり、話題もあり、ということで、
ぼちぼち更新していきます。本年もよろしくお願いします。


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金曜日、ホールではチャールズ・ベラミーvs別府優樹戦、スプリットで引き分け。
動画を見ることが出来ました。




試合記事のとおり、1、2、5回は別府が山場を作るなど、思った以上の健闘。
チャーリー(やっぱ、この方がしっくり来ます)はダメージ甚大というわけではないにせよ、
それでも少し効いたときもあったか。

それでも要所で強打を返して、別府に後退を強いたものの、逃してしまい、判定へ。
引き分けは少し甘いかな、逆がいたのはちょっと意外かな、という印象のドロー。

内容としては、チャーリーもウェルターに落として、ちょっと厳しかったにせよ、
やはり別府優樹が思った以上に健闘し、若手としては力のあるところを見せた、という試合でした。

新人王獲得後、強い相手と対戦していないことを批判的に見られていた別府ですが、
私としては、そんなもの「カラスの勝手でしょ」の世界で、
30年前の選手が作った記録、数字に、今の若手選手のマッチメイクが影響されねばならないとは
これっぽっちも思わないんですが、今回、陣営は15戦目でこういう挑戦を行いました。

マッチメイクの難しさや、その意図を完全に理解して、語れるものではありませんが、
格下相手の試合から、一足飛びにこういう試合をするのは、心配な面もありました。
しかし結局は、別府の健闘が、そうした杞憂を、ひとまず無意味なものにしてくれたと思います。

当然、あれこれ不備な面も見えましたが、その馬力、体力はなかなかのもの。
後半はスタミナと耐久力に不足が見え、苦しい展開が続いた時も、動いて凌ぎ、
強豪チャーリーと8回を闘い抜いたのは、現段階では立派、と称えていいでしょう。


同時に「たった」15試合で、若手に対し、性急に大きな試合を闘えと求めることの是非も、
考えさせられる試合でした。
何度か過去に書きましたが、もう誰も彼もが「浜田に倣え」というのは止めにした方が良いでしょうね。
選手のキャリアは、結局は人それぞれ。浜田が高校王者からプロになって、19戦目で作った記録と、
アマチュア経験が少ない選手がデビューからたまたま倒し続けた結果を、
同列に並べて論じるものでもないでしょうし。

その結果、可能性を秘めた若い選手のキャリアが、取り返しのつかない形で
壊れてしまうこともありえます。
今回は、大過なく収まった、という感じではありますので、一安心、というところでした。


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昨日買った専門誌をぱらぱらと見ておりますと、昨年12月4日、あの「薬・辰決戦」の日に行われた
刈谷での薬師寺ジム主催興行で、森武蔵という選手がデビューし、初回KO勝ちを収めた記事がありました。

マガジンの中部担当、松本直史記者は、日頃は堅い表現で、厳しめの評をすることが多い印象ですが、
今回は多少、その印象とは違っていました。

41秒、衝撃の秒殺デビュー。17歳の逸材、森が好発進。
薬師寺会長は「デビュー3年での世界奪取」と青写真を描くが、それが夢物語といえぬ輝き。
実力はすでに日本ランカー以上、等々。

いったい何の騒ぎやこれは、と思って、動画探してみたらすぐに見つかりました。
とりあえずデビュー戦の手撮り映像。





もちろん初回KOで弱く見えるはずもなし、全体像が見えるわけでもなし。
しかしスピード抜群、二度目のダウンを奪った左ダブルの切れなど、
若き日の長谷川穂積を思い出させるパターンでもあり、確かに目を引きます。

17歳のサウスポーで、スーパーフェザー、ないしはライト級。
熊本出身、U-15で2度の優勝経験あり。
その素質に惚れ込んだ薬師寺会長がスカウトしてプロデビューということだそうです。

薬師寺ジムには、全日本では敗れたものの、新人王西軍代表になった矢吹正道に続き、
期待の若手が育ってきているようです。
何でも、今年は新人王戦に出るという話ですので楽しみですね。
路線変更が無く、勝ち上がってくれば、府立やホールで見られるかもです。

こちらは中部で放送されたと覚しきドキュメントです。
けっこう注目されてるみたいですね。

※15分45秒くらいから、同日デビューの中山和則のミットを受けているのは、
どうやら大場浩平さんのようです。





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昨夜はありがたいことにG+生中継。
藤本京太郎が日本人初のOPBFヘビー級王座獲得なりました

2回に見事な右でダウンを奪いましたが、図体のごつい相手が諦めず振ってくる強打に脅かされ、
終始気の抜けない試合展開だったようです。
本人も試合後のコメントで、苦闘ぶりを語っていますが、日本人のボクサー、
及び打撃系格闘技選手にとり、ヘビー級とはやはり化け物の世界で、非常に厳しいものなのですね。

かつてK1の佐竹雅昭などは、ガード、ブロックしてもダメージが脳に来る、という具合で、
過密な日程で試合を組まれて大変だったそうですが、藤本もまたK1時代から今日にいたるまで、
日本人選手としては抜きん出て、100キロ超えの相手と多く闘ってきた選手ですから、
誰よりもその苦しさを、身をもって知っているのでしょう。


しかし藤本、非常に選手層の薄い日本のヘビー級において、
その苦しさを身一つで背負わされている感さえあります。
もう少し、選手の数自体を増やしていかないと、どうにもならないと思います。
そのための施策を行う力も意志も、どこにも見当たらないのが、日本ボクシング界の現状ですが...。


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で、昨日の興行には、天狗まっしぐらの新王者、小國以載が登場しました

拳を傷めて、少しブランクになりそうだとかで、残念ではありますが、
精神的には好調そうなので、まずはじっくり治してもらいたいものです。

しかしつくづく、関西のジム在籍のまま、世界王者になってほしかったと思います。
ある意味、非常に貴重な人材です(笑)。まあ、仕方のないことではあるのですが...。


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最後に、少し前に見つけた、SHOWTIME30周年の動画。
懐かしいのやら、最近のやら、あれこれと。

TV局自ら出したものなので当然ながら、画質が良いのが嬉しいです。





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驚異の闘志と頑健さ、しかし変わらぬ「被弾前提」の熱闘 田口良一ドロー防衛

2017-01-05 21:40:02 | 関東ボクシング


大晦日、大田区のセミ、田口良一vsカルロス・カニサレスはドローで田口の防衛でした。

3回の途中くらいまでは、カニサレスが出て先制、田口は若干劣勢という流れ。
しかし田口が右のボディだったか、カニサレスの連打に返したヒットあたりから、
カニサレスが目に見えて足を使う型に変わったように見えました。

田口は前に出て圧力をかけ、カニサレスは徐々に圧されて苦しくなってくる。
しかし田口はジャブやアッパー気味の左、ボディ攻撃などはあるが散発的で、
完全に捉えるには至らず、ガードの隙間をヒットされる。

8、9回あたりは捉えるかと思ったが、10回はカニサレスも踏ん張って右当てる。
最後は、メインのコラレスと同様、ホールドの注意が出るが、減点はなしで終了。

会場で見ていると、ラウンドごとに採点を迷う回がけっこうありました。
田口の前進とヒットか、カニサレスが捌いて当てているか。
全体を見るか、好打を取るか。
正解の無い採点だろうなあ、と思って自分の採点を見ると、6対6になっていました。

公式は三者三様のドローでした。8対4で二人が割れ、あと一人がドロー。
8対4でどっちか、という試合だったようには思いませんでしたが...。


カルロス・カニサレスは、田口良一が世界戦で迎えた相手の中では、一番手強い選手だったかもしれません。
スピードもパワーもなかなかあり、田口がいつもどおりに打たれながらも執拗に出て、
捉えて攻め落とす、という展開は、この相手には難しかろう、と、試合序盤の段階で思いました。

反面、まだ不備が多い、青い段階の選手だな、という印象ではあります。
前に出る、足を使う、とふたつの闘い方を見せたものの、
総じて何をやるか、やりたいか、が見え見えで、わかりやすい選手でした。
打つパンチも同じ距離、タイミング、組み合わせが多く、ジャブで崩して攻めるより、
左右フックの組み合わせがいくつか、という印象。
もちろんそれで田口を充分苦しめましたが、競った回をもう少し取るには、不足があったというところでしょう。


今回の挑戦者選びについては、田口が本人の希望で強敵を選んだ、という報じられ方でしたが、
見ていて、それはあながちウソでもないのかな、という印象を受けました。

カニサレスが真に世界一流のボクサーだとは思いませんが、実際やってみて、
田口の被弾前提の前進と、執拗な攻撃での攻め落としがかなわなかったわけですし、
何よりもキャリアの下降期ではなく、上昇期の選手であったことも含めて、
過去の誰よりも手強く、敗北の危険性が高かった、と思います。

それにしても、いつものことですが、田口良一の闘いぶりには、鬼気迫るものを感じます。
白面の美男、不器用ながら良く鍛えられた頑健さをもって敵に肉薄し、
ある程度の被弾を前提にせざるを得ない、厳しい展開を、果敢だ懸命だ、という表現では
物足りないような姿勢で闘い抜く。
「評」の言葉を抜きにして言えば、畏るべき、としか言いようのない選手です。


しかし、世界王者としてどうか、といえば、このくらいの選手相手に、
壮絶な闘いをせねばならない、という時点で、やはり如何なものか、と思います。
もし彼が日本チャンピオンで、この選手と闘って勝ったなら、それは殊勲でしょうが...という。

何よりも、いくらタフだからといって、このような被弾前提の試合ぶりでは、
真に世界一流の、力の出しどころを弁えた、世界上位にふさわしい練度のあるボクサーと対したら、
厳しい結果が待っていると思います。
彼の防衛回数は5を数えましたが、宮崎亮戦が指名試合ということになっているものの、
直近の彼のキャリア、そして現状にそんな内実がなかったことは、誰もが承知の事実です。
一度も、本当に世界王者としての抜きん出た技量を示さないまま、こういう数字に到達したことも含め、
世界王者としての田口には、残念ながら不足を感じます。

そして、このような闘いぶりが、果たしていつまで続くものなのか、ということも、不安です。
その闘志には感嘆させられてばかりですが、そうはいっても...という気持ちですね。



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この日はセミセミにOPBFとWBOアジアパシフィックの「統一戦」がありました。
Sフェザー級、伊藤雅雪と渡邊卓也の一戦です。

初見(だと思う)の渡邊は、リーチもあって良い体格に見えましたが、
立ち上がりから伊藤に気圧されたか、ロープ際に下がってしまう。
伊藤は低い姿勢から、じっくり見てフェイントをかけるが、ジャブは省略、攻撃は散発的。

渡邊は試合が進むにつれ、時折鋭いワンツーが見られるが、全体的に手数が出ない。
伊藤もまた、カウンター狙いが度を超している印象。

両者、ことに伊藤の悪いときはこうですが、試合運びや組み立てが見えず、
その場その場の反応、対応だけにしか意図が見えない試合ぶり。
終盤は渡邊が疲れたか、少々フォームが乱れ出すが、伊藤は相変わらず、
カウンターの「合わせ」狙い優先で、攻め崩そうという型が作れない。

後楽園ホールのような、狭い空間で双方の応援団が多数を占めるロケーションなら、
多少違ったかもしれませんが、場内の「その他」の観客にとっては、見ていて
「終わるまで、大したことは起こらないだろうなあ」と確信が持ててしまう、退屈な試合でした。

判定は前に出ていて、手数、ヒットとも上の伊藤が、当然支持されました。
伊藤は渡邊が出てきた時の隙に、何らかの「合わせ」技を決めたかったのでしょうが、
渡邊は総じて消極的で、その狙いにも当然乗らない。
では、伊藤がその先、何か違うことをするかというと、何もなかったように見えました。

伊藤は合わせ技の巧さ、目の良さ、俊敏さなどに秀でて、センスのある選手だと思いますが、
ことこういう展開での「試合運び」に関しては、非常に凡庸、或いは歪な選手です。
きっと頭の中では、物凄い勝ち方、倒し方が理想像としてあるのでしょう。
しかし現実の試合展開において、それを実現するには、あまりにやること、やれることの幅が狭すぎ、
あまりに偏り、選り好みが過ぎます。この上を狙うには、不足が多すぎると改めて思わされました。


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この日はワタナベジムの若手選手も多数出場しました。
京口紘人、谷口将隆はそれぞれ勝利。谷口は少し拳を傷めたか、判定。
この両者はライバルであり友人でもあるそうですが、現時点では京口が一歩リードかという印象。

その前には、中山佳祐というサウスポーが出ました。
あれ、この選手見たことあるな、と思ったら、以前、大阪で久高寛之と対し、
二度ダウンして判定で敗れたものの、それ以外は健闘して、良い試合をしていた選手でした。
ワタナベジムに移籍しての初戦だったそうです。
タイの選手にKO勝ちでしたが、試合数がたくさん見込めるジムへの移籍を、
今後の成長に繋げられるかどうか、ですね。



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一躍、同級世界最強に躍り出た 田中恒成縦横無尽、元王者フエンテスを圧倒

2017-01-03 00:19:36 | 中部ボクシング


モイセス・フエンテスvs田中恒成戦は、大晦日当日、
CBCがネットでライブ配信したものを見ることが出来ました。

このあと、観戦のために向かった大田区総合体育館で、関東在住の方に聞いたところでは、
驚いたことに関東でも放送がなかったとのこと。
確か昨年末は中部と関東で放送、関西では放送無しだったと思うんですが、
今年はそこから一歩後退というか、より状況が悪くなっています。
(ちなみに関西では今年も放送無し。その時間は漫才の特番でした)

この手の話になると
「そういえば、畑中清詞vsペドロ・デシマの時は、関東は綱引き選手権だったなぁ」と
関東の方は必ずといっていいほど言います。
それに対して関西人は「チャナ・ポーパオインに新井田豊が挑んだとき、
関西ではハイヒールモモコ一家のハワイ旅行だったんですよ」と返し、対抗するのが常です。
お互いに自慢にも何にもならん話ですが...。

脱線しましたが、田中恒成のような逸材に、そのようなTV放送の取り扱いは相応しくない。
それを示した、田中恒成の圧倒的な勝利でした。


モイセス・フエンテスは長身、大柄なスラッガーで、スピードに欠けるが
打ち合いに持ち込んで右の強打を生かし、その駆け引きにも秀でた実戦派、という感じの選手です。
あのドニー・ニエテスと一分一敗、それ以外にもイバン・カルデロンに引導を渡した試合や、
来日もしたルイス・デラローサを初回で仕留めた試合など、あれこれ見たことがあります。
ひとたび好機を掴んだら怒濤、という、いかにもメキシコの強打者、というイメージがあり、
田中恒成がペースを渡したり、好打されて攻め込まれたりしたら危ないかも、と思っていました。

しかし実際は、田中恒成のスピードと強打が、フエンテスを圧倒し続けました。

初回からジャブ、右から左と好打。3回は右ストレート上下を突き刺す。
打っては鋭くバックステップ、フエンテスの反撃をほぼ外しきる。

4回はもう縦横無尽。左右に出ては多彩なパンチを上下に散らす。
5回、右にシフトした田中の左ボディが決まる。
フエンテスはロープに詰められ、右で崩れかけ、こらえたが容赦ない追撃にさらされ、ダウン。
レフェリーはそれまでの展開も考慮したか、カウントせずにすぐTKOを宣しました。

50キロ契約で闘ったノンタイトルのレネ・パティラノ戦と同様の、
或いはそれ以上のワンサイドマッチでした。
フエンテスが何らかの事情で不調だったにしても(前日3度計量オーバーしたそうですが)、
ここまで一方的な内容になったのは、田中恒成の圧倒的な強さによるものだと見えました。

凄いな、怖いな、とさえ思うのは、見た印象でしかないですけど、
田中恒成はまだ、テンポを完全に上げ、打つ手を出し切ったわけではないように見えることです。
スピードも手数も、パンチングパワーも、もっと出そうと思えば出せる。
しかしそこまで行かずとも、この日のフエンテスなら充分に攻め落とせてしまえた。

試合序盤から好調でしたが、それでも最初から力を振り絞り、手の内をさらしてはいない。
まだ余力はある。どの程度かまでは不明なれど、他にもまだ攻め口が残っている。
汲めども尽きぬ、とは言い過ぎかも知れませんが、田中恒成は強豪に圧勝してなお、
その膨大な才能を見る者に感じさせる、スケールの大きな逸材であることを、改めて示しました。

田中恒成は試合前日までは無冠の身でしたが、この試合内容とタイトル獲得により、
ドニー・ニエテス転級後の、108ポンド世界最強の座を手に入れてしまった。
そんな印象すら持ってしまいます。八重樫東、田口良一、ガニガン・ロペスという面々を
一気に追い越してしまった、と。

日本ボクシング界の未来は、井上尚弥と共に、この田中恒成の拳にかかっている。
そう評するべきかもしれません。
むろん、今後に様々な困難が待ち受けるにせよ、それに負けずに成長し、乗り越えていってもらいたい。
遠くない将来のフライ級進出も含め、その圧倒的な技量力量で、より開かれた「世界」の舞台で
その才能を解き放ち、闘ってほしい。そんな、壮大な夢を見てしまいます。


中部在住の友人の厚意により、放送された動画も見ることが出来ました。
以下、紹介しておきます。数日で消しますのでお早めに。


その1。



その2。




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この大晦日、岐阜の会場ではもうひとつ、注目の日本フェザー級タイトルマッチ、
林翔太vs下田昭文戦も、CBCによるライブ配信が行われていました。
これ、告知も何も見たことがなく、当日たまたまPCを開いたらやっていて、
慌てて見始めたようなことです。
TV放送は、中部で後日あるんでしょうかね。当日はなかったはずですが...。

試合展開は、序盤は下田リードで、5回終了の途中採点は、4対1で下田が二者、
あと一人は48-48でイーブン。2-0で下田。

まあ、ひとりは地元有利のジャッジがいても仕方なく(と言っていいのかは置くとして)、
あと二人の、まともな方々の支持をしっかり取り付ければいいだけのことですが、
6回くらいから林がペースを上げ、下田がヒットにより左右瞼を切ってしまうなど、
ちょっと展開が変わってきます。

下田は片方の出血がそれなりにあり、またヒットによるカットなので(実際そうだったと見えました)、
ドクターストップがかかると、負傷判定ではなくTKO負けになるということで、
ちょっとナーバスになったか、打ち込みにかかるかと思えば、足を使って捌く、という感じで、
ちょっと闘い方に迷いが見えました。そこへ林が果敢に打っていき、林が取る回が増え、
あとは微妙なのもあるが、林に流れるかな、という感じの回もあり、という具合。

そういう後半戦、9回終盤、微妙な感じだったところ、林にとっては良いタイミングで、
下田にとっては悪いタイミングで、林の右がヒットし、下田が尻餅をつくようなダウン。
足もかかっておらず、押されてもない、ヒットによるダウンでした。

林は勢い込んで最終回も出て、試合終了。
採点は正直微妙、前半の4対1、3ポイント差が覆るかどうか、でしたが、
その二者の判定が95-94、ダウンの分だけ林、と出て、あとひとりも当然、林。
3-0で林翔太の防衛となりました。

前半戦の劣勢をものともせず、諦めずに打ちかかっていった林の果敢さが、
際どい勝利を彼に与えました。
見方は様々にあるかも知れませんが、その健闘を称えないわけにはいかない、
そういう闘いぶりだったと思います。


昨年の細野悟戦に続き、下田昭文はまたも、際どく微妙な試合を落としました。
ことさら無茶苦茶な不当裁定、判定に出くわした、というのではない。
試合ぶりはどこが悪いというでなく、体調も悪くなさそうでしたが、
負傷などから展開を悪くしてしまい、僅かに及ばず、という負け方でした。
はっきり言えるのは、あまりに痛い、痛すぎる結果だ、ということだけです。

まだまだ老け込む歳でもなく、実力が衰えているとも見えませんが、
下田昭文は、またもそのキャリアにおける重大な岐路に立たされてしまいました。
彼の今後は、いったいどのようなものになるのか。注目でもあり、心配でもありますね。



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望外の完全勝利を生んだ冷静と胆力 小國以載、強打グスマンを下し戴冠

2017-01-02 16:15:02 | 小國以載



この試合が決まったとき、少しだけ記事も書きましたが、相性自体は悪くはないと思っていました。
ジョナタン・グスマンは和氣慎吾戦で強烈な印象を残しはしたものの、反則込みの勝利でもあり、
突出した強打はあるが、全体的に完成度が高いボクサーというと、まだそうとも言えない。

長身、リーチにまさる小國以載が、距離の差を生かして闘えば、
その上で過去の試合で見せた、序盤からダウンシーンを何度も生んだ長い右で先制し、
遠くからでも打てるボディブローを決められれば勝機はある...と書きかけて、
いくらなんでもこれだけ連ねると、予想じゃなくて願望だなぁ、と思い直したようなことです。
実際の試合が、こんな、何もかも良いように回るわけがない、やはりパワーの差が大きいし、と。


大晦日、大田区総合体育館で、同道した方のスマホにより結果を知りました。

TBSが当日、どういう番組を放送したのか、全てをチェックはしていませんが、
いわゆる例年通りの「スポーツバラエティ」を延々と流したあと、
9時過ぎから井岡一翔の試合を生中継し、その後にこの試合を録画で放送したようです。
えらく遅い時間の放送で、それは如何なものかと思ったものの、そのおかげもあって、
私は会場から戻ったホテルの部屋で、それを見ることが出来ました。
思った以上にクリアな勝ちでした。
もう少しグスマンの追い上げがあったのかと思っていましたが、採点以上の差が見えた試合でした。


序盤から、好調時の足の動きがあり、なおかつほどよく重心が降りた構え。

相手の身体の軸、正中線をインサイドから打てる長いジャブ、右ストレート。
ボディ攻撃は右ストレート、左アッパーを内外に打ち分け、またこれを、遠近両方で打てる。

好機の詰めがやや甘く、派手な連続攻撃はないが、打つべき手は打ち、下がるときは躊躇なく下がれる。
長身、リーチを利して懐深く、防御動作に無駄がない。

序盤に好打で先制、ないしはダウンを奪うなどでリードした試合展開の場合、
その優勢な状況を生かして、その後の試合を巧く運ぶ勝ちパターンを持っている。
総じて機を見るに敏、冷静。


これら、過去の試合で小國以載が見せてきた特徴が、最初から最後まで十全に出た試合でした。

見ていて、この大舞台で、これだけほぼ完全に自分の良さを出し切れるものか、と驚嘆しました。
試合運びは徹底的に冷静で、その闘いぶりは、見た目からは窺い知れない、
彼の「胆力」といったものに支えられているのでしょう。

しかし、思い返せば彼がOPBF王座を獲った時も、大橋弘政を攻略したロリ・ガスカ相手に、
当時ランク15位だった小國が勝つとは、少なくとも私は思っていませんでした。
彼はその時の驚きを、今度はIBFのタイトルマッチで再現してみせたわけです。

序盤から長い距離を構築し、望外のノックダウンを奪い、そのリードを次の展開に生かす。
グスマンの反撃を、ダウン奪取時にダメージを与えたボディ打ちで食い止め、断ち切る。
距離の違いを最大限に生かし、ジャブだけでは止まらなさそうなグスマンを、
時に右ストレートで狙い打ち、突き放し、リードを守って試合終了。
大まかな流れは、こうして振り返ると、丸ごとガスカ戦のそれを踏襲していました。

ガスカ戦との違いは終盤です。かつては終盤、失速する傾向もありました。
ところが今回は、終盤にもしっかりヒットを重ね、打ち込み、その追撃の流れで
またも強烈なボディ打ちを決め、グスマンを再度ダウンさせました。
レフェリーが不自然なほど酷い誤審をしましたが、あれは実質、KO勝ちだったと思います。
このあたりは明確に、成長した部分だと言えるでしょう。

ここに至るともう、改めて脱帽というか、お見それしました、という感じで、
見ていてとても嬉しい気持ちにさせてもらいました。


出来れば実際に、会場で彼の戴冠を見たかったという思いもありますが、
初防衛戦はどうあっても、そうさせていただくことにします。
その初防衛戦は、岩佐亮佑で決まりのはずなので、ちょっと複雑ですが楽しみですね。

小國の唯一の敗戦の相手、和氣慎吾と同じくサウスポーなのが、ちょっと気がかりですが、
自分の良さを確実に伸ばして、予想不利の試合を覆してきた小國ならば、
また我々を、大いに驚かせてくれるのかもしれません。

翌日会見はこんな感じだったそうです。
さっそく飛ばしてますね(笑)


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井岡一翔は、暫定王者スタンプ・キャットニワット18歳を7回TKO。
2回に、ヒットを取ったあとの「移動」を怠るポジショニングミスをしたところを打たれ、
ダウンしたのにはちょっと驚きでしたが、4回くらいから左で立て直し、断続的に連打で攻め、
7回にボディ攻撃でフィニッシュしました。

ついに実現、夢の対決、統一戦...というような試合では全然なかったですが、
それでも闘志に溢れる若い挑戦者を、ダウン以外は問題なく退けた井岡一翔の実力は、
一流王者や上位が次々と転級し、大げさに言えば過疎状態にあるフライ級においては
高く評価されるべきものだと、改めて示した一戦でした。

しかし、まあ「いつもの感じ」ではありましたね、良くも悪くも。
距離が長いとか、抜群に速いとか巧いとかでもない、
井岡一翔のコントロール出来る範囲内に収まる相手を、今回も慎重に選んだのだなぁ、と。
もちろん、その目論見通りに勝つ技量は、一定の水準において、大したものではあるんですけど。

名のある王者がいなくなって、翌日会見では毎度の通り、あれこれ言ってはりますが、
記者の皆さんもええ加減飽きてはるんやないですかね、と思ったりもします。
こういう緩い状況になるまで、耐えて忍んで艱難辛苦...ってな現象は、
何も井岡一翔の周りに限った話でもないですが。

とりあえずはドニー・ニエテスの奮戦によって、伝統階級たるフライ級が、
少しでも従来のレベルに近づくことを、ボクシングファンとしては願うしかないですね。


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雪辱ならず、しかし彼は敬意の中を去った 内山高志、コラレスの逃げ切り許す

2017-01-01 03:42:23 | 関東ボクシング

昨日は大田区総合体育館に行ってきました。
関西依怙贔屓で売る当ブログとしては、京都に行くのが筋やないのか、という気もしたんですが、
どうしても内山高志の「最後の一戦」をこの目で見ておきたい、という思いでした。


セミが終わって場内にTV東京のVTRが流れ、それが終わろうかというときでした。
青コーナーの方から、内山の名を呼ぶ声が沸き上がり始めました。
ひょっとしたら、花道の奥に内山の姿が早めに見えたのかもしれません。
まるで彼の登場を待ちきれないように、人々は早々に声を上げていました。

両者入場、本来なら...もう、こういうのは古い考え方なのかもしれませんが、
後から入ってくるべき王者、ジェスリル・コラレスが先に登場し、次いで内山が入場。
場内は一斉に大歓声と拍手で内山を迎えました。

長きに渡る「王朝」を築いた男への、雪辱の期待はもちろんのこと、だったでしょう。
しかしその熱量は、単なる目前の一戦を勝利することのみに向けられたものではなく、
ひとたびの敗北で却って浮き彫りになった、ひとつの勝利がいかに難事であるか、
その積み重ねが、どれだけ膨大な労苦の元に成し遂げられた偉業であるかという
事実に対する、改めての驚嘆と敬意にも満ちている。そんな風に感じました。


試合は序盤、内山より大柄で、なおかつ速い驚異のサウスポー、コラレスの優勢でした。

何しろ大きく、距離が長く、踏み込みが速い。
左のパンチは、内山を鋭く脅かす。立ち上がりは内山、外せないかに見える。
内山が出ると、体を左右に翻して、連打とスイッチを織り交ぜた攻撃でヒットを取る。

しかし同時に、これらの攻め手のみならず、防御、というのを通り越した「護身」もまた、
こちらの想像を超えた次元のものでした。
好打してはクリンチ、ミスブローしてもクリンチ、という具合で、自分のやることだけやると、
ひたすらに体を寄せ、揉み合う。ことにミスブローのあとのクリンチが一番スピードがあることには、
見ていて呆れるのを通り越し、感心してしまうほど。

能力が高いことは見て取れるが、果たしてこの選手、本人が模索していたという
「ビッグマッチ」の舞台たる、米国のマーケットで売り物になるボクサーかな、と疑問でした。


しかしそのボクシングは、内山にとり御しにくく、脅威であるのも事実でした。
3回、ボディを打たれ、スイッチを交えてのコンビで後手に回らされる。
右ボディストレートが散発的に出るが、そのたびに倍する手数、ヒットを喫し、
後続をクリンチで断たれ、また攻められ、序盤は失点続きでした。

5回も低い姿勢から突き上げるようなワンツーなどを打たれ、劣勢。
しかしこの回終盤、コラレスがミスしてバランスが崩れ、そこに左フックが当たったか?
ダウンの裁定。場内一気に歓声に満ちる。

これで流れが変わるかと淡い期待もしたが、コラレスは頻繁にスイッチし、
左右の構えから左フックを決める。内山の攻めは散発的。
8回を経ても流れは変わらずも、9回終盤に内山がボディを決め、
10回は右ボディから猛攻。左右のボディが数回決まり、コラレスは露骨にホールド。

場内は囂々たる声援、しかし内山攻めきれない。
11回、コラレスはほぼ横向いて回り、しまいには走って逃げる。
揉み合いでは、ロープをつかんでのクリンチも。
しかし攻めると、軽い連打を放り込んでくる。また逃げ、クリンチ。
最終回は内山が攻めたが、ノックアウトはならず、判定でした。


採点は2-1でした。会場での私の採点は、115-112でコラレス。
自分では、内山に甘いかな、と思った数字でした。


試合後、場内は判定への不満も、ちらほらありました。
しかし内山本人がインタビューで、悔しさを押し殺して静かに敗戦を認め、
場内へ感謝を述べると、誰もが結果を受け入れねばならない、という雰囲気にもなりました。


試合全体を見て思うのは、ジェスリル・コラレスの能力の前に、
現状における内山高志の戦力は、それを攻略するにはさまざまに不足があった、
ということです。厳しいようですが、そして残念至極ですが、そう思います。

そして、過去のどの時点かなら、それがかなったのか、という問いには、もう意味はありません。
時は過ぎ去り、王朝は終わり、失われたものがいかに偉大で、貴重なものだったのかを思い返す。
我々に出来ることは、それに多大な敬意を払うことのみ、です。



感情を押し殺して言葉を紡いだのち、内山高志は静かにリングを去りました。
その背中に向けて、盛大な拍手と、敗れてもなお敬意に満ちた声がかけられていました。

そのしばらくのち、勝者コラレスがリングを降りる頃には、場内は閑散としていて、
彼を称える声も拍手も、まばらなものでした。

この日、フルラウンドの闘いで見せた姿がその全貌である、とするならば、
少なくとも私は、この選手の能力の高さが、現状の内山を上回ることは認めるにせよ、
到底、敬意の対象たりうるものとは思いませんでした。


そして、改めて内山高志の偉大を思っています。
どんな相手にも、堂々たる闘いぶりで、強烈な勝ち方を長きに渡り見せ続け、
そのこと自体が当然であるかのように存在していた、王者の姿を。

今更詮無いことですが、その頃に、一度でもいいから、直にその姿を見ておくべきだった。
愚かしいことこの上ないですが、そんな風に思っています。







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