さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

狙い定めて「斬り」倒した 井上尚弥復調、河野公平有明に沈む

2016-12-31 01:27:16 | 井上尚弥



今日は有明コロシアムにて観戦してきました。
最後三試合が生中継され、清水聡の試合も放送されたとのことですので、
ざっと感想から。


メインは井上尚弥がここ二試合の不調ぶりを見せることなく、ほぼ好調でした。
河野公平はガードを固めて前進、時に真正面からストレート、
時にフックでガードを外から打ち抜きにかかりました。

しかしその前進をジャブで突き、河野のガードが前に出たところをフックで叩き、
強烈な左でボディをえぐり、右をまじえて対角線のコンビを決め...
井上尚弥の自在かつ強烈な攻撃は、見る見るうちに河野公平を切り刻んでいきました。

ことに、かつては剛の拳を振りかざし、所かまわず強打して相手を圧倒していた井上が、
右を打つ頻度を下げて、左の数を増やし、相手を崩していくさまは、
最近の故障続きのわが身を省みた闘いぶりと見え、感心させられました。

4回、かつてマルガリート戦でマニー・パッキャオが見せた、ガードを固めて止まる姿を
井上が再現したのには少し驚きましたが、あれも優勢ながら膠着、という状況を生んだ
河野の闘志とタフネスを揺るがすための方策だったのかもしれません。

左の多様、対角線のコンビ、右アッパーの迎え撃ち、そして効果的だったボディ攻撃。
桁外れの破壊力、豪快さの代わりに、それぞれの攻撃をアクセントにし、より生かす形が見える。
それは最後、河野が好打の手ごたえの有無を構わず出ざるを得ない展開で決めた、
6回の残忍なまでに狙いすました左フックのカウンターが象徴していたように思います。


そして、ここ二試合の不調から脱した、的確かつ威力十二分な井上の攻撃にさらされながら、
十分に「らしさ」を出し切って敗れた前王者、河野公平の闘いぶりにも、圧倒されました。

3回や5回などは、ボディでダメージを受けていただろう、その上にさまざまな形で攻められ、
普通の選手だったらもう2、3回倒れてる、と思うほどの劣勢でした。
去年、ろっ骨を折って世界戦を延期していることもあり、ボディ攻撃で劣勢となった後は、
そのことが気になって、心配する気持ちになってしまいました。

しかし普通なら一線を越えたはずの劣勢でも、河野公平は河野公平のままでした、
あの井上でも、単に力押しでは崩しきれなかったであろう、と見える粘り強さに、何度驚嘆したかしれません。
最後はうまく引き寄せられ、強烈なカウンターの一撃に沈みましたが、
あの強烈な負け様もまた、河野公平ならではのものだと、妙な言い方ですが感心しました。


スーパーフライ級の新旧対決、昨年末に実現していれば二団体統一戦だった一戦は、
結果と内容で、見る者を圧倒し、納得させる見ごたえ十分の一戦となりました。
復調を示し、今後の飛躍を改めて期待させてくれた井上、
敗れたりといえども、その存在感を十全に示した河野、両者を称えたいと思います。


あと、最後については、レフェリーが無茶をしたな、とは誰もが思うことでしょうが、
河野陣営も、最初のダウンでタオル入れるなりしないと、とも思いました。
立ち上がった河野はぐらついているのみならず、一瞬、井上の方が見えていないような印象でした。
事故にでもなったら...なんて、今さら言わせないでもらいたいです。
今時、こんな無茶なことがまだあるのか、と、愕然となってしまいました。


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セミ以下も簡単に。
八重樫東はこれまた、前回、けっこう重篤な負傷を抱えたまま闘った、苦闘の印象を
格下とはいえ粘り強いサマートレック相手に、払拭した一戦でした。

相手との力量差もありましたが、丁寧に左を突き、足も使って動き、一発狙いでなく
適切なコンビネーションの選択も見え、良いタイミングも取れたので、
強振せずともヒットの分だけ効果もあり、良い回りの展開が続きました。

元々、こういう展開を作れるセンスは十分、持っていた選手のはずです。
しかしミニマム級の頃の、相対的に強打者の側だった頃の感覚のせいか、
どうも打ち合いを長くやる印象が否めませんでした。

友人が「久々に良い八重樫を見たよう気がする」と言っていましたが、同感でした。
次がたぶん指名試合か何かになり、その相手に同様の試合が出来るかどうかはわかりませんが、
せっかく掴んだ良い方向性は、是非に「次」でも見せてもらいたいものです。


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村田諒太はメキシコのブルーノ・サンドバルに3回KO勝ち。

パンチはないが、いかにもメキシカンなボクシングで、左フックやアッパーを
巧みに上下に散らしてくるサンドバル相手に、2回までは打たれっぱなし。
左リードに切れがなく、後続の右も、返しの左が来ないと相手に知れて、ダックで逃げられる。

相手にパンチがないと知るほど雑になる村田の悪癖を、またさんざん見せられるのか、
と少々げんなりしたところで、3回、右が二発決まってサンドバルがダウンしました。
当初、スリップの裁定でしたが、見るからに効いていて、なぜカウントしないのか不思議でしたが、
途中からカウントを取り始め、サンドバルはダメージ甚大、驚くほど効いていて、とてもじゃないが立てず。
そのままKOとなりました。

福地レフェリーは、正直、ジャッジとしては信用ならん、という気もしますが、
レフェリーとしては良い部類で、ことストップの判断に関しては、実に良い例を何度も見たことがあります。
それだけに、稀な全国生中継の試合で、こんな不細工なことになってしまったのは残念でした。

仮にスリップ、つまりヒットのダメージでなく倒れ、その際にキャンバスに頭を打ってダメージを負った、
という判断ならば、サンドバルに休憩を与えて試合を再開するのが筋でしょうが、
なぜか「やっぱりカウントします」ってやっちゃったんですからね。完全なミスと、その自己追認です。
かばい立てしようのない失態でした。


村田諒太に関しては、先日の記事に書いたこちらの見方を覆すような試合ではありませんでした。
世界のミドル級に挑む状態には、ちょっと遠いような気がしてなりません。
「番組」のナレーションから、知らない間にゴロフキンの名前が消えてなくなっていることにも、
なんだかいかにもタコにも、って感じがします。


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その他前座について...というか、今日の試合は、第一試合の原隆二、山本浩也戦以外、全部KOでした。

原は初回からボディ攻撃で攻め込むが、序盤からの攻めで相手を倒すまでの爆発力はなく、
山本も徐々に反撃に出る。しかし原が粘る山本を再度攻め、判定勝ち、という試合でした。

第二試合はオタ井上こと?サウスポーの井上浩樹が、岐阜のパンチャー宇佐美太志と対戦。
初の日本人対決で、あの宇佐美を選ぶとは強気な、どうなっても知らんぞ...なんて思っていたら
井上浩樹が見事な強さを見せました。韓国遠征試合などを経て、こちらが見てない間に筋金が入っていたのでしょうか。

井上、右リードがジャブ、フックと出る。2回、ボディを打ちに来た宇佐美に、鋭い左アッパーを決めて倒す。
3回、連打で倒し、右でよろめかせてストップ。終わってみれば圧勝でした。

「(宇佐美は)イケメンだったので、オタク代表として許せないなと」
「勝ったので明日はコミケに行きます」

コメントもなかなか個性的な井上でした。これは今後、要注目です。


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5月に敗れたビクトル・ロペスに再戦を挑んだ長身、松本亮が雪辱を果たしました。
しかし、松本は5月の敗戦試合よりはいいものの、その前までの不調ぶりはそのまま。
長身、リーチを生かしきれず、懐を深く使えず、動きに乏しく、好打しても動かず止まっているため
相手のお返し、リターンを高い頻度で受けてしまい、試合のペースを握れない、という印象。

実力をどう見るかはおいて、闘志、意欲を見せるロペスに好打され、右から左のヒットも生きない。
6回、それでも右をヒット、追撃の右も決まり、ロペスを打ち込んでストップ勝ちしましたが、
病気からの回復は見えても、そもそもそれ以前からの不調はそのまま残っていました。
今後が明るく見通せるとは到底言えない出來でした。


五輪銅メダル、清水聡はカルロ・デメシーリョを3回、右フックのカウンターで、文字通り「沈め」ました。

デビュー戦でもそうでしたが、一見滑らかではない動きなれど、相手を全部、自分の掌の上に乗せている印象。
初回、ジャブで間を埋め、左。2回、心持ちクラウチングで圧し、デメシーリョの手を引き出す。
3回、連打で攻め立て、デメシーリョが体を回して打つタイミングで、右拳をその位置に「置く」かのような
振り幅の小さいカウンター。デメシーリョはダメージ甚大、試合後もなかなか立てず、場内も静まっていました。

なんというか、このレベルの相手と試合させるのは危ない、事故になるかもしれん、と真面目に思います。
たぶん、見えている景色や、時間の流れが全然違うんだろうな、というか。

デビュー戦の韓国人選手もそうでしたが、清水は相手の動きを利用して、小さなパンチで最大の威力を生む、
非常に危険なカウンターのタイミングを持っています。
これから相手が強くなっていく上で、そのタイミングを追い求めるだけでは済まなくなるのでしょうが、
この恐ろしい狙いを持つカウンターパンチャーが、自らにどういう肉付けをして、上昇していくのか。
大いに楽しみです。


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手短に、と思って書いても、毎度のことですがけっこう長くなってしまいました。
長丁場で、引っ掛かることもありましたが、総じて熱戦、見どころ多い興行でした。

明日、ではなくもう今日ですが、内山高志の試合を見てきます。
当然、感想は年明けになりますが、また何か書くとして、それを皆様への、新年の挨拶に代えさせていただきます。
本年も拙い当ブログを、広いお心で読んでくださった皆様に感謝いたします。
来年もどうかよろしくお願いします。




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まだ足りない「段階」/天草で世界戦/対照的/ロシアの異様/レナードを踏襲?

2016-12-28 00:29:14 | 話題あれこれ



年末の世界戦ラッシュ、おいおい感想を書いていくことになりますが、
試合の数だけ公開練習があり、調印式があり計量があり...例年同じ事を思いますが
取材する方々も、大変な思いをしておられることでしょうね。

とりあえず、おのおのの試合については、予想というか思うところはざっと書いてきたので、
それ以外の話題を拾ってみました。


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ミドル級の世界戦線は、ゴロフキンがダニエル・ジェイコブスと対戦決定し、
残るWBO王者を巡っての争奪戦があれこれと話題になっています。

カネロ・アルバレスは、良いお金になる試合(チャベスJr.戦?)或いはWBO獲得を経て、
ミドル級への順応を果たし、同時にゴロフキンが多少なりとも疲弊し、下降するのを待ち、
その上で対戦に踏み切る、という目論見のようですね。
まあ、そうそう何もかも都合良く、話が回るはずもないでしょうが...。

で、村田諒太はというと、30日の試合を経て、現王者サンダースへの挑戦希望のようです。
率直に言うと、ミドル級での世界挑戦は、確かに最強ゴロフキン相手ではなくても難事で、
壮大な挑戦ではあるんでしょうが、そこに辿り着く段階には、まだ全然来ていないと見えます。

現状の村田は、元五輪金メダルの肩書きはあれど、中堅やベテランに快勝出来る、という
位置でしかなく、ここから世界を目指すために、例えばヒトロフ、ファルカンといった五輪組や、
或いは世界上位の誰かひとりとでも対戦し、勝つくらいのものを見せないと、
挑戦者として選ばれるには、いかにも不足が多い、と言わざるを得ません。
まあ、サンダースが「格下ながら五輪金」の選手を選ぶ、という構図ならあり得るのでしょうが。

30日の相手の実力は見てみないと不明ですが、快勝するにしてもよほどの水際立った内容でないと、
世界どうという感じではないように思います。
世界への「前段階」ではある、そこに来てはいる、それだけでも大したものではあるんですが...。


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熊本の天草で、WBOミニマム級暫定王座決定戦が決まったとのこと。
福原辰弥がメキシコのモイセス・カジェロスと対戦だそうです。

これ、真正ジムの山中竜也が出る、という話だったはずなんですが、ランキングで言えば
福原が2位、山中は4位で、今回はそういう順番?の通りになった、ということなんでしょう。
福原は井上拓真戦で見たのみですが、しっかり鍛えられていて、粘り強い闘いぶりでした。
暫定というのは残念ながら、震災で苦しんだ熊本に王者誕生なるか、期待したいですね。
しかし試合を見る手段があるのかどうなのか、非常に暗い予感がします...。


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辰吉寿以輝のA級昇格初戦、相手は31戦のキャリアがある石橋俊とのこと。

デビューから、実力以上の注目を集め、キャリア構築もスター用のそれを用意さえた辰吉と、
強敵相手に負けも多いが、歴戦のベテランである石橋。
正直、意味のわからん外国人選手としばらく闘うのだろうと思っていたので、驚きのマッチメイクでした。

試合のレベルが高いものになるかはわかりませんが、当日の会場が、
なかなか熱量の高い盛り上がりを見せるのではないか、という想像は成り立つと思います。
今回の試合が、厳しいマッチメイク、と言えるかどうかは微妙なれど、
これからも安易な道には行かず、じっくりと実力をつけていってもらいたいですね。


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いやもう、この人、いったい何回目ですかね、こんな話
実力自体はある選手だと思うので、余計に残念ですが。

しかし、統括団体がやっとこさ、ドーピング検査に厳しい体勢を整えたら、
途端にあれこれ、出るわ出るわ。ええ加減にせえよおのれらは、という感じですね。

何もロシアに限った話でもないんでしょうが、他でもこんな記事があります。
以前BSで見た、ドイツ人ジャーナリストによる告発番組なども見ると、
記事にあるように「感覚が違う」としか言えないですね。
そして、ポベトキンもまた、その範疇に入る人なのだ、ということなんでしょう。


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メイウェザーの再起については、本人は否定一辺倒なれど、
パッキャオとの再戦がどうの、という話は途切れることなく話題になっています。
そこへ加えて今度はゴロフキン戦、という話というか「話題」も。

現在、世界的に見ても若干、停滞気味なボクシング界ですが、
その要因として一番大きいのが、記事中にもあるパッキャオ戦の内容でしょうね。
その組み合わせをもう一度、機運が高まれば、みたいな話には、首をかしげるばかりですが、
ゴロフキン戦となると、話の筋としては如何か、と思うものの、やはり気を引かれてしまいます。

これまた記事中にあるとおり、ハグラーに挑んだレナードの例を踏襲するか、というと、
レナードのナルシズム、エゴイズムは、メイウェザーのそれとはまた種類の違うものだと思います。
レナードは名誉のために、無謀と見える挑戦をするナルシストでしたが、
メイウェザーは何よりもまず自己保身が先でしょうからね。
あるとしたらゴロフキンじゃなくパッキャオなんでしょうね。

あちらでは、引退後もあまりに生活が派手なので、あれだけ稼いでてもすぐ破産するで、
なんて囁かれているそうで、あまりにもありがちな話に嫌気が差しますが、
そうなれば早晩...という感じなんでしょう。

その才能は驚異的なものでしたし、それは認めざるを得ないんですが、
やはり現役時代同様、いろいろと「如何なものか」と思わされます。
その一点においては、過去に類例のない存在です、このお方は。


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熱戦増加傾向にあり、という印象 今頃全日本新人王戦雑感

2016-12-27 22:36:51 | 新人王戦


ながらく更新が滞ってしまいました。
年末連続観戦予定のためもあり、ちょいと忙しかったのもありますが、
例えば全日本新人王だとか、いろいろ気になる試合とか、CSやネット動画で見る、
そのくらいの暇は充分あったんですが、何となくキーボードに手が行かず。
ひょっとしたらこれ「長谷川ロス」なのかなあ、とぼんやり思ったりもしました。

しかし、ええ歳こいてそんなことばかりも言っていられず、言うてる間に
年末上京観戦ツアーも目の前に迫ってきました。
とりあえずは一番最近見た全日本新人王についての感想をざっと書いて、
あとは年末のタイトルマッチラッシュについて、おいおいやっていきます。

年末観戦は30日有明、31日大田区に行きます。
京都での小國以載世界戦だけは、後ろ髪引かれる思いではあるのですが...。


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ということで今頃ですが全日本新人王決定戦。こちらに詳しい記事が出てます。
簡単に、目についたところを。


ミニマム級は、身体のパワーでは富岡達也でしたが、西の富田大樹が3回から足を使い
ジャブを増やした切り替えが奏功した感じでした。


ライトフライ級は試合内容よりも、G+実況解説の無茶苦茶さが印象的。
目の前でやってる試合で、何が起きているのか見えてないんか...と。
蟹江ジムの戸谷彰宏、パワーに欠けるがインファイトで正確なヒットを重ね勝利。
このジムはちょいちょい、新人王決勝に好選手を出してきます。指導者が良いんでしょうね。


フライ級の注目対決は、終わってみればボクシングへの習熟度の違いが出た、ということか。
まだ18歳だという、サウスポー中谷潤人の、若さに似合わず練れた感じと、
当て勘とパワーに頼った八方破れの矢吹正道の攻防は、ラフだけどスリル溢れるものでした。


Sフライはサウスポー福永亮次の左ストレートが当たる位置に、
藤本耕太が自分から寄っていく繰り返しで、見ていて奇異にさえ思いました。
対サウスポー対策を誤った選手と陣営を見たことは数あれど、これほど酷いのは珍しい。
普通に見て、そういう印象でした。私にはわからない意図があったのかもしれませんが。
藤本の身体の切れやスピードを見ると、充分勝てる相手だったと思いましたが。


バンタムは西日本ではMVPだった城後響が、正確なヒットを取るも
パワーと手数で押す新島聖人に二度ダウンされ、4回にストップ負けでした。
2回の攻防などは、再三好機と危機が入れ替わるスリリングな展開。
城後は再三あった好機に、逆に好打を浴びてそれを手放したのが痛かったです。
詰めの甘さ、パワー不足も僅かに感じました。


Sバンタムは当てる巧さ、外す巧さでは上だったと見えた松本竜也を、
サウスポーの岡本文太が際どく攻略。若干攻勢で上回ったか。
松本は受け身になりすぎた時間があり、それが響いた。


フェザーは専門誌などでも取り上げられていた注目の木村吉光が
スピード豊かに攻め込むも、2回に真っ正面から行くところに澤井剛志の左でダウン。
それ以外の回は速さで上回り、サイドに出て、ボディも攻めて押さえたが、
時々正面から行ってしまう場面もあり。
フライ級の矢吹正道同様、素質はあるがまだこなれていない。良い素材ではありそう。


Sフェザー級はサウスポー対決、ダウン応酬だったが、より深いダメージを与えた
粟田祐之が、最終回に上田隆司をリングエプロンに叩き出す派手なシーンもあり。
体格に恵まれた両者だが、パワーの差で粟田。


ライト級、スイッチヒッター?の石井龍輝が、小田翔夢の強打に対し、
当ててはクリンチ、という展開。3回、石井のヒットが4発あり、
そこで小田がマウスピースを落とすと、石井がレフェリーにアピール。
しかし誰も試合を止めていないので、小田が右から連打、ダウンを奪う。
これで心身ともに動揺した?石井に、小田が右アッパーを出鼻に叩いて4回KO。

この3回のシーンは本当に驚いたし、色々考えさせられました。
石井にしてみたら、アマチュア時代の感覚そのままの「スポーツマンシップ」だったのでしょうが、
私のような古い人間には「そこ、もう一発打つチャンスやのに」「誰も試合止めてないのに、
何やっとんの」としか映らないものでした。
なんというか、時代は変わってるんやなぁ、というか...。
これも、いつ頃ボクシングを見始めて、どんな試合を見聞きしてきているか、という部分で
だいぶ受け止め方が違う話なのかもしれませんが。



Sライト級は吉開右京がシャープな右を連発し、最後は左フックで大野俊人を3回KO。
大野は驚異的な逆転劇で勝ち上がってきた猛ファイターでしたが、
全日本の決勝では、逆転勝利はかないませんでした。
吉開はこのクラスにおいては、素晴らしい切れ味を持つ好選手でした。今後に期待です。


ウェルターとミドルは、それまでのクラスと比べると、若干スピードや切れが落ちる。
豊島亮太とあぐーマサルは、打ち合いの中でより相手を見て闘えた方が勝った、という印象でした。


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全日本新人王戦は、力を入れて見るきっかけひとつで、見始めると止まらない、
予選の段階から誰それを追いかけて、なんて思ってしまうと一巻の終わり、という感じですが、
ここ数年、全体的に好試合、熱戦、劇的な展開の試合が多くなっているような気がします。
今回も例年通りの長丁場ながら、生中継を見ていてもあっという間に時が過ぎてしまいました。


反面、階級にもよりますが、この試合の勝者が日本ランキング下位に入る、というのは
如何なものなのかな、と思うのも事実です。

もう数十年前、協会からの要請をコミッションが受け容れて、
優勝者を自動的に日本10位(今は15位)にする、という申し合わせが出来たのだそうです。
しかし、JBCルールに明文化されているでもなく、当時とは色々、事情も出場資格も違うのだから、
何も全階級、判で押したようにランカーにすることもないだろう、と思いますね。


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幸福な引退に祝福を 長谷川穂積引退表明

2016-12-10 14:31:49 | 長谷川穂積


長谷川穂積引退表明、正直言うと驚きでした。
過去の例からいっても、たぶんもう一試合、防衛戦を闘うだろうと思い込んでいました。

もちろん、このまま引退するのが一番良い、それが出来ればなぁ、と思ってはいました。
しかし、何かとあれこれ難しい世界でもあり、そうはならないのだろうな、とも。

今回、現実に王者のままの引退が実現したことは、事情はどうあれ、長谷川ファンとしては嬉しいことです。
9月の勝利は、単にそれ自体が望外の喜びでしたが、進退がこうして決まった今、
思い返せば、あれ以上幸福なフィナーレはなかったのだ、と思えます。
終わりよければ全てよし、といいますが、どちらかというと「さらによし」とでも言えましょうか。


過去に、長谷川に匹敵する業績を残し、それを越える広範な支持を得たボクサーの中にも、
いずれ来る「ボクサーでなくなる」時を、不幸な形で迎え、過ごしている者もいます。
それを思えば、長谷川穂積がこのような引退をかなえたことは、僥倖とさえ言えるのではないでしょうか。


彼への思いは、尊敬や感謝と共に、ときに分不相応な「評」も含め、
長年に渡りこのブログで書き綴ってきました。
この10数年、ボクシングファンとして、良くも悪くも様々なことを思いましたが、
長谷川穂積の存在そのものが、時に諦観に覆われてしまうファンとしての思いを、
いつも救ってくれていたように思います。

ボクシング「業界」の卑小さ、自業自得により、日本のボクシングそのものが
数多くのタイトルホルダーを抱える反面、確実に、日々やせ細っている現実の前に、
一介のファンの思うことなど、本当に無力です。
しかし、かつてその状況の中、ボクシングそのものの価値を、凄さを、
自らの闘いぶりで端的に表現し、ボクシングそのものを護る砦のように存在した
天才サウスポー、長谷川穂積の記憶は、永遠に消えることはありません。

そしてこれからも、かつての長谷川のように存在しうるボクサーの姿を、
私は、変わることなく追い続けるのだろうと思います。


今はただ、長谷川穂積の幸福な引退が実現したことを祝福したい。
彼への感謝と共に、そして変わらぬ尊敬の気持ちを込めて。それが率直な気持ちです。
長い間お疲れ様でした。数々の素晴らしい試合をありがとうございました。


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今朝放送の「せやねん」動画紹介しておきます。
数日で消しますので、お早めに。

その1。


その2。


その3。
コメント (11)
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強打を「当て」にせず、生かして闘った 尾川堅一「セカンド・レグ」を僅差で制す

2016-12-05 07:22:35 | 関東ボクシング




ということで、一昨日はけっこう久しぶりの後楽園ホールにて観戦してきました。
昨年も観戦した、尾川堅一vs内藤律樹の再戦でした。

前回の「ファースト・レグ」の結果を受け、真の決着がつく「セカンド・レグ」と言うべき一戦。
強打の尾川、技巧の内藤、とカラーがはっきりした両者の対戦は、
その構図は変わらずとも、前回とは少し違った展開になりました。



初回、尾川がいきなり仕掛ける。内藤少し下がり気味、ロープに近い位置取りを強いられる。
しかし尾川、焦って出るのではなく、よく見ている印象。いつもより力みが取れている。
内藤徐々にジャブも出すが、やや立ち後れの感。

尾川右ボディ、前回はこのあと上に右が来た。内藤は飛び退く感じでかわす。尾川の回。

2回、尾川頭を動かしながら右、左とヒット。内藤は左出すが浅い。尾川。

尾川は前にのめらず、冷静に当てている。強振せず、当てていく感じ。
パンチのある選手がこういう風に落ち着いて来ると、相手としたら辛いところ。

3回、内藤右ジャブから。4発ほど決まる。尾川はアッパーからリードも、内藤の左ヒット。内藤。

4回、詰めた距離の攻防。尾川、肩当てて出る。ボディ、ジャブの応酬。
内藤のアッパーが入るが、直後尾川の右。内藤ぐらつく。両者効いていないとアピール。
尾川は追撃すべきところだったと見えたが。まさか自分も効いていた?尾川の回。

5回、スリルある攻防。尾川ボディから攻め、内藤は果敢に左を打ち返す。
内藤ヒットは取ったが、同時にフォームが乱れ始める。内藤。

6回、近い距離で打ち合い。尾川左、内藤右フック、左もヒット。軽めだがバッティングが増える。
両者カット、傷は大きくはない模様。やや内藤。

7回、内藤が右フック合わせ、攻勢。左上下、ジャブ、尾川を後退させる。
尾川右返す。内藤左ヒットもやや浅い。もう少し強いヒットで尾川を止めたいが。内藤。


8回、これまでと違い、体力の無駄遣いをしていない尾川が、左右のボディを立て続けにヒット。
内藤も返すが、今度は右ダイレクトを上に。引き寄せてカウンター狙いも。
スリップダウンを挟んでまた右ヒット。攻勢、ヒットとも尾川。

ここまで流れは五分ながら、終盤乱れ、落ちるとしたら尾川の方か、と見ていたが、
尾川がそんなこちらの先入観を覆した回。

9回、尾川、力まず7~8割の感じで右をヒット。強打者ゆえ、これで威力も充分。
的中率もぐっと上がる。内藤左を返し、相打ち気味のヒットもあるが、
本来まさっていなければならない、効率の良さでも尾川に劣っている。尾川。

10回、内藤は厳しい局面、尾川をぎりぎりまで引き寄せて左狙いという風。
しかし尾川の方が良いペース、フォームも崩れていない。
内藤、右フックヒット。尾川ロープに押し込む。内藤なかなか回れない。
尾川ボディを攻める、内藤ブロックするが、反撃ならず。難しいが攻勢で尾川?

判定は三者とも96-94。私はドローか尾川、という感じでした。


終始、非常に内容の濃い攻防で、あっという間の10ラウンズでした。
採点については、自分の見方が絶対とは言えませんが、内藤の勝ちはない、あってもドローまでという印象。

前回のそれとはまた違った趣の展開でしたが、それは尾川堅一の闘いぶりの違いだった、といえます。
相手の出方を見もせず、とにかく手応え欲しい、倒したい、という風だったこれまでの試合ぶりとは違って、
持ち前のスピードと強打を振りかざすのでなく、それを「担保」に使って、試合を回していく、という風でした。

上記したとおり、強打でダメージを与えようとするばかりでなく、力まず当てて、ペースを掴んで、その上で攻める。
「体力の浪費」「低燃費」だった過去と違い、然るべきところに、適切にエネルギーを配した闘いぶりで、
故に終盤になってもフォームの乱れが最小限に抑えられていて、終始続いた緊迫の攻防を、堂々と闘い抜きました。

過去の試合ぶり、前回の試合、その後の防衛戦二試合と比べ、成長の跡がはっきりと見えました。
正直言って予想外で、感心させられました。
松下拳斗(玉越強平)戦の後半に、その兆しは僅かにあったかな、と今になって思いもしますが。


対する前王者、内藤律樹は、これまでと比べて落ちているということは全くなかったですが、
目に見えて成長、変化が見えた尾川の前に、僅差ながら敗れました。
要所で見せたジャブ、左カウンターの鋭さは健在で、インファイトに巻き込まれたという風でもなく、
悪い展開というでもなかったですが、それでも敗れた。

好ファイトでしたし、こちらも堂々たる試合ぶりだったとは思います。
しかし、それ故に、ことに重い一敗かな、とも感じます。
かつて日本上位の好カードを悉く勝ち抜き、日本のトップボクサーとしての理想像を体現した彼だからこそ、
それでもなお、今後への期待は消えてはいませんが...。


それにしても、この一試合はやはり、日本王座というひとつのカテゴリーにおいて、
上位の実力者同士が闘うこその価値を、改めて教えてくれた、そんな試合だったように思います。

先月、神戸と大阪で9つの「タイトルマッチ」を見ましたが、当然ながらその中で、
この試合のグレードに達したものは、ひとつたりとてありませんでした。
同じ次元で比較しうるのはたったひとつ、山本隆寛vsマーク・ジョン・ヤップ戦でしょうが、
技術レベルの話を加えると、やはり...となってしまいます。

ありきたりですが、やはり一流の「本物」は違うのだ、ということでしょう。
尾川堅一と内藤律樹、両者の闘いぶりに拍手します。
実に濃密な、良い試合を見せてもらいました。素晴らしかったです。



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この日の興行は、前座から壮絶な打ち合いや、アーリーKOが続出しました。

昨年の全日本新人王(スーパーフライ級)、強打の若手、梶颯は、えらく痩身のタイ人を初回KO。
なんというか、こんなの早く倒しても自慢にならん、けど長引かせたらもっと無意味、という
いかにもありがちな相手だったのが残念でした。マッチメイクが大変なんだろうなぁ、と推察はしますが。

これまた昨年の全日本新人王(ライトフライ級)、倉敷守安のユーリ阿久井政悟は、
一時世界ランクにも入っていた帝拳のサウスポー、大野兼資と対戦。
阿久井のセンスは素晴らしいが、同時にちょっと物足りない試合ぶりが記憶にあったので、
大丈夫かな、と思っていたら、いきなり鋭く強烈な右クロス一発で大野をダウン。
追撃も正確で、ワンサイドに打ち込む。
葛西裕一がタオル投げてリングに飛び込んできて、早々に試合が終わりました。

正直、これまたビックリの展開と結果でした。50キロ契約だったことも好影響だったのか、
阿久井は伸び伸びと動けていて、パンチの切れと正確さが存分に出た試合でした。
ひょっとしたら、今後は階級上げた方がいいのかもしれませんね。今後が楽しみになってきました。



他の試合も早く終わり、セミ終了がだいたい19時15分くらいだったか。
休憩が入り、当初15分とか言ってましたが、尾川、内藤両陣営ともさすがに予想外の事態だったか、
なかなか準備が出来ないようで、リング上では口ヒゲも凜々しい須藤リングアナが、場内にいる王者たちを紹介したり
(ロマゴンとか、井上兄弟とか、山中とか)、山中慎介カレンダーの宣伝をしたりと苦心惨憺、
色々やってはりましたが、ついにネタも尽き、半ば立ち往生。
しまいに歌でも歌い出すかな、と思っていたら、やっと両者入場の運びになりました。
リングアナというのも大変な仕事やなぁ、と、適当なことを今更ながらに思った次第でありました、ハイ。




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