時折吹雪く雪路を湯ノ湖から戦場ヶ原へ車で向かう。
赤沼の駐車場は雪のため閉鎖されていたため、除雪整備されている三本松駐車場に入った。
しかし、初めて雪原の中を歩いていく小田代ケ原までは少し遠いと感じ、赤沼近くの側道に入り車を止めることにした。
側道沿いにはすでに車が数台駐車しており、スノーシューを片手に戦場ヶ原へ向かう初老の夫婦とすれ違った。
雪がどんな状態なのか、はたしてスノーシューズで小田代ケ原まで行けるのだろうかと不安はよぎったが、とりあえず出発することにした。
戦場ヶ原のトレッキングコース沿いに歩き出す。
スノーシューやクロスカントリースキー装備の数組のきらびやかなパーティーが100mほど先にいた。
先客によって踏み固められた雪上でいつもよりは多少遅いペースで進むと、静まり返った光景の中で踏音だけが聞こえてくる。
ここ暫くそれほど雪は降っていないようだ。
木立の中を進んでいくと次第に雪が深くなり、ザックに忍ばせておいた軽アイゼンを取り出し慣れない手つきでスノーシューズに取り付けた。
今まで足を取られがちだったが見事にその効果を発揮した。
いつの間にかスノーシューのパーティーを追い越していた。
途中多少なりともラッセルをしながら進まなくてはならない事を覚悟しながら歩き進んだが、ここ小田代ケ原ではそんな心配は無用だったようだ。
しかし、スノーシューやクロカンのパーティーに出会うと足元を冷ややかに見られているような感覚に囚われた。
いつだったか読んだ雪山小説の中でラッセルどろぼうという言葉が出てきたが、そのような世界とは程遠いはずだ。
気にせず歩き続けた。
赤沼からのコースは小田代ケ原の手前で一旦車道に出る。
雪面に伸びる木々の陰が印象的だ。
小田代ケ原に着くと昨年秋に訪れた光景とはまた違う素晴らしさを感じた。
雪原に時折吹き付ける強風で雪が舞う。
シャッターを切る手がかじかむ。
貴婦人が穏やかな表情で迎え入れてくれた...。
帰路は遠く男体山を望みながら戦場ヶ原を後にした。