行付けの書店に入り新書コーナーに立ち寄ると、一冊の本が目に留まった。
「ル・コルビュジェを見る」中公新書 越後島研一著
著書は、ル・コルビュジェの建築家としての足跡、サヴォア邸からロンシャンの教会などに至る経緯などを、
革新・変貌・成熟といった切り口でル・コルビュジェの建築物を通し解説していた。
非常に興味深い。
世間一般には、ル・コルビュジェの作品そのものについて記載させている書物は多い。
しかし、この著書では、コルビュジェを最大限に賞賛しつつも、一方ではル・コルビュジェの現実的な不協和音による創造力の変貌といったものも取り上げていた。
例えば、サヴォア邸を例に出すとこんな事だ。
サヴォア邸は、
「新しさを支える原理」
「新しさの魅力」
「新しさの極」
これらが備わり世紀の名作として君臨していると述べている。
しかしそれらは、ル・コルビュジェの今までの絵画や家具そして都市にまで至る創造力が、サヴォア邸を発想させた裾野であり、今までの緻密な作業の積み重ねが根底にあるとしている。
そして、それらと共に少しの飛躍が名作を生んだのだ。
この後、越後島研一は、ル・コルビュジェの創造力の変貌について述べている。
サヴォア邸がはらんだ建築としての限界...。
サヴォア邸は、サヴォア氏一家が住み始めて数日後には雨漏りで床に水溜りができた。
天井からも壁からも雨が入り込んだという。
基本的な住宅の性能そのものに欠陥があったのだ。
サヴォア邸以外にも、コルビュジェの「白い箱型」住宅は、実はトラブルの連続だったのだ。
サヴォア邸の美的緊張を感じさせる壁が、性能的に不備だったとすれば、
ル・コルビュジェの想像力の中にも決定的な不協和音が響いたとしても不思議はない。
表現意欲と可能な技術とが、実は両立し得ないという事実を鋭く突きつけられることになってしまった。
確かに、創造力と技術力とが両立しないことには、建築物としての機能が果たせない。
そのため、建築業界では、奇抜な発想に対しては、安全な方に追いやるケースが多くあることは事実だろう。
しかし、ル・コルビュジェの創造力は、一瞬の閃きではない。
何段階かの試みを積み重ねた結果が作品に現れ、そしてその後もさらに積み重ねていく。
そういった結果が、「白い箱体」からの変貌を遂げ、
ユニテ・ダビタシオンやチャンディガールに見たブリーズソレイユを用いての独創的な表現を生み出していったのだ...。
建築家安藤忠雄も、以前、様々な作品は一瞬の閃きで成せるものではないと言っていた。
創造力の根底には、緻密な作業の積み重ねが必要なのだ...。
「ル・コルビュジェを見る」中公新書 越後島研一著
著書は、ル・コルビュジェの建築家としての足跡、サヴォア邸からロンシャンの教会などに至る経緯などを、
革新・変貌・成熟といった切り口でル・コルビュジェの建築物を通し解説していた。
非常に興味深い。
世間一般には、ル・コルビュジェの作品そのものについて記載させている書物は多い。
しかし、この著書では、コルビュジェを最大限に賞賛しつつも、一方ではル・コルビュジェの現実的な不協和音による創造力の変貌といったものも取り上げていた。
例えば、サヴォア邸を例に出すとこんな事だ。
サヴォア邸は、
「新しさを支える原理」
「新しさの魅力」
「新しさの極」
これらが備わり世紀の名作として君臨していると述べている。
しかしそれらは、ル・コルビュジェの今までの絵画や家具そして都市にまで至る創造力が、サヴォア邸を発想させた裾野であり、今までの緻密な作業の積み重ねが根底にあるとしている。
そして、それらと共に少しの飛躍が名作を生んだのだ。
この後、越後島研一は、ル・コルビュジェの創造力の変貌について述べている。
サヴォア邸がはらんだ建築としての限界...。
サヴォア邸は、サヴォア氏一家が住み始めて数日後には雨漏りで床に水溜りができた。
天井からも壁からも雨が入り込んだという。
基本的な住宅の性能そのものに欠陥があったのだ。
サヴォア邸以外にも、コルビュジェの「白い箱型」住宅は、実はトラブルの連続だったのだ。
サヴォア邸の美的緊張を感じさせる壁が、性能的に不備だったとすれば、
ル・コルビュジェの想像力の中にも決定的な不協和音が響いたとしても不思議はない。
表現意欲と可能な技術とが、実は両立し得ないという事実を鋭く突きつけられることになってしまった。
確かに、創造力と技術力とが両立しないことには、建築物としての機能が果たせない。
そのため、建築業界では、奇抜な発想に対しては、安全な方に追いやるケースが多くあることは事実だろう。
しかし、ル・コルビュジェの創造力は、一瞬の閃きではない。
何段階かの試みを積み重ねた結果が作品に現れ、そしてその後もさらに積み重ねていく。
そういった結果が、「白い箱体」からの変貌を遂げ、
ユニテ・ダビタシオンやチャンディガールに見たブリーズソレイユを用いての独創的な表現を生み出していったのだ...。
建築家安藤忠雄も、以前、様々な作品は一瞬の閃きで成せるものではないと言っていた。
創造力の根底には、緻密な作業の積み重ねが必要なのだ...。