イラガ調査をしている太郎丸公園で、この日調査対象にしているイラガの繭から2頭の寄生蠅が羽化していました(写真のハエは、ハエの羽化殻が残された繭のそばで、羽化して間もないかのように近づいても逃げなかったハエ)。http://blog.goo.ne.jp/1948goodspring/e/49ba26d75aa1f2203b4f52d6e27b82e0
寄生蠅の同定は非常に困難なようで、ウェブサイト『ヘキサポーダリサーチ昆虫類調査事務所/一寸のハエにも五分の大和魂・改 』には、次のように書かれていました。
「1.双翅目の同定,特にハエ型の双翅類の同定は,顕著な翅斑,体形や腹部の斑紋などを現さないハエの場合は,翅脈相,体の刺毛の分布状態を,種までの同定では雄の交尾器などの形質を調べて,初めて可能になります.ヤドリバエ科でもダイミョウヒラタヤドリバエ,マルボシヒラタヤドリバエ,セスジハリバエのように特徴がはっきりしている種はかなりの正確さで同定できるのですが,このような特徴的な種以外は上記の形質を見ないと同定は一般に困難です.
ヤドリバエ科はしかも種が著しく多く,日本列島だけでも数百種以上が生息しており,その中には名称がない未記載種や日本から記録のない未記録種も多数含まれています.
また,このサイトでは日本で2名しかいないヤドリバエ科の分類学者の直接的な関与はまだありません.
以上の現状では,ヤドリバエの同定の必用がある場合は,よほど同定の重要性が客観的に認めてもらえば,上記分類学者に同定を依頼して,同定していただける可能性があるかもしれません.しかし,このサイトでは形質が判然としない画像のヤドリバエの同定は困難だろうと思います.
2.日本のヤドリバエ科のハエの寄主対象のカタログ(2006)があります.これによると,イラガ科のイラガに寄生するヤドリバエは2種記録されているようです.それらは,
ムラタヒゲナガハリバエ Bessa parallela (Meigen)
イラガを初め,甲虫類,ハチ類,鱗翅類の多数の種に寄生する,寄主選択性の幅が著しく広い種です.
イラムシヤドリバエ Chaetexorista sp. (Chaetexorista属の1種).
イラガ,ナシイラガ,ヤママユガに寄生.
です.この他に,おなじChaetexorista属のC. atripalpis Shimaという種は,イラガ科からのみ記録されており,テングイラガ,クロシタアオイラガに寄生するようです.
また,クロシタアオイラガには,上記のほかにPales pavida (Meigen)カイコノクロウジバエが,アオイラガには,Compsilura concinnata (Meigen)ノコギリハリバエとExorista sorbillans (Wiedemann)クワゴヤドリバエが,アカイラガにはExorista japonica (Townsend)ブランコヤドリバエとPales pavida(Meigen)カイコノクロウジバエがそれぞれ寄生することが記録されています.上記の諸種のヤドリバエは寄主の範囲がかなり広いので,あるいはイラガにも寄生するかもしれません.
以上を参考にされて,調査されると飼育されたヤドリバエの種がかなり絞られるかもしれません.
なお,白くて大きい平均棍とありますが,白く見えているのは翅の基部後縁が拡大したもので,覆弁(胸弁,鱗弁,膜弁)と呼ばれている構造で,平均棍はこれに覆われているかなり小形の器官です.」
《ハエの羽化殻が残ったイラガの繭のそばにいた寄生蠅 2017/08/09》
《ハエの羽化殻が残ったイラガの繭のそばにいた寄生蠅 2017/08/09》
《イラガの繭に残されていたハエの羽化殻 2017/08/09》
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