ヒゲジイのアル中よもやま話

断酒を始めて早7年目。このブログは回復プロセスの記録と脳のリハビリを兼ねて綴っています。やはり、まだチョット変ですかネ?

ヒゲジイのPAWSによる悪文見本市(その5)

2015-10-02 20:09:50 | 悪文見本市
 断酒開始後3~6ヵ月目に自覚するようになると言う急性離脱後症候群(Post Acute Withdrawal Syndrome:PAWS)、そのひとつ“思考プロセス障害”によると思われる悪文事例の続きです。
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【事例23】
 23番目の事例は、事例20~22と同じく断酒を始めて1年3ヵ月後のものです。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その17)連続飲酒から脱出・仕事再開!」より)

「最初の医師には心電図データの確認のつもりで誤って心電図の再計測と言ってしまいました。医師本人が過去に記入したCRFのデータの数字が心電図を見て間違いないことを確認することと、心電図のコピーで再計測することとは全く違います。」
        
「最初の医師には心電図データの確認と言うべきところ、誤って心電図の再計測と言ってしまいました。医師が心電図のコピーを見て、本人が過去に記入したデータの数字が間違いないことを確認することと、心電図のコピーで再計測することとは全く違います。」

 元の二つの文ともに“話しことば”の調子で、説明すべき事柄を端折って記述しています。これはこれでご愛嬌かもしれません。正確な記述を期して“書きことば”へ改めてみました。

【事例24】
 24番目の事例は、断酒を始めて1年4ヵ月目に入ったときの、事例20~23の1週間後のものです。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その18)被災地では・・・」より)

「洗濯のために通る朝の歓楽街の往復の路は、飲食店から出たゴミ用容器や食べ物の残りクズ、吐瀉物などがあちこちに散らばり、それらにカラスが群がっていたりします。ケバケバしい電飾で装った夜とは打って変わって雑然とした気怠さを感じさせます。」
        
「洗濯のために往復する道は歓楽街のど真ん中を通ります。朝の歓楽街は飲食店から出たゴミ用容器や食べ物の残りクズ、吐瀉物などがあちこちに散らばり、それらにカラスが群がっていることもあります。電飾で装ったケバケバしい夜とは打って変わって、朝は雑然としていて気怠ささえ感じさせます。」

 元の前半の文では、1文に内容がテンコ盛りになっています。丁寧な記述に改めました。かえって改訂文の方が諄くなっていますか?後半の文では、“ケバケバしい”が鍵を握る言葉です。修飾する先が“夜”の方が当時の気分に合致すると思いました。元の文ように“ケバケバしい電飾”の方が正しいとは思うのですが・・・。

【事例25】
 25番目の事例は、上の事例24と同じ断酒を始めて1年4ヵ月目に入ったときのものです。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その18)被災地では・・・」より)

「西宮神社(戎神社)への参道を兼ねる規模の大きい中央商店街一帯は倒壊した建物だらけで、アーケードだけが屋根を残して建っていました。・・・当時の商店街アーケードの天井から吊るされていた時計が地震発生時の時刻を指したまま記念碑的に残されています。駅南側ロータリーの南、ダイエーの敷地の一角に現在でも見ることができます。」
        
「西宮神社(戎神社)への参道でもある規模の大きな中央商店街一帯は倒壊した建物だらけで、立っているものといえば屋根を残したアーケードだけでした。・・・商店街のアーケードに吊るされていた当時の時計が、地震発生時の時刻を指した状態のまま今も記念碑的に残されています。・・・」

 前半は“アーケードだけが屋根を残して”の部分が誇張しすぎかなと思いました。後半は、“当時の”は“商店街”に係るのではなく“時計”に係りますから、両者を近くに置きました。時計の正体を正確に記述するよう改めましたが、それがかえって諄い表現になったのかもしれません。

【事例26】
 26番目の事例は、断酒を始めて1年6ヵ月後のものです。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その28)急所攻撃の神経戦・・・」より)

「新剤型薬の場合は承認済の普通剤型と比べて血中薬物動態からみてバイオアベイラビリティー(血中濃度曲線下面積:AUC)が同等であればそれで十分なのです。血圧日内変動試験で薬理作用についてまでも両製剤を比べる必要はありません。有効成分の薬理作用が長時間持続すること自体が未承認の新薬とはこの点で全く条件が違います。」
        
「・・・有効成分の薬理作用自体が未承認の新薬とはこの点で全く条件が違います。」

 懸案であった薬理作用の長時間持続の件だけで頭が一杯で、その強い“思い込み”に引き摺られたまま、論理的な整合性にまで気が回りませんでした。ここでは薬理作用が既承認なのか未承認なのかだけが重要です。元の下線部分“長時間持続すること”は、論理の混乱だけをもたらしているので削除しました。論理の展開上、肝腎な部分を見落としたことこそ“思考プロセス障害”そのものと考えました。

【事例27】
 27番目の事例は、断酒を始めて1年10ヵ月後のものです。ここからは比較的最近投稿したものからの事例となります。(「AAの科学的再現性とは?―回復への12のステップ―」より)

「同様に記録と再現性の視点からみると、理研のSTAP細胞事件の問題点は明らかです。」
        
「同様に記録と再現性の観点からみると、理研のSTAP細胞事件の問題点は明らかです。」

 辞書では、“視点:論ずるときの作者や論者の立場”、“観点:考察する立場”、となっています。少し以前ならどちらか決めかねて、中点を用いた視点・観点としかねない場面です。この場合はどちらを選んでも問題ないようですが、読み返してみて“視点”に違和感がありました。それで、“観点”の方を感覚だけで選び直してみました。どうでもよいところに妙に拘る、これもPAWSの所為かもしれません。
 ちなみに中点「・」は、同格あるいは切り離せない関係にある語間に用いる符合です。「そして」の意味と同等です。以前は、単に“点検”とすべきところを、言葉が思い出せずに“照合・確認”としていたことなどがよくありました。

【事例28】
 28番目の事例は、事例27と同じく断酒を始めて1年10ヵ月後のものです。(「AAの科学的再現性とは?―回復への12のステップ―」より)

「STAP細胞を再現できなかったのは、むしろ当然の結末と言えるでしょう。」
        
「STAP細胞を再現できなかったのは、むしろ当然の帰結と言えるでしょう。」

 “当然の”ときたら“帰結”と結ぶのが慣用的な言い回しではないでしょうか?その“帰結”が思い浮かばなかったため、類似の“結末”でお茶を濁した事例です。意味は通じるのですが、どこかシックリしない違和感がずっとありました。それで悪文事例として挙げてみました。

【事例29】
 29番目の事例は、事例27~28と同じく断酒を始めて1年10ヵ月後のものです。(「AAの科学的再現性とは?―回復への12のステップ―」より)

「“長年溜まりに溜まったものが弾けて消え、平穏となって心の落ち着きが分かったとき、『神』を身近に感じた”という状況は、私が体験した“憑き物が落ちた”ときの神秘的感覚に近かった」
        
「“長年溜まりに溜まったものが弾けて消え、平穏となって心の落ち着きが分かったとき、『神』を身近に感じた”という心境は、私が体験した“憑き物が落ちた”ときの神秘的感覚に近かった」

 適切な言葉を思い出せないまま、“~キョウ”という言葉の響きだけを手掛かりとしたため使うべき用語を間違えた事例です。種を明かしてしまうと何ともオソマツな次第。ここはどうみても“心境”とするのが正しい。
 余談ながら、私は関係代名詞を含む英文を訳すとき、「~という・・・」をよく使います。その癖から、述語を含む節となっている修飾語で修飾‐非修飾関係を繋ぐのに「~という・・・」を使う傾向が強く、このことが諄い印象を与えているようです。

【事例30】
 30番目の事例は、事例27~29と同じく断酒を始めて1年10ヵ月後のものです。(「AAの科学的再現性とは?―回復への12のステップ―」より)

「相談結果に基づいたスポンサーからの助言に従い、被験者は自身の思い出を再省察し、自身の性格上の欠点(思考の歪み)を含め叙述内容を改訂する。」
        
「相談結果に基づいたスポンサーの助言に従い、被験者は自身の思い出を再省察し、自身の性格上の欠点(思考の歪み)を含め叙述内容を改訂する。」

 下線部分“からの”は、正確ではあるものの、翻訳調そのものの諄い表現になっていました。単純なのが一番です。

【事例31】
 31番目の事例は、断酒を始めて1年11ヵ月目の最近の投稿文からです。(「ヒゲジイの悪文見本市(その2)」より)

「結果的に説明不足でニュアンスだけの実態のない表現となっています。」
        
「結果的に説明不足で、実態のないニュアンスだけの表現となっています。」

 これは修飾語の記述順ルールから外れている事例です。元の文の“表現”の修飾語は、句“ニュアンスだけの”と述語を含む節“実態のない”の二つからなっています。元の文のままなら、“ニュアンスだけの”は“実態”に係るので“ニュアンスだけの実態”(?)という意味不明なことになります。修飾語の記述順ルール通りに改めました。
 修飾語の記述順のルールは、以下の2点が最も重要です。
 ○述語を含む節が先、句が後
 ○長いものが先、短いものが後

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 いかがでしたか?断酒後の回復過程にみられる急性離脱後症候群(Post Acute Withdrawal Syndrome:PAWS)のひとつ、“思考プロセス障害”の一端を理解してもらえましたでしょうか?これまで掲げてきた事例の引用元は、ほとんどが一度以上手直しを経たものです。事例文そのものは、以前行った改訂時には、元のままでも意味が通じる部分と見做して手直しを免れたものです。実例に接し、案外問題ナシと捉えるか否かは読者次第ですが、書き手の私としては意図するところに近づけようと苦行の連続でした。それが今でも続いています。
 以上、ヒゲジイの悪文見本市でした。


「ボケが始まった?(急性離脱後症候群:PAWS)」も併せてお読みください。
 http://blog.goo.ne.jp/19510204/e/9c6d1fc08d197902061b8e0ee33adb6a


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