ヒゲジイのアル中よもやま話

断酒を始めて早7年目。このブログは回復プロセスの記録と脳のリハビリを兼ねて綴っています。やはり、まだチョット変ですかネ?

ヒゲジイのPAWSによる悪文見本市(その9)

2016-12-30 07:27:39 | 悪文見本市
 私にとって、このブログは闘病記録のようなものです。回復プロセスを含めた病状の記録と脳のリハビリを目的としています。自分の書いたものはその時々自分の心を映す鏡です。記事の内容もさることながら、書いた文章の不具合がその時々の病状を表していると考えています。この悪文見本市シリーズもその一環として掲載しています。

 アルコールの急性離脱後症候群(Post Acute Withdrawal Syndrome:PAWS)は、断酒を始めて3~6ヵ月で自覚するようになると言われています。その症状の一つ “思考プロセス障害” には、脳の働きにムラがある、頑なで諄(くど)い思考、因果関係を理解できないなどの症状が知られています。

 私の経験からすると、その具体的現れは “遠回りする思考”、“助詞の使い方に混乱”、“修飾語の語順の誤り”、“時制の混乱” などからなり、大概が “慣用的な言葉の使い方(言い回し)を失念すること” と要約できると考えています。

 今回もその具体的な現れと思われる悪文事例をご紹介します。いずれも脳がストライキを起す寸前の状態にあり、集中力に欠け、文案が錯綜する混乱の中で書いたものと思われます。


 なお、現在掲載中のものはいずれも手直しした後の改訂版です。
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【事例41】
「   “空白” を生まない時間の過ごし方
 時間ほど自分の意の儘にならないものは他にありません。如何に時間と折り合いをつけるか ―― これは如何に生きるかという人生最大のテーマに繋がる問題だと思います。このことに比べたらアルコールを断つことなど些細なことと思えてきます。まず、身近なところから手を付けてみませんか?」

         
「   “空白” を逸らす時間の過ごし方
 酒を断って1年ぐらいまでのアルコール依存症者にとって、“空白の時間” という言葉は特別な意味を持っています。「時間ほど自分の意の儘にならないものは他にない」この真理を嫌と言うほど味わわされる破目に陥るからです。かつては酒さえあれば何とかなるものと、さして気にもしなかった時間の空きのことです。が、酒を断った身となってみると、時間が空きそうというだけで怯えてしまうほどなのです。そのストレスでパニック寸前となり、つい再飲酒の誘惑にかられてしまう人もいるようです。そんな際どい心境など健常な人にはとても想像できないと思います。どうしたらいいのでしょう?」

               「“空白” を逸らす時間の過ごし方」(2016.3.11投稿)より

 表題からして、ちょっと無理がありました。誰にでも無為な時間は生じるもので、それを「生まない」は言い過ぎです。無為な時間は、できるだけ「逸らす」ぐらいが適当と考えました。

 テーマが断酒後の “空白の時間” という極めて特殊かつ具体的なことのはずが、仰々しく重いテーマを想像させる書き出しになっています。このような考え方が “遠回りする思考” を表すものと考えています。一般論で書き出したことで、却って後続とのつながりが難しくなっています。“思考プロセス障害” のせいで様々な文案が飛び交い、決めきれなかったのだと思います。

 ここは主題の核心にズバリ切り込むべきでした。書き出しが一般論で始まり遠回りしていることに投稿した後になって気付き、核心となるキーワード「アルコール依存症者にとっての “空白の時間” 」などを加えて修正しました。つくづく融通がきかない鈍な頭だと思い知らされました。


【事例42】
「“ハードウェア”  と “ソフトウェア”  の意味十分理解できていないのですが、敢えて生体の器官に当てはめてみます。一定の機能を持っている器官(臓器)そのものを “ハードウェア”  とし、器官の持つ機能の使い勝手の良さを “ソフトウェア” としてみます。一定レベル以上の機能さえ備えていれば問題ナシとする一般的な内蔵などの器官と異なり、脳は一定レベル以上の機能に加え、使い勝手の良さが要求される器官だと思います。むしろ使い勝手の良さこそが脳の生命線なのかもしれません。脳の頭のキレとか頭の冴えとかが使い勝手の良さに当るとも思いますが、 “ソフトウェア” としてみた場合、アルコール依存症からの回復とは何なのでしょう?アルコールでイカレた脳の、使い勝手の良さを備えた回復とはどんなものなのでしょうか? 脳の使い勝手のよさとは、・・・」
         
「“ハードウェア”  と “ソフトウェア”  の意味十分理解できていないのですが、敢えて生体の器官に当てはめてみます。・・・ 一定レベル以上の機能さえ備えていれば問題ナシとする内蔵などの一般的な器官と異なり、脳は一定レベル以上の機能に加え、使い勝手の良さが要求される器官だと思います。むしろ使い勝手の良さこそが脳の生命線なのかもしれません。頭のキレとか頭の冴えとかが脳の “ソフトウェア” に当ると思いますが、アルコール依存症から脳の “ソフトウェア”  が回復するとはどういうことなのでしょうか? 脳の使い勝手のよさとは、・・・」
               「アルコール依存症の回復イメージ」(2016.3.18投稿)より

 この記事全体の(書き出しに当る)冒頭部分です。問題箇所を下線で示しました。どう論じるべきか相当苦労していたことがお分かりと思います。

 最初の下線部が “不自然な助詞の使い方” に当たります。日本語の慣用的な使い方としては、“が” の方が普通と気付くハズです。こんなことにも迷っていました。

 次の下線部が “修飾語の語順の誤り” です。“書きことば” では、修飾語の語順に特有のルールがあります。「長い修飾語を先に、短い修飾語を後に」という語順のルールです。“器官” の修飾語の語順では、この基本的なルールが守られていません。“話しことば” 流に、大事なことから先に切り出すやり方になっています。気持ちに余裕がないため、醒めた目で点検できなかったのだと思います。

 後半の下線部では、“ソフトウェア”  という概念が十分に理解できていないまま、強引に考えをまとめようとしています。論理の整合性を図ろうとして、必要以上の繰り返しで諄(くど)い表現になっています。自分の言葉で自分なりに表現しようと試みると、必ずといっていいほど考えがまとまらなくなります。自分の言葉で自分なりに表現するというのは、想像以上に苦労が伴う作業です。

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【急性離脱後症候群(PAWS)】
 症状は、断酒開始後3~6ヵ月目で最も強くなり、6ヵ月~2年で回復する。
  ○ 思考プロセス障害(脳の働きにムラがある、頑なで諄(くど)い思考、
    因果関係を理解できない)
  ○ 情動障害(情動の揺れ)
  ○ 記憶障害(短期記憶の障害)
  ○ 睡眠障害
  ○ 身体的協働性に問題
  ○ ストレス感受性に変化(おそらく認知障害“認知のゆがみ”の意味:筆者追記)
                  (アルコール依存症専門クリニック教育資料より)

今年も拙い記事にお付き合いいただき、ありがとうございました。皆様、よいお年を!



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“認知のゆがみ” って何?

2016-12-27 07:08:37 | 病状
 このところ折に触れて述べている認知障害 “認知のゆがみ” ですが、私が最も腑に落ちた解説をご紹介します。

 以下にお示ししたのは、私が通院中の専門クリニックの教育資料から抜粋したものです。アルコール依存症からの回復には “認知のゆがみ” の矯正を目標とすべきこと、ご覧いただければ一目瞭然だと思います。



 認知のゆがみ:ある刺激に対して非妥当な解釈をして非妥当な反応をしてしまうこと。
        換言すると、部分的な拒絶体験を完全な拒絶体験と無意識下に拡大
        解釈(翻訳)してしまうこと。

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   状 況        地元の友人たちと旧交を温めるため、自分の運転で食事に行く
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               ● レストランまでの道が渋滞している
   拒絶体験        ● 駐車場が満車で待たされる
               ● レストランが満員で待たされる
               ● 注文を間違えられる(オーダーミス)
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 ちなみに “認知のゆがみ” には、やはりアルコール性記憶障害が関与しているということです。記憶機能のネットワーク修復には “言語化” が打って付けで、脳のリハビリとして最適と改めて納得した次第です。



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酒は老化促進剤?

2016-12-23 06:38:36 | 病状
 私の住んでいる市では、原則公園内のゴミ箱を廃止しています。つい先日、週一回のペースでゴミ屑の始末をしている公園での話です。

 小一時間かけてゴミ拾いを終え、公園入り口にある小さな東屋で一服しようと、背もたれのないベンチに腰掛けました。足元にゴミ屑で一杯の大きめのレジ袋一つと空のペットボトルで一杯の買い物バッグを置き、脇にゴミ拾いの七つ道具を置いていました。

 公園の入り口には向かい合って小さな東屋がもう一つあります。そこに同年配の男性二人連れがやって来て、向かいの東屋のベンチに腰掛けました。私の足元のゴミ袋を見たのでしょう、一人がこちらに向かって声をかけてきました。

「ご苦労さんですねぇ。表彰状ものですよ! あちこちでお見かけするけど、この公園でもやっておられるんですねぇ! お近くにお住まいで?」
私は気をよくし、自分の町名と活動範囲を手短に答えました。
「同じ町内ですよ!道理でお見かけするわけだ。それだけ広くやっていたら、終わった後は喉が渇いてコレですか?」と手で飲む仕草をして見せました。
「私は飲めないので・・・、酒を断って3年になります。水分は十分とりますが・・・。」
「それはお気の毒に。また、どうして?」
「飲み過ぎで身体を壊してしまいましてねぇ。」と無難にかわしたのですが、
「すると肝臓か何か?」
「まぁ、そんなところです。それが酒を止めたら面白いことに気づきましてね。」と、それ以上深入りされないよう話を逸らそうとしてみたのです。
「ほぉ、面白いこと、何ですかそれは?」

「アルコールは老化促進剤ではないか、ということです。」
「老化促進剤? 老化を早めるという意味ですか?」
「酒を止めたら、高血圧と高脂血症は治ったし、糖尿病もよくなったんですよ。今は薬を飲まずに済んでいます。ちょっと前までは成人病と言われ、今は生活習慣病と言われていますよね。一生、薬が手放せない病気ですよ。ある意味、老化の象徴と考えられている病気です。
あれは間違いなく飲酒生活習慣病だと思っています。」
「飲酒生活習慣病? 一理ありそうですが、それは単に暴飲暴食を改めたからではないですか?」
「酒はストレス・ホルモン分泌を亢進させ、血圧や血糖値を高めるのだそうです。」
「ほぉ、・・・」
「まだあります。物忘れがヒドイことや、普通に歩くのにも足がシッカリしないこと、それに堪え性のなさもそうです。飲んでた頃は、何をするにも面倒くさいが先立っていましたが、年甲斐もなく怒りっぽくて、気むずかしい人って、年寄りにも結構いるじゃないですか。
 飲まなくなったら気持ちも身体もが楽になって、このようにゴミ拾いもするようになれたんです。飲んでた頃なら絶対にあり得ない、前向きの発想ですよ。」
「まぁ、なんとなく言っていることはわかりますが、ちょっと無理筋じゃないですかねぇ。いずれにしろ、酒を止めてよかったと言いたいのはわかります。」
というと話を切り上げるように立ち上がりました。

「気を悪くしたのならすみません。でも、お酒は止めた方がいいですよ。」と後ろ姿に声をかけたのですが、
「最近はこれだからねぇ・・・」と、左の耳を人差し指でさすと右の耳から抜けていく仕草をしてそのまま去って行きました。
「それもです! 聞いた端から忘れてしまうのもお酒のせいですよ!」

 つい調子に乗って、要らぬお世話の余計なお節介をしてしまいました。これが “自我の肥大” というのでしょうか、まだまだドライドランク状態が残っているようです。(本当は、習慣飲酒で前頭葉が萎縮することとか、人と折り合おうとしない酒呑みの偏屈さが “認知のゆがみ” で共通することとか、老化との共通点をもっと話したかったのですが・・・。)



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これって言いがかり?

2016-12-20 06:53:25 | 自分史
11月末にしては日差しが温かい日だった。
スーパーの店頭のベンチで昼食を摂っていると、一人の老婦人が声をかけて来た。
「ご一緒してもよろしいですか?」
私は素早く荷物を片付け、席を空けた。
「外で食べるのは美味しいでしょうねぇ!?」
「家の中で一人で食べるより格段に旨いですよね。」
「いつもお一人なんですか?」
「昼間は一人です。」
しばらく他愛のない話が続き、現在、彼女は85歳と教えてくれた。
肌に張りのある顔からは、10歳ほど若く見えた。

いつの間にか身の上話になった。
「私は、生まれてずっとここで暮らして来たけど、・・・
 住めば都と言うでしょう?! あなたにとって、どうですか?」
「ここはとても住みやすい所ですよねぇ。ずっとここでお住いで?」
と相槌を打った。
「私は一人娘で、ずっとここなんですよ。」
「一度も家を出たことがないんですか?」
「そう、一度も。女学校を卒業すると、すぐにお見合いで、婿を取ったんですよ。女学校は18歳まででしたから、その頃は私も女らしいふっくらした体型だったんですよ。・・・」
どうやら彼女は女学校卒が自慢らしかった。

一人娘、女学校卒、婿取りと聞いて、私はつい自分の母親を思い出してしまった。
「ウチの母親も全く同じでした。一人娘で、婿取りで、我儘放題で、・・・ 自分の思い通りに成らないと父に当り放題でした。父が可哀そうで、・・・正直、自分本位のところが心底嫌いでしたね。」
これで彼女は明らかに気分を害したようだった。
「さぁ、主人が待っているから帰って夕飯の支度をしなきゃ・・・。主人は93歳になるのに元気でネ、今はTVの相撲観戦に夢中なんですよ。」こう言うと、献立の予定を尋ねても答えず席を立って行った。

一人娘だからと言って我儘だと決めつけられては、誰だって堪ったものではないだろう。母親のことになると、ついムキになってしまうのが未だに直らない。初対面の相手ということを弁えず、先入観だけで決めつけてしまう。・・・と反省してもどうにもならない。平常心で他人に応対などと、一体どこの誰が言っていたのだろう? 何とも罪なことをしたとは思う。
それでも気になるのは(彼女にとって)、はたして、お門違いの言いがかりだったのだろうか?



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回復の科学 ― AAの“12のステップ”

2016-12-16 10:15:20 | 自助会
 今回も自助会Alcoholics Anonymous(AA)の『回復のプログラム』“12のステップ” を取り上げ、“言語化” との関係をテーマとしてみます。長年アルコールで傷んだ脳と精神をどのように回復させるか、つまり脳のリハビリの手順と方法についてです。改めて私の実践例を振り返り、対照してみようと思います。結論から先に言うと、飲まない生活は勿論のこと、いかにして平常心で生きて行けるかが『回復のプログラム』の達成目標だと考えています。

 “12のステップ” の全体から見て、ステップ1~4は最も解釈に手こずるところで、プロセス上最も微妙な段階に当ります。そこで、ここを重点的に述べてみようと思います。まず、ステップ1~4をお復習いしてみます。ここは次のように記されています。

***********************************************************************************
  ステップ1:私たちはアルコールに対し無力であり、思い通りに生きていけなくなっていた
       ことを認めた
  ステップ2:自分を越えた大きな力が、私たちを健康な心に戻してくれると信じるように
       なった
  ステップ3:私たちの意志と生き方を、自分なりに理解した神の配慮にゆだねる決心をした
  ステップ4:恐れずに、徹底して、自分自身の棚卸しを行い、それを表に作った
***********************************************************************************
 しばらく前までこの部分は、どうやったらアルコールの残渣(毒)が早く抜けてくれるのか、その手順を記している部分と考えていました。つまり、“ガマンの断酒” の早期脱出法だと思っていたのです。改めて私が実践して来た経験に照らしてみると、どうもこの考えには無理があると思えて来ました。ステップ1の「生きていけなくなっていた」、ステップ2の「自分を越えた大きな力・・・信じるようになった」、ステップ3の「神の配慮にゆだねる決心」これらの言葉を吟味してみた結論です。

 私の場合、心境に変化が訪れた時期は “憑きモノが落ちた” 体験(以下、“憑きモノ体験” とします)の後というのが現実でした。「自分なりに理解した神」を自然治癒力に置き換えてみると、まさに “憑きモノ体験” 後の心境にピッタリでした。

 ステップ1の「生きていけなくなっていた」は、原語では「どうにもならなくなっていた」という意味で、過去の過去を表す過去完了形で書かれています。その時制を採った目的は、直前まで続いていた最悪の状態から脱した際に、その以前を振り返ってみた経験を表現するためと考えられます。

 私の場合も「どうにもならなくなっていた」は、“憑きモノ体験” 後にそれまでを振り返ってみて初めて気づいたことでした。渦中にあったときは、正直それどころではなかったのです。ステップ2の「自分を越えた大きな力・・・信じるようになった」は、“憑きモノ体験” が神秘的であったことに符合します。ステップ3の「神の配慮にゆだねる決心」は、自然治癒力を実感した後の当然の帰結でした。

 どうやらAAの『回復のプログラム』のスタートの時期:ステップ1~3は、脳に残っていたアルコールの残渣(毒)が抜け切った心境になれた時のことを意味しているようなのです。たとえアルコールが抜けたといっても、依然としてその後遺症は残ったままです。しかも、後遺症の中には最強とも言える手強い相手がいます。AAの『回復のプログラム』はその最強の障害をターゲットとしているように思えるのです。

 アルコールの後遺症とは、遅発性の離脱症状 ― 急性離脱後症候群(Post Acute Withdrawal Syndrome:PAWS)のことです。主に記憶障害、情動障害、想起障害、思考プロセス障害、認知障害などがからなっています。特に “認知のゆがみ” と呼ばれる認知障害は、性格に “ゆがみ” をもたらす元凶と言ってもいいくらいの手強い障害です。

 アルコール依存症になった人には、この “認知のゆがみ” が全員にみられますし、断酒中のAAのメンバーのほとんどは、アルコールの虜となった誘因が性格の “ゆがみ” にあったと認めています。このように考えるに至り、私はこの “認知のゆがみ” を矯正するプログラムがAAの『回復のプログラム』なのだと結論付けました。

 ステップ4は、本格的な “言語化” 療法の開始段階と考えています。“言語化” とは、自分の悩みや苦しみの大元は何なのか、その正体を言葉で暴くことと考えています。単に、自分の思いを言葉に託して記述すればいいというわけではありません。実践する際は二つのことが必要です。ひとつは、読み手・聞き手を想定して外向けの論理で表現すること。二つ目は、自分の本音に正直であることです。私がブログに投稿を始めてから丸2年経ちましたが、まだ正体の尻尾ぐらいしか掴めていません。正体の全貌を言葉で暴くには、少なくとも数年単位かかるものと覚悟しています。

 自分の思いを書くことは、自分を相手に対話することです。頭の中だけで、独り言の堂々巡りをするのとはまったく違います。書いている時は、必ず読み返しながら書き進めます。「これは本当か? ウッソだろう? 誤魔化していないか? カッコつけるな! 何かズレていないか?」絶えず問い続け、本音と合致するまで書き直すのが普通です。私は、自分の本音との正直な対話こそ “言語化” の鍵と考えています。

 言いっぱなし・聞きっぱなしの場で自分の本音を正直に語ることも、私は立派な “言語化” と考えています。AAのミーティングでは、言いっぱなし・聞きっぱなしが唯一のルールです。質問、批判、反対意見の類は禁じられています。このことが、AAのミーティングは “言語化” の実践道場だと、私が考えている所以です。

 話をステップ4に戻します。ステップ4では叙述による内省が不可欠です。が、アルコールの残渣(毒)が抜け切らない状態では、正直言って冷静な内省は難しいと思います。断酒を継続するのに精一杯で、内省するだけの冷静さや心のゆとりはないはずです。だからと言って何もしないでいいと言うわけにはいきません。

 こんな時期には病状の記録を残すことをお勧めしています。忘れない内に、断酒後に気付いた変化を日付と共に記録しておくことです。慣れてきたら、飲酒時代の酒害体験にまで記録の対象を拡げればいいのです。そして、周辺状況の客観的な史実と共に、それらを正確な個人年表に整理することをお勧めします。これらの作業は “言語化” の立派なウォーミングアップとなります。

 過去の酒害体験を思い起こすと、どうしても罪責感に囚われ、自己卑下や呵責に苛まれることになりがちです。ロクでもないことばかりして来たという、強い思い込みがそうさせるのです。その思い込みを正してくれるのが客観的な個人年表です。客観的な時代背景や、その時々の社会状況(社内事情etc)を見れば、必ずしも個人の責任ばかりでなかったことを明らかにしてくれます。あやふやな記憶による思い違いが、偏った思い込みと重なって罪責感に繋がっていることもあります。私はこの個人年表のお蔭で、意外に逞しく、しっかり生きて来たものだと、自分の生き方に誇りを持てるようになりました。人生の “棚卸し” には個人史年表の作成が欠かせません。

 継続断酒3ヵ月頃から、私は断酒後に気づいた病状の変化と飲酒時代の酒害体験を記録し始めました。それから少し遅れ、AV動画の内容についても文章化し始めました。もうどうにもならない性的妄想に駆られ、AV動画の虜となってしまったからです。その原因はPAWSの情動障害だったと思います。ヤケクソで始めたAV動画の文章化は最終的に20本以上になりました。AAのミーティングに週2回出席するようになったのは、ちょうどその頃のことです。今振り返ってみると、これらは “言語化” 療法のウォーミングアップになったと考えています。自分史『アルコール依存症へ辿った道筋』を書き始めたことが、本格的な “言語化” 療法の始まりに当たります。
 
 断酒を続けていさえすれば、必ずアルコールの囚われから抜けられたと実感する時が来ます。そうなったら、もう迷いはなくなります。ただひたすら自省の思いを書いて、“言語化” に励むことです。それと並行してAAのミーティングに出席することです。AAのミーティングは “言語化” 療法の一端を担っています。数々の “気づき” が得られ、その数だけカタルシスに浸れることになるでしょう。

 ステップ 4 以降に求められていることは明解です。内省を続け、それを文章に綴ることが求められているだけと考えています。つまり、“言語化” の実践です。その実践こそが平常心に近づく道だと説いている、これが『回復のプログラム』の私の解釈です。“言語化” は再現性が確認されている認知行動療法の一つです。私が『回復の科学』とエラそうに謳ったのは、再現性ある “言語化” が科学的方法と確信しているからに他なりません。


 以下にAAの『回復のプログラム』“12のステップ” を臨床試験計画書(プロトコール)の体裁になぞってみました。是非ご参照ください。

自助会AAは科学的?―回復への12のステップ―
 臨床試験で方法と手順が書かれた計画書のことをプロトコール(protocol)と呼びます。また、試験実施後に全記録を成果として残したものを総括報告書と言いま......


アルコールが抜け切るまでの断酒継続には
断酒継続の科学」(2016.12.02投稿)を
“言語化” については
回復へ ― アル中の前頭葉を醒まさせる」(2015.6.5投稿)
自助会AA ― 認知行動療法 “言語化” の実践道場(下)」(2016.8.26投稿)
底着きは2度ある ― 再び“精神的底着き”について」(2016.9.16投稿)も合わせてご参照ください。


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老いてもなお虚勢 張る?

2016-12-13 06:09:34 | 世相
 いつものようにゴミ拾いの七つ道具を持って信号待ちをしていると、一人の老人が声をかけてきました。

「ご苦労さん。タバコの吸い殻とイヌの糞だらけで大変でしょう? 
いつもそんなのばっかりで嫌になる。」改めて顔を見ると私よりやや年配で、タバコとライターを手にしていました。

「そうですねぇ、意外にマスクも多いですよ、最近は」と返したのですが・・・。
「いつも同じところに同じようにポイ捨てだ。同じ奴がやっていると直ぐに分る。ハッキリ言って、すごく腹が立つねぇ」と続けてきました。

「まぁ、そうですねぇ。」
「いつも思うんだが、現場に居合わせでもしたら絶対注意してやるのに・・・絶対にだ。」
「まぁ、ポイ捨てするのが憚られるよう、精々キレイにしておくのが一番ですよ。淡々と黙ってやるだけです。・・・ゴミ拾い、やっておられるんですか?」
一瞬間が空いて、「3年ぐらい・・・」と返ってきたのですが、そのまま無言で離れて行きました。

 まさかこんな質問をされようとは、・・・どうやら不意を突かれたらしいのです。どう考えてもせいぜい3ヵ月ぐらいの経験が関の山。とても3年の経験者が言う言葉とは思えませんでした。

「高がゴミ拾い。こんなことにも経験年数に拘る人がいる! 
すでに隠居した身なのに、経験に下駄をはかせる意味ってあるのだろうか?」
ついエラそうに、こんなことを思ってしまいました。



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電通の過労自殺に思う “どうにもならない” 生きづらさ

2016-12-09 09:19:38 | 世相
 電通社員の過労自殺が表沙汰になってからもう2ヵ月ぐらい経つでしょうか。ほぼ1年前の2015年12月25日に電通の新卒新入社員・高橋まつりさん(享年24)が飛び降り自殺をした事件のことです。この間、私の中でどうにも割り切れないわだかまりが残ったままでした。なぜ、入社9ヵ月目の新卒新入社員が自殺するまでに至ったのか? 私のわだかまりとはこの疑問に尽きます。

 ほぼ40年前の私を振り返ってみると、入社9ヵ月目というとやっと職場の雰囲気に馴れ始めた時期でした。新卒として私が就職した先は自社開発を標榜する製薬会社でした。

 営業職に配属され、いきなり現場の病院担当となった同期の仲間はさておき、臨床開発に配属された私などは、勉強のためにだけ治験関係の臨床論文を読む毎日でした。同じ臨床開発に配属され、即戦力と目されていた同期の同僚も、上司が医者と面談する出張に随行し、しょっちゅう出掛けていたぐらいのものです。現場の病院担当となった同期の仲間にしても、研修のため最低月に1回は全国から一堂に会し、泊りがけで情報交換(?)できる機会が与えられていました。当たり前のことですが、月々のノルマなどまだ課せられていませんでした。サラリーマンの世界では、製薬業界、証券業界、生命保険業界の3つが最も辛くて厳しい業種と言われていた時代のことです。

 40年前とは少しは変わっていると思いますが、新卒の入社1年目というのは今でも定期的な研修を繰り返す修業期間であることに違いありません。おそらく同業他社にしても似たり寄ったりで、たとえ異業種でも同じようなものだと想像できます。人手不足と報道されていた電通ですが、新入社員の扱いが他社と極端に異なっているとは思えません。

 会社には社風というものがあり、当の社員はあまり意識してないものですが、傍からは空気が違うとはっきり分かる、一種独特の気風です。それを如実に語るのが社訓で、大抵は創業者か中興の祖と言われる元社長が遺した言葉です。社員の意識を覚醒させるためでしょうか、しばしばギョッとさせられる言葉があるのが普通です。知らずしらず社員の意識下に流れている気風を醸成させるのが社訓なのだと思います。

 “男の約束は法律に優先する” 表立って殊更言われることはなかったものの、私が入社当時に聞いた社訓です。これを聞いたときは、とんでもない会社に入ったものだと心底ビビりました。事件の報道以来、物議を醸している電通の『鬼十則』の5番目 “取り組んだら「放すな」、殺されても「放すな」、目的完遂までは・・・” も同じ類のことで、時に目くじらを立てるまでもないと考えていたのですが・・・。

 報道によると、亡くなった新入社員の方は、打ち出したネット広告の宣伝効果を1週間単位で分析し、改善策を広告依頼主(クライアント)に報告する業務を担当していたそうです。試用期間の6ヵ月が過ぎ、自殺2ヵ月前からは本採用となってクライアントが2社に増えたといいます。試用期間とか本採用とかはさして重要な問題ではありません。常識的には、広告代理業トップの会社として宣伝効果の分析業務などのノウハウは完備しているとみるのが普通で、上司が新卒の新入社員に任せても大丈夫と判断した業務だろうと考えます。

 問題があったとすれば、入社半年でいきなり仕事が倍になったことと、恐らくはクライアントに提案する改善策部分にあったのだろうと思われます。改善策の提案は個人の資質や性格に負うところが大だと考えるからです。ところが調べてみると、それがどうも微妙なようなのです。

 新卒の新入社員が先輩社員からよく言われる言葉に「学生気分が抜け切らない」があります。正解があるという前提でもの事を考えるクセと言うのか、青臭い理屈から抜けられない考え方のことを言います。学生時代は、考え方が論理的であって、まとまった考えを論じられたら合格という自己完結型思考の世界です。努力型で秀才型の学生ほど自力で何でも片づけられると考えがちです。

 そんな学生時代と違って、正解という答がない世界が実業界です。答は注文主であるクライアントの満足と、結果として現れる数字だけです。正解がないのですから、取り敢えず答らしきモノを提出して相手の反応を見、結果がどんな数字で出て来るか、他力本願(?)で待つしかありません。努力型で秀才型の人には、なかなか馴染めない軽薄な世界と映るはずです。

 故人は過酷な受験勉強を勝ち抜いてきた経歴の持ち主です。手を抜いたら落とされるという辛酸を十分に舐めて来た人だと思います。おそらく真面目で上昇志向が人一倍強く、自己完結型思考に長けた人だったのでしょう。そのためどうしても完璧を目指し、手を抜いてテキトーに報告したらいいというイイ加減な発想がなかったのでは、と思われます。そうでもなければ徹夜も含む残業が月100時間超など考えられません。脳が疲れてきたら、いくら時間をかけてもよいアイデアなど生まれません。睡眠をとるのが一番の解決策なのですが、知ってはいても性格上無理を重ね、悪循環に嵌まったのだと思います。
 
 Twitterへの書き込みで、故人は自殺2ヵ月前から眠れないことを悩んでいたそうです。同じ書き込みで自殺念慮も残しているそうです。クライアントが2社に増えたことがプレッシャーとなり、残業してでもこなそうと完璧主義に拍車がかかったとしても想像に難くありません。不眠という自覚症状を書き残していたのですから、さすがに本人も心身の異常に気付いていたことでしょう。それでも他の社員が深夜・早朝まで残業する姿を見て、新入社員が疲れたなどと、とても言える雰囲気ではなかったとも書き残しています。新入社員としての引け目が招いた悲劇です。

 Twitterへの書き込みには字数制限があり、思いの丈を吐露できる場ではありません。いわば何気なく呟く独り言みたいなもので、賛同者がいたとしても気休めにしかなりません。報道では、故人から相談を受けたという先輩社員や同僚の話は載っていませんでした。これらから推測できるのは、深夜残業をせざるを得ない自分の非力を認めたくなかった可能性です。恐らくそのため、先輩や同僚に相談するとか、休むとかいう発想がなかったのでしょう。周りに相談して引きずり込むなどせず、完全に一人だけで仕事を抱え込んでいたのだと思います。ここまでは個人の資質・性格についての疑問です。

 遅くまでの残業が習慣化すると奇妙なことが起こります。人に誘われるか、用事でもない限り、一人で定時には帰れなくなるものです。こんなことはベテラン社員に当てはまることで、新卒の社員にはあり得ません。経験不足から止むを得ず過酷な残業続きとなり、不眠のため抜き差しならない深刻な精神状態になっていたのでしょう。もう自分の意志では “どうにもならない” 生きづらさの中に陥っていたと思わざるを得ません。依存症と同様の病態です。

 こんなときに上司から「残業時間の20時間は会社にとって無駄」と嫌味を言われたり、「今の業務量で辛いのはキャパがなさすぎる」とか、「会議中に眠そうな顔をするのは自己管理ができていない」と叱責されたりしたと故人がメモに残しているそうです。ましてや若い女性に対して「髪がボサボサ」といった類は言語道断です。これらは故人にとって凶器とも思えたであろう暴言です。作り笑いの引きつった顔が見えるようです。心身とも健全な今時の若い女性なら、こんなパワハラとも取れる言葉にはその場で噛みつくのが普通です。新入社員だからと自重したにしても、抗議することもできなかったほど精神が衰弱していたとしか考えられません。

 精神状態の異変は傍から見ているとはっきり分かるものです。キャパがなかったのは明らかに上司の方で、部下の異変を見抜けなかったことは管理能力がなかったことを意味します。社内事情に通じたベテラン社員の上司ならば、せめて『裏十則』の洒落で部下を労う余裕が欲しかったと思います。電通には『鬼十則』にかけてブラック・ユーモア化した『裏十則』というのがあり、その5番目は “取り組んだらすぐ放せ。馬鹿にされても放せ、火傷をする前に・・・” だそうです。それにしても、なぜ、上司や同僚が精神的異変に気付いてやれなかったのでしょうか?

 私も散々残業をしてきたクチです。月100時間ぐらいの残業もざらに経験して来ました。私の経験からすれば、たった一人で残業するなどまずあり得ません。広いフロアには必ず何人かが残っているものです。退出前にまだ残っている人を見かけたら、一度声をかけてから退出するのが普通です。たった一人だけになると、さすがに心細くなり、帰り支度を始めるのが定番でした。

 残業者を見かけたら、警備員は何度でも夜間巡回を繰り返していたはずです。新入社員でありながら、いつも同じ人物が残業しているのは明らかに異常です。頻繁に目につくようなら、すぐに噂となって職場仲間や上司の耳に届くものです。電通の社内ではこんなことが異常とは映らなかったのでしょうか? 異常と映らないようなら、あまりにも殺伐とした空気に満ちみちた職場風景が目に浮かんでくるのです。

 『鬼十則』は電通社員の行動規範でもあり立派な精神訓示でもあります。現場で仕事に取り組む際の心構えを説いたものでもあるのです。社訓に書かれていることを盾に、残業に苦しんでいた故人を見て見ぬふりをしていたのなら、社訓の説く精神を曲解していたに過ぎません。社訓が字義通りにしか解釈されず、言い訳に使われるまで社風が劣化しているのであれば見直すしかないのでしょう。

 故人は、ハッキリ言って就職先を間違えたのです。外から見える華やかな世界が、内から見ても同じだとは限りません。華やかそうな欺瞞に満ちた現実に虚栄の夢を散らした故人に合掌。


 上記は上司の力量不足が若者の命を奪った事例とも言えます。現役時代の私を振り返って見れば、部下の指導に戸惑ってばかりだった自分に後ろめたさを覚えてしまいました。以下は、その頃の思いを書いた記事です。


アルコール依存症へ辿った道筋(その11)一人で抱(かか)え込むより抱(だ)き込む?
このスタッフに任せて大丈夫行ける、と言い切れない不安をどこかに感じていました。・・・臨床開発の経験不足が明らかなスタッフを一人前に教育できるという確信が持てなかったのです。・・・.



電通『鬼十則』、そして電通『裏十則』
“どうにもならない”生きづらさって?」もご参照ください。


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災いは元から断たなきゃダメ!

2016-12-06 07:29:23 | 自分史
 アルコールの正体を知らないとどんな結末を迎えるのか?
 手の振戦からアルコール依存症と診断されたのは私が45歳11ヵ月の時です。それ以来、会社にバレて失職しないようチマチマした小細工を何かと試みました。できるだけ酒から距離をおこうと、休日には西国三十三ヵ所巡礼を原則歩きで始めてもみました。一日20~40km歩く苦行を3巡以上重ねても、アルコールの魔力はビクともしませんでした。アルコールの毒性は進行性で、次々に身体を蝕み続けました。

 長年(20年?)の飲酒習慣が祟り、高血圧、糖尿病、高脂血症を次々に発症し、ついには53歳で不安定狭心症にもなってしまったのです。それでも酒を止めようとせず、アル中定番の立飲み屋通いも始まりました。いや正確に言うと、酒がどうにも止まらなかったというのが正直なところです。これらの生活習慣病の原因がアルコールなどとは思いもしなかったからでした。

 こうなったら後は一本道です。休日には公園で “朝から飲酒” が始まりました。そして、定年退職後は文字通り家で “朝から飲酒” となって、1年半で生ける屍寸前まで行ってしまったのです。辛うじて定年退職まで会社勤めを続けられたのは、生きている内に何としてでも片付けなければならない宿題を背負っていたからでした。重い宿題が生きる意欲となっていたなんて、こんな皮肉な幸運も現実にはあるのです。

 今回は、昨年の同時期に投稿した記事の再掲です。アルコール依存症の本質を知ろうとしないまま、断酒もせずにいくら取り繕うとしても無駄という実例です。


続々 飲み方が異常となった転機
 飲み方の異常というのは、“飲み出したら止まらない”といった酒量の多さも問題ですが、TPO(時と場所、場合)を弁えずに飲酒してしまうことの方が遥かに重要です。“朝酒” や “隠れ酒......


続 飲み方が異常となった転機」も是非ご参照ください。


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断酒継続の科学

2016-12-02 07:38:32 | 病状
【要約】
***********************************************************************
 ●  “意地でも” 最初の一杯(一口)を口にしない
 ●  抗酒薬(シアナマイド、ノックビン)や精神安定薬(ジアゼパム)の助けを借りて
   でも、なりふり構わず断酒を実践する

 ●  不規則でだらしない生活習慣を改め、自律的で規則正しい生活リズムに切り替える
 ●  遅発性の急性離脱後症候群(PAWS)について教育を受ける
 ●  飲酒時代の体験や断酒後に気づいた病状の変化を日付と共に記録しておく
***********************************************************************
 「アルコール依存症は、決して意志が弱いから成ったのではありません。誰でも成り得る病気です。」
専門クリニックで耳にタコが出来るぐらい聞かされた言葉です。この言葉の “意志が弱い” の部分が私の闘争心に火を付けたようです。

 断酒を続けるためには意志の強さが不可欠です。
“意地でも” 最初の一杯(一口)を口にしない 」を貫き、SLIP(再飲酒)を防ぐのです。自分を甘やかしては未来はないと覚悟すべきです。

 断酒を始めた最初の段階では医療が有用です。
抗酒薬(シアナマイド、ノックビン)や精神安定薬(ジアゼパム)の助けを借りてでも、なりふり構わず断酒を実践するのみです。(ただし、ジアゼパムには依存性がありますから、早めに止めることをお勧めします。)意欲の回復にビタミンB1の点滴補充も欠かせません。そんな努力を重ねれば、必ずアルコールは完全に抜け切ります。アルコールが完全に抜け切れるまでは意志の強さの問題です。アルコールが完全に抜け切れたら、そのときは間違いなく抜けたと自覚できるものです。飲まないでいることが自然で楽と思えるようになります。

 断酒に3年と言われていますが、それに要する期間は人それぞれだろうと思います。私の場合は、アルコールが完全に抜け切れるまで10ヵ月かかりました。35年以上酒漬けだったわけですから、10ヵ月というのは意外に短いと思えるぐらいです。アルコールが完全に抜けた今だからこそエラそうに言えるのですが・・・。

 もう一つアルコール専門医療が必要な訳は、アルコール毒性について行う教育にあります。特に、
遅発性の離脱症状 ― 急性離脱後症候群(Post Acute Withdrawal Syndrome:PAWS)についての教育が大切だと考えています。

 アルコールが切れるとすぐに現れる急性離脱症状は比較的よく知られていますが、その後しばらくして現れるPAWSについては、ドライドランクを始めほとんど知られていないのが実態です。断酒で不安に駆られがちな患者にとって、しばらく経ってどんな遅発性離脱症状(障害)に襲われるのか知っておくことは重要です。敵の正体を十分に知っておけば、それだけ不安にならずに済みます。それには教育を受けるしかありません。

 教育には最適な時期というものがあります。断酒を始めて3ヵ月以内は、体調が回復途中で心身とも不安定な時期です。特に、脳はまだアルコールから醒め切っていません。私が受けた専門クリニックの教育プログラムでは、この時期、臓器障害の病態説明と共に、アルコールがもたらす精神的障害についても多くの時間を割いていました。ある意味、飲酒時代には知らずに経験していたアルコールによる精神的障害の概論であり、精神に及ぼす飲酒の怖さを教育する入門編としては止むを得ないものだったと思います。しかし残念ながら、この時期に教えられた精神的障害の知識はPAWS対策にほとんど役に立ちませんでした。

 継続断酒3~6ヵ月頃から、多くの患者仲間が “先行き不安” あるいは “先取り不安” を時に口にします。頭がモヤモヤしたままの状態に得体の知れない不安が湧いて来ることを意味しているようです。私はこれもPAWSの一つ、情動障害の現れと考えています。断酒を始めたのはいいけれど、この先どんな障害が待ち受けているのか分からない、そのことを象徴的に表現したものと考えています。敵の正体が分からなければ不安が募るのももっともです。

 PAWSには最も危険な情動障害の他、記憶障害、想起障害、思考プロセス障害、認知障害などがあります。そのどれもが日常生活でストレスを増幅させ、再飲酒へと向かわせる危険が大きい障害ばかりです。体調が落ち着いて来る断酒3~6ヵ月目ぐらいから、知らず知らずに現れてくるのがPAWSです。

 PAWSについての教育は、症状が出始めるこの頃からが相応しく、より具体的な内容に多くの時間を当てるべきだと思います。そうして少しでも患者の不安を和らげてほしいものです。私がPAWSを具体的に知ったのは継続断酒10ヵ月過ぎのことです。“言語化” がPAWSの障害の克服に有用だと知ったのも同時期のことでした。もっと早めに敵の正体とその対策を知っていたなら、違った対処の仕方があったのかもしれません。

 医療に頼るばかりでなく、自分の意志でできることがあります。
日々の行動を自律的に変えることです。行動の7割は習慣化したもので、意志によるものは3割と言われています。その3割を徹底的に鍛え上げれば自律した行動に変えられます。後のことは身体に染みついた行動パターンが引き継いでくれます。習慣化という行動パターンは強力です。これにお任せすれば、一切ご心配には及びません。

 まず、不規則でだらしない生活習慣を改め、自律的で規則正しい生活リズムに切り替えることをお勧めします。これがどんな薬よりもよく効きます。手始めに早寝早起きから始めるのが良いと思います。自律神経のバランスの回復には毎日一定以上の距離を歩くことが最も効くそうです。教育プログラム付きの毎日通院は、自律的生活リズムの導入の意味でも理に適ったものでした。

 自助会ミーティングに出席することも行動を変えるのに打って付けです。徐々に行動の幅を拡げられれば、それが “空白の時間” 対策にもなります。不義理をするのも是非お勧めしたい行動(?)です。飲酒環境に近づかないよう距離を置くことがこれに当たります。すなわち、飲み友達から離れること、行きつけの飲み屋や酒売り場に近づかないこと、結婚披露宴や葬式への出席を辞退すること、時節柄忘年会が御法度なのは絶対です。

 もう一つだけ習慣付けてもらいたい行動があります。病状の記録を残すことです。忘れない内に、
飲酒時代の体験や断酒後に気づいた病状の変化を日付と共に記録しておくことをお勧めします。教育プログラムのお復習いになるばかりでなく、アルコールで傷めつけられた脳のリハビリ “言語化” に最適です。この作業をこつこつ続ければ、PAWSの障害にも早めに気づけ、心構えも変わって来ると思います。

 以上が私のお勧めする「断酒継続の科学」です。継続断酒3年の間、専門クリニックの医療システムや、仲間の体験談と私の経験を分析した結果を基に導き出された方法です。科学的とは再現性があることを意味します。「△の科学」と謳っている新興宗教とは違います。私がお勧めするこれらの方法は、高い再現性があるものと自負しております。断酒に秘策などありません。是非とも「断酒継続の科学」をお試しください。


飲まないでいることが自然と思えるようになったなら、次の「回復の科学」の過程にお進みください。
底着きは2度ある ― 再び“精神的底着き”について」(2016.9.16投稿)も合わせてご参照ください。



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