ヒゲジイのアル中よもやま話

断酒を始めて早7年目。このブログは回復プロセスの記録と脳のリハビリを兼ねて綴っています。やはり、まだチョット変ですかネ?

ヒゲジイのPAWSによる悪文見本市(その4)

2015-09-25 20:56:42 | 悪文見本市
 断酒開始後3~6ヵ月目に自覚するようになると言う急性離脱後症候群(Post Acute Withdrawal Syndrome:PAWS)、その一つ“思考プロセス障害”によると思われる悪文事例の続きです。
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【事例17】
 17番目の事例は、事例14~16と同じく断酒を始めて満1年2ヵ月の時期のものです。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その14)賭場では大勝、でも貧乏な一人住い・・・」より)

「両薬剤の改善率に差が出たのです。偶然に差が出た可能性の確率が5%未満ということで、偶然では出ないとされる差(有意差)でした。」

        
「両薬剤の改善率に有意差が出たのです。偶然から差の出た可能性が確率5%未満ということで、統計学的にみて偶然では起こり得ない差(有意差)でした。」

 生物統計学に関わる事柄は、正確な記述となるよう細心の注意を払うべき典型例と思います。それだけに一般向けに記述するのは殊のほか難しいものです。このことは生物統計学に疎いメディカル・ライティングなら誰しも経験することです。“有意差”の意味が理解できましたか?臨床開発の仕事は、最終の比較検証試験で“有意差”を持って対照薬に勝てるよう、最も適切な治験薬の用法・用量を一から探求していく仕事です。

【事例18】
 18番目の事例は、断酒を始めて1年3ヵ月後のものです。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その16)阪神大震災、地震の当日」より)

「私自身、経験したことのない大災害の現場に今いるという自覚はありましたが、日常とは全く異質で、不思議な世界となってしまった現実を醒めた眼で眺めていました。恐怖感も湧かず、興奮していないことが不思議でした。意表を突かれた出来事に感情が完全に封じ込められていたのかもしれません。茫然自失。この四文字熟語では当時の実感が湧いてきません。」

        
「私自身、経験したことのない大災害の現場に居合わせているという自覚はありましたが、日常とは全く異質で不思議な世界となってしまった現実を、第三者のように醒めた眼で眺めていました。恐怖感も湧かず、興奮もしていないことが不思議でした。意表を突かれた出来事に感情が完全に封じ込められていたのかもしれません。茫然自失。この四文字熟語では当時の実感は再現できません。」

 “居合わせる”という、この場面に恰好の表現がどうしても思い浮かびませんでした。“今ここにいる”であれば、まだしも臨場感に富む表現かもしれませんが、“今いる”だけでは味も素っ気もありません。直截的過ぎます。自分の眼でありながら、他人の眼を通したように非情で冷徹な(?)視線であったことを説明するため“第三者のように”を加えました。原文では“実感”の言葉に引き摺られて、“湧く”と自動的に使ってしまいました。ここは“表現”でも可ですが、“再現”の方がより実感に近いようです。

【事例19】
 19番目の事例は、同じく断酒を始めて1年3ヵ月後のものです。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その16)阪神大震災、地震の当日」より)

「室内の被害は、食器棚だけが天井の梁桁に引っ掛かって前方に傾き、食器が床に零れ落ち割れて散乱しただけでした。食器棚は押してもびくともしませんが、前に引いてみたら元に戻りました。」

        
「室内の被害は、食器棚が前方に傾いて天井の梁桁に引っ掛かり、食器が床に零れ落ちて、破片が散乱していただけでした。食器棚は押してもびくともしなかったのに、前に引いてみたら元に戻りました。」

 “室内の被害が食器棚だけだった”こと、これが前半の文で最も伝えたかったことです。そのため元の文では“話しことば”そのままに、最も伝えたい“食器棚だけ”から話を切り出し、その後も順番無視の表現となっています。“書きことば”らしい記述順序に改め、時制についても現在形か過去形かを混乱して使用している点を改めました。“押してもダメなら引いてみる”が本当のことなのだと実感した事件でした。

【事例20】
 20番目の事例は、同じく断酒を始めて1年3ヵ月後のものです。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その17)連続飲酒から脱出・仕事再開!」より)

「震災後、アルコール依存症の患者が増えたと聞きます。私のようにすでに習慣的飲酒で依存症になっていた人が、引き籠り状態のまま誰にも介入されることがなかったため依存症が顕在化しただけだと思います。連続飲酒で引き籠りがちの状態では、その姿を他人から見られるのはとても嫌なものですが、見られたり声を掛けられたりすると少し正気に戻るものなのです。」

        
「震災後、アルコール依存症の患者が増えたと聞きます。習慣的飲酒ですでに依存症になっていた人が、震災発生を契機に引き籠り状態のまま誰にも介入されなかったため、依存症が顕在化しただけのことと思います。連続飲酒で引き籠り状態になると、他人から見られることをとても嫌います。ところが、覗いてもらったり声を掛けてもらったりすると、気にかけてもらえたことで少し正気に戻るものなのです。」

 “書きことば”では修飾語と非修飾語は離さずに近い位置に置くこと(修飾語の係りが遠い場合は読点を打つ)、がルールです。それに、本来補足説明として記述されるべき言葉(改訂文の下線部)が欠けています。諄かったり、端折ったりした表現も所々にみられます。主語(依存症者)が記述されていないため、述語に捩じれが生じてもいます。欠けた言葉を補足し、捩じれも解消させました。読み手はきっと分ってくれるもの、という思い込みがよほど強かったものと思います。

【事例21】
 21番目の事例は、同じく断酒を始めて1年3ヵ月後のものです。想起障害が原因と思われる気の毒(?)な文例2題を続けます。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その17)連続飲酒から脱出・仕事再開!」より)

「食卓の上にサランラップで内側を覆った食器が並べられ・・・」

        
「食卓の上にサランラップでくるんだ食器が並べられ・・・」

 断水で食器を洗えない状況で、工夫された生活の知恵を記述した部分です。“くるむ”という日常生活でよく使う動詞を失念した末に、苦し紛れに事実を描写した事例です。近似の言葉で代用したため翻訳調の表現となっていました。もどかしい限りです。

【事例22】
 上の事例21と同じ引用元です。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その17)連続飲酒から脱出・仕事再開!」より)

「食事した場所はオカズを自分で取って食べるシステムの食堂で・・・」

        
「食事した場所はオカズを自分で選ぶセルフ・サービスの食堂で・・・」

 ここでも“セルフ・サービス”という普段当たり前に使う言葉が思い浮かばず、苦し紛れに説明調の表現で代用しています。気取って翻訳調にしているのではありません。上の事例21は、目当ての言葉が単純に浮かんで来ない典型ですが、ここでは目指す言葉の意味が分かっていながら、その言葉が思い出せないもどかしさ満杯の事例です。自分でいうのも変ですが、ここまで来ると痛々しくさえ思えます。

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次回もまだ続きます。


「ボケが始まった?(急性離脱後症候群:PAWS)」も併せてお読みください。
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ヒゲジイのPAWSによる悪文見本市(その3)

2015-09-18 19:46:47 | 悪文見本市
 断酒開始後3~6ヵ月目に自覚するようになると言う急性離脱後症候群(Post Acute Withdrawal Syndrome:PAWS)、その一つ“思考プロセス障害”によると思われる悪文事例の続きです。
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【事例11】
 11番目の事例は、事例10と同じ断酒を始めて満1年の時期のものです。部門長を批判した記述部分です。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その7)嫉妬は酒の肴のツマのような・・・?」より)

「根本原因は、地道に教育して経験を積んだスタッフを養成するという当たり前の発想が無責任にもなかったことなのか、あるいは育成しようとする発想はあっても提案できない社内の空気だったのか、のいずれかです。 “少数精鋭”の虚名で人員の拡充を怠るばかりで、もっと早くから未経験者を部内に呼び寄せて経験を積ませ戦力を充実させるという当たり前の政策を採らなかった責任は臨床開発部門トップ、専務のK氏にある」

        
「根本原因は、たとえ余剰人員の懸念はあっても、地道な教育でスタッフを養成しようという発想がなかったのか、あるいは育成しようとする発想はあっても提案できない社内の空気だったのか、このいずれかです。いずれにせよ、“少数精鋭”の虚名の下で人員の拡充を怠った責任は臨床開発部門トップ、専務のK氏にある」

 一見して感情的になっている表現が鼻につきます。まず、増員を望まない動機の説明(改訂文の下線部分)が欠けており、“無責任”が唐突な印象です。続く部分でも“当たり前の”や“無責任にも”と畳み掛けるように用い、感情任せの諄い表現になっています。後半も内容的にほぼ同じことを繰り返した表現になっており、無い方がスッキリします。

【事例12】
 12番目の事例は、事例10~11と同じ断酒を始めて満1年の時期のものです。目当ての言葉が出て来ないため、隔靴掻痒状態が見て取れます。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その7)嫉妬は酒の肴のツマのような・・・?」より)

「臨床開発業務では、一例々々患者のデータをつぶさに読込むことでデータ全体が評価に値するのかを判断することと、どこに光を当てれば治験薬の特色を際立たせられるのか、データの切り口を見つけ出すことが重要です。」

        
「臨床開発業務では、患者一例々々のデータを点検しデータ全体の質が評価に耐えられるのか判断することと、治験薬の特色を際立たすためのデータの切り口を見出すことが重要です。」

 “データの”とすべき肝腎の言葉を失念し、直近の“評価”に引き摺られて、“耐える”とすべきところを“値する”で代用したため論旨が捩じれてしまいました。そもそも“脚光を浴びさせる”イメージが浮かんできたのですが、上手い言葉が浮かばないままに“光を当てる”と“際立たせる”の重複した表現となり、諄い印象となった典型例です。

【事例13】
 13番目の事例は、断酒を始めて満1年1ヵ月の時期のものです。ここでも目当ての的確な言葉が浮かばず、説明調の言葉を代用した例です。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その9)慎重さを欠いた脇の甘さが仇と・・・?」より)

「先行きへの不安と事件による社内の混乱への憤懣もあって、一人で呑むいつもの酒の飲み方が一層加速しました。」

        
「先行きへの不安と事件による社内の混乱への憤懣もあって、いつも通りの一人酒が一層荒れた酒となりました。」

 微妙な雰囲気は汲み取れるものの、翻訳調の堅い表現となっています。元をただせば“一人酒”と、“荒れた酒”という言葉がどうしても思い浮かばなかっただけの話です。

【事例14】
 14番目の事例は、断酒を始めて満1年2ヵ月の時期のものです。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その14)賭場では大勝、でも貧乏な一人住い・・・」より)

 この事例も含め事例18までは、「アルコール依存症へ辿った道筋(その14)賭場では大勝、でも貧乏な一人住い・・・」が引用元です。この引用元の元々の文はほぼ投稿当時のままで、ほとんど手を加えていない未編集の状態でした(段落ごと移動した部分はあります)。投稿した当時の姿が残っている貴重な事例です。他の事例のほとんどの引用元は、少なくとも1回は手直しを経ています。

「1本の試験は、日常生活での歩行などの労作から起こる狭心症の胸痛発作がどの程度軽減されるのか、胸痛発作回数と発作時痛め止めに頓用するニトログリセリン錠の使用回数の変化を評価するもの(症状試験)、もう1本の試験は、狭心症の心電図変化が起こるまでにどの程度の運動に耐えられるのか、運動持続時間の長さの変化を評価するもの(運動耐容能試験)です。」

        
「試験の内の1本は狭心症の胸痛発作回数と発作時のニトログリセリン頓用錠数の変化を評価するもの(症状試験)、もう1本は心電図上に変化が起こるまでの運動持続時間の変化を評価するもの(運動耐容能試験)です。ニトログリセリン錠は発作時に痛み止めとして頓用するものですし、心電図上の変化とは虚血性ST偏位のことです。」

 複文と重文の組み合わせからなる構造の1文中に、内容をテンコ盛りとした読みにくい表現となっています。テンコ盛りとなった説明部分の重複を整理してみました。さほど読み易くなってないのかもしれませんが・・・。

【事例15】
 15番目の事例は、事例14と同じ断酒を始めて満1年2ヵ月の時期のものです。“話しことば”としては十分な表現になっていますが・・・。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その14)賭場では大勝、でも貧乏な一人住い・・・」より)

「二つの比較検証試験(症状試験109例、運動耐容能試験55例)で、計164例の患者について行うデータの点検作業では、緊張感と重圧が再び重く圧し掛かった毎日だったはずですが、あまり記憶にありません。」

        
「二つの比較検証試験に参加した患者数は、症状試験で109例、運動耐容能試験で55例の計164例でした。164例もの患者について行うデータの点検作業ならば、緊張感と重圧に再び圧し潰されそうな毎日だったはずですが、あまり記憶にありません。」

 書かれていない主語は誰か(?)主語が省略されているため、“話しことば”調の端折った1文となっています。最低限補うべき前半の主語を補い、後半は影の主語(私)に述語を従わせて捩じれを解消させました。

【事例16】
 16番目の事例は、事例14~15と同じく断酒を始めて満1年2ヵ月の時期のものです。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その14)賭場では大勝、でも貧乏な一人住い・・・」より)

「コントローラー(盲検化の管理者)が患者一例一例について、どちらの薬剤を服用したのかを読み上げる・・・」

        
「コントローラー(盲検化の管理者)が患者一例一例について、服用した薬剤の符号を読み上げる・・・」

 意図する事実を正確に記述すると改訂文のようになります。こういう稚拙な文を見ると、元メディカル・ライティングとしての職歴が泣きます。

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 次回も続きます。


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ヒゲジイのPAWSによる悪文見本市(その2)

2015-09-11 19:46:47 | 悪文見本市
 断酒開始後3~6ヵ月目に自覚するようになると言う急性離脱後症候群(Post Acute Withdrawal Syndrome:PAWS)。その一つ“思考プロセス障害”によると思われる悪文事例の続きです。どんな時期にどんな箇所で躓いているかに関心があると思い、(その1)と同様に時間の経過に沿った掲載としました。
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【事例5】
 5番目の事例は、断酒を始めて満1年になろうという時期のものです。仕事で医師と面談するときの心構えを記述した部分です。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その3)会社で生き残るための最初の本格的な仕事は・・・?」より)

「医師との面談は最初の1~2分が勝負です。簡潔な話し方で要領よく相手の勘所を押さえなければなりません。全神経をそれに集中します。これに成功した後は10分ほどの時間で肝心の依頼ごとを誠実に伝え了解してもらいます。運がよければ30分~1時間ほどさらに時間をもらい、親しい医師の近況や、難しい医学的な不明点の相談、他社の治験薬の開発進行状況など様々な情報をじっくり聞き出すのです。やや前屈みになりながら出来るだけ和やかにゆったりと構える、その一方で一言も聞き漏らすまいと耳をそばだて神経を張り詰めて行う会話、これが臨床開発の大事な仕事のひとつです。」
        
「医師との面談は最初の1~2分が勝負です。相手の勘所を押さえることに全神経を集中し、相手に合わせた話し方で簡潔に訪問目的を伝えます。これに成功した後は、10分ほどの時間で肝心の依頼事項を正確に伝え了解してもらいます。運がよければさらに30分~1時間ほど時間をもらえることもあります。そんなときは、親しい医師仲間の近況を報告したり、他社の治験薬の開発状況を聞き出したり、医学的に難しくて分からない点をじっくり相談したりするのです。やや前屈みの姿勢でゆったりと和やかに構えながら、そのくせ一言も聞き漏らすまいと耳をそばだて神経を張り詰めての会話です。これが臨床開発の大事な仕事のひとつです。」

 記述当時は、“相手医師のご機嫌”、“簡潔”、“誠実”、“前屈み”、“ゆったり”といったイメージでそれぞれの言葉がまずランダムに浮かんで来たものと思われます。これらの言葉は、医師と面談の際の心構えとしてとても大切なものです。読み返してみると、これらの言葉の繋がりを十分吟味しないままに、“話しことば”の順番で記述し始めた印象が強いです。
 “話しことば”の順番とは、最初に最も伝えたい言葉から切り出すことを言います。ここでは“簡潔な話し方”がそれに当たります。“誠実”を使用したのは場違いですし、後半の「親しい医師の近況や・・・」の世間話部分では端折った表現が先立ち、微妙な動作や心情が表現できていません。
 言葉同士の繋がりを“書きことば”のルール通りに整理し、特に後半の世間話の内容を分かりやすく説明するように改めました。“話しことば”を“書きことば”のルールへ変換するのが不十分だった事例です。

【事例6】
 6番目の事例は、同じく断酒を始めて満1年になろうという時期のものです。“思い入れ”による言葉に引き摺られた例3つをまとめて挙げてみました。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その5)成功は悪魔の囁き?」より)

「新剤型薬LAの承認・発売が表彰され、臨時の社長賞を貰いました。」
      
「新剤型薬LAの承認・発売が、臨時の社長賞として表彰されました。」

 “社長賞”と“表彰”の言葉の組み合わせ方に戸惑った末の1文です。結局、翻訳調のようなぎごちない表現になっています。どう書くのが最も相応しいのでしょうか?

「まさに業務の延長戦です。」
      
「まさに正真正銘の正規の業務、気楽な(?)サービス残業などではありません。」

 残業ではなく“延長”がまず浮かび、“業務の延長”のように引き摺られてしまいました。散々やらされた“サービス残業”の苦い思い出から、この言葉を是非とも活かそうと、敢えて諄い表現にしてみました。

「夢のような好物件に36倍の抽選で見事に当たったのです」
      
「夢のような好物件に競争率36倍の抽選で見事に当たったのです」

 “抽選”だけで十分伝わると思い込み、肝腎要の“競争率”を失念した想起障害の例と思います。当然ながら“競争率”を補いました。

【事例7】
 7番目の事例は、同じく断酒を始めて満1年になろうという時期のものです。これも言葉に引き摺られた例です。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その6)時代は国際標準を要請していたのに・・・?」より)

「先行する治験成績と原案のセットを・・・中央委員会に諮り」
      
「先行する治験成績と原案とをセットで・・・中央委員会に諮り」

 “セット”の言葉に囚われ、その拘りから不自然な表現に気付いていません。“セットを”と“セットで”では、語感にこんなに違いが出るものかと知らされました。これも助詞の使い方に戸惑ったことが原因でしょうか?

【事例8】
 8番目の事例は、事例7と同じく断酒を始めて満1年になろうという時期のものです。簡潔な表現が思い付かず、説明的で諄い表現になった例です。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その6)時代は国際標準を要請していたのに・・・?」より)

「このような医師の方々の信頼を得るためには研究会資料(特に、先行する治験の問題症例検討資料)は正確でかつ要点が分かり易く、概ね2時間という短時間で検討を済ますことが出来るように作成することが必須条件です。正確であって一々読まなくても一見して分かる資料作成に如何に注力しなければならないかがお分かりいただけると思います。」
        
「このような医師の方々の信頼を得るためには、研究会資料(特に、先行する治験の問題症例検討資料や治験成績)は正確かつ要点が分かり易く、検討に要する時間は概ね2時間以内となるように作成することが必須条件です。正確であって一々読まなくても一見して分かる資料を目標に、いかに工夫をこらして作成したかがお分かりいただけると思います。」

 前半の“要点が分かり易く”は“簡潔で”の方が良いのかもしれません。その後に続く部分は翻訳調の修飾語のため回り諄い表現になっています。後半は、“資料作成”と“注力”の言葉に引き摺られ、説明すべき言葉を端折った表現になっています。下線部分のように改めてみました。

【事例9】
 9番目の事例は、事例7、8と同じく断酒を始めて満1年になろうという時期のものです。目当ての言葉が浮かばず、近似の言葉を代用した例です。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その6)時代は国際標準を要請していたのに・・・?」より)

「業界情報と現状とをシッカリ把握した上で大胆に改革・拡充しようという気概など・・・」
        
「業界情報や臨床開発現場への関心が薄く、大胆に改革しようという気概など・・・」

 “現場”に近似の言葉として“現状”を代用したため、続く言葉が“把握した”と一人歩きしてしまいました。結果的に説明不足で、実態のないニュアンスだけの表現となっています。“改革”に続いて、改革の中味となる“拡充”という言葉を畳み掛けており、必要以上に諄い表現になっています。

【事例10】
 10番目の事例は、断酒を始めて満1年の時期のものです。これも目当ての言葉が浮かばず、近似の言葉を代用した例です。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その7)嫉妬は酒の肴のツマのような・・・?」より)

「大規模なデータが相手では、簡潔で明瞭な資料提示の要求にはとても太刀打ちできないだろうと思いました。」
        
「大規模なデータが相手では、一目瞭然で簡潔な資料の要請にはとても太刀打ちできないだろうと思いました。」

 “一目瞭然で”に近似な言葉“明瞭な”が先ず浮かび、これを代用したため翻訳調の表現となったと思われます。以下のように言葉の変遷がありました。

言葉の変遷:(言いたい本音は)一目で分かるようにしなければならない→“簡潔”、
      “明瞭”、“提示”、“要求”のイメージ→ “一目瞭然で簡潔な”、“要請”
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次回も続きます。


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ヒゲジイのPAWSによる悪文見本市(その1)

2015-09-04 20:17:29 | 悪文見本市
 以前書いたものを読み返してみて、正真正銘これは欠陥だらけの悪文だと思いました。書いた当時、悪文を書いているという自覚は全くありませんでした。在職中、メディカル・ライティングの業務に就いていた自負もあり、正直ショックを受けました。

 私は断酒継続中のアルコール依存症者として、その時々の事実関係と、どのような症状であったのかを記録として残そうと思い立ち、このブログを始めました。出来るだけ正確に症状を記録することが目的で、読者に心情を共感してもらうことが目的ではありません。文芸作品のような技巧を駆使した描写をするつもりはありませんし、そのような技巧を持ち合わせてもいません。つまり、あくまでも “ありのまま” の記述を心掛けているつもりです。

 私の書いたものが、経験した事柄の記録であるばかりでなく、文章そのものが記述時の思考プロセスを記録したものでもあることに気付きました。普通、読み返してみて何か変と違和感があれば手直しするのが当たり前ですし、当然、投稿当時も何度か読み返していたはずです。ここに挙げた文例は、そんな読み返しと推敲の手順を踏んでいたにもかかわらず、網の目をすり抜けていた事例です。

 当時は、文章にどこか違和感があっても、どう手を入れたらよいか分からなかったのだと思います。注意力が散漫だったせいばかりでなく、思考プロセスにも問題があったのではないかと考えました。“思考プロセス障害” の参考例となれば投稿した甲斐があるというものです。


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【事例1】
 トップ・バッターは断酒10ヵ月後の最初の投稿からです。(「ハイテンションになると危ない!」より)

 「AAからの帰り道、一時的にひどく遣る瀬ない気持ち(やるせなさ:何かに向けたいけど何処に向けたらいいか分からない不穏な気分)に襲われました。断酒後に度々襲って来る酒を飲まずにはいられないような情緒不安定な心理状態です。」
      
 「AAからの帰り道、一時的に胸がひどくザワザワした不吉で不穏な気持ちに襲われました。断酒後に度々襲って来る酒を飲まずにはいられないような情緒不安定な心理状態です。」

 不意に襲ってきた病的気分は、“胸騒ぎ” の感覚に近いながら、格段にひどく激しいものでした。その原因が何なのか、“めまい” に襲われたときにも似て意識をどこに向ければいいのか分からない心境でした。目当てとする的確な言葉がどうしても浮かばなかったので、上記の下線部分の表現、“遣る瀬ない” になってしまいました。“遣る瀬ない” が最も近いと感じたのです。ほぼ9~10ヵ月後になって、やっと浮かんで来た言葉が「不穏」、次いで「不吉」でした。焦がれた言葉にやっと出会えた気持ちでした。“胸騒ぎ” に近いのですから、もっと早く浮かんできてもよさそうなものです。参考のため浮かんで来た言葉の変遷を以下に示しておきます。


 言葉の変遷:
 ○胸がひどくザワザワ→(原因あるいは由来を探るために)どこかに(意識を)向けたい
  けど何処に向けたらいいか分からない→遣る瀬ない;(本来、“遣り場のない” が正し
  い)
 ○極端にひどい胸騒ぎ(軽いときは空回り)→不穏→不吉で不穏

【事例2】
 次の事例は、断酒10ヵ月後の2回目の投稿からです。(「私の底着き体験・断酒の原点」より)

 「飲酒欲求が優しそうに変装した慢心や油断は思わぬ時に顔を現わしてきます。いつ何時現れてくるのか分かりません。」
     
 「飲酒欲求は慢心や油断の陰に隠れ、優しそうな姿に変装して思わぬ時に現われてくるそうです。いつ何時現れてくるのか分かりません。」

 この時は、“慢心”、“油断”、“優しい” という言葉がランダムに浮かんで来たものと思われます。次いで “変装” を思い付いたのでしょう。これらの言葉に引き摺られた結果、上記の下線部分の表現になりました。一見文芸作品風の表現になってしまい、決して論理的な表現とは言えません。投稿時にも違和感があったとは思いますが、適切な表現が浮かびませんでした。元の文でもニュアンスは伝わるものの、柄でもないのでより説明文風に改めました。

【事例3】
 3番目の事例は、断酒11ヵ月後の7回目の投稿からです。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その1)アルコールとの馴れ初め―プロローグ」より)

 「入試直前の気の緩みから来るえもいわれぬ不安と、入試前夜に緊張で眠られなかったのが祟り、・・・」
    
 「気の緩みとその後ろめたさから、入試直前にはえもいわれぬ不安と緊張が募っていました。その挙句に(の)入試前夜、一睡もできなかったのが祟り、・・・」

 “気の緩み” と “不安”、“緊張” との関係が曖昧になっています。元の文でもニュアンスは伝わるとは思いますが、これらの言葉の因果関係を交通整理して当時の心境を表現し直しました。助詞が “に” なのか “の” なのかについても、今でも迷ったりしています。

【事例4】
 4番目の事例は、断酒11ヵ月後の同じ7回目の投稿からです。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その1)アルコールとの馴れ初め―プロローグ」より)

 「坐ったまま思いっきり漕いでブランコから飛び離れ、危険防止のためにブランコを囲った鉄製の柵を飛び越えるという遊びもしました。」
  
 「坐ったままブランコを思いっきり漕いで勢いをつけ、そのまま飛び出して危険防止用の囲いの柵を飛び越えるという遊びもしました。」

 受験当時の行動の順にそのまま記述した部分です。肝腎要の言葉 “勢い” が思い付かず、それを欠いているため未熟な印象となっています。さらに、後半の “柵” の修飾語が述語を含む節であることから、全体的に諄い印象となっています。投稿時どこか違和感があったのですが、肝腎要の言葉が欠けていることに気付かないままに投稿していました。“勢いをつけ” を補い、修飾語の節の部分を簡潔な句に改めてみました。やっと、思いの丈が伝わるようになりました。

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 いかがでしたでしょうか? 思いを表現できないでいるヒゲジイのもどかしさをご理解いただけましたか? 想起障害は今でも悩みの種です。私のブログを読んで違和感を覚えた際は、元々文才がない上に想起障害も抱えているのだから・・・と、大目に見てやってください。
次回に続きます。


「ボケが始まった?(急性離脱後症候群:PAWS)」も併せてお読みください。
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